猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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笑わない子供
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    目が死んで、無表情な子の学力を伸ばすのは難しい。悪い言い方かもしれないが、目が牛や馬みたいで、顔の皮膚が金属でできている子に対して、教える側はどうすればいいか悩む。

     

    逆に、勉強が得意な子は眼が光っている。しかも授業中、眼の位置が高性能のレーダーみたいに的確に動く。黒板を見てほしい時は黒板をにらみ、テキストを読むべき時はテキストに目を落とす。教師の顔を見てほしいときは教師の顔をじっと見る。
    表情の反応も良く、笑う時は笑い、真剣に聞くときは顔を紅潮させる。とにかく、授業のホットな核心部から絶対に目がぶれないのである。

    オーケストラにたとえれば、指揮者の指示通り演奏する団員みたいだ。そんな子を相手にすると、教師は自分が大指揮者になったような気分になる。

     

    しかし、そうでない子も存在する。

    夏から入塾した中1の男の子P君の例を紹介しよう。

     

    最初の授業で気づいたのだが、P君の笑顔は薄かった。無反応な笑い方をするのである。

    勉強は講義や書物から、どれだけ知識や考え方を吸収するかで出来不出来が決まる。汚い例で恐縮であるが、脳をバキュームカーとするなら、吸引能力は笑った時にこそ最大限に発揮される。笑う時にはinputoutputが高い次元で行われる。

    笑顔は知的好奇心のバロメーターである。爆笑する時バロメーターは振り切れる。P君の場合、ほとんどバロメーターが触れていない。知識を吸い取ることに楽しさを感じていないようなのである。

     

    たとえば英語の時間、私は中1の授業で「take」の覚え方を教えた。「takeは持っていく、連れていくと暗記しよう。ていく、ていく、もっていく、つれていく」

    どうしようもない語呂合わせに他の子は笑っていたが、彼は表情一つ変えない。3日たってP君にtakeの意味はと尋ねたら、案の定、全く覚えていない。

     

    今度は社会の時間。アメリカの地理で、ヒューストンは宇宙科学工業が盛んという話題になった。私は「ロケットはヒューと上がって、ストンと落ちる。だからヒューストンはロケットで宇宙産業」と教えた。P君はかすかな笑みを漏らしていた。「今度はいけるかな」と思ったが私の考えは甘く、3日後に「宇宙産業がさかんなアメリカの都市は?」と質問しても答えられなかった。

     

    ユーモアのある語呂合わせは、記憶に便利である。下らないと言われようが、単語や用語をダジャレで覚えると効果が大きい。古文単語集「ゴロゴ」はエグさ一歩手前のユニークなイラストと、強引な力技のダジャレで、大学受験生に人気が高い。

    ダジャレは単語暗記の武器である。デーブ・スペクターがあれほど日本語に堪能なのは、日本語の単語をダジャレを駆使して暗記した結果ではないかと私は考えている。デーブ・スペクターのダジャレは彼の猛烈な日本語学習の副産物なのだ。

     

    教師が生徒にダジャレを言って、俺のダジャレを笑え、ダジャレの内容を記憶しろとは暴君みたいで言えやしないのだが、笑いへの反応の薄さは、知識を吸引するパワーの弱さを物語っていることは間違いない。

     

    もう一人。

    入塾面接で高2の女の子Qさんが来た。公立2番手高で成績は全教科最下位に近い。私は入塾をお断りしようとしたが、本人は介護の仕事に就きたいという夢があり、表情は薄いが悪い子でなさそうなので、お引き受けした。

     

    ところが、学校の教科書を見ると真っ白。勉強の跡が全く見受けられない。これは一から築き上げなければならない。勉強のやり方を懇切丁寧に教えた。

    私は単語帳作りを指示した。A5版のノートの真ん中に線を引き、単語を左に日本語を右に書く習慣を身につけさせようとした。だが、2週間ぐらいチェックしていないと、たちまち単語帳作りをやめてしまう。悪気はない。だが、どこか感情の襞に薄さを感じるのだ。

     

    単語帳だけではない。

    私は速読英単語を和訳してもらう時、左側の日本語にハガキを乗せ、目玉クリップで挟むよう指示している。高校の参考書・問題集は分厚いものが多く、開いて机に置いていたら閉じてしまうので、生徒からは目玉クリップは「合理的な方法ですね」と評判がいい。

    しかしQさんは、目玉クリップの方法を教えた最初の日は使っていたが、次の授業は目玉クリップを使わなかった。目玉クリップを家に忘れたのではない。ちゃんと机に置いてあるのに使わないで、自己流でバタバタやっている。悪気があるわけではない。目玉クリップを合理的な勉強法だと感知する感性が薄いのだ。

     

    Qさんは私が指示したやり方を、ことごとく無視する。

    勉強のやり方が、悪い方に自己流になる。自己流になっていく過程には、大人に対する敬意に欠けた態度と、怠惰な根性と、物事を重く受け止めない心、感情の熱さ、そんな要素が複雑に噛み合っている。

     

    Qさんは授業の喰いつきも悪い。私は理科社会の授業では、ポイントを語る「真面目」な部分と、雑談や豆知識を語る「脱線」部分の、複線を意識して授業をしている。授業は真面目だけだと眠くなるし、脱線だけだとおふざけになる。真面目:脱線を7:3ぐらいの割合で意識しながら授業をしているが、他の子が脱線部分に熱く食いつくのに対して、Qさんは脱線部分になると下を向いて、なぜか寂しそうな表情になって聞いていない。

    教師の方ならわかると思うが、勉強が得意な子ほど雑談になると目を輝かせる。実に下らないことに興味を燃やしたりする。

    しかしQさんは違う。「真面目」な部分では義務的に真面目なふりして聞いているが、「脱線」部分ではスイッチがOFFになってしまうのである。人の話を聞くのが苦手なタイプらしい。

     

    それから、Qさんの高2クラスで「アメトーーク」の「勉強しかしてこなかった芸人」の回を見せた。この回は「アメトーーク」の中でも名作で、勉強の意識を笑いながら高めるのに効果的だと考えたからである。他の子はロザンの宇治原凄みに感動し、オリラジの中田の狂気に爆笑していたが、Qさんだけはテレビに集中できず、笑顔もなく呆然と画面を眺め、時々「早く終らないかな」という表情で目をそらしていた。

     

    こういった子の成績を伸ばす処方箋をお持ちの方がいたら教えて欲しい。


    逆に、真面目な子の例。
    イギリス・ケント大学に留学中(2014年9月現在)の
    コウタロウが高3の時作った単語帳。
    彼は記憶しておくべき大事な単語を、端正な字で書き写している。
    日本語を書いていないのは、日本語に頼らずプレッシャーを自ら与えて記憶するためである。
    彼はこれら難単語の意味をスラスラと私の前で言って見せた。
    イギリスでも、何気ない日常会話で、この単語帳は役に立っているのだろか。


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