猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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西きょうじ『英文読解入門 基本はここだ!』
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    高1で気づいた人は多いだろうが、高校の英文は難しく、中学の英文みたいに単語がわかれば読めるわけではない。構文が複雑に絡み合っている。この違和感が続けば、たちまち英語嫌いになり、修復不可能になる。

    筋トレで初心者は軽いベンチプレスから始めるように、英文解釈最初の一冊は、文章が簡単で短いものを選ぼう。初期段階で長文は長い。
    高校生、英文解釈最初の一冊は、西きょうじ『英文読解入門 基本はここだ!』以外に考えられない。
     
    初心者に嫌われる本は、
    1. 文章が長い
    2. 単語が難しい
    3. 解説がわかりにくい
    の3つの欠点があるが、この参考書は3点のどれにも当てはまらない。短くても、高校生を悩ませる短文の説明が、1ページ、ときには2ページ費やして懇切丁寧になされている。
     
    例文は
    She worked slowly wither eyes fixed on the room.
    That he believes her is certain.
    The older he grew, the poorer her memory became.
    というレベルである。
     
    ふつうの初心者向け英文解釈の参考書は、例文の難しさより単語の難しさに抵抗を感じてギブアップしやすいが、この本は基本的に中学単語しか使用していないので、構文の解釈だけに集中できる。
     
    またこの本は、比較の分野に多くのページが割かれている。比較は数学の不等号みたいに論理思考が必要で、文系の人間が嫌う分野だ。
    たとえば「I couldn’t care less.」という文を、初心者は「気にしている」と訳すのか「気にしていない」なのか頭が混乱する。この本は比較表現が引き起こしやすい頭の混乱をスッキリ整理してくれる。
     
    さらに、英文を難しくする四本柱。同格・挿入・倒置・省略の説明が詳しい。この4つは英文を読むときに受験生を迷わす大変化球である。『英文読解入門 基本はここだ!』で変化球打ちの極意を学べば、どんなにアドバンテージになるか。
     
    西きょうじの代表作『ポレポレ』や、最新作『英文法の核』にも共通することだが、西きょうじの文体はスッキリして読みやすい。頭が混乱して錯乱状態になる箇所を理解するには、情緒的な文体より、無駄のない骨のような文体の方が良い。
    魚をさばくには、素手より鋭利なナイフである。
    西きょうじの無機質なマニュアル一歩手前の硬質な、でもどこかに熱と怒りを秘めている文体が、『ポレポレ』や『英文読解入門 基本はここだ!』が支持を集める一つの原因だと思う。
     
    ところで西きょうじは東進の先生で、スピッツの草野マサムネに似ている草食系の要望を持つ人だ。悪魔のような毒舌家であるが、笑顔ですべてが許される羨ましい天性を持つ人だ。
    そして、難しいことをわかりやすく説明することに偏執狂のようい心を砕いている人だ。それは受験生に「わからない」と苦手意識を持たせないための良心なのだ。
    同時に受験生に対しても、難しいことに積極的に「かかってきなさい」と、あえて高い敷居を設けるのも躊躇しない。
     
    『英文読解入門 基本はここだ!』は、一人でも多くの受験生に英語を理解させ、高みを極めさせたいという執念と、勉強でブレイクするためには俺の執念を受け継げ、狭き門を自分でこじ開けろという、倒錯してはいるが極めて高度なやさしさにあふれている。
     
    この本は高2高3でも浪人生でも、英文を読んでいてイライラする人は、絶対に読んでほしい。
    土台を食い散らかされた建造物に、もういちど基礎工事を施すには最適の書だ。、
    大ベテランの怖い顔した西先生に、プールでビート板を使って英語構文の解き方を教えてもらえる本である。4〜5回反復したら、満面の笑顔で迎えてもらえるだろう。
     
     

     
    | 大学受験学参ソムリエ | 18:32 | - | - | ↑PAGE TOP
    『今井の英文法教室』今井宏 大学受験学参ソムリエ19
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      良い参考書の条件は何だろうか。

      条件の一つに「文章力」があると私は思う。

      小説でも随筆でも、後世に残るのは文章力がある作品だ。学習参考書も例外であるはずがない。

      『ドラゴンイングリッシュ』の竹岡広信、『マドンナ古文』の荻野文子、『青木の世界史実況中継』の青木裕司、『センター試験 地理Bの点数が面白いほど取れる本』瀬川聡などの参考書は、受験生に支持されるロングセラーだが、語り口調の文体が素晴らしい。予備校講師の力量に加え、文筆家としての力も相当なものである。

       

      英語の今井宏も、そんな文筆家の一人だ。

      駿台・代ゼミ・河合塾を渡り歩き、現在東進の講師を務める今井宏が書いた『今井の英文法教室 上・下』(東進ブックス)は、硬い文体でなく、読み物として楽しみながら英文法が学べる。

      Forest』『ネクステ』がNHKのEテレなら、『今井の英文法教室』は民放だ。若い人に親しみやすいのは、絶対にこちらである。

       

      予備校の先生っがテクニックしか教えないというのは嘘で、それはいまどきテクニックだけで入試問題が解けると考えている、入試事情を知らない人の言葉である。そもそも「受験テクニック」という言葉の定義があいまいだ。

      学問でも根っこの部分がわかる先生ほど、難しく教えない。わかりやすく楽しい。学問を楽しめたからこそ説明が簡潔で鋭くなるのだ。

       

      一昔前の予備校講師は、他の講師を舌鋒鋭く批判し、毒舌家でアクが強い、一歩間違えれば人格破綻者みたいな人が多かったが、いまの若い予備校の先生は、サラッとした性格のカタギの人が多い。今井氏は典型的な前者である。顔も熊みたいだし発する言葉も怖い。

      だが、批判精神は、ありきたりの教え方への疑いにつながる。ものごとを斜眼から眺めることは、言い換えれば多面的な視点があるということでもある。

      『今井の英文法教室』は説明の一つ一つが「ありきたり」ではない。「ありきたり」に見える説明もあるが、それは教え方をあれこれ考えるうち、360度逡巡して「ありきたり」に戻ったニュアンスがうかがえるので、ただの「ありきたり」と違って説得力がある。おまけに文章が軽い毒舌とユーモアにあふれていて、漫談を聴いている心地よさがある。アクが強い先生が書く本は面白い。

       

      『今井の英文法教室』は、国語が得意だが英語を怠けていて不得意な人が読むのに適した本である。国語力がある人は参考書の読解力があるが、読書好きなら『今井の英文法教室』はスラッと読め、本の凄さが数ページ読むだけで理解できる。現代文の偏差値に比べ英語が20くらい低くても、楽しみながら読めば、英語と現代文の偏差値が高いレベルで一致する「奇跡」が起きそうな気がする。

       

      学習参考書は古典落語のようなものだ。古典落語のネタを談志や志ん朝や小三治など多くの落語家が語るように、「英文法」という噺をいろんな先生が語る。ともすれば同工異曲になりかねないが、やはり名人の文体は頭にしみこむ。今井宏の英文法語りは、読書好きな受験生ほど価値がわかるであろう。

       

      | 大学受験学参ソムリエ | 18:24 | - | - | ↑PAGE TOP
      『世界史をひとつひとつわかりやすく。』鈴木悠介 大学受験学参ソムリエ18
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        ビジネスマンの間で、世界史本がブームだ。

        書店に行ったら、一般書のコーナーに、世界史の本が山積みである。海外の学者、予備校の先生、カリスマ経営者に至るまで世界史の本を書き、かなり売れている。

         

        私たちは日本史のストーリーは知っている。織田信長が本能寺の変で殺されたのを見て、「信長死ぬのか、知らなかった」「明智光秀が信長を殺すなんて、いい人そうだったのに、信じられない」という人は、まずいない。日本史の流れの大枠は、知り尽くされている。

        だが、世界史はそうではない。一般人にとって、未知の物語が多い。たとえば満州国皇帝の溥儀が、清王朝の最後の皇帝だったことを知らない人は意外に多い。世界史には知らないストーリー、しかも日本歴史の上をいくダイナミックなストーリーが隠されている。

        NHK大河ドラマの視聴率が以前ほど伸びていないことが指摘されているが、これは大河ドラマの題材が日本史であるため、ストーリーを誰もが知っていることに原因の一つがあるのではないか。

        世界史本ブームは、手垢がついた日本史のストーリーに飽き、新鮮な世界史のストーリーを求める読者が多いことを示しているのではないか。

         

        だが、世界史は難しい。知らない人名用語が数多く登場する。世界史本は面白そうだけど、世界史の人名用語がよくわからないから、ハードルが高いと感じている方は多いのではないか。

        そこで薦めたいのが『高校 世界史をひとつひとつわかりやすく。〈古代〜近代へ〉〈近現代〉』鈴木悠介(学研)である。

        この本は高校生用の参考書だが、「薄い、わかる、フレンドリー」の三拍子を揃えた本で、気軽にできる。

         

        で、この本がありきたりの本でない最大の特徴は、巻頭に「地図」の穴埋めがあることだ。世界史を難しくしているのは、地理の知識不足である。極端な話、ドイツがどこにあるかわからないのに、ドイツ史を学ぶのは困難である。マヤ文明・アステカ文明・インカ文明の位置を頭に入れておかないと、世界史のストーリーはイマイチ面白くない。

        世界史の学びはじめに「地図」のコーナーが、どれだけありがたいか。

         

        世界史本は一種のブームである。著者の鈴木悠介は世界史本ブームの一端を担う、『経済は世界史から学べ!』『世界史で学べ!地政学』で有名な予備校講師茂木誠の教え子である。

        「薄い、わかる、フレンドリー」の三拍子揃った『高校 世界史をひとつひとつわかりやすく。〈古代〜近代へ〉〈近現代〉』を、世界史の一般書を読む前に、一通り流してやることをお勧めする。

         

        そしてもちろん、『高校 世界史をひとつひとつわかりやすく。〈古代〜近代へ〉〈近現代〉』の二冊は、高校生に強くお勧めできる。

        「世界史の参考書は厚い」という障壁が、どれだけ世界史から受験生を締め出してきたであろうか。

        鈴木悠介の本は、定期試験で何かいい問題集がないか迷ってる高1高2、センター世界史選択だが何から始めていいかわからない高校生にいい。また、高校受験が終わって、高校世界史の空気を浴びてみたい中3生にも勧められる。

         

        ところで私は、高校の参考書・問題集にかけては「伝統主義者」である。私は個人塾をやっているが、数多くの受験生が使った伝統的な参考書でなければ、怖くて勧められない性癖がある。『ポレポレ』や『速読英単語』のような、受験生の手垢がつきまくった本でなければ、本でもブログでもツイッターでも塾生にも気軽に勧めない。新しい参考書は、新薬を患者に薦める医師みたいで、怖いのである。

        その点『高校 世界史をひとつひとつわかりやすく。〈古代〜近代へ〉〈近現代〉』は発行が2015年、鈴木悠介は30歳。私が一番勧めるのをためらってしまいそうな本ではある。

         

        ところが、鈴木悠介は予備校マニアである。沢村や菅野が巨人軍を愛したように、鈴木は予備校講師という職業を愛した。若い時から予備校講師になる夢を追い続け、夢を実現し著書を出した。

        予備校パンフレットの収集が趣味で集めた数は300冊を越え、戦後に刊行された世界史参考書すべてを所有することを目標にし、明治時代の世界史参考書まで買い漁っている。

        『高校 世界史をひとつひとつわかりやすく。〈古代〜近代へ〉〈近現代〉』は表紙もデザインも「いまどき」だが、そこには鈴木が古今東西の世界史の参考書問題集を研究しつくした「伝統主義者」の面が息づいている。

        本書は150年にも及ぶ日本の世界史教育の「上澄み液」とでもいえるだろう。私のような「伝統主義者」が両手を挙げて推薦できる、温故知新の問題集である。


        繰り返す。世界史問題集の「はじめの一歩」はこれだ。

         

        | 大学受験学参ソムリエ | 17:12 | - | - | ↑PAGE TOP
        大学受験学参ソムリエ17 「ハッとめざめる確率」
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          確率は数学とは別科目のようなポジションで、独立王国のような存在だ。だから確率だけ苦手な人もいれば、確率だけできる人もいる。
          ということは、確率が苦手でも解き方にめざめれば、一気に征服できる可能性が強い。参考書に恵まれれば、確率が一気に理解できる。
          確率が苦手な人は、機械的に公式にあてはめようとする。だがセンターの問題は、公式だけでは解答にたどり着かせてはくれない。センター試験は、確率の根本を理解していないのに、公式だけで解こうとする受験生に冷たい。

          数学と算数の違いとして、数学は抽象的で、算数は日常的だとよくいわれる。確率はカジノやパチンコなど生活のにおいがして、きわめて算数的な分野である。
          だから、確率は中学受験経験者が強い。彼らは確率を樹形図を使って解いた。紙の上に松の葉を大量に散らしたように、ビッシリ樹形図を書いた。面倒くさい作業だろう。

          だがそのうち、同じパターンなら樹形図を何度も書かなくていいことに気づく。1パターン書いてみて、「かけ算」をして樹形図をはしょることを学ぶのだ。樹形図を書く機械的な作業を通して、確率には公式があることを知る。便利なものがあったものだと感動する。
          樹形図から這い上がって公式を得たボトムアップ型の「苦労人」は、どんなパターンの問題が出ても対処できる。だけど公式をあてはめることしかできない、トップダウン型のスマートな解き方では、たちまち行き詰ってしまう。

          確率は公式だけでは解けない。樹形図→公式の過程を経験して、はじめて理解したことになる。この「ボトムアップ」の過程を詳しく書いた、良い参考書がある。『ハッとめざめる確率』。文字通り確率にハッとめざめる。
          『ハッとめざめる確率』が異色なのは、パラパラとめくるだけで、数学の参考書にあるまじきほど文字が多いところで、文字の中に数式が埋まっている感じだ。数式だけが無愛想に羅列され、意味がさっぱり分からないという事態は、この本に限っては考えられない。樹形図や表もふんだんに使っている。第1部と第2部の例題56個やれば、確率が超苦手から超得意に変わる。




          「ハッとめざめる確率」より。
          公式3を、上段では数式で証明、下段では言葉で説明している。
          この本は最初から最後まで、このように言葉を大事にするポリシーが貫かれている。





           
          | 大学受験学参ソムリエ | 18:51 | - | - | ↑PAGE TOP
          大学受験学参ソムリエ16 「漢文早覚え速答法」
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            センター漢文の問題傾向を読んだスパイのような本
            現在は敵に暗号を見破られたが、まだまだ使える

             
            かつて、センター漢文には決定的な本があった。『漢文早覚え速答法』田中雄二である。
            反語なら「ンヤ」、詠嘆なら「ズヤ」と、漢字以外の読みに着目し、漢字以外の読み、すなわち「いがいのよみ」を略した「いがよみ」のテクニックの汎用性は圧倒的で、野球でいえば相手投手のクセを見抜く敏腕スコアラーのようで、読むのと読まないのでは漢文50点満点のうち10点は差がついた。
            学問は王道なしというが、『早覚え速答法』はセンター漢文の王道を示した参考書で、漢文の学参では比類がないほど支持されるのは当然だった。文章に独特のリズム感があり、読みやすいのも支持を得た理由だ。
             
            だが、センター試験漢文は2008年から難化した。かつて漢文50点は当然という風潮があったが、現在はそうではなくなり、『早覚え速答法』のシンプルな公式が使えなくなったのだ。
            邪推だが、センター問題の作成者は『早覚え速答法』の存在を意識したと思う。2008年以降の問題は『早覚え速答法』のテクニックが使えないように、内容把握問題が中心になっているのだ。敵もさるものだが、センター試験の問題作成者を意識させるほど『早覚え速答法』の解答法は画期的だった。
             
            それでも、『早覚え速答法』は、かつてのアドバンテージは失ったものの、依然として漢文参考書の中では頭一つ抜けている。第3章「受験のウラわざ」に出ている「コレだけ漢文」が使えるのだ。
            「コレだけ漢文」とは作者と友人の中国人、先輩の大学教授の3人が作った、試験に出る重要漢字と句形だけで書かれたオリジナルの漢文であり、暗記し音読すれば漢文のエッセンスが吸収でき、作者の言葉をかりれば「合格を保証する呪文の漢文」なのだ。
            「コレだけ漢文」は4ページと短く暗記に手間がかからず、しかも効力は大きい。
             
            ただ『早覚え速答法』は、句形など基礎ができていないと読みこなせない。句形に弱点を抱えている人は前段階として『漢文句形ドリルと演習 河合塾SERIES―ステップアップノート10』をおすすめする。この本でウォーミングアップしてから『早覚え速答法』に取りかかればよい。
            また2次試験や早稲田など難関私大を照準に入れ、漢文で高得点をめざす人はZ会『漢文道場 入門から実戦まで』土屋裕がいい。
             
            だが実際のところ、漢文に時間を割くことはできない。過去問の演習反復と、解説の熟読が最も効率的な勉強であることが大前提である。
            | 大学受験学参ソムリエ | 10:58 | - | - | ↑PAGE TOP
            大学受験学参ソムリエ15 「DUO」
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              いまさら誰もが絶賛している「DUO」について語るのは野暮な気もするが、「DUO」は評判になるだけあって、素晴らしい本である。単なる英単語・英熟語集の範疇を超え、また無味乾燥な基本例文集でもない、現代英語の総合力をつける最適の教材である。

              「DUO」を受験勉強をはじめるにあたり最初の単語集として使うのは危険が伴うが、ある程度単語力の土台ができた(「シス単」で言えば第2章まで終えた段階だろうか)大学受験生にとって、英語に対する知的好奇心を誘うまたとない良書だと思う。

               

              「DUO」は現代英語の重要単語1600と熟語1000が、重複なしに560本の基本例文に凝縮されている。

              例文暗記用の参考書といえば、昔から駿台の「基本英文700選」が有名だが、僕はかつて「基本英文700選」をこう評したことがある。

               

              「基本英文700選」は700個の英文が、ズラズラ羅列してある本で、全部暗記すると英作文の得点アップ間違いなしという本なのだが、無味乾燥な例文をひたすら暗唱する作業に耐えかねて挫折する受験生は数知れず、「文章が古くさい」「ただ英文を集めただけ」「受験英語にしか役に立たない」「解説がのっていない」「こんなん誰が覚えられるつーんだよ」とみないろんな理由をつけてはリタイアするので、「基本英文700選」の全文暗唱に挫折した受験生の言い訳を集めたら「基本英文700選を暗記できなかった受験生の言い訳700選」というタイトルの1冊の本になりそうな、挫折率が異常に高い魔の書物である。

               

              「DUO」と「基本英文700選」は、例文暗記を目的にした本でありながら方向性がまるきり違う。「基本英文700選」はTOEIC受験者の目には象牙の塔に放置された黴臭い骨董品に見えるだろうし、逆に京大の2次試験のアカデミックな英訳和訳対策に「DUO」は軽くて実用的すぎる。

               

              ただ、暗記しやすさでは「DUO」に軍配が上がるだろう。

              なぜなら「DUO」の例文には遊び心がある。

              たとえば’tear’には「涙」と「破く」という途方もなく異なった2つの意味があるが、「DUO」では


               

              530 In tears, she tore up his letter and threw it away.

                彼女は泣きながら、彼からの手紙をめちゃくちゃに引き裂いて捨てた。


               

              と、1つの例文に’tear’を2つ違った意味でぶち込んでいる。うまい例文だなあと感動する。

               

              また、自動詞の’lie’と他動詞の’lay’の区別は頭を混乱させるが、


               

              113 She laid the baby down and lay down beside him.

                彼女は赤ちゃんを寝かせて自分も隣に横になった。


               

              という例文は芸術的ですらある。downの位置が絶妙で、自動詞と他動詞が一発で区別できる。’lie’ ’lay’の使い分け方が自然な例文を通して学べる。

               

              僕は塾で「DUO」を英文和訳の授業に使っている。難関大学の英文和訳問題には、単語の羅列から意味をひらめく力が必要で、想像力を鍛えなければ訳せない英文が多い。「DUO」の例文はイマジネーションを鍛えるための良い例文が並んでいる。


               

               

              こんな風に「DUO」英文だけを並べたプリントを用意し、サクサクと1文ずつ生徒に和訳してもらう。


              たとえば下の例文は、フレーズの類推力を喚起するのにうってつけであろう。


               

              184  As a self-made man put it,“A man of vision will make good in the end.”
               自分の力で成功をつかんだ人が言ったように、「先見の明のある人は最後には成功する」


               

              この例文の意味が取れるかどうかは、’a self-made man’ ’a man of vision’を訳せるかにかかっている。

              ただ、この2つの熟語は意味を知らなくても、ぎりぎり想像力でカバーできるのではないか。’a self-made man’’made’は、第5文型でよく使われる ’He made his son a doctor.’ とほぼ同意の’made’であることがわかれば訳せるし、また’a man of vision’なら’ vision’を「ビジョン」とカタカナにすれば「ビジョンのある人」になり、意味は想像できるだろう。

              僕は授業で生徒を追い込み焦らしながら、閃くのを待つのである。
               

              とにかくも、英文を訳すには想像力が必要だ。和訳しても支離滅裂で意味が通らず、自然な表現にならなければイライラする。

              ただ、英文の意味が頭に電光石火のごとく浮かんだ時、数学や物理の問題が解けたような快感が走る。「DUO」にはそんな快感を与える例文が揃っている。気難しそうに見える英文も、日本語にすればきわめて自然な表現になる。英文の難解さと和文のシンプルな日常性のギャップがいい。「DUO」を使えば楽しい授業ができるのだ。

               

              ところで、「DUO」には少し羽目をはずしすぎた例文がある。男女関係に関する会話文が「DUO」には多い。


               

              544 “Jennifer went so far as to call me an idiot and she wouldn’t take it back.”

                   “Serves you right!  You provoked her, didn’t you?”
               「
              ジェニファーは僕をばか呼ばわりして、しかもそれを撤回しないんだ。」

               「自業自得よ! あなたからけしかけたんでしょう?」

               

              539         “It dawned on me that I had been taken in by Jennifer all along.”

              “How naive!  Didn’t you see through her?” 
                「ジェニファーにずっとだまされていたのがわかってきたよ。」
                「何てうぶなの。彼女の本性が見抜けなかったの?」

               

              534      “Jennifer left me for another guy.”

              “Oh, you must be upset.” “Not really. I’m used to it.”

                「ジェニファーは俺をふって他の男のところにいったよ。」

                「えっ、それは辛いわね。」「そうでもないよ。慣れてるよ。」


               

              “I’m used to it.”という面白いオチで、’be used to「〜に慣れている」という熟語が頭に焼きつく。

               

              ところで「DUO3.0」は2000年の第1刷以来改訂していないが、改訂する必要がないほどの完成度である。
              また、別売りの復習用CDは、560本の例文が60分に凝縮されている。使用しなければ効果が半減するだろう。CDを毎日1時間聴けばものすごい英語力がつくと思う。

              無人島へ「DUO」と、i-Podに録音したCDを持ち込んで1週間ほど例文暗記に専念すれば、下手に海外留学するより英語に上達するのではないか。また、塾で「DUO合宿」でも企画したらいいかもしれない。効果は抜群に上がるだろう。

               

              「DUO」は受験英語の本道より、少し実用英語に傾いているのは否めない。「DUO」は受験英語指導では、脇役に置いたほうがいい気がする。

              ただし「DUO」は愉快で存在感抜群の脇役であり、堅苦しくなりがちな受験英語指導のブレイクタイムには欠かせない。


              「DUO」はとにかく例文が面白い。和訳する作業を続ければ、英文の意味をつかむ想像力を楽しく鍛えながら、同時に語彙を蓄積できる。「DUO」は印象深いフレーズが多いので記憶に残りやすい。強い閃きを感じれば感じるほど、脳味噌に焼きつく可能性は高い。

              「DUO」は試験本番で必要な単語の類推力をつけながら、類推力に頼らなくてすむ単語量を増やせる、インスピレーションとストックの両面を並行して伸ばせる、一石二鳥の教材である。

               

              | 大学受験学参ソムリエ | 19:50 | - | - | ↑PAGE TOP
              大学受験学参ソムリエ14 「グラマスター」
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                「グラマスター」は2009年10月に出版されたばかりの、Z会の比較的新しい語法・文法の問題集である。

                この本の正式名称は「英文法・語法問題 GRAMMAR MASTER」、通称「グラマスター」。「グラマスター」とはカッコいい(色っぽい?)名前ではないか。

                著者は松本清張なみの多作で実在を疑われる、「速読英単語」でおなじみの、謎の人物・風早寛氏である。

                「英語の基礎力を完璧にする本」というふれこみの「グラマスター」、文法・語法・熟語が詰まった本だが、本文レイアウトはこんな感じ。




                駿台や桐原の英頻を踏襲した、左ページに問題、右ページに解答と解説という、オーソドックスなレイアウトだ。
                問題は全部で1700問。「文法」「語法」「熟語」「多義語」「会話表現」「発音・アクセントの各章に分かれている。

                僕もざっと解いてみたが、レベルはセンター試験をターゲットにしている。1700問という問題数には少々怖気づいてしまうが、この「グラマスター」はオーソドックスな問題が揃い、奇問珍問難問が少ないので、スルスル解けてしまう。


                どんな「基礎」を謳う文法問題集にも「こんな突飛な語法・熟語は慶応や上智にしか出ないだろう」「こんなカビの生えた古めかしい文法は使わないよ」と文句を付けたくなるような、難解かつ古い問題が混じっているが、「グラマスター」にはそれがない。定番化された語法や熟語が漏れなく網羅されている。問題の品揃えは最高だ。

                 

                この「グラマスター」は、明らかに「NEXT STAGE」を意識していると思われるが、ネクステよりより問題が洗練されていて、解説が詳しい。「FOREST」や「ロイヤル英文法」を参照しなくても、きちんと要点がまとめられている。



                この「グラマスター」は、センター試験の過去問をやって5割・6割しか取れない、文法・語法がグラグラしている受験生が文法・語法を総復習したい時にピッタリだと思う。

                受験直前に新しい問題集を始めるのは禁じ手だが、「グラマスター」なら最後の望みをかけ、センター1ヶ月前に開始してもいいかもしれない。冬休みに根性で3往復ぐらいしたら、センターで20点は上がるのではなかろうか。正月なんか無視した、鉢巻締めた猛勉強のお供にはもってこいだ。

                「グラマスター」の問題形式は4択が基本だが、空所補充・整序・正誤問題などヴァリエーションに飛んでいて飽きない。それぞれの文法・語法・熟語に適した問題形式が取られていて、そこらへんに問題作成者の頭のキレを感じる。
                「グラマスター」はセンター試験の語法・文法問題集の定番の風格を漂わせる。定番「ネクステ」の良きライバルだ。


                 

                | 大学受験学参ソムリエ | 02:11 | - | - | ↑PAGE TOP
                大学受験学参ソムリエ13 「世界史・日本史の一問一答」
                0
                  世界史・日本史の一問一答は、いったいどれを選べばいいのか?

                  いろいろあって迷う。

                   

                  まず最初に言っておくと、世界史・日本史の受験勉強を本格的にはじめる時に、いきなり一問一答からはじめてはならない。まず世界史・日本史の流れ、ストーリーを把握することから始めたい。

                   

                  突飛なたとえで恐縮だが、たとえば「エヴァンゲリオン」が入試科目になったとしよう。

                  エヴァンゲリオンをまったく知らない受験生が「エヴァンゲリオン一問一答問題集」を見たら、こんな問題が並んでいた。

                  --------------------------------------------

                  問題1 日本人4分の1、ドイツ人4分の3の血を持つクォーターであるキャラクターの名を答えよ。

                   

                  答 惣流・アスカ・ラングレー

                   

                  問題2 エヴァンゲリオンを極秘に開発した、国連の非公開組織である特務機関を何というか。

                   

                  答 NERV(ネルフ)

                   

                  問題3 2000年9月13日に起きた、大質量隕石の落下が原因だとされている大災害を何というか。

                   

                  答 セカンドインパクト

                  --------------------------------------------
                   

                  これらはエヴァンゲリオンに関する「基本中の基本」の問題なのだが、エヴァンゲリオンを見たことがなくてストーリーを知らない人が、こんな「カルト」な用語暗記から勉強を開始するのは苦痛である。無理して「惣流・アスカ・ラングレー」という長い人名を頭に叩き込まなければならない。
                  エヴァンゲリオンのTV放映や映画を見ていないと、エヴァンゲリオンの一問一答は苦痛だ。エヴァンゲリオンの映像に接し、アスカの甲高い声を浴びれば、主要な人名や用語は自然と頭に入ってくるのに。

                   

                  だから世界史の一問一答の暗記も、「青木の実況中継」や「世界史ナビゲーター」を通読し、20世紀の部分ならNHKが放映していた「映像の世紀」を見て、世界史のストーリーをつかんでから始めないと、英単語暗記と同じ無味乾燥なもので終わってしまう。

                   

                  余談だが、参考書・問題集を選ぶのに一番大事なことは、自分の学力レベルにあった本を選ぶことだ。学力レベルにあった本を見つけるのは、簡単なようでいて意外と難しい。

                  洋服や靴を選ぶときに自分のサイズを把握しているのは当然だが、逆に参考書・問題集は自分のレベルに合ったものはわからない。ダボダボな靴やキツキツの服なら一瞬で別の物に交換できるが、参考書・問題集はしっくりしないまま惰性で使ってしまい、学力が伸び悩む原因になる。

                  評判がいい本だからといって、すぐに飛びついてはならない。英語嫌いの高1生がいきなり難解な「英文解釈教室」を使ったら消化不良を起こしてしまう。赤ん坊の胃に焼肉やウナギを押し込むようなものだ。

                  英語の安河内哲也氏の参考書のように、超基礎編・基礎編・標準編・中級編・上級編・難関編とレベル別に分けてくれると嬉しい。

                   

                  一問一答に話を戻すと、もちろん受験する大学・学部によって選ぶ本は違う。私立文型の難関大学、たとえば早慶や関関同立やMARCHをイメージして、世界史の一問一答を3つセレクトしてみた。

                   

                  まず、大学入試社会といえば山川出版社。大学の入試問題は山川の教科書を基準に出題されるという噂の、世界史・日本史の権威である。

                  山川出版社の「一問一答 世界史B 用語問題集」を見ると分量が多く網羅性が高い。教科書から用語を1つ1つ丹念に拾い上げ、そつのない仕上がりだ。僕が受験生時代から存在する古い本だ。僕自身もこれを使った。




                  しかし挫折しやすい本でもある。真面目一徹で「遊び」がない本なので、なんだか辞書を暗記しているような気分になって、世界史嫌いになる可能性がある。

                   

                  Z会の「世界史B 用語&問題2000」はお勧めできる。センター試験対策なら、これがベストではないか。

                  一問一答だけではなく、力量のある講師の板書のように整理された「要点」が右側についていて、頭の整理がしやすい。


                   


                  しかし要点の部分が暗記しづらいという点も指摘しておかねばならない。特に文化史の部分は、人名と業績の1対1対応になっていて、無味乾燥だ。




                  また難関私大の難問はカバーしきれていない。Z会の一問一答を使うなら、同じZ会が出している「世界史・日本史100題」と併用するのがいいかもしれない。

                   

                  難関私立文系、早慶や世界史が難しい立命館あたりを志望する、世界史で勝負をかけたい受験生なら、東進ブックスが出している「世界史B 一問一答 完全版」がいい。




                  中身を見ていただければわかるが、収録された問題は早稲田や慶応など難関私立の問題が多い。社会で8割を超える得点を取りたい受験生には、東進の一問一答がいちばんお勧めできる。

                  この東進の一問一答は難解なので、基礎がしっかりしていないと消化不良を起こす。センターで80点以上コンスタントに取れる受験生が使う本だと思う。

                   

                  東進の良いところは、問題の下にこんな豆知識のコメントが書かれているところだ。









                  こういう好奇心をくすぐるコメントは暗記意欲を促進する。

                  また、難関私立で試験に出そうな匂いのする難問は、他の一問一答なら隅っこに細字で書かれ目立たないのだが、東進の本だと楽しいコメントによって表に引きずり出され、キャラが立ち覚えやすい。
                   

                  映画のエキストラのように目立たなくて、注目を浴びせてもらえなかった「こんなの絶対出てこないや」とたかをくくられていた地味な用語が、いきなり本番の入試で主役に抜擢され、スポットライトを浴びながら登場という悲劇はよくある。
                  東進の一問一答は、地味なのに出題されそうな不気味なオーラを持つ用語に光を当てている。難関私大受験生に気を配った良書だと思う。
                   

                  結論。

                  ひたすら真面目に暗記したい根性系の受験生は山川、センター対策ならZ会、難関私大で世界史に勝負をかけるなら東進です。

                  | 大学受験学参ソムリエ | 23:56 | - | - | ↑PAGE TOP
                  大学受験学参ソムリエ 12 「英文法・語法正誤問題」
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                    人間は他人の間違いを指摘するのが好きだ。時代劇で歴史考証のミスがあったら、歴史オタク爺さんからの電話がテレビ局に鳴りひびくのだろう。


                    授業でも間違い探しをときどき入れれば、アクセントになる。たとえば英作文や数学の証明問題を僕がわざと間違い、生徒に「この英文には3つ間違いがあるから指摘してくれ」と尋ねたりする。ときどき本当に間違えて大恥をかいたりするが、講師が間違えると生徒は集中し目が輝く。


                    ところで大学受験英語には「正誤問題」というジャンルがあって、早稲田や慶応や上智など難関私立大学ではよく出題される。たとえば、
                    (a)Every students (b)may enter the room (c)whenever they desire (d)to do so.
                    という英文で、(a)〜(d)のうち誤りである箇所を選びなさい、という種類の問題である。


                    正誤問題では、受験者は重箱の隅をつつくような文法の間違いを指摘しなければならない。文法の知識が不十分なら正誤問題は解けない。他人の間違いを探すには正しい知識があり、知識にある程度自信がなければならないのだ。

                    正誤問題のポイントは、可算名詞か不可算名詞か、自動詞か他動詞か、能動態か受動態か、動詞なら不定詞か動名詞かthat節のどれに続くか、形容詞と副詞の違いが識別できるか、形容詞なら人を主語にする形容詞かどうか見分けられるか、sensibleやsensitiveなど派生語の暗記は確かか、否定がらみの倒置に気づけるか、冠詞は正しいか、時制の混乱はないか、仮定法の知識は揺らいでいないか、比較の対象は同類のものであるというルールは守られているか、省略は見抜けるか、このあたりだろうか。文法のポイントが容赦なく鋭くつかれる。

                    逆に言えば正誤問題で鍛えられれば、文法の感覚は研ぎ澄まされる。推理小説を読むときのような観察力を駆使して、英文の間違いを鋭く指摘する訓練をすれば、私大やセンター試験の英文法問題の得点にも波及する。

                     

                    高3生には、河合塾の「英文法・語法・正誤問題」を解いてもらっている。
                    オーソドックスな文法問題は退屈だ。だからある程度文法力がついたら、別の角度から脳味噌をシェイクしたい。センターや私立大の得点力を上げる新鮮な作戦をあれこれ練る。というわけで、あえて正誤問題を解いてもらう。
                    センター試験には正誤問題は出題されない。だが正誤問題はセンター対策にもなる。大胆な作戦かもしれないが、文法の問題集を反復していて、テストを重ね、本がボロボロになっていて、文法が固まりつつある受験生は、正誤問題に接するのは有意義なはずである。

                     

                    歴史オタク爺さんが嬉々として時代劇のアラを探したがるように、文法オタクが正誤問題でアンテナを全開にして英文の間違いを鵜の目鷹の目で探すのは楽しいはずである。
                     

                    文法の単純な「反復」ではなく、新しい角度からの「反復」が、正誤問題を解かせる目的だ。正誤問題は文法を鉄板にするには最終的な勉強法だ。

                     

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                    大学受験学参ソムリエ 11 「ドラゴン・イングリッシュ」
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                      英作文が大好きになる、たった100の例文
                      竹岡広信は文章が上手い


                      竹岡広信氏は、いわずと知れた「ドラゴン桜」の英語教師のモデルである。

                      「ドラゴン・イングリッシュ」は竹岡氏の代表作で、短い英文を100個集め、丁寧な解説を施した英作文対策用の参考書で、あの駿台の伝説の根性本「基本英文700選」の例文を7分の1に減らし、そのぶん1文1文に詳しい解説がついている本だと思ってほしい。

                       

                      「ドラゴン・イングリッシュ」は、英作文の参考書にありがちな「重くて無愛想」な本ではなく「軽妙でフレンドリー」な雰囲気があるが、決してテレビドラマやコミックに便乗した軽薄なミーハー本ではない。どんな英作文の参考書より実戦的である。

                       

                      「ドラゴン・イングリッシュ」は、受験生の間違いやすい部分を見事についている。


                      たとえば最初の例文から、こんな仕掛けがある。1番の問題は
                      「ウイスキーのボトルを2本も空けて車を運転するのは危険だ」
                      という例文なのだが、ウイスキーのボトルを2本空けて車を運転することはふつうありえない。
                      だから’It is dangerous to’ は不自然で、’It would be dangerous to’ と仮定法の表現にしなさいと説明してある。


                      英作文を書くときには、仮想か現実かをまず判断しなければならない。「ドラゴン・イングリッシュ」は、仮定法を意識していないとつまずく問題を、わざと冒頭に置くイタズラ心がいい。最初の1題を解くだけでこの本は1400円分の価値があり、とにかく随所に学力につながる遊び心が散りばめられていて、読んでいて楽しい。

                       

                      あと「ドラゴン・イングリッシュ」は英文がシンプルで、可能な限り簡単な単語を使った英文が並んでいる。小難しい単語を極力避けているのがいい。

                      たとえば、「交通量の多い通り」を’a busy street’、「子供を産む」を’have children’ と、中1でも書ける簡潔な表現にしてある。「海産物」を’delicious fish’ と英訳しているのには笑えた。

                      英作文に上達するには、背伸びをして小難しい単語を使うことなく、身の丈にあった語彙を組み合わせ、自然な英文を作る訓練が必要だが、「ドラゴン・イングリッシュ」の例文は、簡単な単語を使って論理的で自然な英文を書く価値観で貫かれ、大学受験生に英作文の思考回路を埋め込んでくれる。

                       

                      また「例文がたった100個だけでいいの?」という批判もあるだろう。たしかに100個だけでは足りないかもしれない。

                      ただ「ドラゴン・イングリッシュ」には、カッコ良くてエレガントな例文が選び抜かれている。たとえば「不老不死は人間の夢である」を、’People wish they could live forever and never become older.’と表現しているところは圧巻である。この一文だけでも英語に対する興味をかき立てられる。


                      100個の例文では網羅性には欠けるかもしれないが、100個例文を暗記したら英作文への抵抗が減り、英作文への好奇心を喚起する起爆剤になるだろう。竹岡氏の例文の選択や配列、また解説にある「ケレン味」が心地よい。「こんなに面白い話があるんだよ」「こんな良い暗記の仕方があるんだよ」と、竹岡氏は無邪気な子供のようにためになる知識を楽しげに披露してくれる。

                       

                      竹岡氏の参考書は「ドラゴン・イングリッシュ」に限らず、英語への興味をかき立てる触媒で、英語嫌いの受験生が竹岡氏の著作に触れ、英語好きになるというドラマチックな話はよく耳にする。

                       

                      かつて、NHKの「プロフェッショナル」で竹岡氏が紹介されていたが、竹岡氏は京都で小さな私塾を開いていて、塾開設初期は「詰め込み」方針で、生徒の成績があまり伸びなかったという。しかし「面白い授業」にシフトを変えてから、合格実績が飛躍的に伸びたらしい。

                      「プロフェッショナル」では竹岡氏の授業風景が映っていたが、’spring’という単語の語源の説明をしていて、’spring’はもともと「飛び出る,水が涌き出る」で、それが「春」「ばね」「泉」「跳ねる」という意味を持つようになったと、情熱的に説明していたのが印象的だった。

                       

                      最後に指摘しておきたいのは、竹岡氏は文章がうまい。語り口がいい。自然体だが説得力の強い、「吸引力」を感じる文体である。だから長時間読んでいても刺激が持続し飽きない。文体のおかげで途中挫折しにくい。

                      評判になる参考書の書き手は決まって文体がいい。

                       

                      | 大学受験学参ソムリエ | 17:54 | - | - | ↑PAGE TOP