中2・中1は1月、英語の猛勉強をした。
ウイニングという分厚いテキストを、3週間でほぼ1冊終わらせた。
パワハラ塾、ブラック塾長と、子供の人権110番に通報されてもいいほどの量である。
しかも答え合わせは全部私がやり、ミスをしたら厳しく叱る。執拗に質問も浴びせる。緊張感で手を抜けない環境を君たちは耐えた。
努力の甲斐があって、、模試では全国平均が60点台前半のところ、塾生の平均は90点近くもある。
2月の学校の定期試験をはさみ、3月、またまた英語の膨大な課題である。
一難去ってまた一難、今度のテキストは発展新演習。かなり難しいテキストだ。
難しいテキストなのに、塾がコロナウイルスで休みなので、家で自分でこなさなければならない。塾の凛とした環境を、家庭で再現する必要があるのである。
ではなぜ、英語の猛勉強をやるのか?
なぜこんなに量が多いのか?
言語を習得するには、とにかく量が大切だからだ。
数学は必ずしも勉強量が得点に結びつかないが、英語は確実に勉強量と点数が比例する。英語は努力家が勝つ科目だ。
語学は量をこなすと、自然と間違った文に「違和感」をおぼえるようになる。文法的に間違った文を察知する鋭敏なセンサーが発達するのだ。
たとえば君たちは、下の英文が間違いだと一発で見抜くだろう。
He work hard.
I playing tennis in the park.
These cats is cute.
Ton can swims well.
He is a English teacher.
変な文だと素早く察知できるのは、猛勉強の成果である。英語に触れた時間が長いから、センサーが研ぎ澄まされたのだ。
三単現のsの抜け、aとanの使い分けなど、たった小さな一語で英文はおかしくなる。
。
日本語でも同じことだ。君たちは日本語ネイティブだから、瞬時に違和感に気づく。
ユウト君がチキンを食べた
ユウト君をチキンが食べた
ハルト君は慶応大学を目指す
ハルト君を慶応大学が目指す
助詞を入れ替えるだけで、意味が180度変わってくるのがわかるだろう。
言語は繊細なもので、繊細さを身に付けるには、言葉に触れる回数を増やす、すなわち勉強量をこなすことしかない。
部活でも単純な基礎訓練を反復すれば上達することを、君たちは身体レベルでわかってるはずだ。
勉強量を増やし反復することが、学問の王道なのだ。
ところで、猛勉強なんて時代遅れと思う人もいるかもしれない。まわりの中学生は君たちほど勉強していない。
だが猛勉強は「世界基準」である。日本の中学生の勉強は、特に周囲のアジア諸国に比べ、甘いと言わざるをえない。
少し大きな話をすると、日本は世界から遅れをとり,特にアジア諸国に追いつき追い越されている。
日本は物価が安い。西洋は高い。アジア諸国も昔は安かったのに、今は高い。
私はよくアジアを旅行するが、最初に韓国に行った30年前、韓国は日本に比べ貧しい国だという印象を受けた。
町はキムチのニンニク臭く、歩道は舗装されず靴は汚れ、タクシーに乗ると車の性能が悪く道路の振動を腰にダイレクトに感じた。
トイレに紙を流すと下水管が細いから逆流し、歯磨き粉は香水みたいな変な味で、駅は古くて薄暗く、軍人が多く、地下鉄の車内には物乞いがウヨウヨしていた。
でも物価は安かった。冷麺は300円、焼肉は腹いっぱい食べて800円もしなかった。高速バスの料金は日本の7分の1くらい。初めて韓国へ行った大学生時代の私は大食漢のデブだったが、食べても食べてもお金が減らなかった。
時は流れ、韓国は物価が高い。コンビニでコカ・コーラの500mlペットボトルを買うと200円はする。冷麺もソウルでは1000円以上。日本より安いと感じるのは交通料金だけといっていい。
アジアは物価が高くなり、日本はデフレで安いまま。だからインバウンドで中国韓国香港台湾タイあたりから、日本に観光客が来るのだ。
かつて日本人がアジアに旅行すると物価が安いから貴族気分になったものだが、現在はアジア人が日本で爆買いする。
日本がアジアに追いつき追い越されそうになっているのは、パワーの差、ズバリ言うと、勉強量の差だと、私は考える。
現在のアジア諸国の子供は教育に熱い。日本は豊かになり子供はハングリー精神を失い、アジアの国は貧困から抜け出そうと目が輝いている。そもそも日本には人より抜きんでて勉強すると恥ずかしいという謎の価値観がある。
(ここ十数年間の韓国は日本より悲惨な部分があるんで、その話は授業で)
韓国の中学生は学校に弁当を2つ持っていく。昼と夜の二食分で、夜は塾に深夜まで通う。夜のソウルの街は繁華街が深夜までにぎわっているが、午前0時近いのに塾帰りの中高生がショッピングセンターでたむろしている。
台湾は高層アパートが多く、子供に勉強部屋を与えられず住環境が悪いので、レンタル自習室というのがあり、深夜2時3時まで生徒が勉強している。
アジアの塾では、生徒を厳しく叱る。攻撃的な韓国語中国語の怒声が教室で響く。いい加減な態度を許さない。韓国も台湾も小国だ。子供の学力を伸ばさなければ国が滅びてしまう。そんな緊張感が教育現場の末端にも浸透している。
韓国も台湾も、科挙の伝統が現在に根付いているのだ。
私は日常の息抜きに韓国や台湾に行くが、塾の多さと子供の熱気に、逆に刺激をもらって帰ってくる。うちの塾も負けるもんか鍛えてやると、「燃える男」になる。通塾日数や宿題が増えて迷惑するのは君たちだけども。
日本の塾では、子供にやめられるのが怖いから言いたいことを言わない先生が増えている。大手塾のマニュアルには「生徒絶対叱るな」とある。パワハラ塾長の私なら一発でクビにされる。
だが、君たちにはポテンシャルがある。ポテンシャルは刺激ある環境でなければ伸びない。記憶力がいい十代前半のうちに、英語を鍛えて記憶しておくべきことを記憶しておけば、高2ぐらいで世間が見え勉強の大事さが分かった時、「あの時もっとやっておけばよかった」と悔しくて天を仰ぐこともない。
そして君たちの中には、中学校でトップクラスの成績を収める子もいる。
だが井の中の蛙ではダメだ。「地元じゃ負け知らず」のレベルで満足していてはならない。
英語は世界中で通用する。英語を学ぶのは、「世界基準」の言語を学び、君たちの魅力を世界中にアピールするためだ。
また日本では古くさい猛勉強も「世界基準」である。いま君たちが格闘している英語の膨大な宿題は、言葉も精神も「世界基準」に引き上げる、小さな一歩だ。
君たちは一生懸命が好きではないか。
塾には「ONE PIECE」「MALOR」「僕らのヒーローアカデミア」「鬼滅の刃」「宇宙兄弟」「BLUE GIANT」「キングダム」などの根性系の漫画が置いてあるが、登場人物たちは、とんでもない試練に翻弄され、知恵と勇気で乗り越えていく。(「こち亀」は別)
そんな姿に君たちは何かしら心を打たれ、食い入るように読んでいるではないか。君たちも漫画の登場人物のように、一生懸命勉強頑張ってるではないか。
一生懸命は人の心を打つ。