猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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日本一素直な男・コウタロウ(27)
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    慶應は、法学部と経済学部と商学部の3学部を受験することにした。

    コウタロウは文学部のキャラではないし、SFCは問題が奇妙奇天烈なので除外した。

    試験日は2月16日・17日・18日。あと5か月ある。科目は英語と世界史と論述力(小論文)。私は綿密な作戦を立てた。一日じゅう慶應の赤本・青本を手離さなかった。過去問の分析をしていたらのめり込んで睡眠不足になり、1日4時間しか寝ない日が続いた。赤本の鮮やかな赤色と、「慶應義塾大学」と黒々と書かれた文字がアドレナリンを分泌させ、疲労の極致なのに頭は覚醒していた。

    もはや失敗は許されない。だが3学部のどれか1つに合格できればいい。5か月あれば慶應に合格できる確信があった。だが確信が安心に緩まないよう、意識して危機感を心の底で煽った。

     

    受験勉強がアメフトの負担にならないように気をつかった。コウタロウは現役のアメフト部員、しかも9月から12月はアメフトのシーズンで、コウタロウのチームは3部から2部へ昇格する目標があった。

    コウタロウはある時、4年になったら1部リーグで大観衆の声援を浴び、京大や関学と戦いたいと夢を語ってくれた。コウタロウは1年生でなかなか試合に出られないので、レギュラーの座を獲得するために力をつけ、監督コーチにアピールしなければならなかった。

    コウタロウには、二足の草鞋を履き、勉強とスポーツの両立をめざす人間には避けられない悩みがあったと想像する。アメフトを練習する時は勉強が疎かになることへの焦りがあっただろうし、勉強をする時はボールの飛距離を伸ばすため、筋トレや自主練習を思いっきりしたい鬱屈があったろう。コウタロウは高校時代までサッカーをしていたので、蹴るのは得意だが投げることは慣れていなかった。しかもコウタロウのポジションはQBで、正確で速いパスが求められた。一刻でも早くチームに貢献したいのに時間が取れない。慶應受験しろと半強制的に立ちはだかる私に対する抵抗も少なからずあったと思う。

    とにかく、私は受験勉強でアメフトという神聖なチームスポーツを犠牲にしてはいけないと考えた。アメフトに打ち込みながら、短時間で濃い勉強をやり抜くことに意義があった。私はエスプレッソコーヒーのような、濃く短い勉強ができる最善のカリキュラムを組んだ。コウタロウのチームメンバーのみなさんは、コウタロウが裏で猛烈な受験勉強をしているなんて、絶対に気づかなかったと思う。練習時間と重ならないよう、塾での勉強時間は早朝が多かった。暗記は往復3時間の電車の中でやった。まさにコウタロウは「仮面」をかぶっていた。

     

    慶應大学に挑む、コウタロウの勉強の軌跡を、科目別具体的に書き記しておこう。

    英語については安心していた。

    慶應大学の英語は、私が受験生の時は単語が難しいという印象しかなかったが、大人になって問題を改めて見ると、相当な「頭の良さ」を求めていることがわかる。意味を閃く力、事務処理能力、テキストからエッセンスを抽出する力、社会問題への食いつき。英語の問題は英語力だけを求めていない。「教養の底力」「地頭のキレ」が勝負なのだ。

    とはいうものの、英単語量は絶対に必要だった。特に法学部の英語は、難単語の意味を類推する問題が出るが、ある程度暗記しておいた方が便利だ。コウタロウはTOEFL用の「TOEFLテスト英単語3800」で2000語の大学受験レベル以上の単語を暗記していた。これは大きなアドバンテージだ。

    コウタロウは英国留学に向けて4か月猛勉強をした蓄積がある。大学1年生の英語力は、受験をピークに緩やかに下がるのに対して、コウタロウの英語力は急カーブで伸びている。カンを鈍らせないよう、Z会の「Advanced1100」「速読英単語・上級編」「リンガメタリカ」の3冊を使って、ひらすら英文和訳で多読乱読を心がけた。

     

    また、慶應法学部の問題を分析すると、「会話問題」で勝負が決まることがわかった。法学部の会話問題は日本一難しい。慶應法学部の会話問題を扱った参考書は少ないが、語学春秋社「横山のメタロジック実況中継」には目を通しておく必要があった。慶應の会話問題を解くには、センター試験では通用する小手先の「ロジック」ではダメで、内容を「メタロジック」で把握していなければ解けないというのが、この本の主張だ。メタロジックとは要するに「会話の空気」である。空気を読む鋭い感覚がなければ法学部の会話問題は解けない。「あうん」の呼吸の機微を知る感性がいるのだ。この本の最後に慶應法学部の問題が3連発で載っているが、この解説が圧巻で、解説を読んでコツをつかめば、会話問題での失点は防げそうだった。

     

    慶應受験で、なにより私が最重要視したのは過去問である。過去問を頻繁にやって得点力の伸びを確かめた。私は過去問中心主義である。偏差値より合格最低点で力を判断する。偏差値という相対的な「他人との戦い」より、合格最低点という絶対的な「自分との戦い」に重きを置く。特に私立大学に関して、模試はあまり信用しない。ましてや慶應の問題は独特すぎて、模試の判定はあてにならない。

    受験勉強を減量にたとえれば、過去問の点数は体重計だ。過去問を解き体重計に足をのせる時、減量に苦しむボクサーのような緊張が走った。

     

    コウタロウの英語での過去問スコアは、法学部(200点満点)が、

    2009年 8/18  90

    2010年 9/30  140

    2008年 11/2  135

    2007年 11/9  115

    2013年 11/16  143

    と着実に伸びていった。法学部は英語が7割あれば合格できると私は踏んだ。伸び盛りのコウタロウなら、本番で最低7割5分は取れそうな気がした。

     

    経済学部(200点満点)は

    2013年 9/13  158

    2008年 10/15  152

    2009年 11/13  139

    と、最初からハイスコアを叩き出した。経済学部は自由英作文の配点が高い。コウタロウは自由英作文が得意で、一橋受験で自由英作文はみっちり鍛えている。

    また、コウタロウはどういうわけか、日本語よりも英語の方が自己主張できるタイプだ。私に対しては相変わらず口が重いのに、大学のアメリカ人の先生に対しては気軽に話せるらしい。書き言葉も話し言葉も「英語人格」の方が積極的になる。英語になると人が変わったように強くアピールできるコウタロウには、自由英作文の配点が高い経済学部の問題は水にあっていた。

    おまけに、経済学部は英作文の比率が年々上がっている。昔は経済学部も英作文を捨てて合格できると言われていたが、傾向が変わったいま英作文を捨てれば致命的だ。経済学部の英作文の難化は、私立文系専門で英作文が書けない受験生を排除する意図が見える。慶應経済は英作文が合否を決めるのだ。

     

    商学部(200点満点)の得点の推移は

    2007年 10/8  149

    2008年 10/23  167

    2012年 11/27  155

    と、こちらも終始一貫安定していた。

     

    英語のメドはついた。合否のカギを握るのは世界史だった。

     

    (つづく)

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