猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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シンタ君の高校受験
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    合格体験記は、どん底から這い上がって、難関校に奇跡的に合格したというストーリーが、読者に支持されやすい。

    出版業界でも、本になるのは奇跡の大逆転ものばかりで、勉強ができる子が当然のように難関校に合格した話は「面白くない」と企画段階でボツにされる。

    だが今日私は、力のある中学生が、ぶっちぎりの強さで公立高校に推薦で合格した話を書く。

    これから書く話は、波乱万丈のストーリー性に欠けているかもしれない。だが試験直前に爆発力を発揮する子よりも、誰からも合格確実と言われ、当たり前のように合格を勝ち取る子の方が、人生における努力の総量が多いのは事実だ。

    だから、書く。

     

    中3のシンタ君は、自転車で塾にやって来る。

    尾道は山が海まで迫り、ウナギの寝床のような平地に、長い長いアーケード商店街がある。

    シンタ君は商店街の西の端から、東の端のアーケードが切れ、さらに少し離れた場所にある私の塾へ、自転車で往復する。

    塾が始まるのは19時15分。彼は必ず19時12分から13分、ピタリとギリギリに塾に到着する。時間管理が正確な男だ。

    雨の日はレインコートを羽織る。大雨の日も台風の日も、送り迎えなしで自力で自転車を走らせる。お母さんはシンタ君に雨に濡れても大丈夫なようにレインコートだけ与え、あとは一人で通いなさいと突き放す。

     

    シンタ君は小6の11月に入塾した。

    中学受験はしない、いわゆる中学準備講座に来た。彼は学習塾に通う経験がなかった。

    お母さんと面接に来た時、私はシンタ君を一発で気に入ってしまった。色白で眼光に知性がある。見るからに賢そうな男の子で、緊張して顔が少し赤くなっているのにも好感を持った。

    彼は見た目通り、学力が高かった。彼は尾道の土堂小学校、陰山英男氏が校長を務めた教育水準が高い小学校の生徒だ。彼は土堂の中でもおそらくトップクラス、中学受験をしないのが不思議なくらいだった。

     

    シンタ君は、手つかずの才能だった。12年間の人生で、変にいじられていない。

    彼の頭脳は、作物がまだ植えられていない肥沃な土地だった。小学校の先生とお父さんお母さんが、丹念に開墾した土地だ。そして種を蒔くのは私の仕事。種子を一粒落とすやいなや、ジャックと豆の木のように茎がぐんぐん伸びていきそうだった。

    また、小さい頃からピアノを習い、地域の大会で金賞を取るくらいの腕前で、バッハやショパンを弾く。面影が『ピアノの森』の雨宮にどこか似ている。

     

    私は彼のお父さんお母さんが、個人塾に、そしてこの私に、シンタ君を預けて下った意味を考えた。

    うちの塾は、厳しくて塾長に一癖も二癖もあると毀誉褒貶はげしい塾だ。だが、向学心ある真面目な子には誠心誠意尽くす。シンタ君のお父さんお母さんも、私のそういう点を見込んで入塾させて下さったのではないか。クセは強く劇薬だが、真面目なシンタ君と私なら、相性がいいのではないかと。

    また、シンタ君に大手塾で画一的な教育はさせたくない。大勢の中の一人ではなく、小規模で厳しい個人塾で丹精込めて育てられることを望まれたのではないか。

    彼は首都圏の難関中学にいても遜色ない力を持つ男の子だ。どんな無能な教師でも伸ばすことができる。だが、せっかく個人塾でお預かりした以上、誰にもできぬ成果を出さねばならない。プレッシャーはあったが、それより喜びと希望の方がはるかに大きかった。

     

    私は、シンタ君の力を最大限に発揮させる長期的作戦を練った。

    彼は算数ができた。理系の頭脳だ。小さい頃からパズルを解くのが好きだという。だが、中学受験の複雑な算数を解いた経験がない。

    シンタ君は明らかに将来難関大学を狙える。難関大学理系数学では、中学受験で難しい算数を経験した子が有利だ。中学入学までの4か月、やるなら中学受験算数だ。

    私は普通のカリキュラムを無視して、図形・割合・速度・数の性質など、シンタ君が将来中学受験経験者に負けないように、中学受験算数をやらせた。いわば「擬似中学受験」だ。算数以外は一切やらせなかった。私たちがやってることは、中学準備講座どころか、難関大学受験講座だった。

     

    中学入学まであと4か月の時期、ふつうなら英語の勉強を先取りし中学に備えるのが普通だ。しかもシンタ君は英語未経験者だ。だがシンタ君の頭脳なら、中学入学1か月前から、他の生徒と同じスタートを切っても英語は心配ないと考えた。英語の先取りはあえてやらなかった。中学受験算数に専念させた。

     

    中学生になったシンタ君、勉強は順調だった。

    定期試験では、5教科450〜480点ぐらいをコンスタントに取った。学校のテストだけでなく模試でも高い偏差値を出していた。

     

    彼は自分の成績だけでなく、間接的に、他の塾生たちの成績も上げた。

    塾では定期試験前、勉強会と称して7〜8時間塾にカンヅメにする。シンタ君は塾で拘束しなくても、家で自主的にできる男だ。だが私は他の子と同じように塾で勉強させた。

    その理由は、彼が勉強すると、まわりに凛とした空気を醸し出すからだ。彼の集中力が教室に波及した。シンタ君という生きた手本がいたから模倣ができた。私は自習室の厳粛な空気づくりに、シンタ君を利用した。

     

    彼には集中力がある。シンタ君は数学の問題に熱中すると、シャープペンシルを回す癖があった。勉強に集中し没我の心境にあると、シャープペンシルを盛大に回し始める。

    残念なことに、三者懇談で私がそのクセを指摘しまった。指摘した途端、シャープペン回しはピタリとやめてしまった。彼の集中度を測るバロメーターだったのに、惜しいことをした。

    彼は小学校1年生の時も、集中すると筆箱を噛むクセがあったという。

     

    また彼は、いい意味での臆病さを持っている。勉強ができる子、いわゆる秀才は、シンタ君に限らず臆病さがある。官僚がその典型で、怖い政治家の心理を忖度できる、感度が高いアンテナを持っている。秀才は先生の意図を忖度できるから、学力が高まるのだ。

    私は怒りをストレートに表現する怖い先生だと思う。ある大手塾のマニュアルには、生徒を絶対に怒ってはならないと書いてあるという。もし私がその大手塾の講師になったら、感情表現が「喜怒哀楽」どころか「喜怒怒怒怒怒哀楽」な私はたった10分でクビだ。

     

    シンタ君は3年半塾に通い、そんな一度も私に怒られたことがない。彼は私が怒るツボを知り尽くし、忖度し、避けるのがうまい、他の子を叱っていても自分が叱られたものだと解釈する。「いい子」であり続けることで、自分を磨き上げているのだ。

    また私が彼を叱れないのは、シンタ君は、どこか高貴なバリアがあるからだ。シンタ君はアジアの英明な君主、たとえば昭和天皇やタイのプミポン国王の幼少時のような、勤勉さがもたらす侵しがたい威がある。

     

    それに加え、彼は負けず嫌いだ。

    たとえばある時、私が「定期試験、中学校で1番取れた?」と聞くと、「今回は2番でした」とこたえた。「今回は」の「は」に、彼の負けん気が現れていた。色白の端正な顔立ちなのに、オスの闘争本能を持ち合わせていた。

    負けず嫌いの子は、勉強方法を間違えない。勉強は高い得点を取るためという目標が明確なのだ。だから点数に直結しない無駄で非効率な勉強をしない。

    目標がぼやけている子は、答を写したり、教科書を丸写ししたり、得点に結びつかない勉強を平気でする。時間をつぶすだけの勉強法をとる子は、高得点を取ろうとする野心が欠如している。

     

    だが負けず嫌いな子は、勝つための勉強をする。勝つための勉強とは、ミスを嫌い、ミスを追い詰める勉強である。試験勉強の時に自分がどれだけ理解し、どれだけ暗記しているかを臆病なほど慎重に確かめ、弱いと思った箇所を瞬殺する。

    シンタ君は暗記の時も、時には紙に書き、時には紙をにらめつけ、フレキシブルな勉強法を取る。最善の勉強法は何か絶えず模索する。

    勉強が苦手な子は、「目標があやふやで、勉強法は一定」、勉強が得意な子は「目標が一定、勉強法は変幻自在」なのだ。頂上が見えているから、アプローチを試行錯誤できる。

    正しい勉強法を取る子は、小手先のテクニシャンではない。負けず嫌いの執着心が正しい勉強法を生む。勉強法は人格的迫力と密接に関係がある。

     

    シンタ君の勉強法に無駄がないのは、彼がピアニストであることが大きいと分析する。

    ピアノのミスは、残酷にも即座に音でわかる。ピアニストは「1日怠ければ自分にわかる、2日怠ければ批評家にわかる、3日怠ければ聴衆にわかる」という厳しい世界に生きている。

    ピアノの先生から新しい曲の課題を出される、難曲にチャレンジし、ミスしないために練習をし、微調整をし、納得する音が出るまで練習を繰り返す。ピアノの練習はtrial & errorの反復だ。

    ピアノ上達のノウハウが、勉強で生きた。ピアノのミスを即座に直す習性が、勉強でミスを瞬殺することに結びついたのだ。

     

    これは冗談だが、シンタ君は私のミスも許さない。

    私が授業で間違い計算ミスをしようものなら、それまで静かに授業を聞いていたのに、顔が豹変する。私の間違いを指摘しようと身体が前のめりになり、細い目が見開き、私のミスに対し鋭く突っ込んでくる。その圧力はまるで「モーニングショー」の玉川徹みたいだ。

    彼は自分自身のミスに対しても、内面で鋭く突っ込んでいるのだろうと、おかしくも頼もしかった。

     

    さて、彼の志望校は、尾道北高だ。

    ここで広島県の公立高校入試状況を説明すると、広島県の公立高校は他都道府県に比べ合格しやすい。県が重点的に力を入れている県立広島高校という特殊な高校を除き、尾道北や福山誠之館のような最難関高校でも偏差値50台後半で合格できる。偏差値が70前後なければ最難関校に入れない他都道府県と状況が違う。

    正直、広島県の公立高校受験は牧歌的なのだ。

    広島県東部は際立った私立高校もなく、偏差値75の超難関校である広島大学附属福山高校はあるが、超狭き門だ。附属福山高校から公立最難関高の尾道北まで、偏差値にして20近く差がある。

    ということは、広島県東部の勉強が得意な中学生は、附属福山高校を目標にしなければ、偏差値55の尾道北や福山誠之館を目標にするしかない。中学校のクラスの上位1〜3番の生徒にとって、公立高校受験は刺激がないのである。

     

    シンタ君は成績的にも素質的にも、附属福山高校に合格する力は持っている。だが尾道から福山は遠く、尾道北高は家の近所なので、通学時間を考慮して尾道北高を選んだ。私も賛成だった。

    また附属福山高校は自由な校風で生徒を縛り付けず、逆に尾道北高は課題が多く厳しい。入学してからの安定性では尾道北高に軍配が上がる。シンタ君の生真面目な性格は、尾道北高に合っていると判断した。

     

    尾道北高はシンタ君にとって、絶対合格できるラインにある。彼の偏差値は70前後、偏差値55の尾道北は絶対安全圏だ。

    シンタ君の公立高校受験を衆議院総選挙にたとえれば、自民党の大物政治家、たとえば安倍晋三や麻生太郎や石破茂が、小選挙区で絶対的に強いのと同じことだった。

    高校受験が無風状態だと、潜在能力が生かしきれない。一流アスリートの卵に対して、学校の体育の授業で我慢しろと言っているようなものだ。私はかつて大手塾に勤めている時、先輩の講師から「できる子には120%の課題を与え、退屈させてはいけない」と教えられた。

    才能には負荷をかけないと「もったいない」と思った。

     

    そこで私は、中3夏休みから、シンタ君に高校英語を先取りさせた。

    彼の高校受験が無風状態なのを利用して、中3終了時にセンター試験で6割取れるくらいのラインまで、文法・単語・読解の三位一体で力を伸ばそうと考えた。

    広島県の公立高校入試が緩いのを逆手にとり、高校英語を先取りし、フライングする作戦だった。

    読解は『速読英単語・入門編』『速読英単語・必修編』、単語は『システム英単語』を使用した。彼は数学ができるので、文章構造の把握は抜群だった。主語と動詞が離れていても、複雑な挿入や倒置があっても見抜けた。

    だが英単語は苦しんだ。「解釈は成り易く、単語は成り難し」だった。膨大で難解な高校英単語に、さすがのシンタ君も四苦八苦していた。

     

    私がシンタ君に中3夏休みで英語を先取りさせたのは、半年後の高校受験でなく、3年半後の大学受験が心配だったからだ。私は大学受験に関して、病的な心配性なのだ。

    シンタ君は理解力が抜群に秀でていたが、弱点があるとすれば暗記力だった。もし彼が万が一難関大学に不合格になる事態になったら、原因は英単語のストック不足になるだろうと予測した。数学は天才型だが、英単語暗記は泥臭い努力型に徹しなければならない。

    私は英単語を語源・語呂を駆使して説明した。執拗に反復もした。シンタ君は英単語のストックを確実に増やし、『システム英単語』の1章・2章・5章までほぼ完璧に暗記することができた。彼の努力で、私の大学受験への心配も薄らいだ。

     

    シンタ君は予想通り、尾道北高に合格した。推薦だった。

    合格した勢いで、体験記を書いてもらった。

     

    ■シンタ君の合格体験記

    僕は、小学6年生の時にUS塾に入塾しました。

    中学校に上がる前には「apple」すら書けず、僕の書ける英単語は「UFO」だけでした。

    bとdを何度も間違え、「自分には英語の才能がないんだろうか」と、これからの中学校生活に対して大きな不安を感じていました。

    ですが、笠見先生の指導のもと、「いくつかの単語を数十分で覚えて、その後テストをする」というサイクルを何度も何度も繰り返し、単語を大量にインプットしていくうちに、スペルミスなども少なくなり、英語の定期テストでも1年生の1学期から良い点数をとり続けることができました。

      そして3年生の春、英検準2級を受けたいと先生に伝えた時には、試験日まで残り一か月しかなく、なんの準備もできていなかった僕に先生は高校内容を短期間で熱心に指導してくださり、自分でも驚くことに、自己ベストのスコアで合格することができました。

    その後は高校内容をどんどん進めていくようになりました。

    高校の英語はとても複雑で、知らない単語や文法も多く、なぜその答えになるのか分からなくて、嫌になりかけたこともありました。

    辞書で以前に何度も調べている単語が覚えられなかったり、知らない単語がたくさん入った文章だと辞書を使っても意味がよく分からなかったりして、苦戦していました。

    ですが、パソコンで並べ替え問題を解いて文法を定着させる方法や、「速読英単語」の英文を先生と一緒にひたすら読み、訳していく方法、「システム英単語」で短文ごと単語を覚えるなどの方法で少しずつ単語が身についていき、長文を読むこともだんだんと楽しくなっていきました。

      先生は、個人塾の利点を最大限生かして、一人ひとりに適切な指導をして下さいます。

    また、塾内は空気がとても張りつめており、私語などは一切ありません。ぼくは、他の塾は知りませんが、ここまで静謐な環境の塾はそう無いと思います。この環境も、学力を伸ばせる要因の一つだと考えます。

    定期試験前もこの緊張感がある状態で長時間自習をしたことが、選抜気任旅膤覆砲弔覆ったと思っています。

    勉強に対する姿勢にはとても厳しい先生ですが、生徒に実力をつけさせるためです。

    本当に頑張った時には「よくやった!」と本気で褒めてくれます。

    もしUS塾に行っていなければ、僕はもっと勉強をなめていたと思います。そして、適当なところで満足してしまったと思います。今の僕は絶対になかったと断言できます。

      僕は、US塾で勉強をがんばってきて本当に良かったと思っています。

    向学心があれば、この塾が必ず学力と人間性を大きく成長させてくれます。

    僕には将来、建築設計士になりたいという夢があります。 僕の尊敬する坂茂さんという建築家は、大型の高級な建築物に限らず、例えば被災地などに、コストが少なく、安全性も高い紙でできた素材の避難所や仮設住宅を考案、設計しています。人に愛される建造物とは規模やかけたコストとは別のことであるという話を以前に読み、感銘を受けました。

    人の暮らしを少しでも豊かにしたい、という思いをもって仕事をする人は尊い生き方をしていると思います。

    僕は将来、自分の利益だけを追求するのではなく、人や社会のためを考え、仕事をする人になりたいです。

     

    シンタ君は誰よりも早く、2月初旬に高校受験から解放された。だが、シンタ君は勉強の手を緩めなかった。

    私は彼に、中学卒業までの1か月弱で、『DUO』の560の例文を丸暗記することを指示した。無茶振りである。

    だが、3年後、シンタ君の大学受験、英語で合否を決めるのは英作文だ。文章のストックを積み上げておけば楽になる。

     

    普通の中学生は、高校受験合格から入学までは、受験で燃え尽き遊ぶ時期である。この時期に勉強したら差をつけられるのはわかっているが、過酷な高校受験の後で、さらに勉強を続けることは、現実的には難しい。

    先生の側としても勉強してほしいのは山々だが、強制的具体的指示までには至らない。「かわいそう」と甘くなってしまう。

     

    しかし、私はシンタ君に関しては容赦なかった。

    高校受験が終わるやいなや『DUO』例文丸暗記という過酷な課題を指示した。『DUO』はTOEICやTOEFLにも使える、大学受験の範疇を超えた難しい例文集である。挫折率は極めて高い。

    だが、シンタ君は稀有の才能がある。勉強すればするほど彼が幸福な人生を送る100%の確信がある。

    極端な話、高校時代勉強漬けで、暗黒の青春時代を送ってもいいと思う。高校3年間勉強すれば続けるだけ、将来の見返りは大きい。私はシンタ君に『DUO』を丸暗記させることに、何の躊躇もなかった。

     

    シンタ君は私と過ごした3年間、どんなに難しく膨大な課題を出しても、嫌な顔一つしなかった。顔色一つ変えず素直に受け入れた。だから私も出し甲斐があった。

    彼は自分の目標が高校受験ではなく、大学受験であることを熟知していた。『DUO』例文暗記も、当然のように受け入れた。土日は1日6時間塾で拘束し、家でも暗記するようシンタ君に命じた。

    3月16日、ラフではあるが『DUO』例文暗記、『速読英単語・必修編』を完走した。挫折率が高いこの2冊をやり遂げ、しかも中学生のうちに終わらせたことは、大きな自信につながるだろう。

     

    シンタ君は将来、ひとかどの人物になる。

    そういえば、こんなことがあった。

    彼が小6の時、授業前に私は三原のイオンに買い物に行き、トイレで意識を失った。1時間くらい気を失っていた。気づいたら授業時間は過ぎていた。シンタ君たち中1の生徒が教室で私を待っている。

    シンタ君は私の不在にトラブルのにおいを感じ、私の家の電話番号を電話帳で調べ、私の母親に連絡した。

    そして同級生に先生が来るまで待とうと指示してくれ、私が急いで教室に駆け込んだ時、彼らは静かに自習をしていた。小6のシンタ君の冷静な判断がなければ、教室は混乱していただろう。危機の際、臨機応変に機転がきき、実行力がある男である。

    私は彼がただの勉強秀才でないことを悟った。

     

    シンタ君はまだ東京へ行ったことがない。尾道の商店街を自転車で往復する狭い世界しか知らない中学生だ。彼はまだ自分が都会で通用することを知らない。だが、19過ぎたら都会へ海外へと羽ばたく。

    あとはせっかく暗記した『DUO』や『速読英単語』を反復することだ。暗記したのにドライアイスのように消えたらもったいない。英語力は同じ文章に何度も触れることで上がる。

    シンタ君が『DUO』や『速読英単語』を血肉化したら、彼の一生は変わる。同時に、彼が建築家になれば、彼が設計した安価で住み心地いい住居が、被災者や発展途上国の貧困層の人生や生活を変える。

    将来に確信をもって「暗黒の高校時代」を送ってほしい。

     

    シンタ君は体験記で「僕は将来、自分の利益だけを追求するのではなく、人や社会のためを考え、仕事をする人になりたいです」と書いている。この子には、その能力も資格もある。

    | uniqueな塾生の話 | 14:16 | - | - | ↑PAGE TOP
    アメフト野郎!by航太郎(4)
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      岡山大学アメフト部 BADGERS#7 矢野航太郎

       

      前回までのあらすじ

      アメフト野郎(1)

      アメフト野郎(2)

      アメフト野郎(3)

       

      ■和歌山大学戦 つづき

      岡山21-28和歌山 BADGERSの7点ビハインド。

      残り時間5分強。

      4thダウン、ギャンブルを選択しランプレーで攻撃権更新。

      またしても4thダウン、パスでフレッシュ獲得。

      攻撃権を更新できなければ負けがほぼ決まる状況で、つまり2部昇格への道が絶たれる状況で、二度も立て続けにギャンブルを成功させた。執念といか言い様がない。

      いつ途切れても不思議ではない幸運の連続だった。

       

      ここまで前進できたのはQB沖西の活躍が大きかった。

      ランニングバック陣が脳震盪や骨折で試合に出場できない中、ランでボールを前に運べるのはQBしかいなかった。

      勝負どころで人一倍の負けん気が存分に発揮された。タックルに来た相手ディフェンスをグラウンドに叩きつけ、グイグイ前進してく。

       

      沖西は1部でもやっていけるポテンシャルを持っている、と、あるコーチは言う。誰もが認めるスーパーアスリートだ。頭でイメージしたことをいとも簡単にやってのけ、周りを驚嘆させる。負けず嫌いでメンタルも強い。この瞬間、2年生ながら間違いなくチームを鼓舞し、奮い立たせていた。

       

      しかし、沖西が一人でチームを動かしていたのでは決してない。けが人も、試合に出られない選手も、サイドラインから声を張り上げてフィールド上のプレーヤーの背中を押していた。

       

      例えば、昨シーズン2年生の石川晋伍、

      ごちん。広島出身、沖西と同じ国泰寺高校野球部。カープの大ファンで練習後、一目散にカープの試合結果を確認する。肩の脱臼に苦しみ、長くリハビリ生活を続けてきた。面白いとは言いがたい一発ギャグのレパートリーが豊富でチームのムードメーカーだ。ウォーミングアップの時の声出しは毎日ごちんから始まる。この日も緊迫した雰囲気に委縮することなく声を出し続けていた。

       

      次に当時1年生の玉井慎吾、玉ちゃん。

      体のパーツすべてが丸い。千と千尋の神隠しに登場する緑のだるまの様な体型をしている。沖西にしばしば乳首を摘まれて悶絶しているのが微笑ましく、誰からも愛されるキャラだ。1年生でフィールドに立つ事は出来ないが、よく通る声を目いっぱい張り上げていた。

       

      逆転勝利、入れ替え戦決定戦、入れ替え戦、来年の二部での勝利と続いていく道を信じて、コーチ、マネージャー、選手含めてBADEGSR相手と全身でぶつかっていた。

       

      「自分らで考えて、追い込んで、ついにここまで来た。俺らのほうが努力量は勝っとる。俺らが負けるはずがない。」キャプテンの試合前のモチベーショントークが蘇ってきた。

      沖西が繋いできた攻撃権を途絶えさせる訳にはいかない。逆転以外ない。

       

      この攻撃シリーズで逆転するには8点が必要だ。

      タッチダウンの6点とキックの1点では同点止まりで、タッチダウン後にゴール前3ヤードから攻撃で2ポイントコンバージョンを成功させて合計8点取るしかない。

       

      冷静に考えて、逆転するのは非常に難しい。

      NFLでは統計上、100本タッチダウンを取ったとしたら、トライフォーポイントの内85〜90がキックで、残りの10〜15が2ポイントが行われるとされている。さらに2ポイントコンバージョンが成功する確率は50%弱。

       

      ゴール前3ヤードからのオフェンス、1stダウン。

      だがランプレーで3本止められた。

      ゴール前1ヤードから、この攻撃シリーズ3度目の4thダウンギャンブル。

      ここで点が取れなければ、残り時間を考えても岡大に攻撃権が返ってくるかわからない。返ってきたとしてもけが人も多く、満身創痍の状態で得点できるかは不確実。

       

      仕留めるのは今だ。

      ゴール前1ヤードはエンドゾーンがすぐそこに見えているのにディフェンスが中央を固めるため、見た目の距離感以上に壁をこじ開けるのは難しい。

      ここで岡大タイムアウト。

      サイドラインと、どのプレーでタッチダウンを取るか最後の決断を下した。

      選手もコーチも頭にあるのは一つ。

      シーズン中、いつか窮地に追い込まれた時のために温存してきたプレー。

      このプレーが成功すれば6点追加で1点差まで追い上げれる。

       

      ボールを受けた。

      前に体を伸ばすだけ。

      だが、ディフェンスのスタートもよく、上も前も塞がった。

       

      体が咄嗟に回転した。

      倒れこんだ先はエンドゾーンの中。

      何がどうなったのかはわからないが、とにかく自分はエンドゾーンの中にいる。

      タッチダウンだ。

      やった、タッチダウンだ。

      可能性が見えてきた。

      岡大27−28和歌山 BADGERS1点ビハインド。

       

      あと1点。

      PAT(Point After Touchdown)で狙うはもちろん、2ポイントコンバージョン。

      同点にしても次の攻撃シリーズで得点できる力は残っていない。

      逆転するには勢いがある今しかない。

       

      コールされたのはシーズンで初めて使うプレー。

      パスプレーだが、投げられる状況に無ければ、自らエンドゾーンまで走ることもできる。

      単純なプレーだが使う局面は必ずシビアだから、飽きるほど、何度も反復してきた。

       

      Ready set hut!!

      ボールがスナップされた。

      右にロール。

      けが人の影響でランニングバックの位置には初めてこのプレーを合わせる選手が入っていて、上手く合わない。レシーバーはカバーされていて投げられない。

      ランだ。

      僕はボールを持ち替えた。

      ボールは僕の腕の中にある。観衆の視線もいま、僕が抱えている物体にある。

      僕はボールを、いつもより強く抱きしめた。

      空襲で乳飲み子を抱えて猛火から逃げる母親みたいに、ボールを抱えた。

      このまま走りきれば2点。大逆転だ。

       

      下から手が伸びてきた。

      俺に触るんじゃねぇ。なんとかかわした。

      視線の先に赤いユニフォームが良いブロックで相手を抑えているのが見えた。

      俺が走るコースはあの背中だ。

      間に合ってくれ。とにかく我武者羅に走った。

      そして。

      エンドゾーンまでたどり着いた。

      タッチダァーーンッ!!

       

      漂流中に有人島に上陸できたような、絶望の淵から生を実感したような気分だった。

       

      岡山 29−28 和歌山 BADGERS1点リード 残り時間4分22秒。

       

      俺がやった。

      俺が決めたんだ。

       

      アメフトの神様がいるとすれば来年は絶対に2部で勝負しろよというBADGERSへのメッセージだったかもしれないし、BADGERS39年の歴史に力が宿るとすれば、それの全てがボールを抱えていたに違いない。

       

      だが試合はまだ4分半残っている。

      和歌山としては逆転するのに十分な時間だ。

      タッチダウンの興奮が冷めないうちに、キックオフに向かった。

      少しでも時間を消費し、少しでも敵陣深くボールを止めるために、相手にリターンさせないことが大事なキック。

      ゴロのボールを蹴った。

      リターナーの手元からすり抜け、点々と転がった。

      狙い通り相手にリターンさせなかった。

      やはり今日のBADGERSは勝負強い。

      気は抜けないが勝てる気がした。

       

      サイドラインに帰り、オフェンスコーディネーターと抱き合った。

      普段冷静なコーチのガッツポーズが見えて、タッチダウンと同じぐらい嬉しかった。

      キッキングコーディネーターとも抱き合った。

      二人とも泣きそうだった。

      つられて僕も泣きそうになった。

       

      だが泣くのはまだ早い。

      泣くのは時計が0:00になってからだ。

       

      ディフェンスを信じて、ボールを目でおった。

      ジリジリと前進されたが、ファンブルフォースからのリカバーで攻撃権を取り返した。最後の最後にディフェンスでもビッグプレーが生まれた。

       

      残り時間を消費し、時計が0を示した。

      BADGERSは勝った。

      選手たちは泣いていた。

       

      岡大BADGERS 29−28 和歌山大 BLIND SHARKS

      1点に泣いた天理戦から1点に歓喜した和歌山戦。BADGERSが見せた成長劇だった。

      2部昇格まであと2勝。

       

       

      ■入れ替え戦出場校決定戦、vs大阪芸術大学VIPERS

      和歌山大学戦後、満足感が体を覆い、燃え尽き症候群のような感覚に襲われた。

      激闘の末手にした勝利。これ以上何もいらない気分だった。

      これまでずっと彼女のいなかった男子が大学生になって人生で初めて彼女ができた時のような気分だ。

      だが、まだ戦いは終わっていない。

      2部昇格まで2勝。

       

      エキスポフラッシュフィールドで試合がある時は、朝7時過ぎに岡山駅を出発する。姫路で乗り換え、新快速で大阪まで行って、普通に乗り換え茨木まで。茨木駅からはタクシーでフィールドまで移動する。

      朝はおにぎりとパンで糖を補給し、活動するエネルギーを摂取する。電車の中では100%のグレーピプフルーツジュースを飲む。試合会場に到着後、第1試合を見ながらコンビニで買ったみたらし団子を3本食べる。

      これが僕の試合の日のルーティンだ。

       

      1クオーター残り7分、4thダウンでフレッシュまで3ヤードほど残った。

      26ヤード地点。

      43ヤードのFGトライ。

      僕のキックの出番だ。

       

      タッチダウンは取れなくても緊迫した試合では先制点が大事。

      敵の戦意を多少なりともそぎ落とせる。

      失うものがないチーム、しかも関西人が多く、乗らせると怖い。

       

      初戦の大阪工業大学戦では48ヤードのFGがショートして失敗していたが、5ヤード前のこの地点なら自信があった。練習でも成功する確率が高い距離だ。

      キックで先制して、楽にゲームを進めたい。

      タン、タッ、踏み込んで、振りぬく。

      いつものリズムでボールを蹴った。

      弾道が少し低かったが、ボールはポールの間を突き破った。

      BADGERS 3−0 VIPERS

      知り合いの方が、敵スタンドで観戦した試合は負けないというジンクスを守り、大芸側のスタンドにいたらしいが、それまでの関西ノリの明るさが、このFGを機に消えたそうだ。

       

      4年生は負ければ最後の試合。大阪芸術大学には試合中笑顔も見え楽しそうにアメフトをしている印象を受けた。そんなチームから戦意を少しでも削ることができたなら、キックの効果は3点以上に大きい。

      モチベーションをいかに維持するかが難しい試合だったが、BADGERSはその後も得点を重ね、結局29−7で勝利した。

       

      岡大BADGERS 29−7 大阪芸術大学VIPERS

      入れ替え戦出場権を勝ち取った。

      2部昇格まであと1勝。

       

      ■入れ替え戦 vs大阪学院大学PHOENIX

      この試合に勝てば2年ぶりの2部昇格。

       

      バジャーズはこれまで大阪学院大学に勝ったことがなかった。

      大阪学院は、2部で優勝し1部との入れ替え戦に出場したこともある強豪。3部に降格したことはなく、入れ替え戦にかけるモチベーションも高いはずだ。2015シーズンこそ2部で最下位に沈んだが、シーズンが深まるに連れて確実にチームを完成させてくる。

       

      12月12日11:00キックオフ。晴れ。

      始まってみると人数の差は明らかに得点に現れた。大阪学院はオフェンス、ディフェンス、キッキング全て全力でできないので、どこかで手を抜く瞬間が来る。実際に相手は疲弊していた。試合前にはもう、シーズン中に負った怪我で主力選手が出場できない状態になっていた。

       

      第4クオーター残り10秒、BADGERSサイドのスタンドからカウントダウンの

      声が聞こえてきた。5,4,3,2,1,0。

      フィールドでは大きなビクトリーフラワーが咲いた。

       

      終わってみるとBADGERSの圧勝だった。

      岡大BADGERS 42−13 大阪学院PHOENIX

       

      2部昇格。

       

      和歌山大学戦後は泣いていたが、この時は泣いている人が少なかった。

      やりきった清々しさと、2部で勝ってこそこのチームの目標が果たされる自覚、責任、やっちゃらーという来季への意気込みが表情から見て取れた。引き締まったかっこいい表情だった。

       

       

      ■アメリカアナグマ、ハンディを乗り越え、その先へ

      BADGERSは2004年以来2部で勝利していない。2部には昇格できるものの、リーグ戦で全敗し、3部との入れ替え戦に回り3部に降格するというシナリオが常であった。その間、新入生の勧誘に苦労し、部員数が少ない時期もあった。

      そこで、3年前から特に新入生の勧誘とサイズアップの2点において取り組み方法を見直し、ここ3年はプレーヤー20人以上の入部を達成し、サイズにおいても2部の平均に達した。

      今年は戦力的にも充実、オフェンスのエースと呼ばれるQBには沖西、WRに高森、RBに中、土井田と活きのいい3年生が揃い、それを生かすOLにも経験のあるプレーヤーがいる。

      ディフェンスにはDL窪田、LB山本、SF松川と要所に強力な選手がいる。

      今シーズン2部での勝利を達成し2部に残留すれば、2部上位定着、1部昇格というBADGERSの長期目標も現実的になってくる。

       

      しかしBADGERSの下馬評は低い。

      関西連盟の多くの人が岡大は3部との入れ替え戦に回ると予想しているそうで、また2chの関西学生アメフトのスレでも岡山大学は最下位と予想差されている。

      BADGERSは今年創部40周年を記念してユニフォームを一新した。赤から青へと大幅な変更だ。新ユニフォームに身を包み、関西の連中を驚愕させる所存である。

       

      全てはBADGERSのスローガンであるこの一言に集約される。

      何があっても這い上がる。挑戦を続ける。

      Challenge on!!

       

       

       

       

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      アメフト野郎!by航太郎(3)
      0


        ■NFLはすべてが桁外れ
         
        イギリス留学中、ロンドンへアメフト観戦に出かけた。
        年に3回、ロンドンでもNFLの公式戦が行われる。
        ロンドン中心部から少し北にはずれたWembley Stadiumに到着した。
        イングランドサッカーの聖地であるが、この日はNFLのお祭り模様。地下鉄で僕のお気に入りチームのジャージを着ている人をたくさん見かけた。
         
        スタジアム外で行われているイベントには目もくれず、スタジアムに入った。
        エスカレーターで5階席まで上がり腰掛けた。グラウンドではスペシャルチームの選手たちがウォーミングアップをしていた。
         
        突然、目の前を何かが通り過ぎる。
        鳥かな? 
        鳥ではない。
        すぐに正体がわかった。
        パンターが蹴りあげたボールだった。
         
        ボールは5階席の僕の目線まで上がったあと、見事な放物線を描いて、選手が豆粒のように見えるグラウンドの谷底へと消えていった。
        NFLのパンターはとんでもなく高いボールを蹴るのは知っていたが、生で見て驚愕した。
        相手のプレッシャーも試合の緊張感もないリラックスした状態だと、ボールを自由自在に操れるらしい。どのように蹴ったら、こんな高さを出せるのか理解できなかった。
        この高いパントを見られただけでも、それなりの値段がしたチケット代を回収できたなと思った。
         
        ところで、僕がアメリカンフットボールというスポーツを最初に意識したのは高校生の時だった。同級生のサッカー部のキャプテンがNFLの大ファンで、シーズンが始まると毎日アメフトの話をしてくる。何がそんなに面白いのかを聞いても、百聞は一見に如かずだと、まずは試合の映像を見てみろと言われるだけだった。
         
        その頃はサッカーに一途だったので、半信半疑のまま、テレビでNFLの試合を見た。すぐに人間離れしたプレーに圧倒された。
        人を殺しに行くようなタックル、50ヤード以上のロングパス、腕の太さ、首の太さ、足の速さ、何もかもが人間離れししていて、
        「なんだ、このスポーツは!」
        と感じた。
         
        まず、運動神経が凄い。
        相手に触れること無く左右に揺さぶるだけでディフェンスを地面に倒すステップ。地上戦が拮抗したと感じたら、派手な空中戦。QBは弾丸のようなボールを正確なコントロールでディフェンスの間を通し、レシーバーに届ける。レシーバーは垂直跳び1mの身体能力を活かしてディフェンスの頭の上でキャッチする。
         
        スピードが凄い。
        身長2m体重100kgの選手が陸上短距離のスプリンターと同じくらいのスピードで走り、後ろから飛んで来る楕円の球をキャッチした瞬間、ディフェンスがキャッチした選手めがけて猛スピードでタックルをかます。その衝撃は車同士の交通事故にも匹敵するとも言われている。
         
        体格が凄い。
        身長2m体重140kgの選手がフィールド中央でぶつかり合う。ラインマン同士のぶつかり合いは、一つの土俵の中で5人対4〜7人の選手が作戦に基づいてチーム戦で相撲を取っているようなものだ。元横綱・武蔵丸も学生時代アメフトに青春を燃やした。アメリカのプロレスラーにはNFLに入ったものの怪我で試合に出場できず、数年で引退しプロレスに転向した人が多いそうだ。
         
        プレーも凄いがスタジアムも凄い。
        収容人数が多く、ビジョンがやたらとデカい。外から見るとスタジアムだとは思えない近代的な建造物のものも多い。
        僕が好きなスタジアムは、グリーンベイ・パッカーズのホームスタジアムであるランボー・フィールドだ。8万人以上収容できる巨大なスタジアムで、典型的なボウル型がシンプルで美しい。この形が好きすぎて、スタジアムの画像を検索して眺めながら何時間でも楽しめる。
        パッカーズはウィスコンシン州、ミシガン湖の北東部に位置する港町、グリーンベイを本拠地とする。NFLのシーズンは9月から翌年2月ころまでなので、冬は極寒の中で試合を行うが、どんなに寒くてもスタジアムを埋め尽くすファンのチーム愛は無尽蔵だし、冬にきれいに芝生を手入れするグラウンドキーパーの努力は計り知れない。

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        ランボー・フィールド
         
        またパッカーズと同地区で争うミネソタ・バイキングスは新スタジアム”US Bank Stadium”の完成が間近だ。
        近代的な外観で、屋内スタジアムながら、太陽光をふんだんに採光できるようにしてある。シートはチームカラーの紫で、スコアボードも超巨大だ。
        バイキングスには東京ドームのようなドーム球場があったのだが、数年前の大雪の際に、積もった雪の重みで屋根が潰れてしまった。修繕はしたものの、それを機に新スタジアムを建設する計画がスタートした。
        ミネアポリスは寒く、12月にはマイナス10度で試合をすることも珍しくない。選手は白い息を吐き、観客は目出し帽を被っている。
        このスタジアムではQBのミススローやキッカーが短い距離のキックを失敗することがあったのだが、僕は寒さも少しは影響していると考えている。これからは最新の空調設備が整った屋内スタジアムが完成するので、より質の高い試合が見られるのではないかと期待している。

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        US Bank Stadium
         
        スタジアムに響くのは、熱狂的ファンの声援である。
        「クラウドノイズ」をご存知だろうか?
        アメフトでは作戦の伝達は確実に行わなくてはいけない。1つのサインを聞けば11人全員が自分の役割を把握できるようになっているため、聴き逃したり、聞き間違えたりするとプレーが成立しない。
        クラウドノイズとは、敵チームの攻撃の際にプレーコールの伝達がしにくくなるように観客が大声を張り上げることだ。クラウドノイズでアウェイチームのオフェンスは混乱するため、観客の発するクラウドノイズは12人目のディフェンスと呼ばれている。
        人工的にスピーカーで音を発したり、ブブゼラのような楽器を使ったりすることは禁止されている。NFLにはクラウドノイズの大きさを競ったギネス記録があり、シアトル・シーホークスとカンザスシティー・チーフスがNFL一うるさいスタジアムの称号を巡って争っている。
        チーフスは142.2デシベルを記録した。これはジェットエンジンが間近で回っているほどの騒音だという。耳がおかしくなりそうだが、一度経験してみたい。
         
        高校時代からNFLに関してはある程度知識があったが、サッカーしかやったことのない僕が、まさか大学でアメフトをプレーするとはその時は考えもしなかった。


         
        岡大アメフト部・秋シーズン開幕
         
        僕は英国留学中もアメフト部に入部し、イギリス人とアメフトをした。 
        イギリス人はプレー中に、良くも悪くも1プレー1プレーに一喜一憂する。ともすれば泣きそうになる時もある。
        NFLやアメリカのカレッジフットボールの試合を見ていても、感情の出し方は激しい。
        良いプレーをした選手に対しては手荒く祝福し、パスをインターセプトされたりすると怒り悲しむ。相手のラフプレーに対しては、チーム全員が声を荒げる。タッチダウンしたり、QBサックをしたりしたあとは、ダンスなど独特の動きで事自己をアピールする。
         
        一方で、帰国して初めてスタンドから観戦したBADGERSの試合では、淡々とプレーしていて、冷静さを通り越して淡白な印象を受けた。その時、BADGERSをサイドラインが“うるさい”チームにしたいと思った。
         
        2016年9月、僕にとって2回目の関西リーグが幕を開けた。
         
        2015年現在関西学生リーグ1部は立命館大学、関西学院大学、関西大学、京都大学など8校で、2部はA ブロックとBブロックそれぞれ6チームの12チーム、3部はAからDまでそれぞれ6チームの24チームが所属している。
        上位グループの最下位と下位グループの1位が入れ替え戦を行い、下から二番目の大学が下位グループの2位と入れ替え戦を闘うシステムになっている。上位校が勝てば残留、下位チームが勝てば入れ替わりが起こる。
         
        2015シーズン、バジャーズは3部で戦った。
        目標は2部昇格である。
        岡大BADGERSが属する3部Bブロックは、天理大学、大阪経済大学、大阪市立大学、大阪工業大学、和歌山大学、岡山大学という組み合わせになった。


         
        下馬評は次の通り。
        圧倒的な攻撃力をもつ天理大学、
        一人ひとりの体が大きい大阪経済大学、
        ランパスのバランスが良く、岡山大学と同じようなチームの和歌山大学、
        この3チームが優位に立ち、その中でも天理大学か和歌山大学が抜けそうだというのが、シーズン前、関係者の予想だった。
        わが岡大は天理、和歌山に次ぐ3番手か、攻撃次第では優勝争いに絡むという評判だった。下馬評は必ずしも良くない。2部昇格するには、大阪工業大学と大阪市立大学戦での取りこぼしは絶対にやってはいけない。
         
        2015シーズンのBADGERSの目標は、2部昇格だけにとどまらず、2016シーズンに2部で勝つチームを作ること。
        現状としてBADGERSは毎年2部と3部の入れ替え戦に出場していて、その殆どで入れ替わっている。
        3部では王様だが、2部では勝てないエスカレーター状態から脱出したい。


         


        第1節 vs大阪工業大学
         〜オフェンスが本調子には遠い〜
         
        シーズン初戦vs大阪工業大学ROWDIES
        どんなスポーツでも、プロ・アマチュア関係なくリーグ戦の初戦は難しいというが、それを実感した試合だった。
        大阪工業大学は学生スタッフがおらず、選手の人数も少ない。体のサイズやプレーのスピードでも勝っている。
        言い方は失礼かもしれないが、格下相手に大差で勝たないといけないという不要な使命感や、プレッシャー、気合が空回りした試合だった。
        特にオフェンスの動きが固く、リズムに乗れないまま1本のタッチダウンを取っただけで前半を終了した。前半終了時点で岡山大7-0大工大。
        まずい。
        だが、ハーフタイムの修正を経てなんとか後半立て直し相手を突き放した。
        なんとか勝てた。
        ディフェンス陣の奮闘で勝てた試合だった。
        オフェンス陣にとっては、今日よりも強いディフェンスに対して前進し得点を重ねることができるのか、パスを決めることができるのかなど、2節以降に不安を残す結果となった。
         

        第1節 岡大 23−7大工大

         


        岡大アメフト部・ディフェンス陣紹介
         
        大工大戦で相手の得点を死守した、そして2016シーズンのキーとなりそうな岡大のディフェンスから3人、紹介しよう。
         
        まず、2年生DL#52西谷俊輝。
        DLはアイシールド21の栗田がディフェンスの時やっているポジションだ。
        西谷は目が大きく顔立ちがはっきりしているので、先日、大学の講義で本当に留学生に間違われたそうだ。ラグビーサモア代表にいそうな面構えだ。
        入部当初から筋肉の鎧を身にまとっていたが、1年間のトレーニングで169cmながら105kgまで体重が増えた。
        トレーニング棟でベンチプレスをするときに100kgのバーベルでウォーミングアップをしているのには一緒にトレーニングをして下さっているOBさんも感心していた。体の全てが太く、雪山を転がしたら綺麗な雪だるまになりそうな体型だ。
        体重100kg越えといっても、世間が想像するような脂肪たっぷりのプヨンプヨンな体ではなく、引き締まった100kgなので短距離を走らせても速い。また後背筋が大きいので直立した時に腕が閉じない。さらに僧帽筋が発達しているのと首が太いのとで、首が無いように見えるのはまさにラグビー選手のようだ。
        物怖じせずぶつかっていける性格はディフェンスにもってこいで、天性の低さも兼ね備えている。低いと相手の下に潜り込めるのでぶつかったときに相手をあおりやすい。
        今シーズンはアメフト野郎(2)で登場した窪田とともに相手オフェンスを破壊することが期待される。
         
        LB#47山本晃己は今年のディフェンスリーダー。アイシールドで言うと王城ホワイトナイツの進清十郎。
        山本は多くの幕末の志士たちを産んだ山口の萩出身。高校時代は柔道部で、いかつい体と顔をしているのとは裏腹にいじられ役で、後輩からもからかわれる。
        いつもご飯を作ってくれる彼女がほしいと叫んでいるが、米の上に人参を一本丸ごと置いてそのまま炊飯した写真をツイートした時には流石に心配にもなった。たいていのいじりには笑って受け入れる山本だが、唯一、髪の毛を触ると怒る。ちりちりなのを気にしているらしく、少しでも触ると襲いかかってきそうな目をするから怖くなってやめる。
        山本は今年ディフェンスリーダーに就任した。今は負傷中でリハビリしているが、シーズンにはピークを持ってくるに違いない。
        柔道部出身の山本は入部当初、足も遅くボールを扱うのが苦手で苦労していたが、文字通り雨の日もラントレをした日も毎日ひたすら走り続けた。もともと柔道で鍛えた筋肉隆々の肉体だったが、弛まぬトレーニングで筋肉が何倍にも膨れ上がった。
        激しいタックルで相手オフェンスを跳ね返してほしい。そしてチームが苦しい時、重い空気をブレイクするプレーを見せてくれるはずだ。
         
        最後に2年生DB#17戸田和真。
        子犬のような顔をしていて、いかにも女子からモテそうな雰囲気がある。野球部出身で先輩にいじられるが、それを楽しそうに受け入れる。厳しい野球部で鍛えられてきたんだということが伺える。
        僕が彼に活躍してほしい理由が一つある。それは、彼が僕と同じでアトピーを持っているということだ。彼がたまに痒そうにしているのを見ると辛そうだなと思うが、彼は笑顔でそれを弾き飛ばし痒みになんか負けない強い意志を持っている。
        1年間で10kg以上体重を増やし、2部で戦える体にはなった。BADGERSのCBの中では身長があり、また跳躍力もあるのでレシーバーとの競り合いにも負けない。ただ今はまだ恐る恐るプレーしている時があるので、相手を怖がらずに思いっきりよく楽しんでディフェンスしてもらいたい。ミスっても上回生がカバーするから。


         
        アトピー・アレルギーでもアメフトはできる
         
        アトピーだが、僕や戸田のように重度のアトピーの人がアメフトをするのは正直辛い。
        アメフトではヘルメットを被り、ショルダーパッドを装着する。激しい運動で大量に汗をかくが、防具をつけているので外に蒸発せず蒸れる。すると肌が猛烈に痒くなる時がある。しかし防具をつけているのでかけない。結果、痒いままイライラして集中できなくなる。
        雨の日に練習すると練習後、激しい痒みが襲ってくる。濡れた肌が乾き始めた時の痒みは簡単には治まらない。
        アトピーはすぐに完治するものではない。上手く付き合っていかなくてはいけない。その方法として、僕は練習中やアフター練習に入る前は必ず、その他にも頻繁に顔や首を水で流すようにしている。練習後はすぐに洗えるところは洗い、保湿のローションを塗る。更衣室のシャワーは水しか出ないので冬場はシャワーできないが、夏場は頭から水を被る。土のグラウンドで練習しているので、練習後何もしないと砂とホコリと汗で何重にも痒い。
        ただアトピーが悪化しそうだからといってアメフトを諦める必要もない。他のスポーツよりも肌への負担は大きいかもしれないが、対策は十分に取れるし実際にアトピーと上手く付き合いながら活躍している学生もいる。
         
        アトピーではないが、アレルギーを持っているNFLの選手がいる。ニューオリンズ・セインツのQBドリュー・ブリーズだ。彼はグルテン、牛乳、卵などの食物アレルギーがあり、食事制限をしている。因果関係があるかは不明だが、身長もNFLのQBとしては低身長の183cmだ。そのせいで地元のアメフト強豪校に進学できず、NFLのドラフト順位も下げられた。
        僕も食物アレルギーを持っている。だからブリーズが活躍すると勇気をもらえる。一度フェイスブックのページにメッセージを送ったことがある。(案の定、返信は来なかったが…)


         


        第2節 vs天理大学 CRUSING ORCS
         〜3部の強豪・天理大学との一戦〜
         
        2戦目にして山場を迎える。
        天理大学は2014シーズン、ある不祥事で主力選手が公式戦に出場できなかった影響で3部5位に甘んじていたが、2015シーズンは1部でもスターターを張れるレベルのエースレシーバー#88を擁し、圧倒的な攻撃力を誇るチームにのし上がってきた。前評判でも3部Bブロック優勝候補の最右翼だった。
         
        この試合、BADGERSに有利にはたらく要素がひとつある。9月23日秋分の日は毎シーズン決まって岡山でのホームゲームが開催されることだ。
        スタジアムは普段練習している大学のグラウンドから自転車で5分もかからない近距離にあり、試合前に岡山から大阪までの電車移動をしなくていい唯一の公式戦だ。
        J2のファジアーノ岡山がホームスタジアムとして使用する1万5千人以上収容する立派なスタンドがあり、天然芝も手入れが行き届いていて美しい。
        大学の友だちや他の体育会の学生、近隣に住まうOBさん、保護者が普段よりも多く応援に駆けつけてくれるので自然と気合も入る。
        そして応援団とチアが来てくれる唯一の公式戦でもある。スタジアムの屋根に反響して一層大きく聞こえる応援団の勇ましい声と、チアのダンスがスタンドの応援をリードし盛り上げてくれる。
         
        岡山大学応援団といえば団長の角谷謙斗さんが有名だ。同じ尾道北高校出身で、会うと気さくに声をかけてくださる。応援団の団長といえば堅気で孤高な存在というイメージアがあり、角谷さんも例外なく学ラン姿に角刈りで、眼力があり怖い人に見えるが、演舞の時以外はいつも笑顔でとてもフレンドリーだ。角谷さんはバイク好きで、熱烈なNHKの朝ドラとカープファン、お酒も好きな団長だ。
         
        14:00 キックオフ。晴れ。
        夏の太陽が照りつけている。



        岡山 シティライツスタジアム

         
        投げるQBと受けるWRは以心伝心
         
        天理戦、BADGERSが先制する。QB沖西からWR福井へのロングパス。
        QBが投げWRがキャッチする空中戦はアメフトの醍醐味だ。
         
        BADGERSのスタートQBは#2沖西将弥。
        180cm80kg、広島国泰寺高校野球部出身。
        髪を茶色く染め、女の子と会う時はワックスとスプレーで丁寧に髪をセットしてくるイケメンだ。
        祖父がボディービルダーでジムを経営しているといい、その影響か筋肉が大きい。上腕三頭筋が特に発達していて腕が太い。頭でイメージしたことをその通りにできる、生まれながらのアスリートで、1部で活躍する能力があるとコーチに言わしめた逸材だ。
        自分がヒーローだと信じて疑わず、負けん気の強さはだれにも負けない。だが、シャイで繊細な一面もあり、かわいげがある。
         
        昨シーズンのエースレシーバーはWR#11福井頌平。レシーバーとしては身長も高くないし、スピードもずば抜けてはいない。
        福ドンさんはフィジカルに自分の生きる道を見出した。ハードなウエイトトレーニングで男も惚れる肉体を手に入れた。派手さはないが堅実なキャッチングとブロッキングで信頼感は抜群。福ドンさんならどんなボールでもキャッチしてくれそうなワクワク感がある。
         
        この2人はチームで最初にグラウンドに現れ、最後までグラウンドに残ってパスを合わせていた。
        パスコースは前に何ヤード走ってこのタイミングで内に何ヤード入ってくる、というように正確に決められているが、試合では相手の激しいプレッシャーもあるので、少なからずズレは生じる。
        だから、ディフェンスの動きを想定しそれぞれで、言葉を交わさずとも考えが一致するまでに繰り返す。
        阿吽の呼吸だ。
         
        天理戦、沖西から放たれたボールは放物線を描きながらエンドゾーンへと飛んで行く。落下地点は文句なし。
        だがディフェンスも良くマークしている。
        ジャンプ一番、競り合った。
        赤のジャージに身を包んだ#11福井が相手の背後から手を伸ばし、ボールを包みこんだ。片手でのスーパーキャッチ。
        #11はスッと立ち上がり、ボールを天に突き上げた。
         
        BADGERS 7−0 ORCS
        BADGERSが幸先よく先制点をあげた。


         
        アメフトのキックで五郎丸ポーズは不可能
         
        だが、天理も負けてはいない。
        図抜けた力量を持つエースレシーバー#88へのパスが決まり、キャッチした後も岡大のディフェンスをひらひらと抜き去り前進していく。
        タッチダウン。
        あっという間に追いつかれた。
        BADGERS 7-7 ORCS
        その後も天理が#88へのパスで猛攻を仕掛けてきたが、ディフェンスが要所要所で相手を封じ、前半は7-7のまま終了した。
         
        後半、BADGERSに勝ち越しのチャンスが巡ってくる。
        第3Q、ゴール前7ヤードまでオフェンスが前進したところで4thダウンを迎える。
        タッチダウンとボーナスキックで7点追加したいところだが、ギャンブルに失敗して0点に終わるよりも、確実に3点を追加しようと言うのが岡大サイドラインの判断だった。
        ディフェンスが強く、拮抗した試合展開の場合、3点でもリードしていたほうが精神的に余裕も生まれる。
         
        アメフトとラグビーのキックは違う。
        ラグビーのキックは止まったボールを蹴る。だがアメフトのFGの場合、スナッパーがボールをスナップし、ホルダーがキャッチしたボールを地面に立てる、立てられたボールをキッカーが蹴る。
        ボールがスナップされた瞬間、キックされたボールをブロックしようと、ディフェンスの選手がイノシシのようにキッカーめがけて突進してくる。
        ラグビーはルーティンをこなし、じっくり蹴れる。だがアメフトは瞬間的に蹴らねばならない。
        アメフトのキックは、五郎丸ポーズをやっている暇なんかないのだ。
        おまけに、スナップが乱れたり、ホルダーがボールを立て損ねたりするとキックすらできない。
        したがって、スナッパー、ホルダー、キッカーは目隠ししてでもタイミングが合うぐらい息があっていないといけない。
        ラグビーのキックは個人技、アメフトのFGは団体戦なのだ。


         
        僕が決めた公式戦初のタッチダウン
         
        7-7の同点。僕のキックで3点を狙う。
        前の大工大戦でホルダーの沖西にホールドミスがあったので、助走を測る前に声をかけた。彼はお調子者で人一倍負けず嫌いだが、繊細で、おそらく前回の失敗からナーバスになっていると感じた。
        僕は言った。
        「リラックスして置けば良い。立っとるボールなら全部蹴るけ」

        静寂がスタジアムを包み込む。
        ボールがスナップされた。低く速いナイススナップ。
        ホルダー、お手玉。
        くそっ。
        ボールが転がる。
        ピンチ。
        だが、まだプレーは終わってはいない。
        キックは失敗でも、こぼれたボールを抱えてエンドゾーンまで持ち込めばタッチダウンだ。
        僕は咄嗟にボールを拾い上げ、腕に抱えた。
        相手が正面にきた。
        カットを切る。
        だが次の瞬間、右下から地獄へ道連れにしようと僕の足を引きずりこむような手が伸びてくる。
        ギリギリ足にかからない。
        前が開けた。
        僕はエンドゾーン左端を駆け抜けた。
        タッチダァーーーーン。
        6点追加!
         
        走っている時は何も聞こえなかったが、エンドゾーンからスタンドを見た時初めて、歓声とチアバルーンのバチバチ鳴る音が聞こえた。
        公式戦で僕が決めた、初めてのタッチダウンに興奮した。
        パスを決めた時や、ランでフレッシュを獲得した時とはまた違った快感が全身を流れた。
        自分が攻撃のドライブを締めくくる。高い山に登頂したような、弾けるような爽快感を味わった。
        BADGERS 13−7 ORCS
        やった。
        優勝候補の天理をリード。


         
        再逆転され敗戦。1点の重みに泣く
         
        だが、浮かれてもいられない。
        すぐにタッチダウン後のトライフォーキックがある。
        サイドライン、スタンドにいたBADGERSお応援する人全てがタッチダウンを喜んでいた。

        そんな中、一人だけ喜べない選手がいた。ホルダー、沖西だ。
        タッチダウンを取れたので結果オーライだが、二試合続けてのホールド失敗は屈辱以外の何物でもない。
        「さっきのは忘れて、これに集中」
        僕は沖西に言った。
        声をかけ、混乱状態を少しでも和らげようとした。
        ホルダーのミスは自分のミス。スナッパー、ホルダー、キッカーは一心同体。
        だが、またしてもホールドできなかった。
        1点取れず。
        13―7のまま。
         
        キックを決められず、14−7にすることができなかった。6点差は相手からすればTD一本とキックで逆転できる点差で、精神的には楽。相手に追加点を許さなければTD1本さえ取れば勝てるということで焦らなくていい。
        アメフトは、キックの1点が意外に重いスポーツ。
        この1点が試合を左右することになるのか。
         
        僕は沖西のホールドミスが、その後、彼のクオーターバッキングに影響を及ぼさないかだけが心配だった。
        繊細な沖西には、天衣無縫にプレイしてほしい。
        彼は『黒子のバスケ』の火神のように、ZONEに入ったら手が付けられないのだ。
        「今のは忘れて、1点なんか関係ないぐらい、タッチダウン取ってこい。」
        僕は沖西に言った。
        「大丈夫ですよ!俺、スーパースターなんで!」
        彼は答えた。
         
        その後、BADGERSは天理のエース#88を止めることができず逆転された。
        タッチダウンの6点とキックの1点、合計7点で13−14。
        試合をひっくり返された。
        悪い予感は当たった。
        1点が重い。 
        FGを蹴れるゾーンまでも遠い。
        わずかな残り時間で逆転をするためにスペシャルプレーを試みたが、結果は失敗。再逆転できずに試合は終わった。
         
        結果的にみるとキック失敗の1点が負けにつながった。
        杞憂は現実になった。 
        13−14。岡大、痛い敗戦。 
        2016シーズン2部で勝つという目標がある以上、残り試合は全て勝ち続けなければならない。
        下を向いている暇はない。


        第2節 岡大 13−14 天理大

         


        第3節、vs大阪市立大学 GOLDEN CEDARS
         〜キックが絶不調〜
         
        1勝1敗で迎えた大阪市立大学戦。
        大阪市立大学も1980年代、岡山大学を追うように1部に昇格したが、最近は3部に定着している。毎年5月に定期戦を行っており、試合後にはレセプションもあるので、選手の中には友だちもいる。
        2015年、春の定期戦では勝っている相手。春から比べるとどちらも成長しているが、BADGERSのほうが伸びたことを証明し、力の差を見せつけたい試合。

        大阪市立大とは怨恨試合だ。 
        実は、春の定期戦で両チームともQBの控えがいなかったため、QBへのタックル無しというルールで試合をした。QBとはそれほど重要なポジションである。だが、試合最終盤にQB沖西がタックルされて肘を脱臼する怪我をさせられた。
        沖西はその後2ヶ月プレーできなかった。
        その怒りを晴らすためにも、秋の市立戦は勝たなくてはいけない。
         
        だが僕は、この試合でキックの不調に悩まされることになる。
        試合はタッチダウンランで岡大が先制。7-0 BADGERSリード。
        幸先のいいスタート。
        第2Q、ゴール前9ヤードから4thダウン。
        岡大はFGトライを選択。
        キッカーである僕の出番だ。
        ハッシュレフト。
        確実に決めて当然の距離。
        キックしたボールは。左のポール上部を通過した。
        中心を通すことはできなかったが、決まったと思った。
        が、審判のシグナルはキック失敗。
        3秒ほどその瞬間の出来事を受け入れられなかった。
         
        岡山BADGERS 7−0 GOLDEN CEDARS 大阪市立
         
        10−0となるところを、点差を広げられなかった。
        サイドラインに帰りながら首をかしげた。
        キックを失敗と判定されたことも納得いかなかったが、それ以上になぜキックを思い描いているよりも左に飛ばしてしまったのか、原因を考えていた。
         
        飛距離を伸ばすことを考えて、キックのバランスが崩れていたのかもしれない。岡山に帰ってから、フォームを見なおそうと考えた。
        しかし試合中にこれ以上キックの失敗に気をとられるのは良くない。
        立て直せ。試合に集中。
         
        キックに神経質になり、気が散漫になりかけないために、イギリスでアメフトをしていた時にムードメイカーが発した言葉を思い出した。
        We are still winning!!
        僕の中で重い空気を一変させる言葉だった。
        悪いシチュエーションでも勝っていることに変わりはない。
        自分で呟き、沈んだ気持ちを切り替えた。
        得点差を広げられないまま前半終了。
        岡大 7−0 市大
        第3Qに7−6まで追い上げられた時は、キックを決めていればもっと楽に試合運びができたのにと思ったが、タッチダウン後の相手のキックを弾いたディフェンスを褒めることだけを考えた。
        We are still winning.
        岡大はタッチダウンを一本追加し、結果的には13-6で勝利した。
         

        第3節 岡大13−6 大阪市立大

         


        キックの修正・Youtube先生との特訓
         
        キックを失敗したときの帰りの電車はとても長い。新大阪から岡山までの3時間、外したシーンだけが頭の中をリピートする。
        気を抜いていたわけではないが、短い距離のFGだったから集中しきれていなかったのかもしれない。外したことのイライラよりも情けなさが勝った。40秒計が進み、焦っていたのかもしれない。だとしたら練習の時の想定が甘かったということになる。
         
        この距離のFGは決めて当然、サッカーのPKと同じようなものだ。決めても祝福はほどほど、外せば不信感につながる。
        キッカーは孤高であり、スコアリングに関わり勝敗を握るので極度のプレッシャーがかかる。一見単純に見えるがさまざまな要素があり、深く深く突き詰めなければならないポジションである。失敗してもあいつなら次も任せられると普段から信頼を得ていることも重要だ。
        今日のキック失敗で、次の試合からほぼ確実なところでないとFGを蹴らせてくれないのではないか。冒険させてくれないのではないか。
        不安に駆られた。
        何もしゃべりたくなかった。
        電車の窓ガラスに頭を打ち付けるようにして寝た。
        チームは勝った。だが僕にとっては負け試合だった。


         
        キックの研究を重ね、試行錯誤した。
        その結果、キックのばらつきを無くすためには助走が大事だとわかった。
        Youtubeを先生に見立て、NFLやアメリカの大学生、日本の大学生のキックを何種類も何回も見た。
        共通点はボールから後ろに3歩、横に2歩、軸足となる側の足を中心に体をホルダー方向に向ける。助走の一歩目は真下に踏み下ろす程度で小さく、残り2歩はリラックスして、インパクトの瞬間に力を入れる。上体は被せずに足を高く振り上げる。
         
        技術面ではこれらを意識して徹底的に反復する。
        しかし、技術だけでは試合の場面でキックする時は、極度の緊張状態になる。登場機会が少ない分、出場する時は必ず成功させなければならない。サッカーのPKのキッカーがそうであるように、周囲も成功するものだと思っているプレッシャーがある。だから練習でも1本目を大事にした。2,3回繰り返して決めるのは当たり前。試合では一発勝負、1本で決めることができるかに重きを置くことで、精神状態もできるだけ試合の状況に近づけた。 
        研究と練習を執拗に重ね、これなら大丈夫だという自分の中にキックの頼れる軸ができたので、プレッシャーにも負けにくくなった。

        僕は反復練習を楽しんでできる性格だ。反復することは退屈だと思われがちだが、僕はそうは思わない。一つ一つのポイントを確認しながら、一回一回何が上手くいったか、思ったようにいかなかったか自分に語りかけながら繰り返す。 
        ある程度習得できたと思ったら、テストをする。
        キックなら正面に立つポールにまっすぐなボールを当てることができるか、50ヤード先にあるバケツに高いボールを上から落として入れることができるか、ゲーム感覚で楽しむ。
        同じ動きをひたすら繰り返していても、意識する部分を変え、自分で撮ったビデオを確認するようにすると刺激が生まれ、退屈だと感じなくなる。そうして同じ型が自分の中にはめ込まれるまで徹底して繰り返した。


         
        第4節、vs大阪経済大学BOMBERS
         
        2勝1敗で迎えた大阪経済大戦。
        大阪経済大学はサイズが大きいチーム。とにかくフィジカルで勝とうという意志が見える。
         
        結果から先に言うと、この試合ではランニングバックを中心に、攻撃陣が爆発した。タッチダウン5本で35得点はバジャーズオフェンス4年ぶりの高得点だった。
        ここまで悩みに悩み抜いていたオフェンスがやっと、暗く湿気た洞窟から抜けだした。

        僕のキックも絶好調だった。 
        僕がスコアリングで登場したのはタッチダウン後のキック5回。
        市大戦後は反省を元に確実性を追い求めた。
        5回蹴って5回成功。
        乗り越えた。
         
        大経戦からはキックを外す気がしなくなった。
        大阪市立大学戦でキックは飛距離やダイナミックな見た目よりも正確性が大事だということに気づいてからの挽回だった。
        キックに迷いが無くなった。
         

        第4節 岡大 35−13 大経大
         
        いよいよ次は、和歌山大学との最終戦。



         
         

        最終節、vs和歌山大学 BLIND SHARKS
         〜入れ替え戦出場を掛けた最終戦〜
         
        岡大、和大ともに天理大学に敗戦し、勝ったほうが入れ替え戦出場校決定戦に進める。
        勝てばいい。負ければシーズン終了。単純明快。
         
        和歌山大学はディフェンスも強いが、攻撃力で勝負してきたチーム。パスとランのバランスが良く高校からアメフトをしているQBがオフェンスを指揮する。岡山大学と和歌山大学は同じ国立大学同士で似た雰囲気がある。
         
        試合開始から点の取り合い。岡大が先行し、和大が追いつく荒れた展開。
        岡大 21−21 和大
        大接戦だ。
         
        ディフェンスが強く、ロースコアの拮抗したゲームは経験してきたが、点取り合戦は経験したことがなかった。
        だが、不安はなかった。チームの雰囲気が最高だった。どんな状況でもサイドラインからチアアップや檄を飛ばす声が出ていたからだ。
        しかし最後になって均衡は敗れた。ここでBADGERS攻撃陣にミスが出てボールをファンブル。相手選手にリカバーされそのままエンドゾーンに持ち込まれた。
        岡大 21−28 和大
        ピンチだ。あとがない。
         
        残すは第4Qの10分。あと10分しかない。
        試合の流れからみて、無得点で攻撃権を渡せば相手に追加点を奪われる可能性もある。
        BADGERSが逆転するには、この攻撃シリーズでTDを取って6点、その後の2ポイントコンバージョンを成功させるしかない。そうすれば29−28と逆転できる。
        だが、RB陣の怪我でランプレーが思うように展開できない状況。
        いよいよBADGERSは窮地に追い込まれた。
         
        しかしこのピンチで、ロンドンで見たNFLの選手が蹴った、スタジアム5階席まで届くボールが、頭をよぎった。
        身体能力では及ばない。が、志の高さだけは、あのボールには負けていない。そう感じた。
        まわりの仲間たちの姿を見た。
        サイドラインの全員が試合にのめり込んでいた。
        イギリスから帰国後、スタンドからBADGERSの試合を観戦した時に見た、サイドラインに立つ選手たちの自信なさげで静かな背中はそこにはなかった。
         
        (つづく)



        アメフト野郎(1)
        アメフト野郎(2)
         

         
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        アメフト野郎!by航太郎 (2)
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          第1部はこちら

          第2部 夏合宿と食トレ


          〜同じ釜の飯を食う仲間、深まる信頼〜
           
          白米が白い石に見える食トレ 
          本番の秋シーズンが始まる前、8月の中旬に合宿を行う。8月13日から17日まで4泊5日の日程だ。昨シーズンは岡山鳥取県境にある氷ノ山スキー場に隣接する合宿施設、氷太くんで行った。三日月形の宿泊所が印象的な施設だ。
          標高840mで昼間でも涼しく、暑さは感じなかった。



           
          BADGERSは頭髪に関して規則はないが、僕は関西1部の強豪校に倣って気合を入れるために、頭を坊主にして合宿に臨んだ。 
           
          合宿の主な目的は、共同生活を送り秋の本番に向けて一層チームの結束を強めること、朝から晩まで常にフットボールに没頭しプレーの完成度を高めること、体重が軽い選手は体重を重くすることだ。
           
          合宿での食トレには苦い思い出がある。
          そもそも食トレとは限界を超えて食べ胃を大きくすることで、大きくなった胃に米を詰め込み体重を増やすことである。体重計を持ち込み一回の食事で2キロ増やさないと帰れないというミッションを課されることもある。食トレが上達してくると、つけもの一切れで茶碗一杯の白米を食べられるようになる。
           
          2年前、僕が1年生で初めての合宿の話だ。エネルギー源の炭水化物、特に白米を毎食食べるが、まず同じポジションの先輩と同じテーブルに座る。自分で自分の茶碗に米を盛ることは許されず、必ず先輩に任せなければならない。
          やさしい先輩はふんわりと盛ってくれるが、いたずら心が働いた時はギュッギュと圧縮してしまう。同じ盛り方に見えても、重量があると絶望感に襲われる。満腹になってからがトレーニングだが、その段階になると白米が白い石に見えてくるし、急激に喉を通らなくなる。

          夜は余ったご飯でおにぎりを作り、ミーティング中に食べる。ごはんの時に無理やり詰め込んだのでお腹に空白はないが、無理やりかじる。満腹のまま寝て、朝起きてもお腹いっぱいの状態が続いている。朝ごはんで大盛りの茶碗4杯分、感覚では3合。
          胃袋がぱんぱんに詰まった状態で練習する午前練は地獄だ。寝ている間に腹を切開され石を詰められた狼の気分だ。動く度にお腹だけが遅れてついてくる感覚だ。さらに夏の蒸し暑さが吐き気を増す。

          3日目の午前練、食べ過ぎで気分が悪く、パスを投げた後に胃から米が逆流してきた。慌ててグラウンドの端に行き、溝に吐いた。吐いたら一気に楽になったが、しんどい思いをして詰め込んだ米が全部吸収されずに出てしまったことに無力感しか残らなかった。
          吐くと一時練習ができなくなるし、食事の効果がマイナスになってしまうので度が過ぎた食トレは次の年から無くなった。

           

           
          岡大アメフト部BADGERS注目選手紹介
          ここで、BADGERSの注目選手を紹介しよう。
          まず、新2年生ランニングバックの高松直登#22。アイシールド21でいうと主人公セナのポジションだ。
          ランニングバックはQBからボールを手渡しされ、そのボールを抱え出来るだけ遠くへ運ぶポジションだ。相手エンドゾーンまで駆け抜ければ6点を獲得できる。彼は高い運動能力を持ち、レシーバーとして1年生の時から公式戦に出場していたが、今シーズンランニングバックにコンバートされた。広島国泰寺高校野球部出身で、とにかく返事がよく、愛すべきおバカさん。言われたことを実直に実行しようとする姿勢が清々しく、楽しそうにプレーするのが気持ちいい。
          ランニングプレーが多いBADGERSのオフェンスにおいて、重要なプレーヤーになることは違いない。背番号22が颯爽とフィールドを切り裂く姿を期待していただきたい。
           
          僕の同期の三浦勇輝4年#74はオフェンスラインをしている。アイシールド21で言うと栗田がこのポジションだ。
          アメフト選手の中で最も大きい選手が集まるポジションで、ランプレーの時はランナーの走路をこじ開け、パスプレーの時はクオーターバックを相手でフェンスから守るきわめて重要なポジションだ。オフェンスラインの出来によってオフェンスの出来が左右される。体重が重いといっても派手なタックルをするわけでもないし、決められたブロックを果たすだけなので、縁の下の力持ちという言葉だけでは、その目立たないところで汗をかいている彼らの功績を表現できない。
          三浦は平成25年度入学で一番最初にBADGERS入部を宣言をした。僕はにわかにも信じられなかった。なぜなら、彼は吹奏楽部出身、180cm/54kgとガリガリで、どうみてもアメフトを続けていくようには見えなかったからだ。だが彼は瞬く間に増量に成功した。1年の終わりには25キロ以上は増やしていた。今では94キロまで増え、オフェンスラインを牽引している。フィールドの中心、選手が密集しているので見つけるのは難しいかもしれないが、双眼鏡を準備して74番の活躍を目に焼き付けてほしい。
           
          最後に、新3年生ディフェンスラインの窪田翔吾#90だ。アイシールド21では王城高校の大田原がそうだ。このポジションは相手オフェンスを破壊することが仕事だ。
          窪田はとにかく体がでかい。体重は114キロ。法学部の授業で講義室を歩いていると、細い女子の肩幅の3倍はあるんじゃないかと思うほどだ。 一般にアメフト選手と聞いて想像するのは窪田のような体型だろう。
          彼の強さは底知れぬ努力に裏付けされた強さだ。 下半身強化のために毎日タイヤを押している。一人黙々とくラウンドにタイヤの跡を残し続けている。筋トレも一人だけとびぬけて高重量を持ち上げる。ベンチプレス140キロ、スクワット210キロ、デッドリフト220キロは日本でも屈指の強さを誇る岡山大学のウエイトトレーニング部も驚く強さだ。
          留学に行く直前、少しでも新歓に貢献したいと思い、大物を入部させようと企んでいたが、そんな折、居場所がなさそうにのそのそと歩いているデカい背中を見つけた。あまりの風格に新入生という確信はなかったが、恥をかいてもいいと思い、思い切って声をかけた。
          話を聞くと体を鍛えることが好きだという。高校時代は野球部に入っていて、大学でも体を鍛えることは続けたいという。何という逸材か、これはアメフト部に入れるしか無いと思い、口説こうとしたが、その必要はなかった。「僕は行きますから他の人を勧誘してください」と言われたのを覚えている。
          最初の出会いから衝撃だった。今シーズンも、敵味方関係なく、観客を唖然とさせる衝撃の強さを魅せつけてくれると確信している。
           
          マネージャー・トレーナーに感謝
          アメフト部スタッフの仕事を紹介したい。
          スタッフの仕事は多岐にわたっている。高校までの運動部のマネージャーは、水汲みやライン引き、タイムキープなど無くてはならないが雑用のイメージが強いと思う。
          だが大学の体育会、特にアメリカンフットボール部のスタッフの仕事は多く重要だ。
           
          一言にスタッフといってもマネージャーとトレーナーに分かれている。
          マネージャーはSNSでの情報発信やOBへの報告などの広報活動、練習や試合のビデオ撮影、試合の統計、試合へ出向いて対戦相手のスカウト、卒部式などイベントの運営、イヤーブックの作成などがある。将来的には現在は選手がしている、対戦相手のアナライジングをできるアナライジングスタッフを設けることを目標としている。 ここでいうスカウトとは、有望な選手を引っ張ってくることではなく、対戦相手となるチームの試合をビデオで撮影し、分析することだ。
          厳密に言うと、現段階ではアナライジングは選手が行っているが、将来的にはアナライジングを行うスタッフを設けたいと考えている。

          スカウトはアメフトの命と言っても過言ではない。相手のベース体型は何か、こちらがこの体型をした時にどんな対応をしてくるのか、事前に知って、周到な準備をしてこそ試合ができる。アメフトの中心部分は10人以上の選手が密集していてグラウンドレベルの目線だと誰がどう動いているのか確認しにくい。岡大のふだんの練習では4階分の足場を組み立て、スタッフがその上から撮影し動きを確認しやすくしている。岡大のグラウンドの横に、鉄骨で組んだ櫓があるのにお気づきだろう。
           
          トレーナーはテーピング、けが人の処置、リハビリメニューの作成、リハビリメンバーのサポート、筋トレの管理、トレーニングのメニュー決めなどをしている。上回生になるとテーピングの質もスピードも向上する。体の一部にでも不安な部分を抱えていると集中して全力のプレーができないと、信頼できるトレーナーのテーピングをしていると、安心してプレーに集中できる。
          スタッフは練習開始45分前に集合し、ライン引きや水汲みなど選手が練習できる環境作りを行い、全体練習後もアイシングなど選手のケアをしてくれる。感謝している。


          ※   ※   ※
           
          さて、冬からの筋トレと食トレでデカくしてきた体を練習で意のままに動かせるように訓練し、合宿を乗り越えBADGERSは秋シーズンに向けて戦闘態勢に入った。
          同じ米を食うどころか、同じ米を吐いた仲間どうしが、いよいよ2部を目指して戦い始める。

           
          (つづく 4月21日(木)ごろ第3部最終回掲載)



           
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          アメフト野郎!by航太郎 (1)
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            僕は岡山大学法学部4年
            アメフト部BADGERS#7
            矢野航太郎です

            これから3回に分けて、岡大アメフト部BADGERS(バジャーズ)がどのような部活か、そしてアメフトの魅力について語ります。
            第1部はアメフト部の生態について紹介し、第2部では夏合宿と3人の選手の紹介、そして第3部では2015年のバジャーズの激戦を振り返ります。
            岡大アメフト部BADGERSで、僕たちと濃く真摯な青春時代を送りませんか?


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            第1部 岡大アメフト部
               BADGERSの紹介 

            〜アメフト部って、どんなところ?〜

             
            ■アメフトで肉体改造。筋肉と体重を増やし強い男に 
            「3限筋トレ!誰か!」
            LINEの通知を開くと、アメフト部の同期LINEグループに書いてある。
            筋トレの合図だ。
            アメフト部の空きコマは筋トレだ。
            授業1コマ分は90分、1回の筋トレは1時間のメニューで組むのが基本なため、空きコマは時間的にちょうどいい。
            筋トレが終わり、更衣室で仲間の裸を見ながら、「お前、脊柱起立筋膨れてきたなぁ」とほめる。仲間の太くなった筋肉は筋トレのモチベーションになる。心のなかで対抗心を燃やす。
             
            アメフト部には、どんな人が入部するのだろうか?
            体格に恵まれ、喧嘩が強かった人が入る部活だと誤解している人もいるかもしれないが、それは太い筋肉質の体や、いかつい防具から連想されるイメージでしかないと僕は思う。
            実際に僕の同期のワタナベ君の現在の体を、入部当初と比較してみよう。彼は入部当初64キロだったが、現在では85キロもある。筋トレと食トレでここまで大きくなった。
             


            Before:ワタナベ君の1年入学時


            After:ワタナベ君の現在

            アメフト部といえども、高校までアメフトを経験した選手が学年に1人いるかいないかの岡大BADGERSの場合、入学時は意外に細い人が多い。筋肉質でも体の線は細い。アメフトの認知度が低い中国地方にある国立大学では、アメフトをしたくて入学する人はほとんどいない。3年・4年のアメフト部員が、入学当初の写真を見返すと、あまりの細さに自分を自分と認識できなかったりする。
             
            筋肉質な体を作り上げるにはどうするか?
            一昨年からBADGERSでは、新入生のために計画的なトレーニングメニューが組まれ、新入生担当のコーチとトレーナーが管理している。
            筋トレは上半身の日、背中の日、下半身の日に分かれる。まずはBIG3と呼ばれるベンチプレス、デッドリフト、スクワットの数値を上げることを目指す。ベンチプレスは入部した時には50キロも挙げられなかった選手がトレーニングを続けることで100キロを挙げられるようになるし、厚く見栄えのある胸板を手に入れることができる。夏にTシャツをタイトに着るおしゃれができるようになる。体が見栄えがするので着飾る必要がない。
            体が大きくなってくると、筋トレ後にパンプアップした自分の体を鏡の前で確認するのが至福の時だ。充実したトレーニングの後はボディービルダーのようにポーズを決める。
            僕自身は体の変化は少ないほうだが、久しぶりにあった高校サッカー部の友達や、久しぶりに訪れた父の実家の親戚からは、「大きくなったね!特に肩まわり」と言われる。


             
            ■アメフトは誰にでもでき、居場所があるスポーツ


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            僕は元サッカー部。アメフト部ではキッカーを任される
             
            野球部、サッカー部、陸上部、水泳部、柔道部、剣道部、吹奏楽部、テニス部、ラグビー部、ヨット部、バスケ部など様々なスポーツ経験者が同じスポーツをしていることは珍しい。イチローと本田圭佑、五郎丸歩、錦織圭、瀬戸大也が同じチームで戦っているようなものだ。他にも囲碁将棋部や帰宅部だった人も試合で活躍しているので、将棋の羽生名人までいることになる。
            スポーツのサラダボウルたるアメフト、これは大学から始める人が多いカレッジスポーツの魅力だ。
             
            アメリカンフットボールは球技に分類されるが、選手の中には特殊な状況を除いてボールに触れられないポジションもあり、ボールを扱うのが苦手だからと言って敬遠する必要は全くない。
            人とぶつかるのが強い人、ボールを投げるのが得意な人、ボールをとにかく遠くへ蹴り飛ばせる人、走るのが早い人、反復横飛びが得意な人、相手の行動が予想できる人、機転が利く人、作戦を考えるのが好きな人、人をだますのが得意な人、全てが長所になり得るスポーツだ。
             
            僕はクオーターバックとキッカーを任されている。アイシールド21で言うとヒル魔と武蔵のポジションを一人でこなしている。
            キッカーが登場するのはキックオフの時と、フィールドゴールを狙うときだ。試合開始と得点後に、キックを蹴る機会がある。
            キックオフは状況に応じて蹴り分けるが、滞空時間の長いボールを遠くまで飛ばすディープキック、高いボールで相手にあまりリターンさせないスカイキック、わざと転がすスクイブキック、自チームがリカバーして攻撃権獲得か目指すオンサイドキックなどがある。

            フィールドゴールはラグビーの五郎丸選手のキックとよく似ている。スコアリングに関係し、試合の勝敗を左右するので、キックの時には重圧がのしかかる。
            キックの技術もさることながら、強いメンタルも求められるのがキッカーというポジションだ。毎回、サッカーのPKのように決めて当然と思われる周囲からの重圧を跳ね返さなければならない。
            10年間サッカーをしていたので、蹴ることは得意だが、丸いボールを蹴るのと、楕円のBALLを蹴るのとでは感覚が違う。蹴り方もいかにBALLに体重を乗せられるかが重要で足の振り上げ方など、サッカーで言うと低い弾丸ミドルシュートを蹴る時のようなフォームになる。
             
            もう一つのポジション、クオーターバック(QB)は攻撃の要。チームの司令塔だ。
            センターと呼ばれるポジションの選手からボールを受け取り、ランニングバックにボールを手渡ししたり、ワイドレシーバーにパスを投げたりする。相手のセット位置や動き方次第で瞬時にプレーを変えることもあり、パスを投げる肩と判断力、決断力が求められる。
            大学のクオーターバックは、アメフト経験者か野球部出身の選手がやるポジションなので、サッカー経験者の僕がQBをやるのは非常に珍しい。
            キャッチボール程度なら人よりも上手にできる自信があるが、投げる動作をスポーツとして行っていなかったので、楕円の400グラムあるボールを投げるのに必要な力が無く、最初は辛かった。腕使い方や体重移動の方法などアドバイスを受けたが頭ではわかっていても、具体的なイメージが掴めずなかなか吸収できなかった。ボールを投げ込み、今ではコントロールして投げられるようになったが、飛距離ではやはり野球部出身のQBに負ける。
            ただ、QBは肩の強さだけで判断されるわけではないので、肩の弱さをカバーするため、フェイクのうまさ、目線の使い方、安定感など他の要素で僕は勝負している。
             
            僕は得意なことが無いという人には次の言葉を紹介したい。
            「技術は好不調があってお前を裏切るかもしれんけど、体重だけは信頼できる」
            体重は筋トレと食事次第で増やせる。当たりが強くなれば皆に平等にチャンスがある。こうして考えると、アメフト部に最も向いているのは食べるのが好きな人かもしれない。


             
            ■僕がアメフト部に入部したきっかけ


            岡大入学式.JPG
            岡山大学入学式で
             
            ここで、僕が岡山大学アメフト部BADGERSに入部した経緯を書く。
            僕は大学受験で都会の第一志望校に不合格になり、不本意な気持ちで岡山大学に入学した。憧れていた都会の洗練された空気とはかけ離れた、地方特有のぬるい雰囲気を感じた。長風呂した時のように体から油が抜けすぎ、しかも微妙に居心地がよく、ふやけてしまいそうだった。
            新歓ではサッカーサークル中心に回ったが、仲良こよしの球蹴りで面白みを感じなかった。自分が所属するべき環境はサークルの中に見当たらなかった。
             
            そんな状況から僕を抜け出させてくれたのが岡大アメフト部BADGERSだ。活発に動き回るための酸素を与えてくれる場所だと直感的に感じた。
            1976年に学生会館に貼りだされた一枚のポスターからBADGERSの歴史は始まった。OB会は総勢400名を超え、金銭面や練習器具など多大な支援を頂いている。
            BADGERとは“アメリカアナグマ”を意味する。アメフト部初期の先輩が、不幸にも練習中の事故で亡くなられた。その方は、体は小さいがすばしっこく何度倒れても立ち上がる強靭さを持っていたそうだ。その方にちなんで小さくても果敢に相手に立ち向かうアメリカアナグマがチームのニックネームになっている。
            僕はこのエピソードを聞いて自分と重ね合わせた。僕は小さいころからアトピーとアレルギーで、体は丈夫ではなくても執念で果敢に生きてきた。加えてBADGERSのスローガンはchallenge on だ。挑戦し続けるという意味のこの言葉は大学受験の失敗に縛られていた僕を前に進ませてくれるものだった。挑戦し続ける姿勢は当時の僕に一番必要な姿勢だった。
             
            岡山大学アメフト部BADGERSに入部することを決心したのは、新歓行事として行われたパーティーが契機だった。先輩の家で鍋とたこ焼きをすることになっていたのだが、卵アレルギーの僕は生地に卵を混ぜるたこ焼きは食べられないから、鍋だけを食べようと思っていた。
            ところが予想外の出来事が起きた。4回生の先輩が、僕が卵を食べられないと知って卵を生地に混ぜずにたこ焼きを作って下さった。僕は嬉しくてたまらなかった。
            「卵なしのたこ焼きも意外とおいしいな」と先輩が笑顔で言ってくれた時は誇張ではなく泣きそうになった。入学前は大学に入ってまで部活をやる気なんてさらさらなかったが、待ち望んでいた居場所をやっと見つけたと思った。
             
            僕はBADGERSで人のために泣けるようになりたい。自分が負けたのが悔しくて泣くことはあるが、仲間を勝たせてあげることができなくて泣いたことはまだない。今いる環境は本当に汗臭く、男臭い。泥まみれで練習し体を痛めながらも執念で勝利を目指すアメフト部は自分に最適だ。共に同じ釜の飯を食い、寝、体をぶつけ合って、血を流した仲間と泣きながら抱き合いたいと思う。


             
            アメフト部のスケジュールと食生活 
            BADGERSは火、水、木、土、日の週5日全体で活動している。
            平日練習は午後6時から9時まで。周辺住民との取り決めで9時に照明を消し、10時に更衣室から完全に撤退する。体のケアと道具の手入れをしていたら消灯後の1時間は飛ぶように過ぎる。
             
            とあるアメフト部員の一日を、表にして紹介しよう。


            アメフト部員の1日.png

            スケジュールを見ると大変そうに見えるが、時間をどう使うか考え、無駄な時間がなく充実している。
             
            練習が終わり、アフターをして、ご飯を食べた後に練習の反省ミーティングを行う。時間がない時は弁当屋さんで弁当を買い、ミーティング中に食べる。
            会議中や勉強中にご飯を食べるのは許されないと思うが、アメフト部では消費したエネルギーを補給しないことや、お腹をすかした状態を作ることが一番の悪なので、ミーティング中にご飯を食べる光景は当たり前になっている。
             
            練習はビデオで撮影する。ミーティングではパートリーダーが中心となり、ビデオを何度も巻き戻しをしながら、1プレーずつ1人の動きを丁寧に確認していく。そして全体の連携をホワイトボードで整理しながら戦術理解を高めていく。
            パスプレーに関しても、
            「お前、なんでこのルート走ったん」
            「カバー判断できんかったからちょっと中に入った」
            「それじゃあ、QBが投げるスペースが狭くなるよな」
            切迫した状況でパスが通るように、ミーティングで徹底して頭の中のイメージをすり合わせていく。
             
            土曜日、日曜日や長期休暇中は午前中に練習する。朝9時から3時間程度全体練習だ。昼ごはんを食べて、ミーティングをした後、クラブハウスで昼寝するときもある。相撲の力士みたいだ。
            寝るといってもベッドや畳があるわけではなく、ホームセンターで売っている正方形のカラーマットが敷き詰めてあるだけ。それも年に1回大掃除の時に洗うだけで、汗が染みこんでいる。シミと匂いがプンプンするマットすら気にかけないほど、練習後は眠くなる。体がでかい人のおなかを枕代わりにして寝たり、パイプ椅子の下に潜り込むように寝たりしている人もいる。
            練習後の大男たちが集まるのできれいとはいいがたいが、睡魔には勝てず横になると、気づかぬ内に眠りに落ちている。起きた時に毛玉やほこりが服につきまくっていて、クラブハウスで寝たことを少々後悔する。
             
            アメフト部の食生活だが、ふつうの大学生の2倍くらいの量は食べる。白米だけで一日5合は食べる。
            ふだんの昼ご飯は学食か、量が多い定食屋さん、もしくは3限が無かったらお金を節約するために自炊することもある。
            山下、かがしや、学食、ひで、稲穂、かつ亭、丼丸がよく使う店だが、中でもお気に入りなのは山下と稲穂だ。
            山下は夫婦で経営されている定食屋さんだが、大盛り無料でおかずの量も多い。僕が特に好きなのは肉巻きで、少し濃い目のソースがご飯とよく合う。米がなくなり次第閉店するのが残念なところ。
            夜利用することが多いのは稲穂だ、ここも年配の夫婦が経営されている定食屋さんで、優しい家庭の味という感じで美味しい。焼き肉定食、生姜焼き定食が好き。日替わりは450円で学生には嬉しい。夜11時まで営業されているので練習後に行ける数少ない定食屋さんだ。
             

            ※2016年度からクオーター制が導入されタイムテーブルが大幅に変更されたので、体に染み付いたリズムも変更を強いられる。


            アメフトと勉強は両立可能か?


            図書館.JPG
            僕が1年間留学した、イギリス・ケント大学
             
            毎年新歓時期、アメフト部入部希望の新入生と話していると、アメフト部に関して心配事は共通している。
            勉強との両立はできるのか、お金はどれくらいかかるのか、けがは大丈夫か、親に反対されないか、自分の運動能力でアメフト部についていけるか、だ。
             
            まず、勉強とアメフトはは両立可能だろうか?
            僕は大学1年生の時、アメフト部で練習しながら、岡大からのイギリス交換留学をめざした。交換留学に選ばれるには、IELTSという試験で高得点を取る必要があった。
            現在僕は岡山で下宿しているが、1年生の時は尾道の自宅から1時間半かけて通いながら授業に出て部活もし、通学中の電車や大学に行く前の早朝、部活がない日は早めに尾道に帰り英語を勉強した。
            その結果、法学部の交換留学生に選出され、イギリスのケント大学に1年間留学することができた。
             
            交換留学に応募するにはIELTSで4.0以上取ることが条件だったが、それをクリアするだけでは他の学生との競争に負ける可能性が高いので、各セクション5.0以上を目指した。5月終わりに募集要項が発表されてから9月の試験までに時間がなかったので、空き時間は全て勉強に当てた。
            3週間で旺文社の『TOEFL3800英単語』に掲載されている単語のうち、語源や語呂を駆使して2000語弱を暗記した。僕がアメフトをやりながら暗記した単語を並べてみた
            僕が暗記した単語
            最終的にはIELTSで5.5を取れ、留学中に9月に受けた試験では7.0相当の点を取れた。
             
            部活がない日は講義が終わったらすぐに電車で尾道に帰り、夕方7時ころから深夜時ころまで勉強した。早朝も笠見先生に無理をお願いし、岡山に行くまでの時間を勉強した。
            岡山から帰ってくる時、勉強時間を確保するために新幹線を使い急いで尾道へ帰ったが、確認せずに乗った「のぞみ」の車両が福山で停車しないもので、広島まで行ってしまったこともあった。
            また、丸暗記しただけでは特に英作文など歯がたたないので、教養を身につけるために読書もした。
            留学に必要な英語は、大学受験英語では太刀打ちできない。IELTS受験後に、大学受験で一番難しいと言われる慶応大学の問題を解いたら簡単に見えた。
             
            結局は時間の使い方次第で、何か目標に向かって勉強している時は、無駄な時間を極限まで削ぎ落とせる。自分なりに工夫して時間の使い方を学べば社会に出てからも役に立つはずだ。まとまった時間は確保しにくいし、練習で疲れた体に鞭打って勉強するのは簡単ではないが、部活と勉強は両立できる。

            なお、僕の英国留学記は、こちらをご覧下さい。
            コウタロウ英国留学記
            (1) (2) (3) (4)


             
            ■バイトや恋愛と両立できるか?就職活動は? 
            バイトについて。
            まず書いておかなければならないのは、アメフト部員は食費にお金がかかるということだ。逆に言えば食費以外、服や飲み代にお金がかからないので食費しか出費がないといえるが、力士並みに食うため4万から5万円程度毎月かかるので、バイトをして生活費に充てなければならない。
            事実、8割以上の部員がバイトをしいる。長期休暇中を除いて、部活が休みの月曜日と金曜日、土曜日、日曜日の午後から夜にかけて働く人が多い。スポーツジムのトレーナーやベネッセのサポートスタッフ、ドラッグストア、レストラン、居酒屋、家庭教師、酒屋、牛丼チェーン、デパート、ラーメン屋、コンビニ、カフェなど業種は幅広い。
             
            恋愛については問題で、「腹減ったー」と同じような感覚で「彼女ほし〜」と叫ぶ人もいる。アメフト部の狭いコミュニティーで日常の大部分の時間を過ごしているのと、普段女性との接点が少ない分、理想が高くなりがちな傾向がある。それは置いといて自分たちで一番問題だと思っているのが、デブかデブじゃないか。アメフト部の中ではガリガリと揶揄される人でも、一般世界に出ればゴリゴリとの評価を受ける。そうすると、アメフト部の中で、いい意味で「でかくなったなー」と言うと、普通ではデブと分類される体型に成長している危険性がある。これが価値観の違いというやつか、いや、そんなに大層なものではない。彼女ができないのをデブのせいにして諦めている姿勢が良くないだけだ。
             
            体育会の部員は就活で有利と聞くが実際はどうなのだろうか。
            先輩の就活を見てきた実感としては、比較的早い段階で終わっている印象だ。アメフトで鍛えているため、ストレス耐性が強いことは高く評価されるようだ。志望する業界に進めている人も多い。メガバン、製薬、ゼネコン、生保、公務員と業種は様々だ。
            また、大学のキャリア開発センターが主催する部活生だけの就活合宿にも参加でき、部活を活かした就活方法を勉強できる。アメフト部というだけでキャリアの先生と仲良く慣れるのも魅力だと思う。
            公務員になる人も多い。岡大の公務員講座は3年の6月に始まるが、部活と平行して頑張っている人もいる。部活の時間を犠牲にしないために独学で公務員試験の勉強をして就職した先輩もいた。
            さらに先輩や直接の関わりのない部OBからサポートをしていただけるのも体育会の魅力だろう。マスコミ、商社に勤めておられる古い先輩もいらっしゃる。


             
            ■アメフトは痛い? ヘルメットや防具は重い?


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            大学1年の5月、はじめてヘルメットをかぶった時
             
            アメフトに“痛そう”という印象を抱いている人が多いと想像するが、想像よりも痛くない。頑丈な防具が身を守ってくれるからだ。アメリカンフットボーラーからするとラグビー選手が生身でトップスピードの選手に対してタックルしているのを見て、怪我しないのかとひやひやする。アメフトはヘルメットで頭を守り、ショルダーパッドで肩から胸にかけてと背中を守り、下半身にはヒップパッドとサイパッド、ニーパッドの着用義務がある。
             
            試合は人工芝のグラウンドでできるので血が出るけがは多くないが、もし出血した場合は止血しなければフィールドに入ることができない。試合にはトレーナーやチームドクターが帯同しており、安全面には細心の注意が払われている。
            練習は砂のグラウンドなので擦り傷や切り傷ができやすいが、出血したらすぐにトレーナーが処置してくれる。
             
            アメフトのヘルメットは野球やバイクのヘルメットと違い、重量感がある。 顔への打撃を防ぐフェイスガードが付いているためで、合わせて1.5キロほどだ。
            重量に耐えるために首トレは欠かせない。また首トレにはタックルの衝撃に耐えるという超重要な意味もある。初めて首トレをした次の日は筋肉痛で朝起きるのがしんどい。首が回らないので、自転車に乗っている時に後方確認しようとしても後ろが向けないので、腰からひねらないといけない。筋肉痛が痛いのは辛いが、トレーニングの成果が出ていると実感できる嬉しい瞬間でもある。
            聞いた話だと関東の強豪校である東大アメフト部は首の周囲が40cmを超えないと試合に出場できないそうだ。


             
            ■アメフトとラグビーの違い 



            ラグビーとアメフトのボール。どっちがアメフトのボールでしょうか?
             
            フットボーラーにとって、ラグビーとアメフトを間違えられるのはアメフトの知名度の低さに歯痒い思いをする悔しい瞬間ではあるが、昨年ラグビー日本代表・ブレイブブロッサムスがラグビー旋風を巻き起こしたことを考えると、仕方ないのかと思う。
             
            「ラグビーとアメフト何が違うの?」とよく聞かれるが、ボールを持って走る動作やキック、ボディコンタクトが激しいこと以外、共通点を見つけるのは難しい。
            ラグビーは流れの中で攻撃を組み立てる一方で、アメフトでは1プレー1プレー、次にどのような攻撃をするかをレストランのメニュー表よりも多い選択肢の中から様々な要素を総合的に判断して決める。ラグビーのプレーヤーは全員が兵士なのに対して、アメフトでは参謀の力も備えていなくてはいけない。アメフトは身体能力お化けがするスポーツと思われがちだが、かなり知略が求められる。
             
            アメフトとラグビーはボールの形が似ている。
            岡山から尾道に帰るとき、一度アメフトボールを持って帰ったことがあるのだが、ボールを入れたカバンを電車に忘れ、終点の駅まで荷物を取りに行った時のことだ。
            内容物を確認するのに、「ボールが入っていると思うのですが…」と駅員さんに言ったところ、「あー、ラグビーボールが入っているカバンがあったよ!」と躊躇なく言われた。去年ラグビーのラグビーブームもあり、ラグビーが一気にメジャーになったが、楕円のボールを見ると、大きさや模様に関係なく、ラグビーボールだとし認識するのだと感じた。その時はあえて言い返さなかった。
             
            ラグビーとアメフトを混同した人のエピソードを2つ紹介したい。
            まずは小学生。小学校の体育の授業でフラッグフットボールを行う時に、BADGERSの部員がサポート役として参加するボランティアがあるのだが、小学生たちは僕たちに向かってしきりに五郎丸ポーズを見せてくれた。ラグビーと間違えているなと思いつつ、一緒になって五郎丸ポーズで遊んだ。
            2つ目は、つい先日、前期試験の合格発表のとき。合格発表では定番になっているアメフト部による胴上げは例にもれず岡山大学でも行われるが、いざ胴上げしようという時に一人の男子が中腰で前傾し、両手を合わせて、人差し指を立てていた。誰かに浣腸でもしたいのか、度胸のある子だなと思っていたが、すぐに、なるほど、この子は五郎丸ポーズをしていて、自分たちをラグビー部だと思っているのだと気付いた。


             
            ■中国地方なのに関西リーグの岡大
            ここからは具体的に日本学生アメフトの話をしたい。
            日本学生アメフトは北海道、東北、北陸、中部、関東、関西、中四国、九州のリーグにわかれている。西側では九州と中四国の勝者が関西の勝者と戦い、東日本では東北と北海道の勝者が北陸、中部の勝者と戦い、それの勝者が関東の勝者と闘う。東日本と西日本のチャンピオンが学生日本一をかけて相まみえるのが甲子園ボウルだ。
             
            その中で岡山大学のBADGERSが所属しているのが関西学生アメリカンフットボール連盟だ。そのため中四国リーグの広島大学や島根大学とは公式戦では戦わない。


            中四国リーグ.png

            関西リーグの公式戦は大阪や神戸で行われる。 岡山でのホームゲームはシーズンでたった1試合。あとはアウェイだ。
            BADGERSは国立大学のチームで、私立のようにお金もなく新幹線で移動することはできない。渋滞に巻き込まれ試合時間に遅れることは許されないのでバスを借りる選択肢はなく、公共交通機関を使う。岡山から在来線を乗り継ぐこと3時間強、試合会場についた頃にはふくらはぎが張っていることもある。試合は週末に開催されるので乗客も多い。運良く座れれば良いが、岡山から大阪まで立ちっぱなしのこともある。
            逆に関西にある桃山学院大学や天理大学は岡山で試合がある時は前泊するか、新幹線で岡山まで乗り込む。桃太郎がいる地に自ら新幹線を使って堂々と乗り込むとはいい度胸をしている。金にものを言わせるチームには絶対に負けたくない。


            1348054215.jpg
            僕たち岡大アメフト部員を大阪まで運ぶ新快速
             
            関西学生リーグ編成の説明をしよう
            関西学生リーグには1部・2部・3部があって、強豪校が揃う1部は現在、立命館大学、関西学院大学、関西大学、京都大学、神戸大学、龍谷大学、甲南大学、同志社大学の8校だ。
             
            関西の強豪校にもそれぞれ色がある。
            関学は頭脳のチームだ。関大のヘッドコーチの言葉を借りると、関学は小さい体を補って余りある頭脳で勝ってきたチームだそうだ。2部の僕達からすると関学の選手の体が小さいと思ったことなどなかったが、確かに、戦術のチームであることは疑いようがない。2010年から2014年まで5連覇。学生アメフト界では無類の強さを誇る。
             
            立命館は“アニマルリッツ”と言われるように動物的、野性的な猛獣の集団だ。一度1年生の時に試合当番で立命館のサイドラインに立ったことがあるが、背中から感じる迫力は凄まじかった。アメフトをやっていて、あれ以上の飲み込まれるような雰囲気を感じたことはない。2015年には関学を倒して関西学生リーグを制し、東の覇者早稲田とのライスボウルでも僅差で早稲田を倒した。さらに社会人王者と対戦するライスボウルでは、社会人チャンピオンのパナソニック・インパルスを終了間際までリードするなど勝利まで後一歩のところまで迫った。
             
            京大アメフト部ギャングスターズはハードヒットが売りだ。かつては水野弥一監督の猛烈なスパルタ指導で有名だった。現在は、アメリカから元NFLのプレーヤーをコーチとして招聘し、関大の板井ヘッドコーチは京大もおしゃれなフットボールをするようになったとおっしゃっていた。京大でアメフトがしたくて浪人して入学する人もいるが、やはり国立大学で経験者は少ない。技術も体もゼロからスタートする選手を鍛え、関学、立命、関大の3強を崩すかもしれない。
             
            毎年7月に定期戦を行っている甲南大学は、昨シーズン1部に昇格した。圧倒的なラインの力で相手を押し込み、ランプレーを主体にして勝ってきたチームだ。
            春に甲南大学と練習試合をした時、1stメンバーが全員出場していたわけではないが、全く歯がたたない相手ではないと感じた。ただ先制されても焦らず、難なく逆転する底力は持っているので簡単に勝てる相手ではない。
             
            岡大BADGERS は21世紀になってから、1年ごともしくは2年の間隔で2部と3部を行ったり来たりしている。実際に聞いたことはないが、連盟上層部ではBADGERSは3部のライオン、2部のお荷物と揶揄されているらしい。
             
            いまは勝てないかもしれないが、僕はこれらの強豪私立には負けたくない。人工芝のグラウンドで練習でき、グラウンドメイクや整備の手間がない。雨の日も汚れずに練習ができる。擦り傷も切り傷も少ない。専属コーチもいれば、資金があるので前述したように新幹線移動ができる。
            たとえば甲南大学は監督が自費でグラウンド横にそびえるマンションの12階の一室を借り、ベランダから練習風景を撮影して、戦術を研究している。ドローンで撮影したようなアングルで、選手の動きが確認しやすい。私立の強豪チームはそこまでやるのである。
            私大の選手たちは、資金に恵まれていて不自由なくアメフトができる。逆に僕たちは資金が少なく、土のグラウンドで水抜きや整備に時間を取られ、大阪神戸まで移動しなければならず、しかも普通列車で立ちっぱなしの時もある。そんなハンディを乗り越え、恵まれた私立大学に反骨精神むき出しで立ち向かっていきたい。

             ※  ※   ※ 


            アメフトの公式戦は、9月から12月にかけて行われる。
            岡山大学アメフト部では、1月から月末まで体づくりやファンダメンタルの強化に主眼をおいた練習やトレーニングを行い、4月は新歓、5、6、7月は春シーズン、学校のテスト期間に合わせた2週間程度のオフを挟み、8月に合宿を行い、9、10、11月に本番の秋シーズンを戦うようになっている。
            春シーズンはプロ野球のオープン戦のような扱いで、勝敗にこだわるのは勝負として当然だが、それよりも戦術理解を深め、チーム力を向上させることが重要だ。夏合宿でチームをレベルアップさせ、秋シーズンが公式戦となる。
             
            第2部は夏合宿と、BADGERSの魅力ある3人の選手について語りたい。



            (つづく 4月12日(火)に掲載予定)
             
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              2602     coercion
              2603     texture
              2604     apprehension
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              2612     idiosyncrasy
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              2614     ominous
              2615     outcome
              2616     imaginable
              2617     disrupt
              2618     discriminating
              2619     mitigate
              2620     leukemia
              2621     sore
              2622     censure
              2623     standstill
              2624     turbulent
              2625     lucid
              2626     eclipse
              2627     decree
              2628     deliberate
              2629     validate
              2630     intervene
              2631     confine
              2632     cursory
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              2636     amity
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              2640     indigestion
              2641     poultry
              2642     crack down
              2643     static
              2644     constraint
              2645     brochure
              2646     identify
              2647     reconcile
              2648     cactus
              2649     ratify
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              2651     elapse
              2652     crimson
              2653     transitory
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              2655     pervasive
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              2658     cite
              2659     sulfur
              2660     aberration
              2661     assessment
              2662     magnificent
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              2664     grope
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              2666     amicable
              2667     subsidiary
              2668     book excerpt
              2669     expel
              2670     wax
              2671     remedy
              2672     sophistication
              2673     besiege
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              2675     circus
              2676     preclude
              2677     recede
              2678     prevail
              2679     kidney
              2680     lean
              2681     surpass
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              2687     meager
              2688     loquacious
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              2692     vent
              2693     scar
              2694     siege
              2695     incur
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              2697     universal
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              2701     expiration
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              2703     liquidate
              2704     elastic
              2705     psychiatrist
              2706     chuckle
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              2708     prolific
              2709     ambivalence
              2710     cuisine
              2711     fingerprint
              2712     aquifer
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              2718     hydrogen
              2719     enlightenment
              2720     treaty
              2721     notoriety
              2722     orbit
              2723     upheaval
              2724     dividend
              2725     ambush
              2726     skeptic
              2727     aloft
              2728     tacit
              2729     acclaim
              2730     elaborate
              2731     procession
              2732     pathetic
              2733     whisker
              2734     illusion
              2735     coniferous tree
              2736     aloof
              2737     tow
              2738     extravagant
              2739     tranquil
              2740     coexistence
              2741     consensus
              2742     console
              2743     orientation
              2744     rigid
              2745     consent
              2746     averse
              2747     emit
              2748     alleviate
              2749     liver
              2750     suppress
              2751     tangible
              2752     metabolism
              2753     metabolism
              2754     vapor
              2755     ingenious
              2756     meticulous
              2757     dissident
              2758     alternative
              2759     autonomous
              2760     boil
              2761     subsidize
              2762     ornament
              2763     heredity
              2764     sewer
              2765     commemorate
              2766     cradle
              2767     composure
              2768     practitioner
              2769     exemplify
              2770     dump
              2771     tumor
              2772     utopia
              2773     wither
              2774     periphery
              2775     monumental
              2776     hinder
              2777     landfill
              2778     finesse
              2779     legitimate
              2780     contemporary
              2781     crude
              2782     prescribe
              2783     plead
              2784     preface
              2785     supplementary
              2786     austere
              2787     veterinarian
              2788     critical
              2789     burden
              2790     mediate
              2791     tan
              2792     wharf
              2793     shrewd
              2794     fragment
              2795     addiction
              2796     gastric ulcer
              2797     intact
              2798     inertia
              2799     mutter
              2800     liner
              2801     creditor
              2802     profusely
              2803     abbreviate
              2804     soak
              2805     crescent
              2806     trait
              2807     audit
              2808     defame
              2809     nocturnal
              2810     diurnal
              2811     kerosene
              2812     monarchy
              2813     lieu
              2814     vogue
              2815     strife
              2816     hefty
              2817     nullify
              2818     migrate
              2819     practical
              2820     divert
              2821     prawn
              2822     enigma
              2823     spur
              2824     token
              2825     affiliate
              2826     delete
              2827     accompaniment
              2828     congregate
              2829     density
              2830     overwhelm
              2831     mud
              2832     heed
              2833     prominent
              2834     liability
              2835     dogmatic
              2836     bearish
              2837     avalanche
              2838     perpetual
              2839     genre
              2840     alloy
              2841     classify

              以上です。

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              0

                1119     nutrition
                1120     deal
                1121     brink
                1122     phenomena
                1123     candid
                1124     ambition
                1125     irony
                1126     camel
                1127     stature
                1128     burst
                1129     gratitude
                1130     cordial
                1131     anguish
                1132     advantageous
                1133     dinosaur
                1134     aviation
                1135     bulletin
                1136     attain
                1137     collide
                1138     mode
                1139     pound
                1140     conservative
                1141     radiate
                1142     damp
                1143     hatch
                1144     bleed
                1145     clarify
                1146     statutory
                1147     drain
                1148     pump
                1149     absence
                1150     tender
                1151     ethics
                1152     beard
                1153     anticipate
                1154     obedient
                1155     slim
                1156     biology
                1157     gut
                1158     injustice
                1159     sophisticated
                1160     unlock
                1161     intangible
                1162     abduction
                1163     sanctuary
                1164     aquarium
                1165     opponent
                1166     immunity
                1167     current
                1168     remark
                1169     implicate
                1170     threaten
                1171     sum
                1172     mobile
                1173     utensil
                1174     sociology
                1175     in question
                1176     starve
                1177     hippopotamus
                1178     zip code
                1179     deceive
                1180     natural science
                1181     suspicion
                1182     sustain
                1183     waist
                1184     pretend
                1185     fraud
                1186     betray
                1187     irrational
                1188     considerate
                1189     livestock
                1190     apart
                1191     composition
                1192     ban
                1193     gaze
                1194     recall
                1195     assemble
                1196     downfall
                1197     chronic
                1198     peninsula
                1199     lung
                1200     tryout
                1201     geography
                1202     imitate
                1203     melon
                1204     calculate
                1205     cream
                1206     showcase
                1207     barley
                1208     hazard
                1209     lavish
                1210     breadth
                1211     peculiar
                1212     endure
                1213     extraordinary
                1214     spectacular
                1215     overtake
                1216     lunatic
                1217     overlook
                1218     calamity
                1219     proceed
                1220     vendor
                1221     Venus
                1222     alarm
                1223     description
                1224     implementation
                1225     seek
                1226     delinquent
                1227     candle
                1228     duel
                1229     urban
                1230     tremble
                1231     dairy
                1232     agreement
                1233     humidity
                1234     confuse
                1235     ease
                1236     cave
                1237     unite
                1238     revolve
                1239     chill
                1240     concept
                1241     feasible
                1242     content
                1243     hare
                1244     nominate
                1245     gem
                1246     hidden
                1247     halfway
                1248     qualified
                1249     obscure
                1250     evolution
                1251     merit
                1252     uphold
                1253     void
                1254     endeavor
                1255     informal
                1256     frantic
                1257     shabby
                1258     spill
                1259     housing
                1260     distribute
                1261     utility
                1262     limb
                1263     philosophy
                1264     probability
                1265     longitude
                1266     page
                1267     adjacent
                1268     chancellor
                1269     bulk
                1270     superstition
                1271     exhausted
                1272     trunk
                1273     bowl
                1274     sting
                1275     afterward
                1276     integrity
                1277     thrust
                1278     in the midst of
                1279     therapy
                1280     file
                1281     mustache
                1282     prerequisite
                1283     grateful
                1284     temper
                1285     breeze
                1286     blame
                1287     vast
                1288     courageous
                1289     partial
                1290     assure
                1291     bite
                1292     reign
                1293     consistent
                1294     casualty
                1295     pessimism
                1296     autograph
                1297     economics
                1298     massive
                1299     consciousness
                1300     veteran
                1301     innovation
                1302     vulnerable
                1303     promote
                1304     bribery
                1305     encounter
                1306     capitalism
                1307     brook
                1308     cling
                1309     fluency
                1310     fallacious
                1311     virtually
                1312     forbid
                1313     impose
                1314     detach
                1315     hedonism
                1316     flaw
                1317     faint
                1318     obey
                1319     affirm
                1320     comb
                1321     loose
                1322     applaud
                1323     beverage
                1324     refugee
                1325     decent
                1326     pact
                1327     embrace
                1328     haze
                1329     barter
                1330     comprehensive
                1331     pigeon
                1332     alike
                1333     bottom
                1334     extinct
                1335     debt
                1336     accustomed
                1337     court
                1338     fertile
                1339     facilitate
                1340     arcade
                1341     humane
                1342     drought
                1343     digit
                1344     sacred
                1345     surgeon
                1346     skeptical
                1347     candidate
                1348     discard
                1349     interfere
                1350     timber
                1351     chore
                1352     anxiety
                1353     resolute
                1354     nest
                1355     certificate
                1356     equation
                1357     mark
                1358     Catholic
                1359     enchant
                1360     rage
                1361     statue
                1362     heave
                1363     inject
                1364     contrary
                1365     possess
                1366     periodic
                1367     astronomy
                1368     admire
                1369     contest
                1370     amuse
                1371     upset
                1372     condemn
                1373     intensive
                1374     lament
                1375     essay
                1376     critic
                1377     lay an egg
                1378     application
                1379     spread
                1380     spoil
                1381     once and for all
                1382     stare
                1383     surplus
                1384     vivid
                1385     conserve
                1386     harm
                1387     approve
                1388     brush
                1389     flawless
                1390     sovereign
                1391     verify
                1392     mammal
                1393     intimate
                1394     dull
                1395     offspring
                1396     circulate
                1397     validity
                1398     thumb
                1399     edible
                1400     accountant
                1401     govern
                1402     weep
                1403     embarrass
                1404     geometry
                1405     hostile
                1406     ridiculous
                1407     nighttime
                1408     undergo
                1409     be addicted to
                1410     concern
                1411     anger
                1412     cultivate
                1413     coarse
                1414     fatigue
                1415     plain
                1416     discreet
                1417     vital
                1418     glorious
                1419     idiom
                1420     medieval
                1421     site
                1422     up-to-date
                1423     confidential
                1424     recitation
                1425     refine
                1426     deserve
                1427     spouse
                1428     sacrifice
                1429     friction
                1430     bimonthly
                1431     sink
                1432     guideline
                1433     reflect
                1434     indignant
                1435     inaugurate
                1436     apt
                1437     confess
                1438     vice versa
                1439     individual
                1440     beast
                1441     exempt
                1442     affect
                1443     suspect
                1444     continuous
                1445     coalition
                1446     transfusion
                1447     vague
                1448     favor
                1449     transfer
                1450     shiver
                1451     glut
                1452     insult
                1453     lighthouse
                1454     consume
                1455     implement
                1456     nourish
                1457     sigh
                1458     fantastic
                1459     enclose
                1460     dormant
                1461     capture
                1462     lunar
                1463     layer
                1464     explicit
                1465     velocity
                1466     slipper
                1467     moss
                1468     idle
                1469     immigrate
                1470     perception
                1471     usher
                1472     persistent
                1473     infamous
                1474     span
                1475     mist
                1476     physics
                1477     humiliate
                1478     ballot
                1479     solar system
                1480     enthusiastic about
                1481     rumor
                1482     social science
                1483     objective
                1484     accurate
                1485     liable
                1486     capable
                1487     orphan
                1488     yawn
                1489     excavate
                1490     intellect
                1491     pile
                1492     asset
                1493     beforehand
                1494     jury
                1495     duration
                1496     perfume
                1497     pail
                1498     beg
                1499     optical
                1500     unanimous
                1501     restrain
                1502     negotiate
                1503     bathtub
                1504     subtle
                1505     tongue
                1506     nephew
                1507     steep
                1508     paradox
                1509     walnut
                1510     crow
                1511     amaze
                1512     dignity
                1513     absurd
                1514     characteristic
                1515     ordinary
                1516     physician
                1517     dedicated
                1518     fundamental
                1519     chase
                1520     deliberately
                1521     concentrate
                1522     grandma
                1523     literally
                1524     salute
                1525     clap
                1526     dove
                1527     chronicle
                1528     beneficial
                1529     dim
                1530     Saturn
                1531     aerial
                1532     impatient
                1533     apology
                1534     execute
                1535     swear
                1536     financial
                1537     concrete
                1538     ceiling
                1539     duplicate
                1540     exaggerate
                1541     goods
                1542     assess
                1543     drag
                1544     framework
                1545     envy
                1546     steer
                1547     release
                1548     utilize
                1549     grandpa
                1550     substitute
                1551     cell
                1552     strait
                1553     tilt
                1554     equator
                1555     immune
                1556     dwarf
                1557     ensure
                1558     peasant
                1559     isolate
                1560     readily
                1561     assign
                1562     civil
                1563     manager
                1564     cosmetic
                1565     portrait
                1566     pudding
                1567     orchard
                1568     reinforce
                1569     welfare
                1570     confront
                1571     folklore
                1572     vice
                1573     intuition
                1574     eventually
                1575     fur
                1576     arrogant
                1577     banish
                1578     glance
                1579     cluster
                1580     thermometer
                1581     breathe
                1582     fabricate
                1583     rub
                1584     predict
                1585     Secretary of State
                1586     scorn
                1587     potential
                1588     coward
                1589     hire
                1590     mutual
                1591     context
                1592     testify
                1593     whisper
                1594     athlete
                1595     hatred
                1596     demanding
                1597     enforce
                1598     fade
                1599     expenditure
                1600     bias
                1601     courtesy
                1602     judicial
                1603     aim
                1604     deepen
                1605     feeble
                1606     remove
                1607     witness
                1608     vanish
                1609     hostility
                1610     well-off
                1611     cent
                1612     convex
                1613     bloom
                1614     umpire
                1615     roar
                1616     strategy
                1617     scratch
                1618     magnet
                1619     conquer
                1620     advocate
                1621     heir
                1622     inherit
                1623     transmit
                1624     complicate
                1625     concert
                1626     glacier
                1627     reap
                1628     approximately
                1629     precious
                1630     decisive
                1631     taxation
                1632     eligible
                1633     spine
                1634     address
                1635     confirm
                1636     keen
                1637     dandelion
                1638     nourishment
                1639     branch
                1640     affair
                1641     clam
                1642     significant
                1643     incidentally
                1644     ongoing
                1645     conference
                1646     weary
                1647     deadline
                1648     roadside
                1649     deadly
                1650     bring down
                1651     soil
                1652     blizzard
                1653     pending
                1654     congested
                1655     emerge
                1656     pension
                1657     Mars
                1658     compliant
                1659     accord
                1660     explode
                1661     extinguish
                1662     glue
                1663     superficial
                1664     menu
                1665     parrot
                1666     tension
                1667     seemingly
                1668     odd
                1669     dolphin
                1670     promise
                1671     atmosphere
                1672     drizzle
                1673     subtract
                1674     burglar
                1675     bumper
                1676     drill
                1677     envoy
                1678     swell
                1679     passive
                1680     cedar
                1681     parody
                1682     breed
                1683     acknowledge
                1684     chestnut
                1685     arrangement
                1686     sled
                1687     pitcher
                1688     successor
                1689     draft
                1690     flatter
                1691     excursion
                1692     ecology
                1693     eliminate
                1694     prepare
                1695     brisk
                1696     clinic
                1697     quote
                1698     charge
                1699     inherent
                1700     beat
                1701     gravity
                1702     category
                1703     budget
                1704     cuttlefish
                1705     ground
                1706     sensitive
                1707     allowance
                1708     household
                1709     beak
                1710     politic
                1711     circular
                1712     bounce
                1713     artificial
                1714     assert
                1715     fragile
                1716     shrine
                1717     abstract
                1718     vicious
                1719     crucial
                1720     devote
                1721     technical
                1722     competent
                1723     destroy
                1724     absorb
                1725     discipline
                1726     oblige
                1727     immense
                1728     indict
                1729     slip
                1730     designate
                1731     headline
                1732     prey
                1733     dictator
                1734     contemplate
                1735     appreciate
                1736     manufacture
                1737     irritate
                1738     quarrel
                1739     durable
                1740     fossil
                1741     certify
                1742     launch
                1743     vocational
                1744     adequate
                1745     Jupiter
                1746     jolly
                1747     optimist
                1748     humble
                1749     innovate
                1750     wound
                1751     seize
                1752     circulation
                1753     implicit
                1754     feast
                1755     radius
                1756     infinite
                1757     theoretical
                1758     optimistic
                1759     ankle
                1760     bud
                1761     sensible
                1762     purse
                1763     exclude
                1764     exclude
                1765     manual
                1766     ingenuity
                1767     refrain
                1768     dreadful
                1769     acting
                1770     tease
                1771     conceal
                1772     racket
                1773     contract
                1774     whatever
                1775     sphere
                1776     resign
                1777     grant
                1778     domestic
                1779     literal
                1780     chunk
                1781     disorder
                1782     centigrade
                1783     ethnic
                1784     chemistry
                1785     ape
                1786     equivalent
                1787     explore
                1788     anatomy
                1789     replace
                1790     competitive
                1791     stove
                1792     conventional
                1793     instinct
                1794     anxious
                1795     parade
                1796     balcony
                1797     naughty
                1798     restore
                1799     grasp
                1800     prudent
                1801     prescription
                1802     muscle
                1803     accommodate
                1804     inquire
                1805     opposition
                1806     criticize
                1807     appropriate
                1808     comfort
                1809     flood
                1810     bet
                1811     overnight
                1812     clash
                1813     stubborn
                1814     clue
                1815     irrigate
                1816     core
                1817     index
                1818     contradict
                1819     basin
                1820     bond
                1821     verbal
                1822     constitution
                1823     stir
                1824     accessory
                1825     bow
                1826     mandatory
                1827     extend
                1828     lid
                1829     rob
                1830     convey
                1831     eternal
                1832     convince
                1833     eminent
                1834     endow
                1835     appoint
                1836     casual
                1837     thermal
                1838     resent
                1839     bend
                1840     justify
                1841     tremor
                1842     prospect
                1843     squeeze
                1844     stingy
                1845     tropical zone
                1846     sympathy
                1847     animate
                1848     levy
                1849     menace
                1850     touchy
                1851     commitment
                1852     startle
                1853     overtime
                1854     haphazard
                1855     apprehend
                1856     methodical
                1857     ostrich
                1858     linguistic
                1859     proximity
                1860     consequently
                1861     maple
                1862     linear
                1863     pumpkin
                1864     per capita
                1865     inflate
                1866     peril
                1867     awe
                1868     obituary
                1869     stagnant
                1870     divergent
                1871     obsess
                1872     obsess
                1873     disposal
                1874     falcon
                1875     ginger
                1876     prohibit
                1877     tangle
                1878     eradicate
                1879     mercantile
                1880     disdain
                1881     meteorology
                1882     reminiscence
                1883     collaborate
                1884     pacifist
                1885     ascend
                1886     oust
                1887     constituency
                1888     curator
                1889     bewilder
                1890     part-time
                1891     obsolete
                1892     dough
                1893     fleet
                1894     compile
                1895     inscribe
                1896     rebut
                1897     ignite
                1898     furor
                1899     phonetic
                1900     pathology
                1901     precaution
                1902     condone
                1903     remit
                1904     withhold
                1905     attribute
                1906     personable
                1907     contingency
                1908     viable
                1909     eulogy
                1910     quota
                1911     lofty
                1912     retiring
                1913     luminous
                1914     virus
                1915     foreshadow
                1916     collective
                1917     deplore
                1918     tantalize
                1919     yell
                1920     gauze
                1921     intricate
                1922     succinct
                1923     mandate
                1924     octopus
                1925     legacy
                1926     compound
                1927     pragmatic
                1928     bracket
                1929     precipitous
                1930     plaintiff
                1931     presumption
                1932     blink
                1933     superb
                1934     submerge
                1935     shed
                1936     solemn
                1937     deplete
                1938     footnote
                1939     frail
                1940     revenue
                1941     stray
                1942     relic
                1943     contagious
                1944     turbulence
                1945     stoop
                1946     intestine
                1947     tariff
                1948     diffuse
                1949     elusive
                1950     tame
                1951     conscience
                1952     languish
                1953     diarrhea
                1954     attest
                1955     cardinal
                1956     merger
                1957     install
                1958     deputy
                1959     humility
                1960     stoke
                1961     abolish
                1962     cruel
                1963     specimen
                1964     standpoint
                1965     fusion
                1966     ponder
                1967     gnaw
                1968     verdict
                1969     peacock
                1970     hangover
                1971     denounce
                1972     acme
                1973     legend
                1974     repent
                1975     perplex
                1976     surcharge
                1977     incentive
                1978     purge
                1979     radioactive
                1980     anarchist
                1981     oxidize
                1982     nausea
                1983     pneumonia
                1984     Orient
                1985     authoritarian
                1986     installment
                1987     inhale
                1988     bash
                1989     massacre
                1990     virtue
                1991     tract
                1992     exploit
                1993     degrade
                1994     nomad
                1995     unprecedented
                1996     bully
                1997     homogeneous
                1998     diminution
                1999     Temperate Zone
                2000     evasion
                2001     imaginative
                2002     concede
                2003     leverage
                2004     shoddy
                2005     sterilize
                2006     domain
                2007     aftereffect
                2008     melancholy
                2009     allocate
                2010     census
                2011     resonant
                2012     rebellion
                2013     hail
                2014     hug
                2015     impair
                2016     philanthropist
                2017     surge
                2018     dynamics
                2019     embark
                2020     mammoth
                2021     irrelevant
                2022     outlook
                2023     foresight
                2024     invert
                2025     exile
                2026     terra
                2027     imaginary
                2028     frigid
                2029     prosecution
                2030     maxim
                2031     defiance
                2032     thrifty
                2033     interim
                2034     prevalent
                2035     reactor
                2036     refute
                2037     hurl
                2038     jolt
                2039     equity
                2040     fanaticism
                2041     intermittent
                2042     credibility
                2043     stalk
                2044     inception
                2045     stretcher
                2046     deference
                2047     oath
                2048     acid
                2049     doom
                2050     garlic
                2051     wrath
                2052     ascertain
                2053     outgoing
                2054     extol
                2055     flammable
                2056     maternal
                2057     vow
                2058     compliance
                2059     conceit
                2060     Brussels sprouts
                2061     stake
                2062     staple
                2063     dubious
                2064     smash
                2065     shred
                2066     nuisance
                2067     ardent
                2068     conviction
                2069     oak
                2070     resignation
                2071     capricious
                2072     luminary
                2073     outset
                2074     authenticate
                2075     finite
                2076     optician
                2077     astronomical
                2078     prototype
                2079     bowel
                2080     supreme
                2081     lace
                2082     anchor
                2083     exacerbate
                2084     paralysis
                2085     hoist
                2086     maneuver
                2087     influenza
                2088     subordinate
                2089     concur
                2090     desperate
                2091     expedite
                2092     mentor
                2093     rhinoceros
                2094     render
                2095     rectify
                2096     been sprouts
                2097     cabin
                2098     grotesque
                2099     potent
                2100     concession
                2101     coherent
                2102     allotment
                2103     iceberg
                2104     Neptune
                2105     seclusion
                2106     glossary
                2107     scrape
                2108     lick
                2109     soothe
                2110     particle
                2111      definitive
                2112     sprinkle
                2113     devoid
                2114     rebel
                2115     rally
                2116     be clad with
                2117     invoke
                2118     oblivion
                2119     appraise
                2120     amiable
                2121     despise
                2122     mineralogy
                2123     appendix
                2124     thorn
                2125     exhaustive
                2126     itinerary
                2127     reclaimed land
                2128     scapegoat
                2129     transplant
                2130     mercy
                2131     dissent
                2132     consolidate
                2133     precise
                2134     extort
                2135     inflame
                2136     segregation
                2137     founder
                2138     forehead
                2139     sober
                2140     ingrate
                2141     discerning
                2142     abstain
                2143     tuberculosis
                2144     saturate
                2145     perish
                2146     arbitrary
                2147     pregnant
                2148     blast
                2149     somber
                2150     conspicuous
                2151     strain
                2152     mantelpiece
                2153     archaeology
                2154     tomb
                2155     cancer
                2156     erroneous
                2157     momentum
                2158     centrist
                2159     tempt
                2160     deploy
                2161     detect
                2162     prompt
                2163     preside
                2164     temporary
                2165     wander
                2166     perspective
                2167     frontier
                2168     bolster
                2169     comply
                2170     personnel
                2171     leopard
                2172     bankruptcy
                2173     collapse
                2174     precede
                2175     proliferation
                2176     consecutive
                2177     plenitude
                2178     insane
                2179     petty
                2180     hearth
                2181     stimulant
                2182     criterion
                2183     exert
                2184     swamp
                2185     jurisdiction
                2186     glitter
                2187     ethnology
                2188     frugal
                2189     trim
                2190     expose
                2191     spiral
                2192     erratic
                2193     affliction
                2194     setback
                2195     compel
                2196     enmity
                2197     endorse
                2198     frown
                2199     whirl
                2200     tidal wave
                2201     fiscal
                2202     weather
                2203     unfold
                2204     testimony
                2205     decay
                2206     relevancy
                2207     lateral
                2208     unearth
                2209     placid
                2210     expire
                2211     disperse
                2212     recipe
                2213     monopoly
                2214     crane
                2215     compulsion
                2216     liaison
                2217     successive
                2218     seismology
                2219     margin
                2220     premise
                2221     underpin
                2222     timid
                2223     ordinance
                2224     avarice
                2225     tractable
                2226     renounce
                2227     numb
                2228     imprison
                2229     yolk
                2230     fierce
                2231     adverse
                2232     zealot
                2233     ordeal
                2234     chant
                2235     soybean
                2236     sympathize
                2237     infringe
                2238     patent
                2239     contempt
                2240     innate
                2241     manifest
                2242     virtual
                2243     armored
                2244     opaque
                2245     catalyst
                2246     arid
                2247     reserve
                2248     ascendancy
                2249     illusive
                2250     matrix
                2251     riot
                2252     uprising
                2253     statistics
                2254     solicit
                2255     allure
                2256     stipulate
                2257     torture
                2258     augment
                2259     kindle
                2260     herring
                2261     vigor
                2262     benign
                2263     be reduced to rubble
                2264     monetary
                2265     seaport
                2266     detached
                2267     coincide
                2268     intrinsically
                2269     genetics
                2270     leak
                2271     enzyme
                2272     proposition
                2273     freight
                2274     submissive
                2275     indiscriminate
                2276     credulity
                2277     evergreen
                2278     affirmative
                2279     temperate
                2280     come across
                2281     oyster
                2282     inventory
                2283     assassinate
                2284     culminate
                2285     exquisite
                2286     illusory
                2287     agent
                2288     nominal
                2289     momentous
                2290     meddle
                2291     practicable
                2292     subsistence
                2293     veto
                2294     profound
                2295     grass roots
                2296     abide
                2297     likelihood
                2298     meteor
                2299     linguistic
                2300     consequence
                2301     debris
                2302     compromise
                2303     woe
                2304     manipulate
                2305     ardor
                2306     magnitude
                2307     snail
                2308     ozone
                2309     diligence
                2310     reclaim
                2311     stereotype
                2312     uniformity
                2313     jellyfish
                2314     pretentious
                2315     paddy field
                2316     celebrated
                2317     acquisition
                2318     thigh
                2319     credentials
                2320     elated
                2321     transparent
                2322     grim
                2323     crash
                2324     utmost
                2325     inundate
                2326     glimpse
                2327     baroque
                2328     pasteurization
                2329     herb
                2330     predecessor
                2331     dismantle
                2332     ecologist
                2333     scorch
                2334     embezzle
                2335     accuse
                2336     provincial
                2337     divorce
                2338     savant
                2339     reputed
                2340     abuse
                2341     infer
                2342     sprain
                2343     mail
                2344     abortion
                2345     absolute
                2346     predominant
                2347     dine
                2348     scrutinize
                2349     barely
                2350     condolence
                2351     withdraw
                2352     Frigid Zone
                2353     ironic
                2354     acoustic
                2355     archipelago
                2356     scan
                2357     anthropology
                2358     corrupt
                2359     hypothetical
                2360     incompatible
                2361     indispensable
                2362     seep
                2363     rubble
                2364     stern
                2365     benevolent
                2366     illuminate
                2367     industrious
                2368     detergent
                2369     converge
                2370     brand-new
                2371     growl
                2372     descend
                2373     outlet
                2374     volatile
                2375     proprietor
                2376     hypocrisy
                2377     reservoir
                2378     barren
                2379     solitary
                2380     raid
                2381     runoff
                2382     built-in
                2383     apathy
                2384     incontrovertible
                2385     candor
                2386     illiterate
                2387     smother
                2388     levity
                2389     forbearance
                2390     strive
                2391     arduously
                2392     placate
                2393     perch
                2394     dismal
                2395     zinc
                2396     shudder
                2397     hemorrhage
                2398     sluggish
                2399     visionary
                2400     hectic
                2401     narcotic
                2402     stem from
                2403     junk
                2404     acute
                2405     monotonous
                2406     valid
                2407     sporadic
                2408     admonish
                2409     convene
                2410     faction
                2411     abruptly
                2412     controversial
                2413     unique
                2414     feudal
                2415     impetus
                2416     speculate
                2417     bold
                2418     stem
                2419     articulate
                2420     acid
                2421     outright
                2422     itchy
                2423     submit
                2424     cardiac
                2425     satirical
                2426     throne
                2427     discount
                2428     novelty
                2429     derive
                2430     formidable
                2431     confine
                2432     gale
                2433     expertise
                2434     eclectic
                2435     tactics
                2436     amity
                2437     stroll
                2438     insolent
                2439     rehabilitate
                2440     redundant
                2441     fervor
                2442     insolvent
                2443     lethal
                2444     captivity
                2445     taper
                2446     natal
                2447     wholesome
                2448     clemency
                2449     afflict
                2450     common sense
                2451     prose
                2452     detain
                2453     simultaneous
                2454     tuition
                2455     remorse
                2456     additive
                2457     disclose
                2458     eccentric
                2459     postscript
                2460     restless
                2461     reckless
                2462     boxwood
                2463     larva
                2464     prodigal
                2465     intrude
                2466     defendant
                2467     sparrow
                2468     offshore
                2469     cosmic
                2470     stockpile
                2471     wedge
                2472     boost
                2473     ail
                2474     haunt
                2475     thesis
                2476     curtail
                2477     dynamic
                2478     blatant
                2479     plateau
                2480     adversary
                2481     deadlock
                2482     erode
                2483     infrastructure
                2484     Uranus
                2485     tentative
                2486     agenda
                2487     document
                2488     groan
                2489     esteem
                2490     disruption
                2491     antipathy
                2492     infallible
                2493     mend
                2494     renewal
                2495     plutonium
                2496     coffin
                2497     whistle
                2498     equivocal
                2499     concise
                2500     foe
                2501     hamper
                2502     ranch
                2503     provoke
                2504     smuggle
                2505     conclusive
                2506     depict
                2507     limestone
                2508     aggravate
                2509     censor
                2510     rugged
                2511     negligence
                2512     didactic
                2513     converse
                2514     converse
                2515     credence
                2516     hawk
                2517     anonymity
                2518     tedious
                2519     sprout
                2520     devastate
                2521     inert
                2522     indulge
                2523     trivial
                2524     ambiguous
                2525     dismiss
                2526     municipal
                2527     back away
                2528     aggression
                2529     miscellaneous
                2530     precipitate
                2531     jogging
                2532     retail
                2533     lucrative
                2534     marital
                2535     upright
                2536     cumbersome
                2537     savory
                2538     uneasy
                2539     penetrate
                2540     rhetoric
                2541     sanction
                2542     contend
                2543     compensate
                2544     notorious
                2545     colleague
                2546     impede
                2547     at one's best
                2548     erupt
                2549     foster
                2550     propriety
                2551     offset
                2552     phobia
                2553     latent
                2554     authentic
                2555     recession
                2556     vegetation
                2557     incisive
                2558     ascribe
                2559     carnation
                2560     onlooker
                2561     distort
                2562     induce
                2563     oppression
                2564     insensitive
                2565     mirage
                2566     obstinate
                2567     irreparable
                2568     outskirts
                2569     terminate
                2570     forgo
                2571     gloomy
                2572     mystical
                2573     enhance
                2574     pier
                2575     legislation
                2576     salvation
                2577     apparatus
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                コウタロウ英国留学記(4)
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                  Walmerで木登り

                  コウタロウ英国留学記最終回。
                  イタリア・ポルトガル・スペインへの旅行
                  大学でのエッセイの追い込み、そして帰国


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                  1月「涙」

                  ローマの危険で不気味な地下鉄

                  12月31日ローマに向けて出発した。移動にはドイツのLCCのライアンエアーを利用した。


                  LCCは値段が安い分、郊外にある空港を使う場合があるが、イギリスの拠点はロンドン北部にあるスタンステッド空港で、フライトの時間を考えないと空港までの交通費や前泊の宿泊費などでLCCを使わない場合よりも高くつく場合がありそうだなと思い、注意が必要だと思った。
                  飛行機でアルプスを超える時の景色は忘れられない。地上から見ると巨大な山々だが、上空から見るとちっぽけだ。雲の間から刺々しく山頂が顔を覗かせる。



                   
                  ホテルはヴェネチアへの列車が出発するローマテルミニ駅付近にとった。
                  空港から駅まではシャトルバスで移動した。バスでの移動中から古代の遺跡が見えて、また石畳の道路の脇に高い木が立っていてこれぞ”ローマへの道”と言う場所を通ったので、興奮気味に車内からカメラを向けていた。街自体が遺跡というか、遺跡が街を構成している、2000年前の建物が違和感なく溶け込んでいるという感じがした。



                  コンスタンティヌス帝の凱旋門


                  ローマ市街南側の境界、サン・セバスティアーノ門


                  アッピア街道。ローマ付近は現在でも車道として使われているらしい。どの車も石畳の細い道をとんでもないスピードで走る
                   
                  ローマの地下鉄はロンドンやパリとは比べ物にならにならないほど暗く、施設が古びていた。車両も全面にスプレーで落書きがしてあり、落書きなのかアートとして描かれているのか判断しかねた。
                  地下鉄ではスリに合いそうになった。僕が乗った電車は満員だった。これは注意していなければスリに遭っても不思議ではないと思っていたところ、ドアが閉まる直前に30歳くらいの男の人が僕の正面に不自然に割り込んできた。想像した通り、彼は僕のポケットに手を突っ込んできた。スリに会わないようにポケットには何も入れていなかったので被害はなかったが、実際にスリに遭遇して貴重な体験ができたと思った。不思議だが実際に自分がターゲットになったことが嬉しかった。


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                  2015年1月1日の始まりはスペイン階段の上で過ごした。偶然、留学していた日本人の友達とローマにいる日が被ったのでせっかくだからと、一緒に晩御飯を食べ、新年をカウントダウンして迎えた。
                  ローマの年越しは花火がいたるところで打ち上げられ、また、爆竹がひっきりなしにならされ、耳がおかしくなりそうなぐらい騒がしかった。遅くなりすぎても怖いので、1時ころホテルに帰った。

                   
                  ヴァチカンの大混雑

                  1月1日。元日は多くの施設が閉じているので、次の日の観光ローマの街をひたすら歩き続けた。少し歩けばコロッセオ、また少し行けばトレビの泉、その目と鼻の先にマルクス・アウレリウス・アントニウスの廟と、世界史の資料集でしか見たことのなかった建造物が自分の目の前にある、夢のような時間だった。
                   
                  1月2日はヴァチカンに行った。ヴァチカン美術館は長蛇の列ができることで有名で、事前予約が必須であるが、実際に行列を目の当たりにしてぞっとした。チケットを購入しようとする人とは別に予約をしている人の列すらできる。
                  中に入って気づいたが大方の目当てはシスティーナ礼拝堂だった。壁面、天井を隙間なく埋め尽くす壁画にはため息しか出ない。この空間だけ異様だったのは薄暗さと、私語とカメラの仕様に対してとにかく厳しいことだ。少しでも声を発したら注意されるし、カメラを構えようものならすぐに警備員が飛んで来る。システィーナ礼拝堂の特別さと神聖さを感じる経験だった。
                   
                  博物館から出て帰るときには、城壁をぐるっと囲うほどの列ができていて、この行列に並んだら観光どころではなく並ぶだけで一日の観光が終わってしまう恐怖感を覚えた。予約は大事だとつくづく感じた。そのあとサンピエトロ寺院に入ったが、想像していたよりも巨大で、ペトロの墓も荘厳な雰囲気を帯びていた。



                  イタリアでは、ピザはレストランでも大衆食堂みたいなところで食べても種類が豊富な上、安くて美味い
                   

                  コロッセオとカタコンベ

                  1月3日は午前中にコロッセオを見学した後、午後はカタコンベに行った。
                  コロッセオはむき出しの地下部分、昔は檻として使われていたところに苔がはえていて、感情がないというか寒々しい雰囲気を醸しだしていた。客席部分は人がどうやって座っていたのか想像できないくらい傾斜が急で壁のようだった。グラジエイターは戦い続けるか死ぬかの選択肢しかない悲惨な状況だったというが、人が獣と闘うのを見て、観客が興奮していた場所だと考えると笑えなくなってきた。それにしても、ここまでしっかりと形が残る遺跡を作った古代ローマ人の力を感じる。




                  カタコンベにはバスで行けるが、どのバスに乗れれば良いのか調べるのが面倒くさいし、バスの時間に縛られるのも嫌だったので、タクシーで行こうかと考えたが、それも一人で乗るのはもったいないし、歩いたほうが最も融通がきくと考えたので結局歩いて、もしくは走っていくことにした。
                  結果的に、途中にカラカラ帝の大浴場跡を発見できて収穫もあったが、全体的に道が狭く人影がなくただただ怖い道中だった。車がたまにしか通らない、片方は工事が途中で放棄された廃墟のような建物が吹きざらしになっているような道を通った時は、思わずダッシュせずにいられなかった。頭上をカラスが飛んでいっただけで変な道に導かれているのではないかとか、誰かが待ち伏せしていて誘拐されてしまうのではいかといった妙な想像をしてしまった。
                  カタコンベに行くときは一日がかりの計画で、タクシーかバスを使い、余裕を持って訪れなければならないと学んだ。

                   
                  ヴェネチアで、たった一人の成人式

                  1月4日。朝10にローマを発ちヴェネチアへ移動した。友達の勧めでITALOに乗った。フェラーリと同じ色の鮮やかな赤が特徴の列車だ。車内では無料でwi-fiが利用でき便利だった。
                  ヴェネチアの駅に到着する手前で、電車が海の上を走るのだが、いよいよ水上都市のヴェネチアに到着したという興奮状態にしてくれる。駅を出たら目の前は運河。夢の国に来たようなわくわく感が心を支配する。水上バスであるヴァポレットのチケットを購入し乗船した。
                  ヴァポレットはいろいろな路線があり、どれに乗ればいいか迷うが、ヴェネチアの全体像を把握するために2番の船でとりあえず1周してみた。ゴンドラで優雅な時間を過ごしている人もいれば、警察もボートでパトロールしている。主要な交通手段が船ということに興奮しっぱなしだった。
                   
                  ヴェネチアでは孤独に関して考えることになった。結果的に言うと、孤独は人にあふれる場所で感じるということだ。これまでは大自然の中に一人ぽつんと立っていてなかなか人に会えないような、物理的な距離や時間的な遠さが孤独を生むと考えてきた。しかし、実はそのような状況下だと確かに寂しさを感じるかもしれないが、自然が自分の友達になったというか、包み込まれたような不思議な安心感に似た感情を抱く。

                  逆に、人ごみの中だと自分が1人でいるという事実が際立つ。有名な観光地のヴェネチアなので、周りはカップルや家族連れ、友達同士の旅行客ばかりだ。1人で行動している人はほとんどいない。日本で一番孤独な人間は、東京ディズニーランドに一人でやってくる客だと聞いたこともある。

                  そんな中で自分は1人で行動している。ちょうどそのころ日本では、もうすぐ成人式で友達は地元に帰っている。仲の良い友達と集まり酒を飲んだり、早いところでは成人式があったりしている。旧友と久しぶりに会い、成長を確かめ合い、思い出話に花を咲かせる。その様子をfacebookやtwitterに投稿したものが目に入る。そんな光景がうらやましくて仕方なかった。
                   
                  20歳の誕生日を海外で迎えるほうが貴重だとか、成人式に出席したかしなかったかなんて大した違いを生まないと自分に言い聞かせようとしたが、そう思えば思うほど、強がっているのが鮮明になり余計に悲しくなった。美しいサンマルコ広場の夜景を見ていると急に寂しさがこみ上げてきた。目の前に広がっている光景が次第に滲んでいく。一滴の涙が頬を伝うのがわかった。波の音や鐘楼から響く鐘の音が寂しい気分を助長するBGMと化した。


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                  サンマルコ広場の鐘楼より

                   
                  ヴェネチアのとびきり美味なシーフード

                  ヴェネチア二日目はブラーノ島へ出向いた。ガラス細工で有名な島で、ヴァポレットを降りると人が同じ方向に流れていくのでついて行ったら、ガラス細工の工房を見学できた。色とりどりに輝き、どうやって作業したか想像もつかないような繊細な飾り付けがされたガラスがあったのでお土産に何か一つ買って帰ろうかとも考えたが、手頃な値段のものがなく諦めた。将来こういうものが躊躇なく買える様になってからもう一度来たいと思った。
                   
                  1月6日イタリア最終日、ロンドン行の飛行機は夜なので、昼過ぎまでは観光できた。la plancaというジューデッカ島にあるレストランで昼食を食べた。トリップアドバイザーでの評価も高く、僕が行った時も満席だったので2時間待った。



                  ジューデッカ島にあるLa Palancaというレストラン

                  このレストランで、久しぶりに生の魚を食べた。カジキマグロのカルパッチョ、コイワシのマリネ、ヴェネチア名物のサルディン・サオールが盛られている前菜は2人でシェアしても十分満足できるだろうと思えるほどの量だった。それを一人で平らげたのでとても満足した。嫌な生臭さもなく味付けもさっぱりとしていて非常に食べやすかった。干したオレンジの皮を刻んでふりかけていたのはおしゃれだった。メインのトマトソースパスタも酸味と甘みのバランスが絶妙で何人前分でも食べれそうな勢いだった。久しぶりに食に幸せを感じた。オーナーが直接注文を取りに来てくれる親切な店で、待った甲斐があった。
                   
                  隣の席に座っていたイギリスのオックスフォードから旅行に来ている中年夫婦とも会話し、一人旅の寂しさが少しは解消された。食後には美しいヴェネチアの景色を目に焼き付けながら、紅茶を一杯のんびりと飲み干した。
                  トレビーソ空港まではシャトルバスで行き、ライアンエアーを使ってロンドンまで帰った。感情の起伏が激しいイタリア旅行だったが、ミラノやフィレンツェにもいけていないし、ヴェネチアは涙を流した思い出の地となったので、将来もう一度訪れたいと思う。
                  僕はヴェネチアで確実に強くなった。


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                  注文した前菜、魚の盛り合わせ。これがほんとに美味しいんだ。量的には2人前だけど、新鮮な生の魚を食べるのが久しぶりというのもあって一瞬で食べきった。

                   
                  ポルトガルとエンリケ航太郎王子

                  1月7日にイタリアから帰国して、服などを少し入れ替えてから1月10の朝にはスペイン、ポルトガル旅行に出発した。
                  スペインというと、マドリードやトレド、バルセロナお観光する方が多いと思うが、僕はグラナダのアルハンブラ宮殿にだけ行ければいいという気持ちで計画を立てた。高校二年生の時に世界史の資料集でアルハンブラ宮殿に一目惚れしてから、大学生の内に絶対に行くと決意していた。
                  またポルトガル観光で、リスボンではなくポルトを選んだ理由はエンリケ航海王子の生家を訪れるため。高校時代に年に1回生徒が発行する学校誌のようなものの学級欄で”運動できる爽やか王子”と書かれたことがあった。それ以来、エンリケ航太郎王子と呼ばれることもあった。
                   
                  例のごとくロンドンスタンステッドからライアンエアーでポルトに飛んだ。空港から試合地まではメトロで移動する。ポルトのメトロは路線数が少なくわかりやすい。車両はきれいで乗客の雰囲気ものんびりしていた。
                  ポルトはドウロ川河口付近に位置する。川を挟む形で町があり、坂に住宅が立ち並び、観光用のケーブルカーがあり、橋が架かっているなど構造的には故郷である尾道と同じ雰囲気を感じたが、建物が石造りというだけで見た目が全く違って見えた。ポルトでやりたいことは二つ。ポルトワインのワインセラーを見学することと、エンリケ航海王子の生家を訪れることだ。


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                  ポルトといえばこの景色。ドンスイス1世橋とワイン運搬船の組み合わせ。橋の上を走っているのは何とメトロ

                  エンリケ航海王子の生家は発見するのに時間がかかった。Google map のGPSと地図上の点はあっているのに、それらしき建物が全然見当たらないのだ。10分以上そのブロックを周回した末にやっと入り口を見つけることができた。しかし、観光客が訪れている雰囲気もない。ガラス越しに中を覗くと、一応見学できるようにはなっているようだったがその日は閉まっていて、それ以降しばらく開館されることはないという。質問に答えてくれた人も忙しそうにしていたので、この場所には来れたわけだし、とりあえず目的は達成したと思い、入り口にあった看板と説明書きだけ写真に収めてその場を後にした。

                  ポルトワインは、まだ糖分が残っている発酵途中にブランデーを加えて酵母の働きを止めることで甘く仕上がるのが特徴だ。まだまだ子供なのでワインの味など区別できないが、このワインがとにかく甘いことだけは分かった。ただアルコール度数が20%と通常のワインよりも高いため、甘くて飲みやすいからと言ってごくごく飲んでいるとすぐに酔っぱらう。ツアーの最後に試飲会があるが、白と赤を少しずつ飲むことができる。ジュースみたいだった。学生にとっては危険なワインだなと思った。


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                  ポルトワイン。ワインの味を区別できるほど大人な舌は持ってないけど、また飲みたくなるワインだった。

                   
                  スペイン・マドリードの8万人収容のスタジアム

                  目的を達成し早々とポルトを後にした。向かう先はマドリード。特にマドリードには用事はなかったが、ポルトからグラナダへ直接移動する手ごろな手段が無かったのでマドリード経由でグラナダまで行くことにした。
                  手段は長距離バス。パリに行くときに利用したバスが頭をよぎり、さぞかし辛いバス旅になるだろうと予想していたが、思ったより楽だった。乗客が少なく、のんびりとくつろげたからだ。距離的には420kmと国境を超えるドライブにしてはそれほど長い距離ではないが、ポルトガル内の複数の都市で客をピックアップし、スペインに入ってからも高速は走らず、いろんな街を経由して順々に乗客を降ろして回るので余計な時間がかかったが、移動が昼間で外の景色も見られたし、本を読むなどして暇を持て余すことはなかった。
                  ポルトガル-スペイン国境でウルグアイ人が二人バスから降ろされたのには少し驚いたが、無事にマドリードに到着した。マドリードのバスターミナルは巨大だった。
                   
                  マドリードのユースホステルで一泊した。ヨーロッパの街はどこもそうだが、住宅もホテルも会社も同じような石造りの外観のところが多いのでホテルの場所を見つけるのが大変だった。とくにマドリードに着いた時は暗かったので、自力では見つけられずジムらしき場所に入って受付の人に場所を聞いた。いい意味で予想を裏切り親切に答えてくれたのは嬉しかった。
                  次の日の午前中、グラナダへのバスの時間までレアルマドリードのホームスタジアムであるサンチアゴベルナベウのスタジアムツアーに参加した。ツアーと言ってもガイドはおらす、個人個人で自由にスタジアムを見学できる。試合がある日以外は基本的に見学できるそうで、これだけの人気クラブだとスタジアムツアーに参加したい人も多いだろうから、ツアーによる収入だけでも相当な額になると思った。
                   
                  8万人入るスタジアムは巨大だった。日本には8万人収容できるサッカー専用スタジアムは無い。これが満員になるとどんな雰囲気なのかと想像もつかなかったし、8万人の大観衆の中でスーパープレーを繰り出す選手たちの精神的な強さは想像もつかない。この巨大なスタジアムが試合ごとに常に満員にする集客力はクラブや選手の努力の賜物だと思った。スタジアム自体がスパースターが集うビッククラブの力を象徴している気がした。
                  スタジアムツアーでは、ロッカールーにも入れるのだが、意外にも質素で木のベンチが並んでいるだけだった。それでもジャグジーがあったりシャワーが綺麗だったり、ジャグジーとは別に風呂もあったりとホームチームのロッカーは充実していた。受験生の時とアメフトを始めてから、サッカー選手にはあまり興味がなかった僕でも知らない名前はないぐらい有名な選手の名前がロッカーに刻まれていて、凄い場所に来たんだなという以外に感想が持てなかった。
                   
                  マドリードからグラナダへの移動にもバスを使った。利用客は少なくなかったが、隣の席は埋まらなかったので、ゆったりと座ることができた。
                  休憩のためにとまったサービスエリアのようなところで生ハムを買いバスの中で食べた。抜群に丁度いい塩気が疲れた体を蘇らせる。この時から生ハムにはまった。
                  グラナダに到着してからタクシーでホステルまで向かいそのまま一泊。家族がやっているB&Bで、日本で最近話題になっている民泊みたいなホステルだった。リビングは家族と共有で、子供が親からプレゼントをもらっている様子も見ることができた。テレビでは吹替え版のドラえもんが放送されており、ワールドワイドな日本のアニメの実力に触れた。

                   
                  20歳の誕生日。一人パエリヤ

                  1月15日、20歳になった。スペインで迎える誕生日、これからの人生の中であるか無いか分からないスペインで迎える誕生日。別にスペインということにこだわりは無いが海外で迎える特別な20歳の誕生日になったことに変わりはなかった。
                  晩御飯にはパエリヤを食べた。注文するときに店主がスペイン語で何かを伝えようとしてきたのだが、しばらくしてこれは値段も量も二人前だが大丈夫かということを確認したかったらしいことがわかった。2人前を平らげることに不安は無かったのでそのまま注文した。人生で初めて食べたパエリヤだが、めちゃくちゃ美味かった。
                  イカやムール貝などのトッピングにも香ばしい味がしみ込んでいて、米にもカツオや昆布からだしをとってたいたようなまろやかな味付けがしてあった。帰国してからスペイン料理屋で何度かパエリヤを食べたが、このときを超えるものにはまだ出会っていない。


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                  世界史の勉強で憧れたアルハンブラ宮殿

                  次の日は朝からアルハンブラ宮殿とアルバイシンの丘を観光した。高校生のころからの念願がやっと叶うと期待に胸を膨らませ、歩き始めた。丘の上にあるので坂道が長く続いたが、もうすぐアルハンブラ宮殿に到着すると思うと坂道を歩いて登る煩わしさなどみじんも感じなかった。人は本当に感情に左右される。
                   
                  宮殿の入り口に到着した。イヤホンガイドを借り、順序に沿って見学し始めた。アルハンブラ宮殿は異なる時代に建てられた建物が組み合わさって構成されている。時代によって建築様式や形状なども異なるため見ていて飽きない。カルロス5世の宮殿やライオンの中庭、アラヤネスの中庭、ヘネラリーフェなど見どころは盛りだくさんだ。イスラームの装飾は繊細で、僕が行ったときは天井を修理していたのだが、修復にも時間がかかるといっていた。宮殿にはシエラネバダ山脈からの水が引き込まれ、建物の中に溶け込んでいる。水を利用しているというよりも水が活きている宮殿だと思った。噴水や水路をとおる水など音が絶えず聞こえてきて癒される。やっぱり僕は水のある場所が好きなんだと再確認した。
                   
                  アルハンブラ宮殿からはこれも世界遺産であるアルバイシンの丘が見えるのだが、一つの丘が真っ白に見えて非常に見応えがある。この丘は昔アラブ人の居住区だったところで、建物の壁がギリシャのサントリーニ島のように白で統一されている。
                  アルハンブラ宮殿に3時間ほど滞在した後、ここに歩いて向かった。歩いていると遠くからギターの音と歌声が聞こえてきたのでそれに誘われて行くと展望台にたどり着いた。ここからはアルハンブラ宮殿を一望できるのだが、ここから見るシエラネバダ山脈を背景にした宮殿も美しかった。のんびりした空気の流れる南米のような雰囲気の感じられる場所だなと感じた。



                  ナスル朝時代王族の避暑地として造られたヘネラリーフェ、アセキアの中庭。1950年代に修復工事が終わったらしく、外観はとても新しい。水が主役の庭。ベンチに座って深呼吸すると澄んだ心が蘇る。

                  グラナダにはもう一泊し、次の日の朝飛行機で帰国したが、途中経由したマドリードの空港もターミナルが巨大で乗り継ぎが大変だった。 
                  結局、クリスマス休暇でフランス、イタリア(ヴァチカン市国含む)、ポルトガル、スペインを旅行したが、それぞれ雰囲気が違って面白かった。
                  店での接し方を例に取ると、フランスはよそ者、イタリアは友達、ポルトガルではお客様、スペインでは観光客としての対応をされているなと感じた。これは僕の態度や行先で大いに変わるが僕の中での各国の印象を簡単に言うとこんな感じだ。1か月弱最初から最後まで1人で旅行すると精神的にもそこそこ疲れるなと感じた。

                   
                  日本人留学生ダニエル

                  ここである日本人留学生の男を紹介したい。その名はダニエル。顔がハリーポッターのハリーに似ていることから、ダニエルと言うニックネームを持っている。
                  彼は地元尾道では有名人だった。1/2成人式で将来の展望を発表し、国連職員になりたいと語っていたのが印象的だった。機械が動いているかのような正確なお辞儀をし、しゃべり方も只者ではない印象を受ける。尾道から広島市内の高校に進学し、卒業後イギリスに渡ったそうだ。直接面識があるわけではないが、彼と中学校が同じだった友達から間接的に話を聞くと、みんなも別次元の人だと認識しているように感じる。ブログも有名だ。
                  僕が1月にロンドンで英検を受験したとき驚愕した。筆記試験の時の試験監督がダニエルだったのだ。会場はImperial College of Londonで、後で彼のfacebookを確認してみると、やはり試験監督はダニエルだった。
                  試験会場に入室し着席して顔を上げた瞬間、知っている顔が教壇に立っているのだ。試験前だったのに、試験どころでなく動揺した。イギリスの大学に進学しているのは知っていたが、まさかこんなところで目にするとは思っていなかった。
                  試験監督と受験生という立場に歴然とした差を感じた。何が何でも絶対に合格せねばと思った。

                   
                  2月「授業」

                  英語のディスカッションの苦しさ

                  さて、ここまで大学の授業について全く触れていないので少しはイギリスでの勉強に関しても触れておきたい。
                  Pre-sessional courseが終了しテストにも無事合格したので、10月からは正規の学生と一緒に授業を受けることになる。10月からクリスマスまでの秋タームと、クリスマス休暇明けから4月2週目くらいまでの春タームがあるが、それぞれ4つずつ授業を履修した。
                  政治の導入科目や、日本の政治、イギリスの国会について、第二次世界大戦中のイギリス、EUの仕組み、世界の帝国史などに関する授業をとった。ジャーナリズムを学んでみたかったが、開講されるのがバスで1時間ほど離れたキャンパスにあり他の授業との兼ね合いもあり、取るのを断念した。
                   
                  1つの授業につき週に1時間の講義(レクチャー)と1時間のゼミのようなディスカッションの時間(セミナー)がある。つまり他の人と顔を合わせて学ぶのは各ターム週に8時間しかない。予習復習がとても重要だということだ。講義を受ける前に2,3の資料を読み、講義の後に復習をし、それを踏まえてセミナーのための文献を読む。セミナーでは講義内容と参考文献を元に議論をして理解を深める。
                  僕が最も苦労したのがこの部分で、いくら参考文献を読んだところで、背景知識の量が違いすぎ他の学生が説明していることが少ししか理解できない。イギリス政治の授業はセミナーのグループで自分以外全員ネイティブだったので会話のスピードも速くついていくのが必死だったというか、完全についていけてなかった。
                   
                  セミナーではどれだけ積極的に議論に関与しようとしても限界を感じた。外国人の僕には、アクティブラーニングのようなセミナーはきつい。聞き流しても内容は入ってこない。
                  逆にレクチャーは日本の大学の一般的な講義と同じで先生がスライドなどを使って解説していく方式だ。先生が説明口調で、プレゼンのときのように聞き手の学生を意識して話してくれるので非常に聞き取りやすかった。



                  イギリスで読んだ日本の文庫本。本体価格1円の中古の本だけど、古本独特の匂いと日焼けした紙の感じが好き。文字が小さいのも昔っぽい。

                   
                  3月「坊主」

                  長髪を一気に坊主にした人気者koTTAro

                  4月にイギリスに来て夏に1回散髪をしたが、それ以降は耳の周りを軽く切る程度でほったらかしていた。日本人がやっている美容院に行く選択肢もあったが髪のためにお金を出す気にはならず、それなら現地の散髪屋さんに行ってテレビの企画であるようにお任せで安く仕上げてもらおうかとも思ったがそこまでの勇気もなく、結局気づいてみれば耳が完全に隠れるほど髪が伸びた。ヘルメットを被っているような見た目だった。頭が重く感じた。
                   
                  バリカンを友達に借りて、長髪を一気に刈った。思い付きは怖い。現地の床屋に入る勇気がないのに、いきなり坊主にしだすとは面白い。フランス旅行前に坊主にしていればドライヤーを荷物から省けたし、何より確実なシャワーが保障されないユースホステルなどでは洗面台で頭を洗ったりできるので非常に便利だったというのに。乾かす手間も省けたし旅行の前に坊主にすればよかったと後悔した。
                   
                  坊主にした後アメフト部の練習に行くと、いつもは“Hi,koTTAro”と迎えてくれるはずのみんなが、僕のほうを見ては目を丸くしている。QBのローレンスには誰かまったくわからなかったといわれた。自分の目の前にいる日本人がkoTTAroであると認識されてからは丸めた頭を触られまくった。一瞬だけでもFalconsの中心になった気がしてうれしかった。ちなみに、チームメイトたちは‘こうたろう’とフラットに発音することが難しいらしく、イメージとしてはkoTTAroと呼ばれている感じなのでこう表記している。
                  イニシエーションのコスプレといい、突然坊主にしてくるのといい、最初から最後までこの日本人はどこか狂っていると思われていたかもしれない。
                   
                  エッセイ。エッセイ。エッセイ。エッセイ。エッセイ。エッセイ。3月の僕の頭の中を文字であらわすとこうなる。24時間こんな感じだった。本当にエッセイに追われていた。一つ2年生の授業を取っていたのだが、エッセイが3500ワード以上で死ぬかと思った。レッドブルを飲み夜遅くまでエッセイを書き続けた。この時が一番留学生らしかったかもしれない。
                   
                  4月「362日ぶりの日本」

                  帰国の荷造りはたいへん

                  帰国の時が近づいてきた。たった1年とはいえど、イギリスに来た時よりも格段に荷物が増えている。パークウッドには服や靴、本などを入れておけばユニセフに寄付されるボックスが設置してあったので、日本に持って帰って使うほどでもないが、まだまだ使えそうな靴や衣類、文房具などを大量に寄付した。1年前の反省を活かし、できるだけ荷物を減らしたかった。
                  帰国3週間前頃から荷造りを始めた。お土産などに多くのスペースお割かれるので苦労した。どうしても入りきらない荷物は新しく大きくて安いスーツケースを買い、クロネコヤマトで日本に送った。
                  帰国2日前、2年生のWRで一番仲の良かったセドリックが、帰国するコウタロウのためにメッセージを募ってくれた。多くのチームメイトから嬉しい言葉をもらい、世界とつながったと思った。QBのローレンスやセドリックとは今でも連絡を取る。
                   
                  海外での「湯船愛」

                  日本でも一人暮らしをしているとシャワーで済ます人が多いかもしれない。しかし、家に湯船があり入ろうと思えばいつでもお湯を張れる状況と、入りたくてもシャワーの施設しか無いのとでは全く違う。シャワーだと立ちっぱなしで足がつかれリラックス出来ない。少しでも風呂でくつろぎたかった僕はバケツを持ち込み、そこに座り壁にもたれかかり、ぬるめのお湯を浴びることで何とか気持ちを紛らわしていた。だが、湯船には到底及ばない。
                  またクリスマス休暇の時は結局時間がなくて断念したのだが、湯船というか温泉に浸かりたくてハンガリーのブダペストに行くことを本気で計画していた。それほど湯船に恋焦がれていた。
                  そして帰国直前に湯船に浸かる機会が訪れた。ヒースロー空港で前泊した部屋に湯船があったのだ。興奮した僕は熱いお湯を貯め、ざぶーんと勢いよく浸かった。思わずのぼせるまで浸かってしまい、熱くて風呂上りに全裸でいたら案の定湯冷めして、次の帰国の日の朝、体調は最悪だった。風邪をひいているときの長時間フライトは辛い。

                   
                  帰国してインフルエンザに

                  日本を出国してから362日ぶりに帰国した。到着ゲートを出て親の姿を発見した時は、親がここにいてくれるだけで安心感を抱いていることに気が付いた。「久しぶり」と言うと「風邪は大丈夫?」と母親は言う。特別な言葉をかけるのも照れくさいので、何気ない日常にありふれたような会話をした。
                  体調が優れなかったので、“3大食べたい”の、焼き肉、ラーメン、すし、を置いてうどんを食べた。だしの味が体にしみた。うまかった。やっぱり日本食はうまい。そう思った。
                   
                  父の運転する車で尾道まで帰った。家についたころには熱が上がっていて、病院に行くとインフルエンザだと診断された。帰国早々のインフルは残念だったが、1週間ほどゆっくり休めと言われているのかなとも感じた。
                   
                  最後に、留学したいと言い出した僕を叱咤し、情熱的に牽引してくださり、この場でコウタロウシリーズイギリス編を書く機会を設けてくださった笠見先生には最大限の感謝を表明したい。
                  また家族、祖父母、BADGERSの仲間、留学中出会った日本人の留学生たち、留学制度を維持している岡大の担当者の方々、全ての方の協力、サポートのおかげで留学が成り立っていたことに感謝したい。
                  さらに直接の関わりはなくとも僕を応援してくださっている方々もいることを認識し、その方たちの期待を裏切らないように成長し続けなければならない。
                  その一歩目として、帰国後一年間の僕の歩みをアメフト編として書く。


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                  最後のヒースロー空港。さよならイギリス、また来るでー


                  コウタロウ英国旅行記 完 


                  これは、コウタロウが大学2年の、イギリスへ留学した時の体験記である。大学1年での、アメフトと留学を目指すための英語勉強を両立した体験は、コウタロウシリーズ(31)を参照してほしい。


                   
                   
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                  コウタロウ英国留学記(3)
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                    ケンブリッジで、藤原正彦『遥かなるケンブリッジ』を読む



                    11月「両親英国上陸」

                    コッツウォルズへ両親を案内

                    11月に入り雨の日が増えてきた。
                    11月の重大イベントはなんと言っても両親がイギリスに来たことだ。両親がイギリスに到着した翌日に会ったのだが、「その格好で寒くないん?」と最初に僕にかけた言葉はやはり僕を気遣う言葉だった。「入国審査大丈夫だった?」と聞くと、「何がなんだか分からなかったけど2人で何とか通してもらえた、一組前のアジア人が部屋に連れて行かれていて焦った」というようなことを不安そうに、でもどこか楽しそうに話してくれた。
                     
                    メインイベントはコッツウォルズへの日帰りツアーだ。母がガイドブックを見て一目惚れし、なんとしてでも行きたいと言っていたので、実現して良かった。コッツウォルズは見どころとなる町がそれぞれ離れているのでツアーで行くのがお勧めだ。僕たちはロンドンヴィクトリア発のみゅうのツアーに参加した。バイブリーという村はイギリスで最も愛らしい村と言われ、澄んだ小川と緑が抜群の調和をなしていた。湖水地方にも行きたかったそうだが、時間的に厳しかったのと位移動がしんどそうだったので今回はパスした。

                    行きたかったポーターズというレストランで晩御飯を食べたり、ウェストミンスター寺院に行ったり、ビックベンを見たり、テムズ川クルーズの遊覧船に乗ったり、観光地を巡った。特にウェストミンスター寺院は気に入ったようで、「ウィリアム王子が結婚式したとこよね!?」などと終始楽しそうだった。他に、カンタベリーに来たときに丁度アメフトの試合があったのでそれを見てもらった。

                    2階建バスに乗る機会がほかになさそうだったので、ここぞとばかりにバスに乗ってしまいバッキンガム宮殿の衛兵交代式を見逃したのは僕の最大のミスだ。悔やんでも悔やみきれない。
                    またエッセイのデッドラインが近く僕が慌ただしくしてしまったせいで十分に案内してあげることができなかったのが非常に心残りなので、もう一回家族でイギリスに行って今度はゆっくり観光したい。

                     
                    錦織圭とPerfume

                    この月は錦織のATPツアーファイナルを観戦しに行くことができた。ウィンブルドンに錦織の試合を見に行くことはできなかったが、タイミングが合い見に行った試合で錦織はマレーに対して見事に初勝利を挙げた。日本人として誇らしかった。また、テニスの試合を生で観戦したのは初めてだが、ポイントが入るごとに盛り上がり、プレーが始まるときには一瞬にして静寂に包まれる観客のマナーの良さに感動した。


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                    青い照明に包まれたO2アリーナ
                     
                    11月にはまた、Perfumeのロンドン公演が開催された。公演直前にタイミングよく、友達の別府君がフェイスブックにデビュー15週年の記事を投稿していて、それを見てロンドン公演のことを思い出した。これはなんとしても行かなければと急いでチケットをとった。
                    左端でステージの端っこが切れて見えない時もあるが、なんと前から3列目の席を確保することができた。Perfumeに関わらずコンサートに行くこと自体が時初めてだったので、その場の雰囲気に感動した。加えて、Perfumeは広島出身ということで、イギリスで同郷のアーティストが活躍している姿を見ると勇気がもらえた。

                    それまではPerfumeに特段興味があるわけではなかったが、異国の地にいる時は同郷というだけでここまで親近感が湧くものなのかと不思議に思った。体に映像を投影するプロジェクションマッピングや、あーちゃんによる自由奔放な進行もぞんぶんに楽しめた。半分以上は日本語を話しているのに、会場全体が燃え上がっていて、お客さんを楽しませるプロだなと思った。
                    錦織の活躍とPerfumeの公演は、イギリスのどんよりとした天気に負け鬱気味だった僕に元気を与えてくれた。


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                    前から6列目で飛んだり踊ったり、ハッスルしてました。Perfumeとかなり近かったです。聞きたかった広島弁は1人1回ずつ喋ってくれました。今日は大満足。
                     

                    12月「冬の旅行」

                    パリでジプシーに襲撃される

                    12月の中旬に各授業の期末エッセイを提出し終わったら、いよいよ待ちに待ったクリスマス休暇が始まる。取っている授業によって違うが、12月20日頃から約1か月間の休暇だ。
                    僕はまずフランスに行くことにした。パリがどれほど美しい街か感じてみたかったし、ヴェルサイユ宮殿や、モンサンミシェル、ルーブル美術館など、行きたい名所が多くあったからだ。またウッチャンナンチャンが泳いで渡ったドーヴァー海峡を船で渡ってみたかった。

                    ドーヴァーでバスに乗り、すぐに乗船し1時間半程度の航海。カレーに上陸し、バスでパリのバスターミナルまで行く。9時間弱の長時間移動なのに4列シートで、居心地は最悪、満席な上に子供がはしゃいだりするとくつろげない。
                    唯一の救いだったのは、隣に座っていたおじいさんが教師をしていた若いころの話や、イギリスとフランスのクリスマスの違いなど、会話に付き合ってくれたことだ。現在はパリに住んでいるらしく、イギリスから帰っている途中だったそうだ。


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                    バスに乗ってからフェリーに乗り込むまで2時間以上かかった。その大半が入国審査待ち。旅程の1/4を全く動かずにバスの中で待機というのは辛い。

                    午前8時半ごろにパリのバスターミナルに着いた。計画では朝着いて数カ所めぐろうと思ってたが、バス旅に疲弊しすぎて行動する気が起こらなかった。
                    お腹がすいたのでとりあえずマックに入りハンバーガーを頼もうとしたが、店員さんがフランス語しか話さないので注文に手間取った。挨拶以外のフランス語は全く分からなかったので指で注文した。パリでは英語を話してくれない人が多いと聞いていたが、英語で大丈夫だろうと気軽に構えていたので意表を突かれた。フランス観光が一気に憂鬱になった。
                     
                    朝のパリには地元の人しか受け付けない雰囲気を感じ、居心地が悪くなり、地下鉄で何気なくテュイルリー公園まで行った。公園を散歩しているときにジプシーのような集団に声をかけられた。ジプシーとは東欧を中心に生活している移民型民族の総称であるが、中には大都市の観光名所でスリをしたり、詐欺行為をしている人もいる。僕が出会ったのは詐欺のほうだ。手に署名用紙みたいなものを持っていて名前を書いてほしいとのことだった。言われるままに名前を書くと次は数字の欄だった。ここでしまったと思ったがもう遅かった。
                    気づけば僕の周りを5人以上の女の人が囲み、「money, money.」と連呼していた。あーこうやって金を取られるんだなと落ち込んだが、簡単に金を奪われるのも嫌なので逃げる方法を考えた。結局金を渡そうとして相手がちょっとだけでも気が緩んだ瞬間にダッシュするという強引な手段を採用した。後ろからは僕を罵る声が聞こえたが振り返らなかった。最悪なフランス観光のスタートになった。
                     
                    長時間のバス旅に加え、ジプシーに追い詰められて憔悴した僕は、ガルニエ座付近にあるスタバで休憩することにした。コーヒーを注文し二階に上がった。ツイッターを開き、Taloと書かれたコップを写真にとってツイートしたのを思い出す。


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                    ヴェルサイユ宮殿は「ただの箱」

                    手動ハンドルで開閉する地下鉄のドアに戸惑いながらなんとかホステルにたどり着きチェックインを済ませた。チェックインしてからは、ご飯を食べて周辺探索に終始し、早めに就寝した。フランス2日目12月24日クリスマスイブ。ノエルをパリで過ごすと聞くと美しいが、男子が一人でクリスマスマーケットを探索していても何もロマンチックでもない。
                     
                    この日のメインイベントはヴェルサイユ宮殿に行くこと。思ったよりも中心部から離れていて電車で行かなくてならない。イギリスでもオランダでも思ったがヨーロッパは中心部を少し離れると一気に閑散とし田舎の雰囲気が出てくる。日本だと中心部から離れていくとグラデーションのように徐々に田舎に移行していくが、街の成り立ちの違いがこういうところに現れるのだと感じた。
                     
                    また、電車の中でアコーディオンを演奏する人がいて、演奏終了後にチップを求めてきたが入れるべきか入れないべきか分からず一度は断ったが、他の乗客たちが気前よくハットの中にチップを投げ込んでいたので、僕もそれに倣って、気持ち分のチップを投げた。電車内で楽器を演奏するのは、日本ではありえない光景だなと思った。僕がポケモンの歌を歌ったら、チップが集まるのだろうかと呑気なことも思ったりもした。
                     
                    ヴェルサイユ駅に到着した。みんな目的地は同じなので地図がなくとも宮殿まで迷うことはない。駅からの一本道を左折すると宮殿が見えてくる。金の装飾が目立つ宮殿もさることながらその前に広がる広場の広さにも驚いた。イギリスの学生ビザは最強でヴェルサイユ宮殿にも無料で入ることができた。
                    ヴェルサイユ宮殿の一番の目玉はなんといっても鏡の間で、ヴェルサイユ条約の調印式が行われた場所だ。まばゆいばかりに輝く華々しい歴史を感じた。しかし、宮殿の他の部屋には装飾品が残っておらず思うほど過去の栄光を実感することはできなかった。

                    建物自体は本当に大きいし、豪華絢爛なのは分かったが、“ただの箱”という印象で、そこまで感動はしなかった。中国の紫禁城に訪れた客も同じ印象を抱くと聞く。グランド・トリアノンやプチトリアノンせっかくなので行ったが、こちらは、豪華さは損なわず、かつ生活感があって落ち着く感じがした。プチトリアノンにはトイレがあって、これには驚いた。当時のフランスはそこらかしこでところかまわず脱糞し、トイレもないものだと思い込んでいたので意外だった。
                     
                    もう一つ想像を超えたのは庭園の広さだ。観光客用に自転車やカートが用意されているほどだ。歩いて回ろうと思ったら誇張無しに一日かかるか、その前に疲れ果ててしまう。大きさや富や地位を現していたのだと思うと納得する。とにかく広い。庭というより森。装飾よりも規模に驚かされたヴェルサイユ宮殿だった。
                    パリ中心部に帰ってからは、ノートルダム大聖堂に行った。クリスマスのミサが行われていて、人が多かった。青く灯された巨大なクリスマスツリーが、雨がぱらつく中で印象的だった。


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                    ヴェルサイユ宮殿。宮殿内、今でも豪華絢爛な鏡の間以外は想像していたよりも普通の宮殿だという印象を受けた。家具や装飾品がごっそり持って行かれとるせいだろうか。
                     
                    フランス2目12月25日、クリスマスに唯一営業しているエッフェル塔に行った。エッフェル塔で驚いたのが、ベビーカーを押したままエッフェル塔最上部の展望台まで上がっていた観光客が、一組ではなく、いた事だ。ヨーロッパは日本よりもベビーカーを押す子供連れの家族に対して優しいと聞くが、エッフェル塔まで連れて登るのだなと感心した。景色は言わずもがな綺麗だった。凱旋門を中心に放射状に広がるパリの構造が一望できた。


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                    ベトナム人街の汚い公衆トイレ

                    エッフェル塔の観光が終わった後はパリ13区にあるベトナム人街に行った。昼ごはんにフォーでも食べようと考えた。
                    ここでは人生で一番汚い公衆トイレを経験した。街を歩いているときに急にトイレに行きたくなった。かといって日本のようにコンビニがあるわけでもなく、クリスマスなので開いているカフェも見つからず、仕方なく公衆トイレを使うことにした。コインを入れたら扉が開く方式だが、コインを入れても開かない。扉が少し開いていたので手で無理やりこじ開けた。

                    入ってみると清掃されている痕跡がない。しかも前の人が残したであろう便が残っており悪臭を放っている。一刻も早くそこを出たかったが、排便という生理的欲求には勝てない。漏らすわけにもいかないということで、腰を浮かして排便した。幸いにも極限まで我慢していたため、瞬間的に用を足すことができた。トイレットパーパーが備わっているはずもなく持っていたポケットティッシュで拭いた。少しおなかが痛かったのもあり、フォーを食べるのは諦めて、ホステルに戻った。
                     
                    モンサンミシェルとラム肉

                    翌日、モンサンミシェルには日本人向けツアーを企画しているみゅうのツアーで行った。休憩がてら小さな歴史のある街によるのだが、そこでフランスらしい棚を発見した。小さな町の小さなスーパーなのに1ラインの棚全てをチーズが埋め尽くしていた。種類が多すぎてどれがどんなチーズなのか全くわからなかったので、写真だけとって思い出にとどめておくことにした。


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                    田舎町のスーパー。日本のコンビニと同じかそれより小さい店だけど、この棚は1面チーズ。イギリスに来てやっとチーズを食べられるようになった僕は種類多すぎて混乱状態

                    当日は雨の予報だったが、バスで移動している最中に強風によって雲が押し流され、到着する頃には晴れ間が覗いていた。モンサンミシェルは言わずと知れた海に浮かぶ寺院であるが、陸地と寺院を繋ぐ歩道が潮の流れを遮り砂が堆積し、このままでは陸続きになってしまうということで潮の流れを遮らないように橋を設置する工事がちょうど終了したところだった。橋の横にはパワーショベルが数台止まっていた。

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                    写真やテレビで取り上げられているせいか初めて目に入ったときの感動はそれほどなかった。ただ天井が木の板のところがあって、大聖堂が火災で燃えたとか、空襲にあって消失したとか聞いたときに石造りの建物なのに燃えるのかなと不思議に思うことが少なくなかったが、このとき初めて大聖堂の中で木を見て、燃えることがあることに納得できたのは収穫だった。

                    モンサンミシェル周辺はラム肉が有名で、こちらも有名な貝類とどちらを昼ごはんに食べるか迷ったが、ラム肉を食べた。ラム肉は生臭く食べにくいイメージがあったが、ここで食べた肉は嫌な臭いもなく、さらに柔らかくとても美味しかった。
                    先ほど感動はなかったといったが、参道や周辺の家は趣があって気に入った。


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                    僕が羊肉を好まない理由の独特の匂いがほぼ無かったのは子羊の肉だからなのか、ガイドさんが言うように潮を被って塩分を含んだ草を食べているからなのか
                     
                    パリの美術館巡り

                    パリではルーブル、オルセー、オランジュリー、ポンピドゥーセンターの近代美術館の合わせて4つの美術館を巡った。
                    オルセーは駅舎を改装して美術館にしているそうだが、駅舎が美術館になったという驚きよりも、こんなにも壮大で装飾に凝った建物が駅舎として使われていたことに驚いた。
                     
                    ルーブル美術館には一日を費やそうと考えていたが、広大すぎで絵をじっくり見ていたら一日で回るのは不可能だと思ったし、それ以上に歩き続けると足がしんどくて半日が限界だと感じた。実際の滞在時間は5時間程度。モナリザや、ナポレオンの戴冠式、サモトラケのニケや、ロゼッタストーン、など見逃せないものをかいつまんで見学して回った。


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                    ルーブル美術館、イギリスの学生ビザのおかげで無料だったし、リシュリュー翼から入ることによって全く待つことなく入場できた!メインエントランスはとんでもない列ができていたというのに。
                     
                    近代美術館は僕にはまだ早かった。近代の芸術を楽しんで鑑賞するセンスや技術は身に付いていない。キャンバスを赤一色で塗っただけのものや、メッセージ性を帯びているのはわかるが、時間をかけて解釈を考えるほど時間に余裕がなかったので一通りめぐるだけで、そんなに時間を割かなかった。
                     
                    一番気に入ったのがオランジュリー美術館。こじんまりとしているが、モネの睡蓮を展示するために改装された美術館で濃度が高い。モネやルノワール、セザンヌといった印象派の画家やピカソやゴーギャンの絵もあり、どれも有名な絵画ばかりで、しかも展示の仕方も凝っている。モネの睡蓮がパノラマ展示してある部屋で一日中読書でもしていたい気分になった。
                     
                    パリの地下鉄は路線がわかりやすく攻略すると移動が楽になるので、観光が一気に楽しくなる。芸術の都パリというイメージから多くの人が施設や町並みから人々のファッションまで、何もかもが美しいという幻想を抱いて旅行に向かう人が少なくないと思うが、その幻想もパリに行けば壊されるかもしれない。
                    ジーンズにダウンを羽織っているし、道端にはごみが落ちていたり、匂いもよくはない。そんなことを考えながら再び長いバス旅に耐えながらカンタベリーまで帰った。

                    (つづく)
                     

                     
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                      7月「静寂」

                      夏休みにWalmer城観光

                      正規の学生たちは夏休みに入り、大学の敷地内から姿を消す。Parkwood は語学コースに参加している学生だけになり閑散とする。
                      7月は淡々と勉強をする日々が続いた。7月のハイライトはWalmer観光だ。Walmerはカエサルが上陸した海岸だそうだ。Walmer城はイギリス南東部を防衛する拠点のひとつで、重要な役割を果たしていたという重要な街だ。
                      当日は雨の予報だったが、バスでの移動中に晴れてきて、到着したころには青空が広がっていた。その分強風が吹き荒れていたが。Walmerの海岸は砂ではなく大き目の石の浜で、日本ではあまり見ないような海岸だった。
                      雨上がりなので空が青く白い雲とのコントラストが美しかった。足を肩幅に開き、腕を組んで海に向かって仁王立ちすると気持ちが引き締まるというか、自分はちっぽけだ、まだまだ頑張らないと、という気持ちになってくる。





                      Walmer城とQueen Mother's Garden。ヘンリ8世の時代に建てられたイギリス南東海岸にある5つの城のトップ。庭は現エリザベス2世の母、Queen Motherの95歳の誕生日に合わせて造園されたもの。 

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                      その先にある海。WalmerはDoverと違って海岸線が崖ではない。2000年ほど前、カエサルが上陸したとされている海岸。かなり大きめの石が転がっている。どこまでも続きそうな浜辺。写真で見るよりかなり急斜面。風がとんでもなく強かった。うおりゃ→ジャボーン。 



                      8月「念願」

                      サッカー少年、念願のプレミアリーグ観戦


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                      ついに、サッカーを始めたころからの夢だった、生でプレミアリーグ 観戦を達成した。
                      ロンドンにはチェルシー、アーセナル、トットナム、クリスタルパレス、ウエストハムの5チームあるのだが、チェルシーやアーセナルの試合を観戦するとビッグクラブを追いかけるミーハーに思われそうだったのと、歴史のある中堅クラブを選ぶことでプレミアリーグに詳しい人を装えるのではないかという魂胆で、僕はウエストハムの試合を見に行くことに決めた。ちょうど吉田麻也が所属するサウサンプトンとの試合だったので彼のプレーを見れたのは幸運だった。
                      僕の中ではプレミアリーグは激しく運動量が試合終盤でも落ちないフィジカルサッカーの印象がある。だから見事なカウンターの応酬が見られる。でもそれ以上に魅力的なのはサッカー専用スタジアムと整然と着席してみる観客、そしてその観客が奏でるチャントだ。
                       
                      まずはスタジアムについてだが、プレミアリーグのスタジアムはすべてサッカー専用で、最近は建て替えが進んでいるが、古いスタジアムが多く味がある。一人ひとりの座席も広くないが密集している分、スタンドの一体感がある。またウエストハムのホームスタジアムであるブーリングラウンドはピッチとスタンドの間に傾斜がついており、最前列の席はピッチに立つ選手と同じかそれよりも低い目線で観戦できる。さらに2階席の傾斜がきつくなっており、上部の席でもピッチに近く感じ、臨場感を損なうことはない。
                       
                      チケットを取ったのが試合2週間前ごろだったのでほとんどの席が埋まっており、適当に選んだ席が偶然熱狂的なサポーターのいるゴール裏の隣だった。コアなサポーター席の近く。チケットには座って観戦するようにとの注意書きがあったが、周りの人がみんな立ってみていたのでそれに合わせて立ち見した。チャントも1週間前からYouTubeで勉強していた知識をフル活用してチャントを歌った。
                       
                      ウエストハムの試合で一番気に入ったのが、選手入場の時に歌うForever Blowing Bubblesという曲を全員が合唱することだ。日本でもベガルタ仙台が選手入場時にカントリーロードを歌うが、スケールが違った。しかも歌の歌詞に合わせて大量のシャボン玉を噴射する演出がある。瞬く間にシャボン玉がスタンドに充満する。この瞬間、僕は完全にウエストハムの虜になった。試合前にユニホームを買っていたのだが、値段が高くて後悔までは行かずとも痛い出費だったなと思っていたが、この瞬間に吹っ切れた。買ってよかったと思った。
                       
                      ちなみにウエストハムは2016-2017シーズンからロンドンオリンピックパークをホームスタジアムとして使用することが決まっており、もし次回ウエストハムのホームゲームを観戦することがあってもブーリングラウンドに行けないのが残念ではあるが、新しいスタジアムでサポーターたちがどんな雰囲気を作り出すのか楽しみだ。


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                      ウエストハムのホームスタジアム ブーリングラウンド

                       
                      生涯初の牡蠣を英国で食べて吐く

                      8月にはもう1つ事件があった。カンタベリーから路線バスで北に15分ほど行ったところにウィスタブルという港町がある。ここは牡蠣で有名な町だが、毎年8月に1週間オイスターフェスティバルが開催される。その最終日に花火が打ちあがるのだが、pre-sessionalの友達と祭りに参加した。
                       
                      広島県も牡蠣で有名なので勝手に親近感を覚えていたが、アレルギーがあるかわからないのでこれまで牡蠣を食べたことがなかった。ウィスタブルに住んでいる先生に聞くと生牡蠣でも臭みがなくおいしいというので、思い切って食べてみた。感想は…やっぱり海鮮を食べるなら日本で食べるべきだと心の底から思った。日本に帰ってから尾道で牡蠣を食べる機会があったのだが、新鮮で歯ごたえがあり、生臭さが弱かった。同時に僕は生牡蠣そのものが得意ではないことにも気づいた。もしかしたらイギリスの牡蠣も僕が牡蠣に慣れてなかっただけでそれほどまずくなかったのかもしれない。
                       
                      花火が打ちあがるまでに時間があったので現地の子供たちに倣って、牡蠣の貝殻をタワー状に積み上げその中でろうそくをつけるオブジェを作って時間をつぶした。海沿いで飲むのが気持ちよくてついつい飲みすぎた。花火が打ちあがるころには大分良いが回っていた。花火自体は楽しめたが、牡蠣しか食べておらず空きっ腹に近かったからか、帰るころには気持ち悪くなっていた。


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                      牡蠣のからを積み重ねた光のオブジェ。

                      最終のバスも無くなっていてタクシーで帰ることになった。吐きそうだったのでビニール袋を二枚重ねてそこに吐けるように準備して、予想通りそこに吐いたのまでは覚えているが、そこから記憶にない。友達に聞くと、僕はどうやらタクシーの中で嘔吐し、罰則金として100ポンドを友達が立て替えてくれていたらしい。なんとも情けないが、袋を準備していたのになぜ吐物がこぼれたのか考えてみると、イギリスのスーパーでもらえるビニール袋は非常に薄く、きゅうりのとげがひっかかったら破けるほどなので、受け皿として使った袋が破けていたのだと思っている。反省しつつも、イギリスの薄すぎるビニールを恨んだ。

                       

                      9月「引っ越し」

                      歌とダンスと酒を愛するブラジル人


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                      9月5日、Pre-sessional Courseが終了した。卒業検定のような試験があるが、2000ワードのエッセイと、リスニングとライティングのテスト、15分程度のインタビューで評価される。出来によって、1年生と同じ授業をとるか、半分は英語の授業をとらないといけないFoundationコースになるかが決まる。
                      大学院に進学するには求められる点数も高く、特に高い英語能力が求められる法律のマスターに進みたい人の中に必要な点数を獲得できず再試か、他の大学院を探すことになった人もいたが、学部に進む日本人は全員合格していた。こうして約4か月に及ぶpre-sessionalコースは終わった。
                       
                      正規の学生が帰ってくるのと、新入生が入ってくるのに合わせて、2度目の引越しをした。
                      ハウス間の距離がどれほど遠くなかったので、移動は楽だった。新しいハウスではゲイっぽいフランス人、イタリア人の女性、ブラジル人と暮らすことになった。5人のハウスのはずだが、どう考えても7人以上、日、仏、伊の3人と、ブラジル人が4人以上生活している気がした。知らない顔にどんどん遭遇して僕は混乱した。
                       
                      話を聞くと、一人は彼女と同じ部屋に住んでいて、もう一人は10月に帰国するから友達の家に住まわせてもらっているということだった。その友達もすぐ帰国するから新しいブラジル人が来るよとも言われた。
                      ブラジル人のコミュニティはつながりが非常に強いとこの時に気づいた。最終的に同じハウスに住んでいたのはKotaro(日、男)とYoan(仏、男), Melisa(伊、女), Felnanda(ブラジル、女), Jamor(ブラジル、男), Luan(ブラジル、男)である。やっと謎から開放された。ちなみにFelnandaとJamorはカップルだ。
                      Jamorは質の良いスピーカーを持っていて、料理中と食事中はキッチンで音楽を流すのだが、音楽に誘われて続々と人が集まってくる。そしてその流れで毎晩キッチンパーティーが行われる。僕の部屋はキッチンの横だったので自分が参加していないときはうるさくて仕方がなかった。言えばヴォリュームは下げてくれるが、10人も集まれば声だけで騒がしい。
                       
                      彼らを一番象徴しているなと思ったのが、金曜日に友達の誕生日パーティがあるから来ないかと誘われた月曜日の晩、「ビール飲まないか、金曜日のためのプレドリンクだよ」と言われたことだ。金曜日のプレドリンクを月曜日から始める感覚にはかなり驚いた。ブラジル人がひとたびパーティを始めれば、パークウッド中のブラジル人が集う。彼らがパーティーを始めれば当然僕たちも誘われるが、Yoanと同じリヨンの大学から来たフランス人の女も仲間に加わっていた。ダンスがひと段落着くと全員タバコをすい始めるのでそのときは自分の部屋に帰っていた。
                       
                      あるとき酔ったブラジル人(ハウスメイトではない)が、そのフランス人の女と、Yoanの部屋で体液交換をしていた。Yoanですら非常に困惑していた。これには驚いた。彼らにとってそれはコミュニケーションの手段に過ぎないのかもしれないが、何がそこまで燃え上がらせるのか理解できなかった。酒の力だけではそこまでは行くまい。二人の間に愛が存在したのか、そうも思えない。いや、コミュニケーションに場所など関係ないと言われればそれまでであるが、それでもセックスの場所ぐらい考えたほうがいい。やっぱりわからない。
                      ここでのハウス生活を通して実感したのは、ブラジル人は歌とダンスと酒を愛しているなということだ。また、ブラジル人はスパイスの使い方が抜群に上手でチキンをオーブンで焼いた料理などはもらって食べていた。夜うるさいことに悩まされたときもあったが、概ね良好な関係で生活を送っていたと思う。



                      木曜の朝にありがちなキッチンのテーブル。ブラジリアーン。


                      冷凍庫。一応1人1段で分けとるけど実際は超フレキシブル。1週間分買いだめするし、ハウスメイトはピザとかポテトとかを解凍するだけで食事を済ませるから自然と満杯になる。無理矢理詰め込みすぎて最上段の蓋は破壊された。


                      いかにも身体に悪そうなスポーツドリンク


                       
                      10月「イギリスでアメリカンフットボール」

                      アメフト部新入生のコスプレ通過儀礼

                      10月、アメフト部Falconsに入部した。正式な部員となるために参加しないといけないイニシエーション、文字通り通過儀礼がアメフト部にもある。
                       
                      内容はルーキーがいろんなゲームをする中で酒をのんだり罰ゲームをこなしたりするものだ。Falcons行きつけのパブに集合、ルーキーのドレスコードはプレイボーイバニー、更にコスプレに熱意が足らなければ罰ゲームがあると書かれてあったのでこのイベントの詳細を読んだときは全身が硬直した。できれば行きたくなかったが、これからFalconとしてアメフトを楽しみたかったので参加する以外に選択肢は無いと考えて腹を括った。
                       
                      アマゾンでできるだけ過激な衣装を購入した。尻は半分以上露出していた。イニシエーションの最中でなかったとしたら絶対に警察に呼び止められる自信がある。いざ会場についてみると僕が最も過激な、露出の多い格好をしていた。ここまでやる必要はなかったんだと気づき、後悔したし、一気に恥ずかしくなってきた。ルーキー、2年目、3年目関係なく、僕の格好を見たものは皆大爆笑した。これならエブリデイ清水氏にも負けない自信はある。恥ずかしくて仕方なかったが、これでKOTAROという名前を覚えてもらえたら羞恥心を捨てた甲斐があると思った。
                       
                      イニシエーションは続く。様々なゲームをして、負けたチームが唐辛子や、ハバネロの混ざったビールを飲むのだが、ルーキーは皆死にそうな顔をしていた。一段落した後、チームごとに大学へと歩いて帰る。道中にミッションが複数個用意されていてそれをクリアしなければならない。女の子からブラを借りてくるというミッションがあったので、パブの前で飲んでいた二人組みに声をかけようとしたら、向こうから先に話しかけてきた。
                      「ちょっとお尻たたかせて!」耳を疑ったが、彼女らは今にも俺の尻をたたこうとしている。二発びんたされた。なぜ屋外でこんなMなプレイをさせられんといけんのじゃと、という気持ちもあれば、初めて女の人に尻をたたかれたてMが目覚めそうな複雑な気分だった。これが、僕が人生で一番はっちゃけていた日の記録だ。


                       
                      ケンブリッジでパンティング

                      レンタカーを借りてドライブもした。ケンブリッジまで片道2時間強運転した。方向指示器を動かしたつもりがワイパーを動かしてしまったり、イギリス独特の信号の無い丸い交差点(ラウンドアバウト)では出たい出口で出られず何周もしたり、慣れるまでは難しかったが、イギリスは右ハンドル右側通行なので日本と同じように運転できた。ただ、信号の位置が日本で言う歩行者用の信号の位置にあったり、夜の高速が暗かったり、霧が濃かったり、他の車の運転が荒かったりと常に慎重に運転して気が疲れた。
                       
                      ケンブリッジではパンティングを体験した。一本の棒で川底に刺し、押すことで船を操縦するのだが、見た目よりも力が要るし、バランスをとるのが難しいので非常に苦戦した。ケンブリッジの学生はいとも簡単に操るので同じようにできないのが悔しかった。途中木の枝にぶつかって川に落ちそうになったのも今となっては良い思い出だ


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                      ケンブリッジで乗ったパント。プライベートだし安いし、ツアーではなく自分で漕ぐタイプを選んだわけだが…初心者には漕ぐのがとてつもなく難しい。船首が右に左に安定せず時には真横になって通行止め状態、当然他のパントとのクラッシュも何度も経験。


                      左がガイドさんで右は初めての人。なかなか真っ直ぐ漕ぐのは難しい。


                      今思えばツアーの舟を漕いでいた現役ケンブリッジ大学生の腕はとにかく太かった。何気無く操っているように見えて実はかなり体力を求められるパンティング。上手にパントを漕げる技術も紳士には必要なのか。 

                       
                      ロンドンでNFL観戦

                      NFLのLONDONゲーム観戦。これも留学中に果たしたかった目標の一つだ。
                      イギリスではアメフトはラグビーの劣化版だという意見が強い。Soccerという単語を使うと、とある先生は「それはアメリカンフットボールという危険で野蛮なスポーツを好むアメリカ人が使う言葉だから、お願いだからイギリスでは使わないでくれ」といわれたことがある。
                       
                      イギリスではサッカーはfootballと言うように気をつけたい。だが、イギリスでアメフトを好む人も増加しているのは事実だ。LONDONゲームのチケットは3試合とも売り切れるし、僕が観戦した試合もスタンドは満席だった。地下鉄でもアメフトのジャージを着た人を多く見かけたし、会場のウェンブリースタジアムは祭りのように賑やかだった。
                      NFLでは将来的にロンドンをホームタウンとするチームを作るか、既存のチームをロンドンへ移転させる計画もあるそうだ。本場のアメリカでアメフトを観戦したい気持ちが強まった。



                      アメフトはラグビーの劣化版という認識の強いイギリスでは、ラグビーのピッチサイズでアメフトの試合が行われることがしばしばある。その時は自陣40ヤード地点から敵陣40ヤード地点までが無理矢理10ヤードに縮められる。

                       
                      ポケモンの歌を英国で披露
                      僕自身のアメフト部Falconsの初戦も10月にあった。オックスフォードブルックス大学戦。試合内容はいまいちだったが、勝つことができた。
                      個人的には2回パスターゲットになって0キャッチ、ヘッドコーチからの信頼を得ていないので出場機会も少なく、QBとも息が合っていなかった。
                       
                      外国だなと思うのは試合内容に関わらず、勝利の後のテンションが異常に高かったことだ。勝利でお祭りのような雰囲気の中、帰りのバス車内でルーキーによるカラオケが始まった。ご存知の方も多いと思うが、一緒にいた人が慰めようか何と声をかけようか迷うほど僕は歌が苦手で、簡単に言えばジャイアンだ。加えてバスの中で歌えるような英語の曲をほとんど知らない。自分の順番だけがどんどん迫ってくる。迷った末に僕が選択したのが「ポケモンいえるかな」。
                      ポケモンはイギリスでも知名度が高くポケモンの話題になると盛り上がるのを感じていたので、これを選んだ。「Heloo Kids! 君はもう、たっぷりポケモン捕まえた?ポケモン151匹捕まえた君も、まだまだな君も《ポケモン言えるかな?》に挑戦だ!How’s your mouth rolling today? ピカチュウ、カイリュウ、ヤドラン、ピジョン…」と続いていくが、日本語の部分は通じないし、ポケモンの名前も日本名と異なるものがあるのでチームメイトが理解できていたのかは知らないが、みんなノリノリで聞いてくれた。
                      歌自体は誰も知らないのでリズムを間違えても、テンポをミスっても、音程をはずしても、誰も何もわからない。とりあえずピカチュウと叫んでおけばウォー!!!という地鳴りが起こった。単純なものだ。

                      (つづく)

                       
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