猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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高1・高2で読むべき本(3)
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    吉村 昭
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    面白い映画には、筋がワンフレーズで紹介できるものが多い。
    『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、高校生が過去にタイムスリップし若い頃の父母の運命を変える話、『七人の侍』はサムライが野武士から農民を守る話、『ダイ・ハード』は高層ビルがテロリストに占拠され警官が一人で戦う話、『転校生』は高校生の男女の身体が入れ替わる話とか、シンプルな筋立てが観客の好奇心をそそる。

    新潮文庫のロングセラーである吉村昭の小説も、筋が簡単に紹介できて、面白い。
    『破獄』は4回脱獄に成功した超人的な昭和の脱獄王の話、『羆嵐』は村人が熊につぎつぎ食べられる話、『漂流』は江戸時代黒潮に流され火山島に流されアホウドリを撲殺し生きながらえた男の話、『長英逃亡』は整形手術をしてまで幕吏から身を隠す高野長英の話など、ストーリーがワンフレーズで紹介できる。
    『破獄』と『羆嵐』と『漂流』をまとめて映画化すれば、刑務所に入れられるわ、脱獄できたのに熊に食べられるわ、熊の胃袋から脱出し船に乗ったら漂流するわで、ハリウッドアクション映画の原作として面白い。

    吉村昭の最高傑作は『戦艦武蔵』である。武蔵建設のドキュメンタリーだが、感情を廃した冷静な語り口で客観の極み。右寄りの人は高い技術力を賞賛する国家高揚の小説と捉え、左側には無駄な戦艦に巨額の費用をかけた、戦略の愚かさを嘆いた小説に読める、イデオロギーを超えた能面のような作品。
    また『零式戦闘機』はゼロ戦を作った科学者の話で、宮崎駿『風立ちぬ』で戦闘機に興味を持った人には読んでほしい。
    『戦艦武蔵』『零式戦闘機』など文系人間のファンタジックで無理な要求を、理系人間が現実化していく話にも受け取れる。「世界一の軍艦・戦闘機を作れ」という軍幹部の要求に技術者たちは応えた。機械に疎い人間が、エンジニアを疑似体験できる作品である。

    吉村昭の作品で、面白いのは初期だ。老境に達してからの『桜田門外の変』『生麦事件』あたりは、小説というより史料を読んでいるようで正直つらかった。失礼な言い方だが、取材内容をそのまま書き連ねたようで、物語として凝縮されていなかった。

    吉村昭の硬質な小説を、もうすこし読みやすく、現代風エンターテーメントにしたのが百田尚樹である。
    私が数年前から高1生に薦めていた本が『永遠の0』。当時はまだこんな有名な本ではなかった。太平洋戦争の専門書はあふれているが、読み甲斐がある通史物語は案外少ない。この本を渡せば「先生、いい本を知ってますね」と鼻が高かった。Twitterで『永遠の0』を絶賛したら、百田さん本人からリプライが来たのには驚いたけど。

    百田尚樹は『ボックス!』もいい。boxには動詞で『ボクシングをする』という意味がある。高校ボクシング部の話で、入部した「負け知らず」な天才と「負けず嫌い」な努力家の友情と対戦。物語の筋が期待を裏切らず展開する。上下2日で読める。部活生にはぜひ。

    最近文庫化された『海賊とよばれた男』出光石油の創始者の話、社員が総がかりで真っ黒な石油タンクの中を、石油の匂いで気絶しかかる状況で掃除する重労働、今なら文字通り『ブラック企業』。でも『あんな環境で働きたい』と読者を熱くさせる魅力がある。映画化すればエネルギッシュな主人公・出光佐三は誰が演じるのか。

    吉村昭と百田尚樹の本から、昭和のエネルギーを浴びたい。
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