猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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日本一素直な男・コウタロウ(28)
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    慶應受験まで4カ月、世界史は突貫工事だった。
    建築にたとえたら、日本のビルのように耐震構造を気にして丁寧に建てる余裕はない。中国のビル建設現場みたいに砂塵が舞い轟音が響く中で、とにかく雑でいいから一刻でも早く高く鉄骨とコンクリを積み上げたかった。
    ただ、一橋や早稲田や慶應の社会で突貫工事は難しい。単なる知識詰め込みだけでは無理だ。教養の深みまで掘り下げないと解けない。ナマの覚えたての知識では歯が立たず、教養のレベルに発酵するまで、ある一定の熟成期間が必要だ。直前にスパートをかけるのは無謀だ。ふつうの受験生がたった4カ月の突貫工事で早慶レベルの社会が解けるわけがない。
    幸いにして、コウタロウは現役の時、国立大学では世界史が一番難しいと言われる一橋大学を受験している。論述問題で世界史のストーリーは頭に入っている。だから世界史の体幹は頑強だ。しかし私立大学対策は特にやっていないため枝葉末節の知識がない。私立の社会は細かい知識の暗記で決まるから、用語を一つでも多く詰め込む必要があった。
     
    慶應の世界史と一概に言っても、法学部と経済学部は、これが同じ大学かと言いたくなるほど問題形式が違う。法学部は細かい暗記中心でまさに「THE 私立文系型」で、経済学部は論述と年号並べ替えが多い「国立私立折衷型」である。一橋の論述対策をみっちりやっているコウタロウには、経済学部の問題の方が性に合っている。
    私は慶應経済学部の世界史の問題が好きだ。経済学部の問題は1500年以降が中心に出題され、世界史だけでなく政治経済を知らないと解けない。カビの匂いがする史学ではなく、ナマの流動的な現代社会に関する実学が問われる。企業の最前線で働く人材を輩出する、まさに慶應大学のイメージ通りの出題傾向である。
    コウタロウは新聞やテレビのニュースに対する感度が高い。政治経済に通暁し、論述力がきわめて高いコウタロウには、経済学部の問題はうってつけといえた。
     
    私の作戦は、10月には経済学部向けの勉強、すなわち世界史のストーリーを再確認することにあて、11月からは法学部の細かい暗記作業に入るというものだった。10月は鉄骨で基礎工事を固め、11月は枝葉末節を充実させる方法をとった。
    世界史のストーリーを叩き込み体幹を強く太くするには、山川出版社の教科書を読むのがいちばんだ。山川出版社の教科書は名文である。森鴎外の小説のように締まった文体で、簡潔で要領を得ている。だが、教科書の名文が味わえるのは、ある程度歴史の知識がないと難しい。学び始めのうちは実況中継あたりの、くだけた口調の参考書から始めたほうがいい。
    私は手っ取り早い方法として、オーディオブックの活用を考え、語学春秋社から出ている「青木裕司のトークで攻略 世界史B」を使用した。Vol1とVol2の2分冊で、両方買っても税抜きで3000円、CDを全部聞いても24時間分、ドラマ「24」より短い分量で世界史を総復習できる。しかも講師は青木裕司氏。世界史を最短最速で流れをつかむには絶好の方法だ。コウタロウは1日1時間ずつオーディオブックを聞いた。この方法は効果抜群で、BlogやTwitterで推薦参考書を口にしたがる私でも、コウタロウを不利にしないため絶対口外しなかった本である。
     
    また、センターレベルの用語を再確認するため、一問一答形式のZ会「世界史B用語&問題2000」を使った。コウタロウは世界史で半年間ブランクがあり、忘れた知識の記憶回復のために利用した。このテキストはiPhoneでソフトが出ている。コウタロウは大学への通学時間を利用して2週間で暗記した。
     
    そして、慶應経済学部は1500年以降から中心に出題され、とくに現代史の比率が高く時事問題も出題され、高校の世界史の授業だけでは勝てない。経済学部対策として「ふだんから新聞に触れておこう」という漠然とした無責任なアドバイスをする本が多いが、新聞で受験対策するのは一苦労である。
    経済学部受験で、最強の本は池上彰「そうだったのか! 現代史」である。これは学習参考書ではなく、一般向けの文庫本だが、慶應経済受験生のための本としか思えない。池上彰が慶應経済の出身だからというわけではないだろうが、慶應経済の世界史は、まるで池上彰が出題しているようだ。続編も出ており、2冊に現代史がギュッと凝縮され、絶対的な本である。
    「そうだったのか! 現代史」の目次を見ると
    冷戦が終わって起きた「湾岸戦争」/冷戦が始まった/ドイツが東西に分割された/ソ連国内で信じられないスターリン批判/中国と台湾はなぜ対立する?/同じ民族が殺し合った朝鮮戦争/イスラエルが生まれ、戦争が始まった/世界は核戦争の縁に立ったキューバ危機/「文化大革命」という壮大な権力闘争/アジアの泥沼ベトナム戦争/ポルポトという悪夢/「ソ連」という国がなくなった/「電波」が国境を越えた「ベルリンの壁」崩壊/天安門広場が血に染まった/お金が「商品」になった/石油が「武器」になった/「ひとつのヨーロッパ」への夢/冷戦が終わって始まった戦争 旧ユーゴ紛争
    と、戦後史の重要でおいしいポイントが、あの池上彰独特のわかりやすい文体で、面白く説明されている。慶應経済に関しては、新聞よりも池上彰である。
     
    さらに経済学部は、問題の使い回しと言いたくなるほど、同じ表やグラフを使う問題が出ている。過去問対策は絶対だ。アメリカの貿易収支のグラフは10年間で4回も出ているし、また下の写真のように、同じ地図やグラフが数年後に登場するのである。 






    経済学部受験で、過去問対策をやらないのは、手抜き以外の何物でもない。
     
    経済学部は150点満点で、コウタロウが私の作戦を素直に実行してくれたおかげで、点数は、
    2008年 10/2  79
    2007年 11/1  106
    2013年 11/15  123
    と順調な伸びを示した。
     
    経済学部は順調だったが、難敵は法学部の世界史だった。9月27日、慶應の世界史の勉強を始める前に、法学部の問題を解いてもらったら、100点中22点だった。コウタロウは現役時代、私立文系のカルトクイズ的な暗記中心の勉強の経験はなく、また半年間ブランクがあるので、この結果は当然だった。わざと2か月法学部の問題は封印し、2か月後の11月下旬に過去問を解く予定を立てた。22点から2か月で、どれだけ伸びるか楽しみだった。
    10月に経済学部の勉強に一段落つけたあと、11月から法学部用の細かい暗記をはじめた。使用した教材はZ会「世界史100題」だった。難関私立大学の受験生には絶対必要な本である。教科書用語集以外に、どうしてもこれ1冊しか選べないと言われたら、この本を選ぶ。調べ込みながら3回反復すれば、どんな難関大学でも世界史に関しては合格レベルに達するだろう。
    私立文系大学の世界史日本史のカルトクイズ問題はよく非難されるが、難解な事項を記憶するには、記憶力だけでなく精神力がいる。難関私立の問題には「努力だけでかかって来い!」みたいなところがある。泥臭い努力型の人間にはチャンスだ。
     
    11月20日、2カ月ぶりに法学部の問題を解くと58点、11月27日は52点だった。順調だった。法学部世界史に関しては最終的に7割5分を目標にしていた。今後の予定として、12月と1月は、早慶の世界史の用語問題集として最も定評がある、東進の用語問題集を詰め込む予定だった。早慶世界史の一問一答は、東進が絶対だ。他はあり得ない。出題者の傾向の感性を読みきったような、ツボをズバリついた用語が羅列されている。早慶問題を分析するプロのスコアラーが作った用語集。また、時折入る解説コメントが面白くためになり、一問一答にありがちな無味乾燥さがないのがいい。
    もう一つの対策として、コウタロウには早稲田の問題を解いてもらう予定だった。早稲田と慶應の世界史・日本史の問題の難しさは図抜けている。だから早慶以外の大学の入試問題解いても対策にならない。早稲田志望の受験生は慶應、慶應志望者は早稲田の問題を解けば絶好の対策になる。テヘラン会談とかロイターとか盧泰愚といった難語が、早慶限定で頻出しているのがわかる。
     
    さらに知識を固めるために、法学部の世界史は文化史の比率が高い。文化史が嫌いな人は多いが、逆に文化史は作者と作品を丸暗記すれば解ける分野であり、経済史のように深い理解は必要ない。文化史は「暗記すればいいや、ラッキー」と思えばいい。佐藤幸夫「世界文化史・一問一答」を詰め込む予定だった。
    受験直前には、Z会の「近・現代史」「各国史」に、山川出版社の「各国別世界史ノート」を使って、強引に用語をギュウギュウに押し込む計画も立てていた。受験直前には同じテキストを繰り返すのが鉄則だが、コウタロウは記憶力がいいので、直前に新しいテキストを使っても消化不良にならないと判断した。
     
    最終手段として、私は山川の「世界史用語集」に、過去10年間に法学部・経済学部・商学部に出題された用語を蛍光ペンでチェックしていた。法学部がピンク、経済学部が水色、商学部が黄緑色である。




    こうやって塗っていくと、マラッカとか天津条約が全学部で集中して出題されているのがわかるし、法学部では教科書に掲載される頻度が少ない用語が出題され、しかも一度出題されたら二度出る可能性は極めて少ないことが判明した。1月になって慶應の過去問を10年分やり尽したところで、私がマーカーを塗った用語集をコウタロウに渡して、あとはコウタロウ自身にヤマを張ってもらおうと考えた。
    こうやって法学部対策の青写真は、精緻にできあがっていた。
     
    商学部は、法学部や経済学部に比べて問題が簡単なので、点数が跳ね上がるのが速かった。
    100点満点で
    2010年  10/12  73
    2008年  10/19  70
    2012年  11/8  83
    商学部には、一癖も二癖もある論述力テストがあるが、合格可能性は極めて高いと判断した。商学部の過去問の点数が安定していることが、私とコウタロウに心の平穏をもたらした。
     
    慶應対策、あとは論述力テスト対策が待っていた。論述の練習は11月から満を持してはじめた。
     
    (つづく)


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