猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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大学受験・部活生はラストスパートできるのか?
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    部活生はラストスパートがきくという説がある。本当だろうか?
    部活に青春を捧げ、勉強がおろそかな状態で、高3の夏から難関大学を狙い合格することは可能か?
    「偏差値40から半年で65に伸ばす」ことは、実際にできるのか? 
    私には「才能がすべて」としか言いようがない。
    「才能」という言葉を少し分析してみよう。
     
    第1は「読解力」である。
    読解力とは「面白いものを感知する力」「他人のひらめきに気づく力」とでも言いかえればいいだろうか。
    勉強には、教科書や参考書から正確な情報を引き出す読解力がいる。教科書や参考書は、偉大な先人たちが残した「ひらめき」の記録である。教科書や参考書に面白さを感じ、ユニークな「ひらめき」をすくい取るには感性がいる。
    面白いものをスルーする受験生は、難関大合格は難しい。
     
    学問はそもそも暇人がするものだ。何もすることがない時間が、本や自分の脳に語りかける機会を作り、沈思黙考の中で「ひらめき」が生まれる。
    ニュートンが、リンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を閃いたのは、ニュートンがリンゴの木を眺める余裕がある暇人だったからである。西田幾多郎が「善の研究」を書けたのも、哲学の道を散策する時間に恵まれていたからだ。
    ニュートンが地中海の港湾の船の荷揚げ人夫で、西田幾多郎が京都で人力車の車夫をやっていたら、肉体的疲労で閃きどころではなかったはずだ。新しいことを「ひらめく」にも、読書から「ひらめき」を吸い取るにも、体力的な余裕と自由な余暇が必要だ。


    ところが、部活生の多くは、家に帰ったら疲労で読書どころではない。肉体的疲労で読書ができない。肉体疲労と「ひらめき」は反比例する。
    放課後の部活の時間が読書にあてる時間を削り取る。読書には一定の体力がいる。ハードな部活は子供の国語力を砂漠化する危険性をはらんでいるのだ。 
    半年間で猛烈に追い上げるには、参考書や問題集の力は欠かせない。これから2段階3段階上の大学をめざすには、授業には頼れない。部活で頑張り授業で眠っている間に、授業進路は遥かに先に進んでいるからだ。進路の差を自分で埋めなければならない。


    猛烈な追い込みのためには、参考書や問題集を使った自学自習が必要だ。先生が四六時中べったりくっ付いているわけにはいかない。参考書を読みこなさねば成績は上がらない。なのに、皮肉にもそんな受験生ほど、部活で読解力を奪われている。
    本から吸収すべき受験生ほど、本を読む力がない。偏差値を大幅アップさせるには、文章を深部細部まで読みこなす本を食べるくらいの読解力、それから教科書からウィットやエスプリを嗅ぎ分ける、面白さに反応する力が絶対に必要だ。
    勉強は頭脳労働、部活は肉体労働。この2つはシンクロする部分もあるが、別物であることを再認識する必要がある。
     
    第2は「暗記力」である。
    高3の夏から、勉強を始めるために塾や予備校に通う生徒がいる。しかし塾や予備校の授業は、ゼロから勉強を始めようとする生徒には合わせていない。
    ならば、個別指導や家庭教師ならどうか。たぶんレベルに合った指導をしてくれるだろう。ただ、そこで問題になるのは、知識の絶対量である。
    知識の絶対量とは、英語で言えば具体的に単語・熟語・文法・語法の量である。英語ができる生徒は5000も6000も単語を暗記し、しかも単語を使って有機的に英文を読める。知らない単語があっても類推する能力さえ持っている。


    しかし、部活に目を向けすぎて勉強を疎かにしていた高3生は、単語量が決定的に不足している。だから彼らが勉強に目覚めた時、まず取り掛からなければならないのは、猛烈な単語・熟語・文法・語法の暗記である。
    追い込みをかけるには、勉強をコツコツやってきた同級生が長期間かけて暗記してきた単語・熟語・文法・語法を、短期間で記憶する人間離れした暗記力が必要だ。
    個別指導や家庭教師を頼むなら、強い強制力を持ち、厳しいノルマを課すスパルタ系の先生に身を預けるぐらいの覚悟が必要なのだ。
     
    強い読解力と暗記力を「才能」と呼ぶ。ただこの2つの「才能」だけでは、追い込みは難しい。
     
    ここで 第3の才能、「ハングリー精神」がクローズアップされる。
    体育会系男子の、最強の長所はこれだ。
    ラストスパートで猛烈な追い込みができるのは、狂気スレスレのエネルギーを持つ生徒だ。バイタリティがある「肉食系男子」である。 
    高3の夏まで勉強が二の次になっていたのは、部活にあまりにも熱中しすぎたからである。一つのことにのめり込むと周囲が見えない。
    しかし勉強に集中し始めると止まらない。エンジンフル稼働で、血圧が上がったような真っ赤な顔で、深夜2時3時まで勉強する。超人のような集中力と継続力で、成績はグングン伸びる。
     
    ちなみにこのタイプは、センターや二次の過去問を解くことをなぜか好む。本番と同じ問題に対して戦意が湧くのか、スコアが出ることが嬉しいのか、理由はよくわからないが、本能的に過去問を好む。赤本の赤色を見ると牛のように興奮するのか。 
    ラストスパートがきく典型的タイプといえば、大阪の北野高校ラグビー部で活躍し、部活引退後は勉強面で振るわず、周囲に無理だと言われながらも、一念発起して一浪で早稲田に合格した橋下徹前大阪市長みたいな人である。あふれんばかりの言葉の力と、過信ギリギリの自信と攻撃性が、超人的な追い込みの原動力になる。 
    橋下徹のように、母子家庭で育った男の子に、ハングリー精神を感じる子がいる。18歳にして家父長のように、家族を背負っている切羽詰った感じがある。母親をいつか楽にしたいという気持ちが、照れから口にこそ出さないが垣間見える。経済的にも浪人は許されず私立併願も限られ、背水の陣の中から勝利をつかむ。
     
    第4は「出会い」である。
    一人では大学受験の逆境はカバーできない。そんな時、熱心に支えてくれる学校や塾の先生にめぐり合えるか運命を決める。
     
    教師は心の中で、猛烈にやる気がある子を待ち望んでいる。大人の中には、将来ある若者に自分を賭けてみたい「教育欲」を、人並みはずれて持っている人がいる。教育欲の強い大人と、向上心の強い若者が出会えば、強い師弟関係が生まれる。
    積極性と礼儀正しさ、それに可愛げがあれば、教育欲の強い教師の懐に飛び込み、ゴールまで二人三脚を超えた一心同体の人間関係を築き上げ、思いっきり贔屓され、大学受験を乗り切れる。
     
    ただ、いくら部活に熱心とはいえ、限度がある。一定量の勉強量は確保しておくべきだ。あまりにも長時間生徒を拘束する部活は薦められない。
    難関大学に合格するには、部活の時間が短いことが必要条件だ。進学校は短時間で効率的に練習し、部活の時間を伸ばさず勉強時間に配慮している。こういう学校なら、高3夏に瀬戸際まで追い詰められることは少なく、勉強と部活の両立は可能だ。
     
    体育会の部活は、時に受験に役立つ。
    部活で頭を使いながら上達してきた子は、勉強の世界でも伸びが速い。運動と勉強、目標が変わっても、自分の力を伸ばす方法論を知っている。上達するコツがカンで理解できる。監督・コーチの言うままでなく、良い部分は受け入れ合わない部分は削って、自分の頭で練習方法を開発してきた子は、勉強の世界でも十分に応用できるのだ。
     
    プロ野球界でも、環境が変わっても活躍するのは「頭がいい」選手である。日本のプロ野球からメジャーに行って成功したのはクレバーな選手ばかりだ。メジャーで成功した選手、たとえばイチロー・松井・黒田・ダルビッシュ・長谷川・上原らは、肉体面に加えて頭脳面に秀でていた。
    日本のプロ野球では相対的に高い能力で評価されていても、いざ海を渡ってメジャーに移籍すれば、圧倒的な力の低さに気づく。絶望的な壁が立ちふさがる。そこから浮き上がるには、やはり知力が必要である。
     
    同じことが、高3の夏から大学受験に目覚める子にも言える。
    絶望的な偏差値の壁。問題解いても歯が立たない。高い志望校を周囲に告げたときの嘲笑。そこから這い上がるには、作戦面での間違いは許されない。そこで先ほど述べた、有能で熱心な先生との「出会い」も一つの鍵になる。

     
    以上の条件を満たした受験生が、追い込みが可能な受験生である。
    部活に一生懸命だが、読解力や記憶力はありハングリー精神も旺盛。部活を引退したら「部活教」から「勉強教」へ、チームプレイから個人プレイへ華麗に転進する。一度方向性を決めたら、能力と熱意のある先生の懐に飛び込み、アドバイスをもらいながら自分で勉強法を開発し、高いポテンシャルとバイタリティでガッツリ勉強し、志望校にたどり着く。
     
    話は突然飛ぶが、個人レベルでなく国家レベルでも、同じことが言える。
    中国が経済発展したのも、同じ理屈が当てはまる。
    中国は、平等だが貧乏な共産国で、文化大革命に国の総力上げて打ち込んできたが、小平の政策転換で経済発展に目覚め、人民が競争意識を持ち始め、古代から儒学など読書経験が豊富で、人口も資源も多くポテンシャルが高く、本来中国人が持つ自己主張が強く自己中心的な国民性が表に現れ、日本という技術も資金も出してくれる隣国に恵まれたからこそ、中国は経済発展を成し遂げたのである。失礼だがブータンのような国は、良くも悪しくも経済発展は難しいのである。
     
    突然成長できるのは、個人レベルでも国家レベルでも「眠れる獅子」だけなのだ。
    獅子は必ず、皆さんの心の中で眠っている。

     
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