猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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カープが弱くなった理由
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    カープが1991年から25年間優勝できなかった理由は、新人選手の逆指名制度とFA制にある。

    1980年台後半から、カープを取りまく雲行きが怪しくなった。プロ野球界のシステムが変わって、どうやらこれまでのようにカープは勝てないかもしれないという嫌な予感がした。

     

    80年代後半、巨人と西武を中心に1リーグ制が噂にのぼった。人気球団の巨人と、当時圧倒的に強かった西武が組んで、1リーグ10チームにし、観客動員の少ないチームを排除する動きが新聞をにぎわせた。巨人の渡邉恒雄は政界マスコミに強い影響力を持ち、西武の堤義明は世界最高の金持ちと言われた時代、この最強の2人がタッグを組んだのである。

     

    カープは毎年のように優勝争いに絡み一定の成績はおさめていたものの、勝ちに慣れたファンは球場に足を運ばず、観客動員は上昇せず資金力は脆弱で、1リーグに再編成された日本プロ野球界から排除される可能性があった。スポーツ新聞には1リーグに加入できない可能性がある球団として、広島やロッテや日本ハムの名前が挙げられた。

     

    結局、1リーグ制は掛け声だけで終わったが、代わって逆指名制度とFAという、巨人のような資金力の強い球団に有利なシステムが導入された。

    アマチュア時代に活躍した選手が即戦力として巨人にごっそり引き抜かれ、その結果カープの無名の選手を育てて鍛えるという地道な方法は通用しなくなり、弱体化する危惧を持った。

    だが、私の悲観的な想像よりはるかにカープは弱くなってしまった。まさか25年間優勝できないなんて夢にも思わなかった。

     

    巨人はFAで主力選手を手当たり次第に獲得した。中日から落合、西武から清原、ヤクルトから広沢、横浜から村田、ダイエーから小久保や工藤、そしてカープからは江藤や川口を取った。他球団で活躍した外国人選手、ペタジーニやラミレスや李承などもジャイアンツの一員になった。これでは他球団は勝負にならない。

    逆指名制度でも、大学生・社会人の有力選手を巨人が豊富な資金力をバックに獲得した。1993年から2006年までの逆指名制度で、上原・高橋由伸・仁志・二岡・阿部・内海などを入団させた。21世紀に入ってからの巨人の強さは、巨人有利な制度がバックにあったからである。

     

    不公正な制度の中で、カープはアマチュア時代の実績が乏しい選手を入団させることしかできなかった。

    だがカープにも家貧しくして孝行息子が出て、入団早々に大活躍する選手たちがいた。しかし悲しいことに、層の薄いカープ投手陣でイキのいい新人が出現すれば、たちまち登板過多になり肩やヒジを痛め、投手生命を縮めてしまった。小林幹英・沢崎・山内・河内・苫米地などの有望な選手が、酷使され特攻隊のように散ってしまった。彼らは広島でコーチや球団職員、また地元放送局の解説者として活躍しているが、酷使がなかったら別の人生があったのにと思う。

    これだけカープの若手投手が酷使され潰されたら、アマチュア球界の有望選手を抱える監督は、大事な教え子に広島カープへの入団を勧めないだろう。「カープへ入団したら潰されるぞ」と言って指名を忌避させる。

     

    さらに、カープは家族的経営と資金力不足がたたり、外部の人材を導入しなかった。

    ヤクルトは野村克也、阪神は星野仙一、中日は落合博満という外様監督に指揮を預け強くなった。(落合は中日OBだが、彼の性格はどんな組織でも外様的である)。

    弱小チームが強くなるには、勝ち方を知っている外部からの輸血が絶対に必要なのだ。新鮮な血液が入ることなく、血が濃すぎるカープが低迷するのは当然のことといえた。

     

    カープファンもオーナーも、「カープが優勝できるか?」という高い望みは現実的ではなく、「カープは存続できるか?」という心配を抱えていた。

    だからこそ今回のカープの優勝は、まさに「夢のまた夢」で、歓喜もひとしおなのである。

    | 野球スポーツ | 22:02 | - | - | ↑PAGE TOP
    カープ優勝。MVPは誰か?
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      カープが25年ぶりに優勝する。MVPはいったい誰だろうか。

      今季こそ飛びぬけた成績は記録していないので、記者投票のMVPには選ばれないだろうが、カープ優勝の最大の功労者は、黒田である。

      黒田はカープをいったん離れて、メジャーで経験を積み勝つ意識を身体で浴び、選手に強い影響を与えている。カープに対する主観的な情愛と、外部から冷静にカープを眺める客観的な視点を合わせた、内部であり外部である稀有な存在である、黒田こそがカープを変えた。

       

      また、黒田復帰はファンのカープ愛を強めた。

      カープファンはFA制度以降、現役で活躍中の選手に対し、心のどこかで「こいつはFAで巨人や阪神に行くんだろうな」と冷めた目で見ていた。応援しすぎて裏切られるのが怖かった。広島市民球場末期には、江藤や金本のようにチームを去っていくのかとファンは疑心暗鬼になっていた。

      だがメジャーでの20億円のオファーを蹴った黒田の復帰によって、選手もファンと同じようにカープを愛していることがわかった。裏切りを怖がらずに、思う存分カープを応援できる。そんな、かつて津田に感情移入したような熱烈な選手愛を呼び戻してくれたのが黒田だった。

       

      そして新井。新井は前回のカープ時代と阪神時代を通して、勝負弱いバッターだというイメージがあった。変化球が打てず、負け試合での焼け石に水のホームランと、ダメ押しホームランなど、どうでもいい場面で打点を稼ぐ印象があった。

      ところが復帰後の「新井さん」は勝負強いバッターに変身していた。

      新井が復帰する時、私は代打要員だと考えていた。年齢も40近いし、試合に出れなくても練習姿勢で若手を覚醒していく役割を求められていたと思ったら、何と試合にバリバリ出て2年目の今年は打点王を狙える活躍である。これには驚いた。MVP候補の一人である。

      新井が阪神に行った時、正直私は「地獄に堕ちろ」と思った。こんなことになるなんて夢のようだ。

       

      鈴木誠也は一瞬でスターになった。

      「ミスター赤ヘル」の称号は山本浩二以来空席のままだが、鈴木誠也がこのまま伸びれば2~3年後は4番に座り「新ミスター赤ヘル」と呼ばれるだろう。

      彼の凄いところは、ソフトバンクの内川とオフに自主トレしたことだ。内川はプロ野球きっての右打者であり、常勝ソフトバンクの4番である。トップ選手の懐に飛び込み、教えを請いながらともに寝食を共にする行動力は素晴らしい。

      また内川も鈴木に可愛気と将来性を感じなければ、共に行動したりはしないはずである。内川も鈴木から刺激を受けられると判断したからこそ、懐に快く飛び込ませたわけだ。

       

      キャッチャーの石原の存在感は大きい。カープ打線の中で、1割台の石原の打率は異彩を放つ(最近は2割台に乗ったが)。

      40近い年齢で、肩もさほど強くないのに正捕手の座を守り続ける。バッティングのいい若手の會沢が台頭し、ふつうならレギュラーの座を譲るのが自然な成り行きだが、石原は老獪にマウンドを死守する。

      経験に裏打ちされたリードと、確実性のあるキャッチングには定評があり、ジョンソンからも「できれば彼に受けてもらいたい」と言われ投手陣からの評価も高い。野村復活も石原の功績が大きい。

      石原が頭に死球を受け登録抹消された8月には、巨人に4.5ゲーム差まで追い上げられ、石原の存在をファンも再認識した。

      阪神は現在、若手捕手の試用期間中で、金本監督は「捨てシーズン」と言っていいぐらい勝負を度外視し若手を育てている気がするが、もし阪神の捕手が石原だったら、藤浪晋太郎もあれだけ苦労することはないのにと思う。

      石原は渋いオッサンで、お父さん的なルックスだが、球場や街では石原の31番のユニフォームを着たカープ女子を結構目にする。菊池や大瀬良のユニフォームを着た人たちを尻目に「私はアナタ達とは違うのよ」という意気を感じる。

       

      地味ながら活躍が目覚ましいのは安部である。

      安部は堂林と3塁の激しいレギュラー争いをして、現在のところ勝っている。以前、堂林は野村謙二郎監督から「贔屓」され不振でも3塁のポジションから外されなかった。野村監督の現役時代の背番号7ももらった。

      またカープファンは堂林が大好きで、罵声でも堂林に対する期待と愛情が入り混じる。マスコミからも数多く取り上げられ、ルックス面でも神様に愛されている。

      カープファンは堂林が登場してから、彼が将来主力バッターになり、カープを優勝に導くという将来のストーリーを無意識に作りあげた。堂林にはスターのオーラがあった。安部はそんなストーリーやオーラに屈することなく、堂林の成長物語をぶち壊した。

      安部のライバルは堂林だけではない。内野はどこでもこなす安部は当初2塁だったが、セカンドの座はあの菊池に奪われた。ショートは田中広輔がポジションを手にした。おまけに今期は3塁にルナが加入した。こういう状況下でレギュラーに近づいた安部の精神力はただ事ではない。

       

      私が個人的に推すMVPは、菊池涼介である。

      かつて中日のアライバコンビはうらやましかった。

      2000年代の落合中日全盛時代、ショート井端・セカンド荒木の「アライバ」コンビは、センター前に抜ける当たりを軽々と捕球した。バットコントロールが誰よりもうまい落合監督の猛ノックを受け、2人の守備力には磨きがかかった。中日にカープは勝てなかった。

      だが、菊池はカープファンの守備に対する欲求不満を綺麗に解消してくれた。菊池の登場がセンターラインに柱を作り、守りの時間も楽しんで見れるようになった。

       

      当たり前の話で恐縮だが、野球は攻撃の時間は点が取れ、守っている時間は点が取れない。どうしても攻撃時間の方が盛り上がってしまう。

      だが最近のカープは、守備の時間も菊池の存在によって楽しめる。守備位置一つにしても菊池は魅せる。ふつうの二塁手ではあり得ないような深い守りにファンの期待は膨らむ。菊池は攻撃時間も守備時間も、二重にファンを楽しませてくれる。

      長嶋茂雄があれだけ人気があったのは、勝負強いバッティングだけでなく、あざといぐらいの華麗な守備にあった。菊池は長嶋茂雄に存在が似てなくもない。サーカスや雑技団の公演を見るようなエンターテイメント性が、菊池の守備にはあるのだ。

      菊池はヒットを打つだけでなく、敵のヒットを何本もアウトにする。野球の魅力を投手と捕手の往復運動でだけでなく、フィールド全体に広げた。『フィールド・オブ・ドリームズ』に出てくるような、天然芝の魅力的な球場マツダスタジアムの、まさに申し子である。

      MVPは菊池が最有力候補である。

       

       

      | 野球スポーツ | 19:16 | - | - | ↑PAGE TOP
      アメフト野郎!by航太郎(4)
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        岡山大学アメフト部 BADGERS#7 矢野航太郎

         

        前回までのあらすじ

        アメフト野郎(1)

        アメフト野郎(2)

        アメフト野郎(3)

         

        ■和歌山大学戦 つづき

        岡山21-28和歌山 BADGERSの7点ビハインド。

        残り時間5分強。

        4thダウン、ギャンブルを選択しランプレーで攻撃権更新。

        またしても4thダウン、パスでフレッシュ獲得。

        攻撃権を更新できなければ負けがほぼ決まる状況で、つまり2部昇格への道が絶たれる状況で、二度も立て続けにギャンブルを成功させた。執念といか言い様がない。

        いつ途切れても不思議ではない幸運の連続だった。

         

        ここまで前進できたのはQB沖西の活躍が大きかった。

        ランニングバック陣が脳震盪や骨折で試合に出場できない中、ランでボールを前に運べるのはQBしかいなかった。

        勝負どころで人一倍の負けん気が存分に発揮された。タックルに来た相手ディフェンスをグラウンドに叩きつけ、グイグイ前進してく。

         

        沖西は1部でもやっていけるポテンシャルを持っている、と、あるコーチは言う。誰もが認めるスーパーアスリートだ。頭でイメージしたことをいとも簡単にやってのけ、周りを驚嘆させる。負けず嫌いでメンタルも強い。この瞬間、2年生ながら間違いなくチームを鼓舞し、奮い立たせていた。

         

        しかし、沖西が一人でチームを動かしていたのでは決してない。けが人も、試合に出られない選手も、サイドラインから声を張り上げてフィールド上のプレーヤーの背中を押していた。

         

        例えば、昨シーズン2年生の石川晋伍、

        ごちん。広島出身、沖西と同じ国泰寺高校野球部。カープの大ファンで練習後、一目散にカープの試合結果を確認する。肩の脱臼に苦しみ、長くリハビリ生活を続けてきた。面白いとは言いがたい一発ギャグのレパートリーが豊富でチームのムードメーカーだ。ウォーミングアップの時の声出しは毎日ごちんから始まる。この日も緊迫した雰囲気に委縮することなく声を出し続けていた。

         

        次に当時1年生の玉井慎吾、玉ちゃん。

        体のパーツすべてが丸い。千と千尋の神隠しに登場する緑のだるまの様な体型をしている。沖西にしばしば乳首を摘まれて悶絶しているのが微笑ましく、誰からも愛されるキャラだ。1年生でフィールドに立つ事は出来ないが、よく通る声を目いっぱい張り上げていた。

         

        逆転勝利、入れ替え戦決定戦、入れ替え戦、来年の二部での勝利と続いていく道を信じて、コーチ、マネージャー、選手含めてBADEGSR相手と全身でぶつかっていた。

         

        「自分らで考えて、追い込んで、ついにここまで来た。俺らのほうが努力量は勝っとる。俺らが負けるはずがない。」キャプテンの試合前のモチベーショントークが蘇ってきた。

        沖西が繋いできた攻撃権を途絶えさせる訳にはいかない。逆転以外ない。

         

        この攻撃シリーズで逆転するには8点が必要だ。

        タッチダウンの6点とキックの1点では同点止まりで、タッチダウン後にゴール前3ヤードから攻撃で2ポイントコンバージョンを成功させて合計8点取るしかない。

         

        冷静に考えて、逆転するのは非常に難しい。

        NFLでは統計上、100本タッチダウンを取ったとしたら、トライフォーポイントの内85〜90がキックで、残りの10〜15が2ポイントが行われるとされている。さらに2ポイントコンバージョンが成功する確率は50%弱。

         

        ゴール前3ヤードからのオフェンス、1stダウン。

        だがランプレーで3本止められた。

        ゴール前1ヤードから、この攻撃シリーズ3度目の4thダウンギャンブル。

        ここで点が取れなければ、残り時間を考えても岡大に攻撃権が返ってくるかわからない。返ってきたとしてもけが人も多く、満身創痍の状態で得点できるかは不確実。

         

        仕留めるのは今だ。

        ゴール前1ヤードはエンドゾーンがすぐそこに見えているのにディフェンスが中央を固めるため、見た目の距離感以上に壁をこじ開けるのは難しい。

        ここで岡大タイムアウト。

        サイドラインと、どのプレーでタッチダウンを取るか最後の決断を下した。

        選手もコーチも頭にあるのは一つ。

        シーズン中、いつか窮地に追い込まれた時のために温存してきたプレー。

        このプレーが成功すれば6点追加で1点差まで追い上げれる。

         

        ボールを受けた。

        前に体を伸ばすだけ。

        だが、ディフェンスのスタートもよく、上も前も塞がった。

         

        体が咄嗟に回転した。

        倒れこんだ先はエンドゾーンの中。

        何がどうなったのかはわからないが、とにかく自分はエンドゾーンの中にいる。

        タッチダウンだ。

        やった、タッチダウンだ。

        可能性が見えてきた。

        岡大27−28和歌山 BADGERS1点ビハインド。

         

        あと1点。

        PAT(Point After Touchdown)で狙うはもちろん、2ポイントコンバージョン。

        同点にしても次の攻撃シリーズで得点できる力は残っていない。

        逆転するには勢いがある今しかない。

         

        コールされたのはシーズンで初めて使うプレー。

        パスプレーだが、投げられる状況に無ければ、自らエンドゾーンまで走ることもできる。

        単純なプレーだが使う局面は必ずシビアだから、飽きるほど、何度も反復してきた。

         

        Ready set hut!!

        ボールがスナップされた。

        右にロール。

        けが人の影響でランニングバックの位置には初めてこのプレーを合わせる選手が入っていて、上手く合わない。レシーバーはカバーされていて投げられない。

        ランだ。

        僕はボールを持ち替えた。

        ボールは僕の腕の中にある。観衆の視線もいま、僕が抱えている物体にある。

        僕はボールを、いつもより強く抱きしめた。

        空襲で乳飲み子を抱えて猛火から逃げる母親みたいに、ボールを抱えた。

        このまま走りきれば2点。大逆転だ。

         

        下から手が伸びてきた。

        俺に触るんじゃねぇ。なんとかかわした。

        視線の先に赤いユニフォームが良いブロックで相手を抑えているのが見えた。

        俺が走るコースはあの背中だ。

        間に合ってくれ。とにかく我武者羅に走った。

        そして。

        エンドゾーンまでたどり着いた。

        タッチダァーーンッ!!

         

        漂流中に有人島に上陸できたような、絶望の淵から生を実感したような気分だった。

         

        岡山 29−28 和歌山 BADGERS1点リード 残り時間4分22秒。

         

        俺がやった。

        俺が決めたんだ。

         

        アメフトの神様がいるとすれば来年は絶対に2部で勝負しろよというBADGERSへのメッセージだったかもしれないし、BADGERS39年の歴史に力が宿るとすれば、それの全てがボールを抱えていたに違いない。

         

        だが試合はまだ4分半残っている。

        和歌山としては逆転するのに十分な時間だ。

        タッチダウンの興奮が冷めないうちに、キックオフに向かった。

        少しでも時間を消費し、少しでも敵陣深くボールを止めるために、相手にリターンさせないことが大事なキック。

        ゴロのボールを蹴った。

        リターナーの手元からすり抜け、点々と転がった。

        狙い通り相手にリターンさせなかった。

        やはり今日のBADGERSは勝負強い。

        気は抜けないが勝てる気がした。

         

        サイドラインに帰り、オフェンスコーディネーターと抱き合った。

        普段冷静なコーチのガッツポーズが見えて、タッチダウンと同じぐらい嬉しかった。

        キッキングコーディネーターとも抱き合った。

        二人とも泣きそうだった。

        つられて僕も泣きそうになった。

         

        だが泣くのはまだ早い。

        泣くのは時計が0:00になってからだ。

         

        ディフェンスを信じて、ボールを目でおった。

        ジリジリと前進されたが、ファンブルフォースからのリカバーで攻撃権を取り返した。最後の最後にディフェンスでもビッグプレーが生まれた。

         

        残り時間を消費し、時計が0を示した。

        BADGERSは勝った。

        選手たちは泣いていた。

         

        岡大BADGERS 29−28 和歌山大 BLIND SHARKS

        1点に泣いた天理戦から1点に歓喜した和歌山戦。BADGERSが見せた成長劇だった。

        2部昇格まであと2勝。

         

         

        ■入れ替え戦出場校決定戦、vs大阪芸術大学VIPERS

        和歌山大学戦後、満足感が体を覆い、燃え尽き症候群のような感覚に襲われた。

        激闘の末手にした勝利。これ以上何もいらない気分だった。

        これまでずっと彼女のいなかった男子が大学生になって人生で初めて彼女ができた時のような気分だ。

        だが、まだ戦いは終わっていない。

        2部昇格まで2勝。

         

        エキスポフラッシュフィールドで試合がある時は、朝7時過ぎに岡山駅を出発する。姫路で乗り換え、新快速で大阪まで行って、普通に乗り換え茨木まで。茨木駅からはタクシーでフィールドまで移動する。

        朝はおにぎりとパンで糖を補給し、活動するエネルギーを摂取する。電車の中では100%のグレーピプフルーツジュースを飲む。試合会場に到着後、第1試合を見ながらコンビニで買ったみたらし団子を3本食べる。

        これが僕の試合の日のルーティンだ。

         

        1クオーター残り7分、4thダウンでフレッシュまで3ヤードほど残った。

        26ヤード地点。

        43ヤードのFGトライ。

        僕のキックの出番だ。

         

        タッチダウンは取れなくても緊迫した試合では先制点が大事。

        敵の戦意を多少なりともそぎ落とせる。

        失うものがないチーム、しかも関西人が多く、乗らせると怖い。

         

        初戦の大阪工業大学戦では48ヤードのFGがショートして失敗していたが、5ヤード前のこの地点なら自信があった。練習でも成功する確率が高い距離だ。

        キックで先制して、楽にゲームを進めたい。

        タン、タッ、踏み込んで、振りぬく。

        いつものリズムでボールを蹴った。

        弾道が少し低かったが、ボールはポールの間を突き破った。

        BADGERS 3−0 VIPERS

        知り合いの方が、敵スタンドで観戦した試合は負けないというジンクスを守り、大芸側のスタンドにいたらしいが、それまでの関西ノリの明るさが、このFGを機に消えたそうだ。

         

        4年生は負ければ最後の試合。大阪芸術大学には試合中笑顔も見え楽しそうにアメフトをしている印象を受けた。そんなチームから戦意を少しでも削ることができたなら、キックの効果は3点以上に大きい。

        モチベーションをいかに維持するかが難しい試合だったが、BADGERSはその後も得点を重ね、結局29−7で勝利した。

         

        岡大BADGERS 29−7 大阪芸術大学VIPERS

        入れ替え戦出場権を勝ち取った。

        2部昇格まであと1勝。

         

        ■入れ替え戦 vs大阪学院大学PHOENIX

        この試合に勝てば2年ぶりの2部昇格。

         

        バジャーズはこれまで大阪学院大学に勝ったことがなかった。

        大阪学院は、2部で優勝し1部との入れ替え戦に出場したこともある強豪。3部に降格したことはなく、入れ替え戦にかけるモチベーションも高いはずだ。2015シーズンこそ2部で最下位に沈んだが、シーズンが深まるに連れて確実にチームを完成させてくる。

         

        12月12日11:00キックオフ。晴れ。

        始まってみると人数の差は明らかに得点に現れた。大阪学院はオフェンス、ディフェンス、キッキング全て全力でできないので、どこかで手を抜く瞬間が来る。実際に相手は疲弊していた。試合前にはもう、シーズン中に負った怪我で主力選手が出場できない状態になっていた。

         

        第4クオーター残り10秒、BADGERSサイドのスタンドからカウントダウンの

        声が聞こえてきた。5,4,3,2,1,0。

        フィールドでは大きなビクトリーフラワーが咲いた。

         

        終わってみるとBADGERSの圧勝だった。

        岡大BADGERS 42−13 大阪学院PHOENIX

         

        2部昇格。

         

        和歌山大学戦後は泣いていたが、この時は泣いている人が少なかった。

        やりきった清々しさと、2部で勝ってこそこのチームの目標が果たされる自覚、責任、やっちゃらーという来季への意気込みが表情から見て取れた。引き締まったかっこいい表情だった。

         

         

        ■アメリカアナグマ、ハンディを乗り越え、その先へ

        BADGERSは2004年以来2部で勝利していない。2部には昇格できるものの、リーグ戦で全敗し、3部との入れ替え戦に回り3部に降格するというシナリオが常であった。その間、新入生の勧誘に苦労し、部員数が少ない時期もあった。

        そこで、3年前から特に新入生の勧誘とサイズアップの2点において取り組み方法を見直し、ここ3年はプレーヤー20人以上の入部を達成し、サイズにおいても2部の平均に達した。

        今年は戦力的にも充実、オフェンスのエースと呼ばれるQBには沖西、WRに高森、RBに中、土井田と活きのいい3年生が揃い、それを生かすOLにも経験のあるプレーヤーがいる。

        ディフェンスにはDL窪田、LB山本、SF松川と要所に強力な選手がいる。

        今シーズン2部での勝利を達成し2部に残留すれば、2部上位定着、1部昇格というBADGERSの長期目標も現実的になってくる。

         

        しかしBADGERSの下馬評は低い。

        関西連盟の多くの人が岡大は3部との入れ替え戦に回ると予想しているそうで、また2chの関西学生アメフトのスレでも岡山大学は最下位と予想差されている。

        BADGERSは今年創部40周年を記念してユニフォームを一新した。赤から青へと大幅な変更だ。新ユニフォームに身を包み、関西の連中を驚愕させる所存である。

         

        全てはBADGERSのスローガンであるこの一言に集約される。

        何があっても這い上がる。挑戦を続ける。

        Challenge on!!

         

         

         

         

        | uniqueな塾生の話 | 16:01 | - | - | ↑PAGE TOP
        SMAP解散と「教育者」飯島マネージャー
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          子猫は可愛い。誰からも愛される。

          だが親猫になると、子猫のように万人が可愛いと感じるわけではない。猫は年齢を重ねるとともに、ルックスは悪くなっていく。哺乳類の赤ちゃん特有の、キュッと抱きしめてやりたくなるような可愛らしさは消える。

          子猫は確かに愛らしい。だが、私も猫を飼っているからわかるのだが、不細工になっても、変わらずそれ以上に愛しいものだ。家族のように心が通ってくるのだ。

           

          アイドルもそうだ。

          十代の男性アイドルはフェロモンを発していて、同世代の女の子を虜にする。だが歳を取るにつれオッサン臭くなり、ファンが離れるのが男性アイドルの宿命だ。

          ジャニーズ事務所の総帥・ジャニー喜多川は人気が落ちた所属アイドルに「お前は女を知ったから売れなくなった。女に飢えたハングリーな目をしてなければだめだ」と言ったという。

          アイドルは性的魅力を発していなければ、子猫のように捨てられる運命にある。

           

          だがSMAPは違う。鮮度が命のアイドルなのに25年間も人気を保ち続けた。私から見れば40を超えて、雄のフェロモンを放ってるのはSMAPのメンバーではキムタクしかいない。だが他のメンバーも、ふつうの若者・中年のルックスになっても人気を保った。SMAPは自分の家族のように愛されてきた。

          SMAPは、25年にわたりグループを存続させ、しかも第一線の人気を保った。これは奇跡に近い。

          たとえば田原俊彦や近藤真彦の「たのきんトリオ」の人気が25年間も続き、藤井フミヤのチェッカーズが解散もせず25年間第一線で活躍できただろうか? 彼らの鮮度は5年前後だったではないか。

           

          SMAPの人気を支えたのは、マスコミの報道から類推するに、飯島マネージャーの存在が大きいと思う。

          部外者が芸能界のことを記事にするのは難しい。歴史家がどれだけ過去の史料を読み解いても正確な事実にはたどり着けないように。SMAPに関する報道から内部事情を類推するのは難しい。

          そうとは知りつつ、飯島マネージャーの大手事務所社員の一線を完全に超えた母親のような愛情がSMAPを人気グループにしたことは想像できる。

           

          飯島マネージャーはSMAPの「教育者」である。SMAP個人個人の個性を伸ばす教師。週刊誌で不鮮明な飯島氏を撮った写真を見たことがあるが、まるで小学校の先生のようだった。芸能界の辣腕マネージャーには見えなかった。

          私は個人塾を営んでいるが、勉強を伸ばすのも大事だが、生徒の個性を生かし長所を伸ばし、唯一無二の存在として社会に出てほしいと願っている。大学合格と同じ比重で、就活の結果が気になる。生徒がタレントならマネージャー、ミュージシャンならプロデューサー的な立場になりたいと考えている。

          だが生徒の個性を伸ばすと言葉にするのは簡単だが、実行するのは難しい。それどころか、生徒の良さを打ち殺し、欠けたものを埋める方向に走りがちだ。生徒本来の長所を忘れ、正反対のものを求めてしまう。徳川家康のように物静かで篤実な子に、豊臣秀吉のように華々しくアピールするよう要求し、またその逆のケースもあったりして、試行錯誤を重ねてきた。

           

          逆に飯島氏はメンバーの個性に合わせた仕事を模索し成功した。

          木村拓哉が『あすなろ白書』の助演・取手君役で「さりげない演技」が評価されてから、ドラマの仕事を意図的に増やし、『ロングバケーション』で「キムタク」として国民スターとなった。

          木村拓哉の囁くような演技は、他の若い俳優のオーバーアクションの演技に辟易していた視聴者に、等身大の共感をもたらした。目が大きく潤み鼻筋が通った超人的なルックスを持つキムタクに自己投影する矛盾を忘れ、キムタクの演技に自己移入した。

          日本でこんな「さりげない演技」を確信犯的に強調した俳優は、キムタク以前には松田優作しかいない。

           

          中居正広はバラエティーに活路を見出し、SMAP2大巨頭になった。

          中居は本質的に、どこか神経質で気難しい人だと思う。ファンやマスコミに対して表面上は冷たい印象を受ける。

          だが、バラエティーではゲストに気をつかい、きわめて社交的な面を見せる。天性が社交的な明石家さんまと比べて、中居は繊細で内向的な人が無理して頑張っているように感じる。そんな中居の精いっぱいの努力が視聴者の好感につながっている。中居君がんばってるねと。

          飯島マネージャーは、木村がドラマで成功したからといって、中居に同じ路線を走らせなかった。実は中居は演技が上手いのだが、木村の道徳的圧力すら感じさせる存在感にはかなわない。中居がテレビカメラの前で社交的になる特性を伸ばし、バラエティーの司会でトップをめざした。

           

          香取慎吾はSMAP誕生のころ、私の周囲の中学生には一番人気だった。25年前の中学生の女の子に好きなアイドルはと聞くと「かとりしんご」という名がよく返ってきた。

          SMAPの初期の写真を見ると、他のメンバーは典型的なアイドル顔で見分けがつかなかったが、香取慎吾だけは目鼻が大きく際立った存在に見えた。SMAPで最年少の香取慎吾はアイドルでなく子役スターのようだった。

          キムタクや中居はそれぞれドラマ、バラエティーに順調に居場所を堂々と確保したが、だが、子役から大人へ変わる香取慎吾の仕事には試行錯誤した。既成のアイドルがやったことのない「汚れ仕事」もやった。郷ひろみや田原俊彦が女装して「おっはー」という姿が想像できるだろうか。

          新選組の近藤勇、忍者ハットリくん、『ドク』でのベトナム人、こち亀の両さん、成功したものから失敗したものまで、硬軟取り混ぜ手あたり次第に仕事を選ばなかった。飯島マネージャーも香取慎吾の処遇には頭を悩めたと思う。

           

          草剛は歳を重ねるにつれ、アイドルとは言えない顔立ちになっていった。だがその唯一無二のルックスと雰囲気が、性格俳優の味を出した。

          私が草薙の演技で感動したのは、三谷幸喜の映画『ステキな金縛り』である。主人公深津絵里の若くして死んだ父親の幽霊役として登場したが、立ってるだけで父性愛が滲み、存在感だけで涙が潤んでくる演技だった。

           

          稲垣吾郎は二枚目を中途半端に保ったことが、影の薄さにつながったが、ビートルズで言えばジョージ・ハリスン、仮面ライダーならライダーマンのような存在である。SMAPのメンバーでは癒し系で、一番手が届きそうな存在として愛された。SMAPはスーパーグループだが、スーパーになり過ぎない緩衝材として、稲垣吾郎の存在は貴重だった。

          かといいながら稲垣はとんでもないところで目立つ。『人志松本のすべらない話』で、同棲相手の男性がいることを話し、これにはものすごく驚いた。アンニュイで退廃的な雰囲気も魅力である。

           

          飯島マネージャーは5人の個性を際立たせた。それに加え彼女の凄いところは、ドラマやバラエティーはマンネリと言われるくらい王道を突き進んだのに比べ、音楽では前衛的に冒険を続けたことである。

          飯島マネージャーは音楽に関しては、つねに新鮮な人材を補給し続けた。『らいおんハート』では野島伸司、『BANG!BANG!バカンス!』では宮藤官九郎と、著名な脚本家に歌詞を依頼し、スガシカオや山崎まさよしやMIYABIなどブレイク中の新鮮なミュージシャンに楽曲を依頼した。

           

          また、SMAP出演のドラマは同じようなものが多く、ワンパターンと揶揄されたのと好対照に、楽曲は二番煎じを慎重に避けた。

          『世界に一つだけの花』があれだけ成功すれば、もう一曲ぐらいは槇原敬之にシングルを依頼し、二匹目のドジョウを狙うのがマネージメントの王道である。だがそれをしなかった。

          SMAPのシングルを系統的に聴いていると、素人でもわかる曲と、玄人好みの難解な曲が交互に現れる。売れ線の曲だけでは飽きられることを熟知していた。

          ドラマとバラエティーはソロで王道、音楽はグループで前衛と方針を使い分け、古い血と新しい血のミックスを絶えず意識することが、SMAPを新鮮かつ懐かしい存在にした。

           

          ところでSMAP解散は、海外ではビートルズの解散にたとえられている。

          ビートルズも人間関係が破綻して解散した。木村と中居は、ジョンとポールの関係に似ている。

          ビートルズのベストアルバムに赤盤・青盤というのがある。赤盤は初期の、青盤は後期のナンバーを集めたものだが、赤盤のメンバーの写真は若く同じマッシュルームカットで、無個性で見分けがつきにくいが、青盤は解散前の写真で4人は思い思いの服装髪型をしている。

          SMAPもデビュー当時の無個性なアイドルから変貌し、現在は個性が際立っている。誰も現在はキムタクと草君を間違えたりはしない。

           

          ビートルズもSMAPもこれだけ容姿がバラバラだと衝突を起こすのか、個性の拡張の行きつく先は解散しかないのかと、納得させる写真である。オンリーワンが5人揃えば破綻するものなのか。

          メンバーの個性の伸長、王道と前衛の調和は、まさにビートルズがたとった道であった。飯島マネージャーはビートルズのバンドとしての生き様が、どこか頭にあったのではないか。皮肉なことにビートルズとSMAPが同じ道をたどってしまったのは、さぞ、つらかっただろう。

           

          ビートルズは解散前に『アビー・ロード』という大傑作アルバムを残した。人間関係は破綻しても音楽は破綻するどころか病的な調和をみせた。彼らは音楽の前では嘘をつけなかった。

          SMAP解散まで4か月、5人がビートルズのように最後の奇跡的な調和を見せてほしいのは、ファンならずとも願うことであるが、今のままでは無理なのだろうか。

           

          SMAPはファンから見れば、テレビを通じた家族だった。飯島マネージャーはSMAPを自分の家族にし、日本人の家族にした。SMAPの解散はファンにとって「家庭崩壊」なのである。

          | 映画テレビ | 18:03 | - | - | ↑PAGE TOP
          伊藤和夫『英文解釈教室』VS西きょうじ『ポレポレ』
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            伊藤和夫『英文解釈教室』VS西きょうじ『ポレポレ』

            =『受かるのはどっち?』英文解釈本2強対決〜

             

            博士

            伊藤和夫『英文解釈教室』で英文がクリア

            伊藤和夫先生は故人ですが、駿台予備学校の英語科主任で、数々の名著を生み出し、現在英語教育界の「キングカズ」と呼ばれています。

            『英文解釈教室』は伊藤和夫先生の代表作です。

            ある日、僕の高校の英語の先生が「私は高校時代、英語読解の参考書は『英文解釈教室』しかやらなかったよ」とおっしゃっていました。「あれは凄い本だ。英文がクリアに読めた」と大絶賛されていました。でも先生は加えて「挫折する人も多い。古臭くて化石扱いする人もいる。だから勧めはしない」とも仰っていました。

            僕はそれを聞いて逆に「僕にできないことはない」と飛びつきました。読み進めると「この本はモノが違う」と鼻筋がゾクゾクしました。英文で難しいのは、倒置・挿入・省略・同格ですが、そんな受験生が嫌がる難所を、体系的に豊富な例文を通して説明しています

            『英文解釈教室』は英語の読解法のみならず、アカデミズムの凄みを感じさせてくれました。知的な人だけが持つ圧倒的な存在感があります。『英文解釈教室』は英文読解本の最高傑作です。

             

            女王

            西きょうじ『ポレポレ』『英文読解入門』を反復

            私は高まで勉強してなくて、スパルタ塾に通い始め。スパルタ塾だから分厚い本を何十冊も渡されると思ったら、長渕先生は「これだけでいい」と薄い本をしかくれなかった。それが西きょうじの『英文読解入門 基本はここだ!』と『ポレポレ 英文読解プロセス 50』。薄い本だったから、これなら猛勉強しなくてすむわと安心した記憶がある。

            英語初心者の私は、『英文読解入門』から始めたの。ライトグリーンの優しい色の装丁で、短い簡単な文章が丁寧に説明されていて、十回繰り返したわ。

            それから黄色い表紙の『ポレポレ』に進んだんだけど、これが歯ごたえがあるの。英文読解入門』が軽自動車なら、『ポレポレ』はF1マシンみたいに感じた。『ポレポレ』十数回繰り返した。繰り返せばRPGみたいで楽しくなってくる。難所があってクリアしていくのが快楽になってきた。『ポレポレ』の一番すごいところはね、ほかの英文を読んで「難しいな」と感じたところが、『ポレポレ』で経験済みな箇所なわけ。たいていの難所は『ポレポレ』のおかげで解決できた。

             

            判決

            私の生涯を変えた『英文解釈教室』

            私は進学校の落ちこぼれで、中3から浪人の6月まで勉強をしていなかった。

            だが『英文解釈教室』に出会って英語の偏差値は25も上がった。高校時代、英語は苦手だったが現代文は得意だった、そんな私に『英文解釈教室』の理屈っぽさは性に合った。

            この本は結果だけ書くのではなく、思考の途中経過を丁寧にたどる。伊藤和夫は近寄りがたそうに見えるが、実は受験生に寄り添う、「過保護」と言っていいほど懇切丁寧な講師である。

            伊藤和夫が構築した英文読解の論理体系にはまり、脳内に英文解釈装置が設置される。私はこの分厚い本を全部和訳し、それを7回繰り返した。結果、大学受験レベルの英文なら、構文を気にせず無意識に読めるようになった。

            伊藤和夫の教え方をライトにしたのが『ビジュアル英文解釈』。こちらは伊藤和夫と生徒たちの対話形式の本で、理解しやすい。

             

            『ポレポレ』の簡潔な説明は引き算の美学

            『ポレポレ』はRPGに似ている。英語を読解する時、受験生がぶつかる壁を、50の英文の中に巧みに組み込んでいて、壁の越え方を教える。『ポレポレ』を反復した数だけ、剣武器が身体の一部になり、最終的には英文が無意識に読めるレベルまで到達する。

            説明は簡潔明快。素っ気ないが必要十分。説明を削ることに心血を注ぐ。松尾芭蕉の『奥の細道』は日本一有名な旅行記だが、無駄な文章をそぎ落とした薄い本で、『ポレポレ』と『奥の細道』には「引き算の美学」がある。

            『英文解釈教室』は素晴らしい本だが、挫折率が高い。『ポレポレ』は129ページなのに対して『英文解釈教室』は314ページ。厚い本を1冊やるより、薄い本を反復した方が効果的なのは明らかだ。うちの塾生にも『英文解釈教室』は怖くて勧められないが、『ポレポレ』なら安心して勧められる。

            『英文解釈教室』も『ポレポレ』も、構成が斬新だ。既存の参考書に対する批判や怒りを感じる。参考書は人二番煎じの本が多いが、この2冊は違う。執筆する段階で、構成に頭を悩まし、例文の選択に手こずったのがわかる。知恵と労力が凡百の本とは比較にならないほどかけられた作品で、新しいものを世に問おうという健全な野心が伝わる。

            伊藤和夫や西きょうじが創造的偉業を成し遂げたのも、「受験生に英文を読む力を与えたい」という執念である。伊藤も西もクールに見えて、著作には桁外れの情がある。

            強い本でなければ強い学力はつかない。『英文解釈教室』も『ポレポレ』も反復に耐える強い本だ。

             

            判決 女王 伊藤和夫『英文解釈教室』は厚すぎる。本は薄いが内容が濃い『ポレポレ』をひたすら繰り返せ

             

             

            | 私が出した本 | 10:06 | - | - | ↑PAGE TOP
            『マドンナ古文単語』VS『ゴロ565』 古文単語対決
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              ベストセラーの古文単語、『マドンナ古文単語』VS『ゴロ565』 古文単語はどちらがお勧め?

               

              博士

              ■『マドンナ古文単語』、荻野文子の文章力は抜群

              マドンナこと荻野文子先生の著書の人気が、一向に衰えないのはどうしてでしょうか。

              失礼ながら荻野先生は、もうかなりお年を召していらっしゃいます。

              「マドンナ」という年齢ではありません。でも荻野先生の本は『マドンナ古文』『マドンナ古文単語』『マドンナ古文常識』など、本屋に平積みにされ、ロングセラーになっています。

              荻野先生の本が売れる理由は、文章力にあると思います。

              僕は心の中で荻野先生を、英語の竹岡広信先生と並んで、「学参界の文豪」と呼んでいます。学参派内容も大事ですが、文章のうまさも同じくらい大事だと思います。小説でも文章が良いものは歴史の風化に耐えますよね。

              受験生の肌身に寄り添う、フレンドリーでくだけた文体でありながら、肝心な時にはキッパリ断定口調になる荻野先生の文体は、受験生の癒しかつ叱咤激励になります。

              学参というより、良質のエッセイを読んでいる感じがいいです。

              これが『マドンナ』の人気の理由です。

               

              女王

              ■『ゴロゴ』』は勉強アレルギーを治す

              女の私がゴロゴを勧めるのは変だけど、はじめて見た時は正直

              「これ、学参として売っていいの」

              と思ったわ。

              学校で配られる真面目な古文単語は「”さはれ”どうにでもなれ」と、単語と意味が書いてあるだけなのに、『ゴロゴ』は、痴漢の絵があって、大きな字で「さはれ痴漢よ、もうどうにでもなれ!」って語呂が書いてあるの。学参には映画みたいにR指定はないのかと思ったわ。

              『ゴロゴ』はね、真面目な子には邪道だと嫌われてるけど、ヤンチャな男の子には絶大な人気があるの。他の参考書にはピクリとも反応しないのに、ゴロゴだけは夢中で読んでるの。『ゴロゴ』にはジャンク感があるのよ。ラーメンにたとえたらラーメン二郎みたいな感じなのかしら。

              私もね、生徒から古文単語何がいいか聞かれたら、真面目な女の子にはゴロゴは絶対勧めないけど、ヤンチャな野郎には強くプッシュします。特に勉強嫌いな子は『ゴロゴ』で勉強に目覚める可能性だってあるのよ。

              古文なんて自分とは無縁だと思ってる人は、絶対に買って。

              暴走族上がりの吉野敬介だって、立派な古文予備校講師になってるじゃない。

               

               

              判決文

              ■『マドンナ古文』の漢字暗記法は地味だが確実

              実は私は、日本の高校生に古文苦手が多い原因の一つは、古文は漢字が少なく、ひらがなの比率が高いからではないかと考えている。

              表音文字の古文は、子供が書く、「ぼくはおだのぶながみたいなゆうかんなひとになりたいです」という、ひらがなだらけの文章のように読みにくい。

              子供にとっても、ひらがなだらけの文章は読みにくい。子供も漢字という「絵文字」の力を借りたいから、漢字練習に励むのではないだろうか。

              英語やフランス語は表音文字のアルファベットしか使わない。だが日本語は、表意文字の漢字と、表音文字のひらがな・カタカナが混じる世界でも類を見ない言語だ。その結果、日本人は文字を読むとき、脳内の2カ所を同時に使う。

              養老孟司は「絵を認識する脳内部位と、音声を認識する脳内部位は別の場所にある。文字を読むときに単一の部位を使うのと、二つの部位を使って並列処理するのでは、作業能率が違う。日本人は二つの部位で文字を読めるから、正確に速読ができる」と指摘する。

              表音文字のアルファベットしかない欧米では、字が読めない子供が多く、非識字率の高さが重大な社会問題になっているらしい。フランス人の12歳児の35%は「速読ができない」という統計結果が示されていると、内田樹が語っている。

              『マドンナ古文単語』は漢字にこだわる単語集だ。

              たとえば’かたはらいたし’は漢字で「傍ら痛し」と添えられ、傍らで心が痛むというのが語源と指摘し、そこから,呂蕕呂蕕垢襦Ω苦しい恥ずかしい・気づまりだの2つの訳が生まれたと解説する。

              ひらがなの古文単語を漢字に脳内変換することができれば、脳の二つの部位を使って古文が読める。『マドンナ古文単語』は、ひらがなの古文単語を漢字に脳内変換するよう誘導してくれる。

               

              ■『ゴロゴ』はピンチでチラ見するのが正しい使い方

              『マドンナ古文』は良書だが、単語数が230と少ない。

              だが他の単語集に手を出す前に、最低限マドンナ古文の単語は暗記したい。話はそれからだ。

              女王推薦の『ゴロゴ』は掲載数が565と多いのだが、古文単語はゴロで暗記するより、漢字のイメージで暗記する方が、正統的かつ暗記しやすいと個人的には考える。

              ただし、『ゴロゴ』の語呂と奇抜な絵が頭に焼き付いた時の爆発力は半端ではない。『マドンナ古文』のような正統派の古文単語集と並行して持ち、どうしても暗記できない単語があった時に、隠れてチラ見する感じで参照すればいいと思う。シュールな絵と語呂で、一人勉強中に声を出して笑うのも、暗い受験生活の一コマとして面白い。

              『ゴロゴ』は正統派の単語集でどうしても暗記できない時、禁断の助っ人として使うのが正しい。

              「ピンチヒッター。ゴロゴ。背番号565」

               

              判決 『マドンナ古文単語』。どうしても暗記できない時は『ゴロゴ』の下品でシュールな語呂に頼れ。

               

              | 私が出した本 | 11:58 | - | - | ↑PAGE TOP
              『システム英単語』VS『英単語ターゲット』どっちがいい?『受かるのはどっち?』
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                『システム英単語』VS『英単語ターゲット』有名単語集対決

                どっちがお勧め?

                 

                博士

                ■『英単語ターゲット』で入試出題頻度チェック

                 

                ”Cho ChoTrain”のEXILEは知っていても、英単語exileの意味が「亡命」だと、知っている人は何人いるでしょうか。

                またPerfumeはいまや世界的に有名ですが、perfumeが「香水」だと知っている高校生は、意外に多いと思います。

                街には英語があふれていますよね。それが日本語でどういう意味を持つのか、調べる習慣があるかどうかで、英語力は格段に違ってきます。新しい外来語、たとえばケースワーカー、ワークショップ、セグメント、デフォルトとか新語が現れたなら、スマホで調べるクセをつけてほしいです。

                僕は勉強中、未知の単語があれば辞書を引くのではなく、まず『英単語ターゲット』で調べていました。

                ターゲットは受験に出そうな英単語が掲載されています。未知の単語が、受験に出る単語なのか、それとも大学受験を逸脱している単語なのか、ターゲットで確認していました。

                僕にとって単語集は、英単語詰め込みに使うものではなく確認用でした。ターゲットはレイアウトがシンプルで調べやすいのです。exileもperfumeもターゲットに載っていますよ。

                 

                 

                女王

                ■『システム英単語』は初心者にやさしい

                 

                私ね、学校で買わされたのが、旺文社の『英単語ターゲット』だったの。

                この本はシンプルなのはいいけど、悪く言えば単語が並んでいるだけ。例文も中途半端に長い。難度が高い本よね。

                で、私は高2から塾に通ったんだけど、長渕剛に似たスパルタ先生は、私が持っていたターゲットを見て、「そんな本を俺の前に2度と持ってくるな。カバンにしまいなさい」と言って、『システム英単語』を渡したわけ。それから、「英語ができない奴は単語を知らない。単語を知らない奴は根性がない。1か月で暗記しろ。」と言って、シス単のミニマルフレーズを、1冊丸暗記しろと命令した。

                でもね、孤立した単語だけ暗記するつまらなさがないけど、シス単のミニマルフレーズは長さがちょうどいいわけよ。

                たとえば『システム英単語』でvirtue(美徳)は”the virtue of hard work”と、のど越しのいい日本蕎麦みたいに、ツルッと一気に呑みこめるわ。

                逆に、ターゲットの例文は”The Japanese learn that vagueness in discussion is a virtue.”って感じで長いの。こんな韓国冷麺みたいに固くて長い例文は、暗記できないわ。

                 

                 

                判決文

                ■『ターゲット』は前世紀の遺物か?

                 

                学校や塾の先生に「どんな参考書がいいですか?」と尋ねるときには、必ず「先生はどうしてその参考書を勧めるのですか」と尋ねてみよう。

                もし先生が「私が使っていたから」と答えたら、疑ってかかることだ。若い先生ならともかく、年配の先生が「自分が使っていたから」という理由で勧めた参考書は、時代遅れのものが多い。

                学参の世界は日々進化している。20年も30年も前の自分の成功体験だけで、教え子に学参を勧めるのは、日露戦争時代の古色蒼然とした武器で、ソ連の近代兵器に挑み敗れた、ノモンハン事件の帝国陸軍のように愚かである。

                英単語集にしても、最新鋭の本の存在も知らないで、新しい学参の研究もしないで、自分の経験だけで教え子に本を勧めるのは無責任だと私は思う。

                『ターゲット』は1990年代には定番だった単語集である。40代50代の先生は使っていた人がかなり多い。だから生徒に勧めたがる。

                だが、ここ数年で発行された単語集に比べると、『ターゲット』は英単語を並べただけの、工夫が凝らされていない単語にしか見えない。博士のように辞書代わりにするのならいい。だが、英単語を命綱にして這い上がりたい受験生には、あまり勧められない。

                ある有名予備校の先生は、「ターゲット? あかんあかん、そんなもんほってしまえ」と言ったらしい。

                 

                ■『システム英単語』は大学受験界の老舗・駿台の新鋭単語集

                 

                うちの高校生は『システム英単語』を使っている。

                私が受験生の頃、こんないい単語集はなかった。

                駿台文庫は大学受験参考書の名作を放ってきた「古典」だが、単語集には目立つものがなかった。だが駿台が満を持して出版したシス単は、出版されて以来評判を呼んだ。
                シス単が素晴らしいのは、ミニマルフレーズである。contemporary「現代の」という単語を、単体で暗記するのではなく、’contemporary Japanese culture’「現代の日本社会」という短いフレーズで覚えさせる。フレーズで暗記することで格段に覚えやすくなる。
                もし『シス単』以外の単語集を使ってたら続けていいが、『シス単』第5章の「多義語のBrush Up!」だけは絶対見ておきたい。簡単な単語の意外な意味が載っていて楽しい。

                たとえば'line'には電話という意味があるが、この意味を知らなければThe line is busy.を「行列が混んでいる」などと誤訳してしまう。

                センター試験は特に、『シス単』第5章のような、簡単な単語の意外な意味が出やすい。

                第5章は試験問題の作成者が受験生に仕掛ける、単語トラップを集めたものである。受験生が問題作成者という「敵」の魂胆を知るには最高だ。

                この第5章の有用性こそ、『シス単』が最も信頼される単語集に急速にのし上がった原因である。

                chargeが告訴とか、lotが運命とか、soundが健全とか、sentenceが判決とか、知っておくと便利だ。

                 

                 

                 

                 

                判決 女王 単語は『システム英単語』で決まり。

                駿台予備学校の底力。特に第5章の「多義語のBrush Up!」を知らなければ今すぐ読むべし。

                 

                 

                 

                | 私が出した本 | 13:53 | - | - | ↑PAGE TOP
                数学苦手は克服できるか?『受かるのはどっち?』
                0

                   拙著『受かるのはどっち』より、「数学苦手は克服できるか?」を一部改変して掲載します。

                  王子

                  ■数学苦手が克服できるのは中学受験経験者だけ
                  京都大学はアメリカンフットボールが強いです。

                  彼らはもともと体が細い受験秀才ですが、関西学院大や立命館大など強豪チームの相撲取りみたいな選手と、いい勝負をしています。

                  アメフトは体力勝負であるとともに、知的勝負のウェイトが多くを占めるスポーツだから対抗できるのです。

                  京大が強いのは、彼らに数学的センスがあるからだ僕は分析しています。

                  アメフトではボールを瞬時に的確な場所に投げ、また最短走路を取らなければなりません。たいていの京大生は中学受験勉強で、図形の点の移動、最短距離を叩き込まれています。

                  関西の中学受験塾では土日は十数時間も塾で特訓です。

                  まるで毎日が数学オリンピックのように数字や図形と格闘します。アメフトを始めたのは大学からでも、小学生の時からアメフトの知的訓練を積んでいるようなものです。

                  数学力が紙の上だけでなく、アメフトのグラウンドという実戦にも生きているのです。

                  難関高校の生徒は数学で落ちこぼれていても、中学受験時代に培った算数のポテンシャルがあります。

                  基礎学力を持つ彼らなら追い上げ可能ですが、そうでなければ無理でしょう。

                  女王
                  ■数学苦手克服は万策尽くせば可能
                  数学では別にトップに立たなくていいわけで、苦手は苦手なりにしのげばいいわ。
                  まず計算力からつけましょう。
                  数学できない人は計算力がない。

                  『足し算・引き算から微分・積分まで 小・中・高の計算が丸ごとできる』間地秀三(ペレ出版)がいい。計算に特化した本で、掛け算九九から積分計算まで載ってるの。数学嫌いな人は計算アレルギーで、通信制限のかかったスマホのように計算が遅いの。この1冊を繰り返せば、月初めの通信制限解除の時のように速くなるわ。
                  あと、基礎ならマセマ出版社の『初めから始める数学毅繊拉肋豬蒜靴鮖箸辰討諭

                  問題が少なく解説がフレンドリー。これだけで大丈夫かと心配する前に、まずこれだけやってみてほしい。
                  数学苦手克服には思い切って基礎に戻る度胸がいるの。

                  偏差値が伸びないとき、基礎に戻るのは理に適っているとわかってはいても、直前なのに基礎なんかやってる場合じゃない、応用問題解かなければと焦る。

                  それに、人から「基礎に戻れ」と言われたらプライド傷つくしね。でも平常心で基礎を粛々とやれば道が開けるわ。

                  判決
                  ■数学全体と戦うな。個々の単元を一つずつ潰せ

                  判決、女王の勝ち。数学で中学受験経験者が有利なのは事実だが、方策はある。
                  数学で苦手克服するには、数学全体と戦わなければいい。

                  1つずつ単元を潰していく方法を取れ。

                  二次関数・三角比・ベクトル・数列・微分積分、どれか1単元のスペシャリストになることだ。数列から潰しにかかるとすれば白チャートから始めればいい。

                  マセマ出版社のシリーズでもいい。基礎ができてる人なら『1対1対応の演習』を勧める。

                  1単元に戦力を一極集中し、他の単元は潔く捨てる。1単元ずつ潰せば成績は確実に上がる。
                  数学という科目は質量ともに多く、数学全体を同時に敵に回すのは無謀。数学全体と一気に戦ったら敗ける。

                  ヒトラーが敗北したのは、東はソ連、西のアメリカ・イギリスと、東西の敵と同時に戦ったからだ。

                  また、大日本帝国に至っては北にソ連、東にアメリカ、西に中国、南にイギリスと、東西南北を敵に囲まれた。

                  さらに織田信長も西は毛利、北に上杉、東に武田・北条、そして本願寺と、四方八方敵だらけで最後には明智光秀に隙を突かれ殺された。
                  数学全単元を伸ばそうと欲張れば、ヒトラーや大日本帝国や織田信長のような破滅が待っている。


                  ■それでも苦手なら、計算力を上げるため公文式へ
                  数学苦手を克服する、決定的な方法が公文式である。

                  計算力を上げるには、ズバリ、公文式がいい。
                  日本の教育制度は、学年一斉に同じ内容をやり、一度やったことは原則として復習しないという大原則がある。これでは復習できず成績が落ちるのは当然である。

                  「一期一会」で学力はつかない。
                  逆に公文式は、学年を無視した能力別プリント、苦手分野の徹底復習 という「一期二会」「一期三会」の方法論で、ポピュラーな教育産業に成長した。

                  勉強が苦手な人を得意にする方法論がシステム化されていて、数学の基礎力を高めるには公文式のシステムに頼ればいい。
                  公文式では、高校生で中学生の方程式と格闘する人もいる。

                  学年枠を取っ払い、プリントを基礎から反復してこなす。公文式の門をたたいた最初のうちは、高校生が中学生用のプリントをやるのは恥ずかしいけれど、驚くべき速さで復習ができ達成感がある。
                  私はTwitterとBlogをやっていて、数学苦手克服法をよくたずねられるが、「公文式がいい」と言うと、「まさか公文なんて」と耳を傾けない高校生が多い。

                  基礎が大事なのは誰もがわかっていても、いざ公文式という基礎の基礎の勉強法を突きつけられると、プライドが傷つく気持ちはわかる。

                  だが、バカほど基礎をバカにする。
                  公文式だけで大学入試の問題が解けないのは当然だ。しかし基礎の通過儀礼を浴びなければ、難問がいつまでたっても解けない。だまされたと思って「くもんいくもん」という気になってみよう。

                   

                  判決 女王…数学が苦手なら、1単元ずつ潰せ。計算が苦手なら公文式という巨大教育システムに頼れ

                   

                   

                   

                   

                   

                  | - | 18:25 | - | - | ↑PAGE TOP
                  「叱るな、怒れ!」
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                    教育書を読んでいると、子供に対して感情をぶつけて「怒る」ことはよくないから、理性的に諭すように「叱れ」と書いてある本が多い。
                    これって、本当だろうか?
                    私の経験則から言えば、感情を思い切りぶつけたほうが、問題の解決につながるケースのほうが多い。

                    「怒る」が本音爆発なら、「叱る」は演技だ。
                    子供は大人の演技を簡単に見抜く。教師が演じる下手な芝居を冷ややかに見つめる。

                    たとえば、教育書に「子供を怒ってはいけません。叱りましょう」と書いてある。真面目な若い先生はこれを真に受け、実践しようとする。
                    でも、真面目な若い先生は、「怒る」演技と「叱る」演技を使い分けることなんて、できるのだろうか?

                    さらに教育書には、
                    「子供を叱るときは理性を90%土台にして、10%の感情のスパイスを効かせましょう。「怒り」の感情は生の姿で出してはいけません。理性をもって「叱る」演技をしましょう」
                    と続けて書いてある。

                    私は一応、学生時代に自主映画の俳優を経験したが、「理性を90%土台にして、10%の感情のスパイスを効かせて叱る」などという器用な演技など絶対にできない。
                    そんな数学的で精緻な演技ができるのは、若手俳優では蜷川幸雄の弟子の藤原竜也や長谷川博己など、一部の俳優だけである。
                    真面目な若い先生に複雑な演技を求めてはならぬ。

                    あと、よく教育書には
                    「子供に注意するときは、『ほめる:叱る』の比は、9:1にしましょう。9ほめて1叱るのが、丁度いいバランスです」
                    などと書いてある。
                    それって、難しくないか?
                    わざわざ「黒田君は今9回ほめました、次は1回叱る番です」と教師が数えるのか? 
                    何故そんな面倒くさい演技をしなければならないのか?

                    良いところが全然ない子供をほめるのは、ただの嘘つきである。
                    子供の側からしても、根拠がないのに一方的にほめられたら屈辱だろうし、また嘘のほめ言葉で調子に乗ってもらったら困る。

                    ほめたくないのに人をほめると、奇妙なことになる。
                    たとえば、小学校の先生は子供に、終わりのHRで「みんな、友達の良い点を書きましょう」と紙を渡すことがある。
                    先生が配った紙には、「黒田君、高橋君、嶋さん、新井さん」と名前が羅列してあり、渡された子供は、黒田君・・・頼りになる、高橋君・・・怒ると怖い、嶋さん・・・努力家、新井君・・・ひょうきん、とほめ言葉を書いてゆく。
                    先生は紙を回収し、集計して子供に渡す。
                    「勉強ができる」「話がおもしろい」「本読みがじょうず」「ドッジボールがうまい」と書かれた子は嬉しいだろう。

                    でもほめる所があまり見つからなくて、「給食を食べるのがはやい」「消しゴムがカワイイ」「鼻にほくろがある」「学校のトイレによく行く」「家が金持ち」などと、無理して捻り出したようなビミョーなほめ言葉を羅列されたら、馬鹿にされてるように感じるだろう。
                    だから、私は意識して子どもをほめない。心にもないほめ言葉をかけて、誤爆して傷つけたら子供がかわいそうだ。

                    もし子供が、私からほめられたと感じたならば、それは私が子供の前で客観的な評価を口走っただけであって、演技してイヤイヤ無理してほめたわけではない。

                    結論。
                    ほめる所などないのに、子供をほめてはならない。
                    白々しい演技のほめ言葉を、子供はあっさり見破る。
                    また、ほめ言葉のインフレは良くない。
                    なぜなら日常的にほめていたら、子供が本当にほめられるような事をした時、本心からほめることができないからだ。

                    さて、教師は生徒に対して、自分に自信があったら怒れるはずである。
                    たとえば授業中に生徒が話を聞いていない。そこで教師が「自分の話を聞いた方が、この子は得をして賢くなる。将来の糧になる」と圧倒的な自信があったなら、教師は「聞け!」と一喝できる。
                    自分の話の中身に自信がないのに「聞け!」と怒鳴り上げることはできない。

                    また教師は、子供を怒ってしまうと、子供に嫌われてしまうんじゃないかという怖れを抱く。
                    たとえば、生徒とは今までうまくやってきた。仲がいい。でも生徒と馴れ合いの関係になっているのも事実だ。そんな生徒が今教師たる自分の前で甘え、怒らねばならぬ行動をしている。
                    どうしよう、怒ったら嫌われる。
                    「いい先生」でなくなってしまう。
                    子供と自分の関係に、ひびが入るのではないか? 

                    でも私なら、子供に嫌われてもいいじゃん、と思う。
                    教師にとって、自分が好かれることと、生徒が立派な人間になることと、どっちが大事か?
                    子供のことを本気で心配すれば、自分が嫌われるかどうかなんて些細な問題ではないか。
                    自分の体面より生徒の将来が大事なら、子供が規範から外れ、怠惰な行為をしていた時、ガツンと言えばいいじゃないか。
                    怒れないのは、生徒より自分の方がかわいいからである。「いい先生」なんて言われたら、教師としては敗北だ。

                    生徒の方も、怒鳴られて「イヤな先生だな」と一時は思ったとしても、賢明な子なら、いずれは自分を誰が一番大事に思っているか、動物的本能でわかるはずである。
                    子供は、誰についていったら自分が向上するか、得をするか絶対にわかるはずである。

                    理性的に叱れ、感情的に怒るな、と言う。
                    でも、「感情」という言葉は、「彼女の演奏には感情がこもっている」「彼の作文は感情性が豊かだ」という具合に使えば、プラスの意味になる。
                    「感情性」はプラスの意味だが、「感情的」はマイナスの意味だ。だったら「感情性」をもって怒ればいいではないか。
                    「感情」の「感」は「感じやすい」、「情」は「情け深い」という意味に他ならない。「感情的」になれるのは、感じやすく情け深い人間だからである。

                    感情的になって、自分の思いを生徒にぶつけてもいいじゃないか。真に「感じやすく」「情け深い」人間は、激怒して錯乱しても、出てくる言葉は人の心を打つ。
                    感情的になった人が吐く言葉はゲロのような暴言とは限らない。子供の感情を昂ぶらせる金言になることだってあるのだ。
                    感情的に腹から声を出せ。「叱る」という小手先の声では、子供の心は動かせない。


                    | 硬派な教育論 | 21:26 | - | - | ↑PAGE TOP
                    アメフト野郎!by航太郎(3)
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                      ■NFLはすべてが桁外れ
                       
                      イギリス留学中、ロンドンへアメフト観戦に出かけた。
                      年に3回、ロンドンでもNFLの公式戦が行われる。
                      ロンドン中心部から少し北にはずれたWembley Stadiumに到着した。
                      イングランドサッカーの聖地であるが、この日はNFLのお祭り模様。地下鉄で僕のお気に入りチームのジャージを着ている人をたくさん見かけた。
                       
                      スタジアム外で行われているイベントには目もくれず、スタジアムに入った。
                      エスカレーターで5階席まで上がり腰掛けた。グラウンドではスペシャルチームの選手たちがウォーミングアップをしていた。
                       
                      突然、目の前を何かが通り過ぎる。
                      鳥かな? 
                      鳥ではない。
                      すぐに正体がわかった。
                      パンターが蹴りあげたボールだった。
                       
                      ボールは5階席の僕の目線まで上がったあと、見事な放物線を描いて、選手が豆粒のように見えるグラウンドの谷底へと消えていった。
                      NFLのパンターはとんでもなく高いボールを蹴るのは知っていたが、生で見て驚愕した。
                      相手のプレッシャーも試合の緊張感もないリラックスした状態だと、ボールを自由自在に操れるらしい。どのように蹴ったら、こんな高さを出せるのか理解できなかった。
                      この高いパントを見られただけでも、それなりの値段がしたチケット代を回収できたなと思った。
                       
                      ところで、僕がアメリカンフットボールというスポーツを最初に意識したのは高校生の時だった。同級生のサッカー部のキャプテンがNFLの大ファンで、シーズンが始まると毎日アメフトの話をしてくる。何がそんなに面白いのかを聞いても、百聞は一見に如かずだと、まずは試合の映像を見てみろと言われるだけだった。
                       
                      その頃はサッカーに一途だったので、半信半疑のまま、テレビでNFLの試合を見た。すぐに人間離れしたプレーに圧倒された。
                      人を殺しに行くようなタックル、50ヤード以上のロングパス、腕の太さ、首の太さ、足の速さ、何もかもが人間離れししていて、
                      「なんだ、このスポーツは!」
                      と感じた。
                       
                      まず、運動神経が凄い。
                      相手に触れること無く左右に揺さぶるだけでディフェンスを地面に倒すステップ。地上戦が拮抗したと感じたら、派手な空中戦。QBは弾丸のようなボールを正確なコントロールでディフェンスの間を通し、レシーバーに届ける。レシーバーは垂直跳び1mの身体能力を活かしてディフェンスの頭の上でキャッチする。
                       
                      スピードが凄い。
                      身長2m体重100kgの選手が陸上短距離のスプリンターと同じくらいのスピードで走り、後ろから飛んで来る楕円の球をキャッチした瞬間、ディフェンスがキャッチした選手めがけて猛スピードでタックルをかます。その衝撃は車同士の交通事故にも匹敵するとも言われている。
                       
                      体格が凄い。
                      身長2m体重140kgの選手がフィールド中央でぶつかり合う。ラインマン同士のぶつかり合いは、一つの土俵の中で5人対4〜7人の選手が作戦に基づいてチーム戦で相撲を取っているようなものだ。元横綱・武蔵丸も学生時代アメフトに青春を燃やした。アメリカのプロレスラーにはNFLに入ったものの怪我で試合に出場できず、数年で引退しプロレスに転向した人が多いそうだ。
                       
                      プレーも凄いがスタジアムも凄い。
                      収容人数が多く、ビジョンがやたらとデカい。外から見るとスタジアムだとは思えない近代的な建造物のものも多い。
                      僕が好きなスタジアムは、グリーンベイ・パッカーズのホームスタジアムであるランボー・フィールドだ。8万人以上収容できる巨大なスタジアムで、典型的なボウル型がシンプルで美しい。この形が好きすぎて、スタジアムの画像を検索して眺めながら何時間でも楽しめる。
                      パッカーズはウィスコンシン州、ミシガン湖の北東部に位置する港町、グリーンベイを本拠地とする。NFLのシーズンは9月から翌年2月ころまでなので、冬は極寒の中で試合を行うが、どんなに寒くてもスタジアムを埋め尽くすファンのチーム愛は無尽蔵だし、冬にきれいに芝生を手入れするグラウンドキーパーの努力は計り知れない。

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                      ランボー・フィールド
                       
                      またパッカーズと同地区で争うミネソタ・バイキングスは新スタジアム”US Bank Stadium”の完成が間近だ。
                      近代的な外観で、屋内スタジアムながら、太陽光をふんだんに採光できるようにしてある。シートはチームカラーの紫で、スコアボードも超巨大だ。
                      バイキングスには東京ドームのようなドーム球場があったのだが、数年前の大雪の際に、積もった雪の重みで屋根が潰れてしまった。修繕はしたものの、それを機に新スタジアムを建設する計画がスタートした。
                      ミネアポリスは寒く、12月にはマイナス10度で試合をすることも珍しくない。選手は白い息を吐き、観客は目出し帽を被っている。
                      このスタジアムではQBのミススローやキッカーが短い距離のキックを失敗することがあったのだが、僕は寒さも少しは影響していると考えている。これからは最新の空調設備が整った屋内スタジアムが完成するので、より質の高い試合が見られるのではないかと期待している。

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                      US Bank Stadium
                       
                      スタジアムに響くのは、熱狂的ファンの声援である。
                      「クラウドノイズ」をご存知だろうか?
                      アメフトでは作戦の伝達は確実に行わなくてはいけない。1つのサインを聞けば11人全員が自分の役割を把握できるようになっているため、聴き逃したり、聞き間違えたりするとプレーが成立しない。
                      クラウドノイズとは、敵チームの攻撃の際にプレーコールの伝達がしにくくなるように観客が大声を張り上げることだ。クラウドノイズでアウェイチームのオフェンスは混乱するため、観客の発するクラウドノイズは12人目のディフェンスと呼ばれている。
                      人工的にスピーカーで音を発したり、ブブゼラのような楽器を使ったりすることは禁止されている。NFLにはクラウドノイズの大きさを競ったギネス記録があり、シアトル・シーホークスとカンザスシティー・チーフスがNFL一うるさいスタジアムの称号を巡って争っている。
                      チーフスは142.2デシベルを記録した。これはジェットエンジンが間近で回っているほどの騒音だという。耳がおかしくなりそうだが、一度経験してみたい。
                       
                      高校時代からNFLに関してはある程度知識があったが、サッカーしかやったことのない僕が、まさか大学でアメフトをプレーするとはその時は考えもしなかった。


                       
                      岡大アメフト部・秋シーズン開幕
                       
                      僕は英国留学中もアメフト部に入部し、イギリス人とアメフトをした。 
                      イギリス人はプレー中に、良くも悪くも1プレー1プレーに一喜一憂する。ともすれば泣きそうになる時もある。
                      NFLやアメリカのカレッジフットボールの試合を見ていても、感情の出し方は激しい。
                      良いプレーをした選手に対しては手荒く祝福し、パスをインターセプトされたりすると怒り悲しむ。相手のラフプレーに対しては、チーム全員が声を荒げる。タッチダウンしたり、QBサックをしたりしたあとは、ダンスなど独特の動きで事自己をアピールする。
                       
                      一方で、帰国して初めてスタンドから観戦したBADGERSの試合では、淡々とプレーしていて、冷静さを通り越して淡白な印象を受けた。その時、BADGERSをサイドラインが“うるさい”チームにしたいと思った。
                       
                      2016年9月、僕にとって2回目の関西リーグが幕を開けた。
                       
                      2015年現在関西学生リーグ1部は立命館大学、関西学院大学、関西大学、京都大学など8校で、2部はA ブロックとBブロックそれぞれ6チームの12チーム、3部はAからDまでそれぞれ6チームの24チームが所属している。
                      上位グループの最下位と下位グループの1位が入れ替え戦を行い、下から二番目の大学が下位グループの2位と入れ替え戦を闘うシステムになっている。上位校が勝てば残留、下位チームが勝てば入れ替わりが起こる。
                       
                      2015シーズン、バジャーズは3部で戦った。
                      目標は2部昇格である。
                      岡大BADGERSが属する3部Bブロックは、天理大学、大阪経済大学、大阪市立大学、大阪工業大学、和歌山大学、岡山大学という組み合わせになった。


                       
                      下馬評は次の通り。
                      圧倒的な攻撃力をもつ天理大学、
                      一人ひとりの体が大きい大阪経済大学、
                      ランパスのバランスが良く、岡山大学と同じようなチームの和歌山大学、
                      この3チームが優位に立ち、その中でも天理大学か和歌山大学が抜けそうだというのが、シーズン前、関係者の予想だった。
                      わが岡大は天理、和歌山に次ぐ3番手か、攻撃次第では優勝争いに絡むという評判だった。下馬評は必ずしも良くない。2部昇格するには、大阪工業大学と大阪市立大学戦での取りこぼしは絶対にやってはいけない。
                       
                      2015シーズンのBADGERSの目標は、2部昇格だけにとどまらず、2016シーズンに2部で勝つチームを作ること。
                      現状としてBADGERSは毎年2部と3部の入れ替え戦に出場していて、その殆どで入れ替わっている。
                      3部では王様だが、2部では勝てないエスカレーター状態から脱出したい。


                       


                      第1節 vs大阪工業大学
                       〜オフェンスが本調子には遠い〜
                       
                      シーズン初戦vs大阪工業大学ROWDIES
                      どんなスポーツでも、プロ・アマチュア関係なくリーグ戦の初戦は難しいというが、それを実感した試合だった。
                      大阪工業大学は学生スタッフがおらず、選手の人数も少ない。体のサイズやプレーのスピードでも勝っている。
                      言い方は失礼かもしれないが、格下相手に大差で勝たないといけないという不要な使命感や、プレッシャー、気合が空回りした試合だった。
                      特にオフェンスの動きが固く、リズムに乗れないまま1本のタッチダウンを取っただけで前半を終了した。前半終了時点で岡山大7-0大工大。
                      まずい。
                      だが、ハーフタイムの修正を経てなんとか後半立て直し相手を突き放した。
                      なんとか勝てた。
                      ディフェンス陣の奮闘で勝てた試合だった。
                      オフェンス陣にとっては、今日よりも強いディフェンスに対して前進し得点を重ねることができるのか、パスを決めることができるのかなど、2節以降に不安を残す結果となった。
                       

                      第1節 岡大 23−7大工大

                       


                      岡大アメフト部・ディフェンス陣紹介
                       
                      大工大戦で相手の得点を死守した、そして2016シーズンのキーとなりそうな岡大のディフェンスから3人、紹介しよう。
                       
                      まず、2年生DL#52西谷俊輝。
                      DLはアイシールド21の栗田がディフェンスの時やっているポジションだ。
                      西谷は目が大きく顔立ちがはっきりしているので、先日、大学の講義で本当に留学生に間違われたそうだ。ラグビーサモア代表にいそうな面構えだ。
                      入部当初から筋肉の鎧を身にまとっていたが、1年間のトレーニングで169cmながら105kgまで体重が増えた。
                      トレーニング棟でベンチプレスをするときに100kgのバーベルでウォーミングアップをしているのには一緒にトレーニングをして下さっているOBさんも感心していた。体の全てが太く、雪山を転がしたら綺麗な雪だるまになりそうな体型だ。
                      体重100kg越えといっても、世間が想像するような脂肪たっぷりのプヨンプヨンな体ではなく、引き締まった100kgなので短距離を走らせても速い。また後背筋が大きいので直立した時に腕が閉じない。さらに僧帽筋が発達しているのと首が太いのとで、首が無いように見えるのはまさにラグビー選手のようだ。
                      物怖じせずぶつかっていける性格はディフェンスにもってこいで、天性の低さも兼ね備えている。低いと相手の下に潜り込めるのでぶつかったときに相手をあおりやすい。
                      今シーズンはアメフト野郎(2)で登場した窪田とともに相手オフェンスを破壊することが期待される。
                       
                      LB#47山本晃己は今年のディフェンスリーダー。アイシールドで言うと王城ホワイトナイツの進清十郎。
                      山本は多くの幕末の志士たちを産んだ山口の萩出身。高校時代は柔道部で、いかつい体と顔をしているのとは裏腹にいじられ役で、後輩からもからかわれる。
                      いつもご飯を作ってくれる彼女がほしいと叫んでいるが、米の上に人参を一本丸ごと置いてそのまま炊飯した写真をツイートした時には流石に心配にもなった。たいていのいじりには笑って受け入れる山本だが、唯一、髪の毛を触ると怒る。ちりちりなのを気にしているらしく、少しでも触ると襲いかかってきそうな目をするから怖くなってやめる。
                      山本は今年ディフェンスリーダーに就任した。今は負傷中でリハビリしているが、シーズンにはピークを持ってくるに違いない。
                      柔道部出身の山本は入部当初、足も遅くボールを扱うのが苦手で苦労していたが、文字通り雨の日もラントレをした日も毎日ひたすら走り続けた。もともと柔道で鍛えた筋肉隆々の肉体だったが、弛まぬトレーニングで筋肉が何倍にも膨れ上がった。
                      激しいタックルで相手オフェンスを跳ね返してほしい。そしてチームが苦しい時、重い空気をブレイクするプレーを見せてくれるはずだ。
                       
                      最後に2年生DB#17戸田和真。
                      子犬のような顔をしていて、いかにも女子からモテそうな雰囲気がある。野球部出身で先輩にいじられるが、それを楽しそうに受け入れる。厳しい野球部で鍛えられてきたんだということが伺える。
                      僕が彼に活躍してほしい理由が一つある。それは、彼が僕と同じでアトピーを持っているということだ。彼がたまに痒そうにしているのを見ると辛そうだなと思うが、彼は笑顔でそれを弾き飛ばし痒みになんか負けない強い意志を持っている。
                      1年間で10kg以上体重を増やし、2部で戦える体にはなった。BADGERSのCBの中では身長があり、また跳躍力もあるのでレシーバーとの競り合いにも負けない。ただ今はまだ恐る恐るプレーしている時があるので、相手を怖がらずに思いっきりよく楽しんでディフェンスしてもらいたい。ミスっても上回生がカバーするから。


                       
                      アトピー・アレルギーでもアメフトはできる
                       
                      アトピーだが、僕や戸田のように重度のアトピーの人がアメフトをするのは正直辛い。
                      アメフトではヘルメットを被り、ショルダーパッドを装着する。激しい運動で大量に汗をかくが、防具をつけているので外に蒸発せず蒸れる。すると肌が猛烈に痒くなる時がある。しかし防具をつけているのでかけない。結果、痒いままイライラして集中できなくなる。
                      雨の日に練習すると練習後、激しい痒みが襲ってくる。濡れた肌が乾き始めた時の痒みは簡単には治まらない。
                      アトピーはすぐに完治するものではない。上手く付き合っていかなくてはいけない。その方法として、僕は練習中やアフター練習に入る前は必ず、その他にも頻繁に顔や首を水で流すようにしている。練習後はすぐに洗えるところは洗い、保湿のローションを塗る。更衣室のシャワーは水しか出ないので冬場はシャワーできないが、夏場は頭から水を被る。土のグラウンドで練習しているので、練習後何もしないと砂とホコリと汗で何重にも痒い。
                      ただアトピーが悪化しそうだからといってアメフトを諦める必要もない。他のスポーツよりも肌への負担は大きいかもしれないが、対策は十分に取れるし実際にアトピーと上手く付き合いながら活躍している学生もいる。
                       
                      アトピーではないが、アレルギーを持っているNFLの選手がいる。ニューオリンズ・セインツのQBドリュー・ブリーズだ。彼はグルテン、牛乳、卵などの食物アレルギーがあり、食事制限をしている。因果関係があるかは不明だが、身長もNFLのQBとしては低身長の183cmだ。そのせいで地元のアメフト強豪校に進学できず、NFLのドラフト順位も下げられた。
                      僕も食物アレルギーを持っている。だからブリーズが活躍すると勇気をもらえる。一度フェイスブックのページにメッセージを送ったことがある。(案の定、返信は来なかったが…)


                       


                      第2節 vs天理大学 CRUSING ORCS
                       〜3部の強豪・天理大学との一戦〜
                       
                      2戦目にして山場を迎える。
                      天理大学は2014シーズン、ある不祥事で主力選手が公式戦に出場できなかった影響で3部5位に甘んじていたが、2015シーズンは1部でもスターターを張れるレベルのエースレシーバー#88を擁し、圧倒的な攻撃力を誇るチームにのし上がってきた。前評判でも3部Bブロック優勝候補の最右翼だった。
                       
                      この試合、BADGERSに有利にはたらく要素がひとつある。9月23日秋分の日は毎シーズン決まって岡山でのホームゲームが開催されることだ。
                      スタジアムは普段練習している大学のグラウンドから自転車で5分もかからない近距離にあり、試合前に岡山から大阪までの電車移動をしなくていい唯一の公式戦だ。
                      J2のファジアーノ岡山がホームスタジアムとして使用する1万5千人以上収容する立派なスタンドがあり、天然芝も手入れが行き届いていて美しい。
                      大学の友だちや他の体育会の学生、近隣に住まうOBさん、保護者が普段よりも多く応援に駆けつけてくれるので自然と気合も入る。
                      そして応援団とチアが来てくれる唯一の公式戦でもある。スタジアムの屋根に反響して一層大きく聞こえる応援団の勇ましい声と、チアのダンスがスタンドの応援をリードし盛り上げてくれる。
                       
                      岡山大学応援団といえば団長の角谷謙斗さんが有名だ。同じ尾道北高校出身で、会うと気さくに声をかけてくださる。応援団の団長といえば堅気で孤高な存在というイメージアがあり、角谷さんも例外なく学ラン姿に角刈りで、眼力があり怖い人に見えるが、演舞の時以外はいつも笑顔でとてもフレンドリーだ。角谷さんはバイク好きで、熱烈なNHKの朝ドラとカープファン、お酒も好きな団長だ。
                       
                      14:00 キックオフ。晴れ。
                      夏の太陽が照りつけている。



                      岡山 シティライツスタジアム

                       
                      投げるQBと受けるWRは以心伝心
                       
                      天理戦、BADGERSが先制する。QB沖西からWR福井へのロングパス。
                      QBが投げWRがキャッチする空中戦はアメフトの醍醐味だ。
                       
                      BADGERSのスタートQBは#2沖西将弥。
                      180cm80kg、広島国泰寺高校野球部出身。
                      髪を茶色く染め、女の子と会う時はワックスとスプレーで丁寧に髪をセットしてくるイケメンだ。
                      祖父がボディービルダーでジムを経営しているといい、その影響か筋肉が大きい。上腕三頭筋が特に発達していて腕が太い。頭でイメージしたことをその通りにできる、生まれながらのアスリートで、1部で活躍する能力があるとコーチに言わしめた逸材だ。
                      自分がヒーローだと信じて疑わず、負けん気の強さはだれにも負けない。だが、シャイで繊細な一面もあり、かわいげがある。
                       
                      昨シーズンのエースレシーバーはWR#11福井頌平。レシーバーとしては身長も高くないし、スピードもずば抜けてはいない。
                      福ドンさんはフィジカルに自分の生きる道を見出した。ハードなウエイトトレーニングで男も惚れる肉体を手に入れた。派手さはないが堅実なキャッチングとブロッキングで信頼感は抜群。福ドンさんならどんなボールでもキャッチしてくれそうなワクワク感がある。
                       
                      この2人はチームで最初にグラウンドに現れ、最後までグラウンドに残ってパスを合わせていた。
                      パスコースは前に何ヤード走ってこのタイミングで内に何ヤード入ってくる、というように正確に決められているが、試合では相手の激しいプレッシャーもあるので、少なからずズレは生じる。
                      だから、ディフェンスの動きを想定しそれぞれで、言葉を交わさずとも考えが一致するまでに繰り返す。
                      阿吽の呼吸だ。
                       
                      天理戦、沖西から放たれたボールは放物線を描きながらエンドゾーンへと飛んで行く。落下地点は文句なし。
                      だがディフェンスも良くマークしている。
                      ジャンプ一番、競り合った。
                      赤のジャージに身を包んだ#11福井が相手の背後から手を伸ばし、ボールを包みこんだ。片手でのスーパーキャッチ。
                      #11はスッと立ち上がり、ボールを天に突き上げた。
                       
                      BADGERS 7−0 ORCS
                      BADGERSが幸先よく先制点をあげた。


                       
                      アメフトのキックで五郎丸ポーズは不可能
                       
                      だが、天理も負けてはいない。
                      図抜けた力量を持つエースレシーバー#88へのパスが決まり、キャッチした後も岡大のディフェンスをひらひらと抜き去り前進していく。
                      タッチダウン。
                      あっという間に追いつかれた。
                      BADGERS 7-7 ORCS
                      その後も天理が#88へのパスで猛攻を仕掛けてきたが、ディフェンスが要所要所で相手を封じ、前半は7-7のまま終了した。
                       
                      後半、BADGERSに勝ち越しのチャンスが巡ってくる。
                      第3Q、ゴール前7ヤードまでオフェンスが前進したところで4thダウンを迎える。
                      タッチダウンとボーナスキックで7点追加したいところだが、ギャンブルに失敗して0点に終わるよりも、確実に3点を追加しようと言うのが岡大サイドラインの判断だった。
                      ディフェンスが強く、拮抗した試合展開の場合、3点でもリードしていたほうが精神的に余裕も生まれる。
                       
                      アメフトとラグビーのキックは違う。
                      ラグビーのキックは止まったボールを蹴る。だがアメフトのFGの場合、スナッパーがボールをスナップし、ホルダーがキャッチしたボールを地面に立てる、立てられたボールをキッカーが蹴る。
                      ボールがスナップされた瞬間、キックされたボールをブロックしようと、ディフェンスの選手がイノシシのようにキッカーめがけて突進してくる。
                      ラグビーはルーティンをこなし、じっくり蹴れる。だがアメフトは瞬間的に蹴らねばならない。
                      アメフトのキックは、五郎丸ポーズをやっている暇なんかないのだ。
                      おまけに、スナップが乱れたり、ホルダーがボールを立て損ねたりするとキックすらできない。
                      したがって、スナッパー、ホルダー、キッカーは目隠ししてでもタイミングが合うぐらい息があっていないといけない。
                      ラグビーのキックは個人技、アメフトのFGは団体戦なのだ。


                       
                      僕が決めた公式戦初のタッチダウン
                       
                      7-7の同点。僕のキックで3点を狙う。
                      前の大工大戦でホルダーの沖西にホールドミスがあったので、助走を測る前に声をかけた。彼はお調子者で人一倍負けず嫌いだが、繊細で、おそらく前回の失敗からナーバスになっていると感じた。
                      僕は言った。
                      「リラックスして置けば良い。立っとるボールなら全部蹴るけ」

                      静寂がスタジアムを包み込む。
                      ボールがスナップされた。低く速いナイススナップ。
                      ホルダー、お手玉。
                      くそっ。
                      ボールが転がる。
                      ピンチ。
                      だが、まだプレーは終わってはいない。
                      キックは失敗でも、こぼれたボールを抱えてエンドゾーンまで持ち込めばタッチダウンだ。
                      僕は咄嗟にボールを拾い上げ、腕に抱えた。
                      相手が正面にきた。
                      カットを切る。
                      だが次の瞬間、右下から地獄へ道連れにしようと僕の足を引きずりこむような手が伸びてくる。
                      ギリギリ足にかからない。
                      前が開けた。
                      僕はエンドゾーン左端を駆け抜けた。
                      タッチダァーーーーン。
                      6点追加!
                       
                      走っている時は何も聞こえなかったが、エンドゾーンからスタンドを見た時初めて、歓声とチアバルーンのバチバチ鳴る音が聞こえた。
                      公式戦で僕が決めた、初めてのタッチダウンに興奮した。
                      パスを決めた時や、ランでフレッシュを獲得した時とはまた違った快感が全身を流れた。
                      自分が攻撃のドライブを締めくくる。高い山に登頂したような、弾けるような爽快感を味わった。
                      BADGERS 13−7 ORCS
                      やった。
                      優勝候補の天理をリード。


                       
                      再逆転され敗戦。1点の重みに泣く
                       
                      だが、浮かれてもいられない。
                      すぐにタッチダウン後のトライフォーキックがある。
                      サイドライン、スタンドにいたBADGERSお応援する人全てがタッチダウンを喜んでいた。

                      そんな中、一人だけ喜べない選手がいた。ホルダー、沖西だ。
                      タッチダウンを取れたので結果オーライだが、二試合続けてのホールド失敗は屈辱以外の何物でもない。
                      「さっきのは忘れて、これに集中」
                      僕は沖西に言った。
                      声をかけ、混乱状態を少しでも和らげようとした。
                      ホルダーのミスは自分のミス。スナッパー、ホルダー、キッカーは一心同体。
                      だが、またしてもホールドできなかった。
                      1点取れず。
                      13―7のまま。
                       
                      キックを決められず、14−7にすることができなかった。6点差は相手からすればTD一本とキックで逆転できる点差で、精神的には楽。相手に追加点を許さなければTD1本さえ取れば勝てるということで焦らなくていい。
                      アメフトは、キックの1点が意外に重いスポーツ。
                      この1点が試合を左右することになるのか。
                       
                      僕は沖西のホールドミスが、その後、彼のクオーターバッキングに影響を及ぼさないかだけが心配だった。
                      繊細な沖西には、天衣無縫にプレイしてほしい。
                      彼は『黒子のバスケ』の火神のように、ZONEに入ったら手が付けられないのだ。
                      「今のは忘れて、1点なんか関係ないぐらい、タッチダウン取ってこい。」
                      僕は沖西に言った。
                      「大丈夫ですよ!俺、スーパースターなんで!」
                      彼は答えた。
                       
                      その後、BADGERSは天理のエース#88を止めることができず逆転された。
                      タッチダウンの6点とキックの1点、合計7点で13−14。
                      試合をひっくり返された。
                      悪い予感は当たった。
                      1点が重い。 
                      FGを蹴れるゾーンまでも遠い。
                      わずかな残り時間で逆転をするためにスペシャルプレーを試みたが、結果は失敗。再逆転できずに試合は終わった。
                       
                      結果的にみるとキック失敗の1点が負けにつながった。
                      杞憂は現実になった。 
                      13−14。岡大、痛い敗戦。 
                      2016シーズン2部で勝つという目標がある以上、残り試合は全て勝ち続けなければならない。
                      下を向いている暇はない。


                      第2節 岡大 13−14 天理大

                       


                      第3節、vs大阪市立大学 GOLDEN CEDARS
                       〜キックが絶不調〜
                       
                      1勝1敗で迎えた大阪市立大学戦。
                      大阪市立大学も1980年代、岡山大学を追うように1部に昇格したが、最近は3部に定着している。毎年5月に定期戦を行っており、試合後にはレセプションもあるので、選手の中には友だちもいる。
                      2015年、春の定期戦では勝っている相手。春から比べるとどちらも成長しているが、BADGERSのほうが伸びたことを証明し、力の差を見せつけたい試合。

                      大阪市立大とは怨恨試合だ。 
                      実は、春の定期戦で両チームともQBの控えがいなかったため、QBへのタックル無しというルールで試合をした。QBとはそれほど重要なポジションである。だが、試合最終盤にQB沖西がタックルされて肘を脱臼する怪我をさせられた。
                      沖西はその後2ヶ月プレーできなかった。
                      その怒りを晴らすためにも、秋の市立戦は勝たなくてはいけない。
                       
                      だが僕は、この試合でキックの不調に悩まされることになる。
                      試合はタッチダウンランで岡大が先制。7-0 BADGERSリード。
                      幸先のいいスタート。
                      第2Q、ゴール前9ヤードから4thダウン。
                      岡大はFGトライを選択。
                      キッカーである僕の出番だ。
                      ハッシュレフト。
                      確実に決めて当然の距離。
                      キックしたボールは。左のポール上部を通過した。
                      中心を通すことはできなかったが、決まったと思った。
                      が、審判のシグナルはキック失敗。
                      3秒ほどその瞬間の出来事を受け入れられなかった。
                       
                      岡山BADGERS 7−0 GOLDEN CEDARS 大阪市立
                       
                      10−0となるところを、点差を広げられなかった。
                      サイドラインに帰りながら首をかしげた。
                      キックを失敗と判定されたことも納得いかなかったが、それ以上になぜキックを思い描いているよりも左に飛ばしてしまったのか、原因を考えていた。
                       
                      飛距離を伸ばすことを考えて、キックのバランスが崩れていたのかもしれない。岡山に帰ってから、フォームを見なおそうと考えた。
                      しかし試合中にこれ以上キックの失敗に気をとられるのは良くない。
                      立て直せ。試合に集中。
                       
                      キックに神経質になり、気が散漫になりかけないために、イギリスでアメフトをしていた時にムードメイカーが発した言葉を思い出した。
                      We are still winning!!
                      僕の中で重い空気を一変させる言葉だった。
                      悪いシチュエーションでも勝っていることに変わりはない。
                      自分で呟き、沈んだ気持ちを切り替えた。
                      得点差を広げられないまま前半終了。
                      岡大 7−0 市大
                      第3Qに7−6まで追い上げられた時は、キックを決めていればもっと楽に試合運びができたのにと思ったが、タッチダウン後の相手のキックを弾いたディフェンスを褒めることだけを考えた。
                      We are still winning.
                      岡大はタッチダウンを一本追加し、結果的には13-6で勝利した。
                       

                      第3節 岡大13−6 大阪市立大

                       


                      キックの修正・Youtube先生との特訓
                       
                      キックを失敗したときの帰りの電車はとても長い。新大阪から岡山までの3時間、外したシーンだけが頭の中をリピートする。
                      気を抜いていたわけではないが、短い距離のFGだったから集中しきれていなかったのかもしれない。外したことのイライラよりも情けなさが勝った。40秒計が進み、焦っていたのかもしれない。だとしたら練習の時の想定が甘かったということになる。
                       
                      この距離のFGは決めて当然、サッカーのPKと同じようなものだ。決めても祝福はほどほど、外せば不信感につながる。
                      キッカーは孤高であり、スコアリングに関わり勝敗を握るので極度のプレッシャーがかかる。一見単純に見えるがさまざまな要素があり、深く深く突き詰めなければならないポジションである。失敗してもあいつなら次も任せられると普段から信頼を得ていることも重要だ。
                      今日のキック失敗で、次の試合からほぼ確実なところでないとFGを蹴らせてくれないのではないか。冒険させてくれないのではないか。
                      不安に駆られた。
                      何もしゃべりたくなかった。
                      電車の窓ガラスに頭を打ち付けるようにして寝た。
                      チームは勝った。だが僕にとっては負け試合だった。


                       
                      キックの研究を重ね、試行錯誤した。
                      その結果、キックのばらつきを無くすためには助走が大事だとわかった。
                      Youtubeを先生に見立て、NFLやアメリカの大学生、日本の大学生のキックを何種類も何回も見た。
                      共通点はボールから後ろに3歩、横に2歩、軸足となる側の足を中心に体をホルダー方向に向ける。助走の一歩目は真下に踏み下ろす程度で小さく、残り2歩はリラックスして、インパクトの瞬間に力を入れる。上体は被せずに足を高く振り上げる。
                       
                      技術面ではこれらを意識して徹底的に反復する。
                      しかし、技術だけでは試合の場面でキックする時は、極度の緊張状態になる。登場機会が少ない分、出場する時は必ず成功させなければならない。サッカーのPKのキッカーがそうであるように、周囲も成功するものだと思っているプレッシャーがある。だから練習でも1本目を大事にした。2,3回繰り返して決めるのは当たり前。試合では一発勝負、1本で決めることができるかに重きを置くことで、精神状態もできるだけ試合の状況に近づけた。 
                      研究と練習を執拗に重ね、これなら大丈夫だという自分の中にキックの頼れる軸ができたので、プレッシャーにも負けにくくなった。

                      僕は反復練習を楽しんでできる性格だ。反復することは退屈だと思われがちだが、僕はそうは思わない。一つ一つのポイントを確認しながら、一回一回何が上手くいったか、思ったようにいかなかったか自分に語りかけながら繰り返す。 
                      ある程度習得できたと思ったら、テストをする。
                      キックなら正面に立つポールにまっすぐなボールを当てることができるか、50ヤード先にあるバケツに高いボールを上から落として入れることができるか、ゲーム感覚で楽しむ。
                      同じ動きをひたすら繰り返していても、意識する部分を変え、自分で撮ったビデオを確認するようにすると刺激が生まれ、退屈だと感じなくなる。そうして同じ型が自分の中にはめ込まれるまで徹底して繰り返した。


                       
                      第4節、vs大阪経済大学BOMBERS
                       
                      2勝1敗で迎えた大阪経済大戦。
                      大阪経済大学はサイズが大きいチーム。とにかくフィジカルで勝とうという意志が見える。
                       
                      結果から先に言うと、この試合ではランニングバックを中心に、攻撃陣が爆発した。タッチダウン5本で35得点はバジャーズオフェンス4年ぶりの高得点だった。
                      ここまで悩みに悩み抜いていたオフェンスがやっと、暗く湿気た洞窟から抜けだした。

                      僕のキックも絶好調だった。 
                      僕がスコアリングで登場したのはタッチダウン後のキック5回。
                      市大戦後は反省を元に確実性を追い求めた。
                      5回蹴って5回成功。
                      乗り越えた。
                       
                      大経戦からはキックを外す気がしなくなった。
                      大阪市立大学戦でキックは飛距離やダイナミックな見た目よりも正確性が大事だということに気づいてからの挽回だった。
                      キックに迷いが無くなった。
                       

                      第4節 岡大 35−13 大経大
                       
                      いよいよ次は、和歌山大学との最終戦。



                       
                       

                      最終節、vs和歌山大学 BLIND SHARKS
                       〜入れ替え戦出場を掛けた最終戦〜
                       
                      岡大、和大ともに天理大学に敗戦し、勝ったほうが入れ替え戦出場校決定戦に進める。
                      勝てばいい。負ければシーズン終了。単純明快。
                       
                      和歌山大学はディフェンスも強いが、攻撃力で勝負してきたチーム。パスとランのバランスが良く高校からアメフトをしているQBがオフェンスを指揮する。岡山大学と和歌山大学は同じ国立大学同士で似た雰囲気がある。
                       
                      試合開始から点の取り合い。岡大が先行し、和大が追いつく荒れた展開。
                      岡大 21−21 和大
                      大接戦だ。
                       
                      ディフェンスが強く、ロースコアの拮抗したゲームは経験してきたが、点取り合戦は経験したことがなかった。
                      だが、不安はなかった。チームの雰囲気が最高だった。どんな状況でもサイドラインからチアアップや檄を飛ばす声が出ていたからだ。
                      しかし最後になって均衡は敗れた。ここでBADGERS攻撃陣にミスが出てボールをファンブル。相手選手にリカバーされそのままエンドゾーンに持ち込まれた。
                      岡大 21−28 和大
                      ピンチだ。あとがない。
                       
                      残すは第4Qの10分。あと10分しかない。
                      試合の流れからみて、無得点で攻撃権を渡せば相手に追加点を奪われる可能性もある。
                      BADGERSが逆転するには、この攻撃シリーズでTDを取って6点、その後の2ポイントコンバージョンを成功させるしかない。そうすれば29−28と逆転できる。
                      だが、RB陣の怪我でランプレーが思うように展開できない状況。
                      いよいよBADGERSは窮地に追い込まれた。
                       
                      しかしこのピンチで、ロンドンで見たNFLの選手が蹴った、スタジアム5階席まで届くボールが、頭をよぎった。
                      身体能力では及ばない。が、志の高さだけは、あのボールには負けていない。そう感じた。
                      まわりの仲間たちの姿を見た。
                      サイドラインの全員が試合にのめり込んでいた。
                      イギリスから帰国後、スタンドからBADGERSの試合を観戦した時に見た、サイドラインに立つ選手たちの自信なさげで静かな背中はそこにはなかった。
                       
                      (つづく)



                      アメフト野郎(1)
                      アメフト野郎(2)
                       

                       
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