わが家の3匹の猫である。
一番右は母猫ピッピ。目が開くか開かないかの状態の子猫のときに拾ってきたのが2006年の5月。わが家の娘になってから3年半になる。
竹久夢二の絵に出てきそうな純日本風の風格があり、女優にたとえたら亡き太地喜和子のような吊りあがった目をしていて、雌猫の色気がある。誰もが雌猫だと第一印象で見分けられるような女の妖気を放っている。そんなピッピを僕は本名ではなく「ママ」と呼んでいる。
一番左がチッチ、真ん中がキッキ。どちらもピッピの娘で2007年の7月に産まれた。
左端の目がクリクリしたチッチは、生後8ヶ月くらいで避妊手術をしたからなのか、子猫のまま大きくなった。私が塾から帰ると廊下に飛び出してきて、腹を見せてくねくねし、愛想を精一杯振りまく。
チッチが可愛らしいので、僕は1日に5分ぐらいマッサージをしてやる。本屋で猫のマッサージの本を立ち読みして、マッサージのつぼを学び、チッチに丁寧に施術している。チッチはゴロゴロいいながら、目を閉じて気持ちよさそうにトロンとした身体で、なすがままにマッサージされている。
足裏マッサージも好きだ。肉球を揉んでやると、恍惚とした表情になり、身体が柔らかくなる。猫に足裏マッサージが効くとは思わなかった。
チッチは賢い猫だ。話しかけたら70%ぐらいの確率で返事をする。
「チッチはかわいいねえ。人間だったら奥さんにするよ」「ニャー」
「チッチはかわいいから食べてあげる」「ニャー」
チッチは人間の言葉がわかるのかもしれない。私の台詞の意味をきちんと解し、利発に反応する。
とにかくチッチは飼い主の僕が驚くほど頭が良い猫だ。
驚くべきことに、チッチに「Hello!」とあいさつすると、きちんと「ニャー」と返事をする。チッチは英語がわかるのだろうか。
ためしに「ボンジュール」と話しかけても「ニャー」、「ニーハオ」でも「ニャー」、また「アンニョンハセヨ」でも「ニャー」とかわいい声でお返事してくれる。フランス語や中国語や韓国語が理解できる、マルチリンガルの極めて知能指数の高い猫だ。
問題はキッキである。顔が不細工で愛嬌がなくデブなので「ブー子」と呼ばれている。
うちの猫は室内飼いである。母猫ピッピも生まれたときから外に一切出さない方針を貫いてきた。
ところが発情期になり、ピッピはトイレの窓から外に出た。家の回りでフラフラしていて、捕まえようと思っても捕まらない。そしてそのとき、汚らしい野良の雄猫と一緒だった。
その日のうちにピッピは家に帰ってきたのだが、汚い雄猫と不貞行為を働き、腹がみるみるうちに膨れ、子猫を生んだという経緯である。
娘のキッキは、父親の薄汚い猫にそっくりなのだ。まるで西川きよしと西川かの子のように似ている。父親は野良猫で痩せていて、いまでもわが家の周りをうろつきまわり、僕から「パパ」と呼ばれている。そんな汚らしい父親の娘キッキは林真理子・林真須美のように太っている。
キッキの表情は無愛想で声は「ウニャー」と女の子なのにドラ声で声変わりしている。
ブー子はふだんは動作が緩慢だが、キャットフードの袋の音を聞くやいなや、イノシシのように突進してくる。最初から最後まで餌の皿にかじりついている。
またブー子は夜中になると、僕の布団の中に夜這いしてくる。深夜パソコンをいじっていると、画面の前で存在感をアピールして邪魔をし、早く寝ようとせがむ。最近は毎日ブー子と寝るのだが、ブー子は体積が大きいので、冬はぬいぐるみのように抱きごたえがあり温い。
うちの三人娘の構成、どこかで見たような感じがしていたのだが、「欽どこ」のわらべ三姉妹に似ている。
チッチは賢い「かなえ」倉沢淳美。一番清純そうで、若い男性ファンから一番人気があった。ただ、チッチは振り向けばそこにいるようなふつうの女の子ではなく、外国語を操れる賢い猫だという点が違う。
ブー子は太っているのでもちろん「たまえ」。ただあんな愛嬌はないが、ボヨンボヨンした容姿はそっくりだ。
ママのピッピは「のぞみ」高部知子。顔も吊り目のところが似ているし、強いフェロモンが漂い、怪しいニャンニャン行為をするところも同じだ。
ピッピ・チッチ・キッキ、のぞみ・かなえ・たまえ。
僕はさしずめ見栄晴なのだろうか?
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