猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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スグルの大学受験(1)
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    スグルが小6で塾に来たとき、正直イライラした。
     
    彼は猿顔で、眉毛が八の字に垂れていて愛嬌はあるのだが、何もかも雑だ。ノートの文字は芸能人のサインみたいだし解読不可能。目を離したらチャラチャラしているし、とんでもないヤツだと思った。小学校の几帳面な女の先生なら、彼に最低の通知表をつけるだろう。 
    しかし彼のお父さんは厳しい人だ。お母さんは柔和で知性をたたえた人だ。2歳年上のお姉ちゃんも塾生で、スグルと顔は瓜二つだが、性格は対照的で生真面目だ。


    何よりもスグルは目が善人だ。私が彼を怒ったとき、スグルの目は猛獣に睨まれた小動物のようになる。周囲の人が見れば、か弱いスグルを私が威嚇しているようにしか見えないだろう。 
    そんな理由で、彼の成績は長い目で見たら伸びるとは思っていた。彼は根が真面目なのだ。性格がパワフルで、生きる力がみなぎっている。 
     
    しかし中2のときから、彼は女の子に興味を持ち始めた。ただ、彼の興味の持ち方と実行力は、同年代の中学生を凌駕していた。彼の生きる力は勉強ではなく、子孫繁殖に向けられた。
    彼に思春期はなかった。代わりに発情期があった。彼の女性問題で、学校では職員会議、家では家族会議が頻繁に行われた。猿顔のくせに変なストレートパーマをかけ、色気づいていた。 
     
    彼が通っていた中学校は、近所でも問題がある学校と言われていた。
    たとえばスグルが中2の時、同級生の誰かが沖縄の美ら海水族館で問題を起こしてしまい、翌年からスグルの中学校は水族館から出入り禁止を言い渡され、下級生は水族館に入れてもらえず美術館に変更になったそうだ。沖縄にまで行って美術館にしか行けないのは中学生にとって面白くないはずだ。 

     
    また、普通の中学校はたいてい1階に職員室があり、1階が中1、2階が中2、3階が中3という構造になっているはずなのだが、スグルが中3のとき、中3の教室は1階に移動された。中3がワルなので、職員室に近くないと学校の治安が保てないという理由からだ。
    スグルもそんな校風の中で、自由奔放に立ち振る舞っていた。彼は先生にちょっかいを出す悪癖がある。彼は基本的にいじられ役だが、返す刀で先生もいじる。スグルをかわいがる先生は多いが、一部の生真面目な先生にとっては猿顔のウザいガキにしか見えない。 
     
    強面の私の前で、スグルは猫をかぶっていた。塾では真面目で、学校での狼藉ぶりの素振りすら見せなかった。体育会系の、鬼顧問の前では従順な生徒を、見事に演じきっていた。学校では軟派なのに、塾では硬派の殻をかぶっていた。彼の悪童ぶりは同じ学校の生徒からいろいろ聞いていたが、私は聞かぬふりをしていた。 
     
    もちろん、彼の内申点は最悪だった。入試問題はある程度できたが、内申点が足どころか全身丸ごと引っ張っていた。
    私は三者面談で、お母さんとスグルを前に言った。 
    「尾道北高の合格可能性は、消費税と同じ5%です」 
    5%とはきつい言い方だ。生徒に合格可能性0%とおっしゃったロカビリー先生には負けるが、彼は傷ついただろう。 
    しかしスグル君は奇跡的に北高に合格した。そのときの合格体験記である。
     
    「このままでは、北高に合格する確率は消費税と同じ5%以下です」中3の12月にあった三者懇談で、僕は先生にはっきりと言われた。だが、ここから頑張れば受かるといわれたので、毎日自習室に行くようになった。塾に行くたびに、先生に一言もらい、成績があまり伸びない時期には、具体的なアドバイスをくれて、全面的にサポートしてくれた。塾の自習室に毎日行っているうちに、乾いたスポンジが水をどんどん吸収するように力がつくのが実感できるようになった。そしてついに高校入試の日が来た。先生から気合のビンタをもらい実力を発揮することができた。合格発表の日は、結果が出たらすぐさま先生に電話した。北高に合格できたのも先生がいろいろサポートしてくれたからである。北高に入ったら大学受験があるけど、ずっと先生についていってがんばりたいと思う。
     
    スグルが合格して、私は安堵した。北高は真面目な厳しい学校。彼は野球部に入り、厳しい顧問の先生鍛えられる。もう心配はいらない。 
    しかし私は甘かった。彼の高校生活は、波乱に満ちたものだったのである。 
     (つづく)

     
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