猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
kasami88★gmail.com
CALENDAR
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< August 2019 >>
RECOMMEND
RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
twitter
猫ギター
MOBILE
qrcode
LINKS
PROFILE
OTHERS
無料ブログ作成サービス JUGEM
<< コウタロウ英国留学記(2) | main | コウタロウ英国留学記(3) >>
私が『受かるのはどっち?』を書いた魂胆
0



    勉強法の本は、一人称である。

    受験に成功した人が、「私の勉強法はこうです、使った参考書問題集はこれです、通った予備校はここです、こんないい先生に出会いました」といった、個人的体験で終わってる。

    で、筆者はたいてい凄い記憶力や理解力の持ち主か超人的努力家で、それが必然的に自慢話に聞こえる。「1か月で青チャート5周しました」「2週間でシステム英単語暗記しました」。こんなの普通の受験生にはできっこない。ちょっと引いてしまう。すごいなあと感心するだけで役に立たない。高校生がイチローの野球理論を聞いているようなものだ。

    たしかに「超人」の成功談を読むと、モチベーションは上がる。「やる気スイッチ」に火がつく。だが具体的勉強法に迷い、スイッチは入ったのはいいが、どの方向性で勉強すればいいか混迷する。黙々と蒸気をはいているが、線路がなくて動けない蒸気機関車のような気分になる。燃えているのに、前に進めない。

     

    もう一つ、合格体験記。

    合格体験記は複数の受験生の成功談で、勉強法の本が一神教とするなら、合格体験記は多神教。こちらは誰を信じていいかわからない。

    ある受験生は、英単語はカードを作りましたと主張し、ある受験生は単語を書かずに暗記しましたと言う。十人十色千差万別。受験生はチョイスに迷う。

    たとえば店の情報なしで横浜中華街へ行けば、百を超える中華料理店の中でどの店がおいしいか、どの店に入ればいいか迷うだろう。これと同じで、百花繚乱の合格体験記は、自分のどの勉強法があっているかわからない。試行錯誤の連続になる。

     

    だから私は『受かるのはどっち?』で、典型的な天才型勉強法、超努力型勉強法を博士・女王という2つの人格に仮託し、論争させた。そして偏差値50〜60くらいで伸び悩んでいる受験生にとって、どちらが参考になるか、20数年の現場感覚から判決を下した。「受験は現場で起きている」のである。

    「こんな勉強法は天才だからできるんでしょ?」「あなたの努力は超人的だから万人は無理だ」と、私は判決文でハッキリ断定した。自慢に聞こえちゃうよと。
    それと同時に、天才の勉強法、超努力家の勉強法の「いいとこ取り」をした。天才努力家のおいしい部分を泥棒のようにちゃっかり盗んだ。

     

    ところで、私は小さな島の塾長である。生徒数は少ない。合格実績など大手塾や予備校に比べたら、たかが知れている。ある小出版社からは、私の塾の進学実績と就職先の提示を求められ、提示すると出版を断られた。

    また、勉強法の本や合格体験記は、「東大」のブランドは絶対的だ。書店には東大生の勉強法があふれているだろう。私は東大卒ではない。勉強法の本で、学歴差別は出版界にないといわれればウソになる。

     

    そんな、小さな塾の塾長で東大卒でもない教育者が勉強法の本を書くにあたって、一人称で勉強法を述べたり、塾の様子を書いたりしても商品価値はないと考えた。無名の人間が本を世に問うには、何かしらの工夫が必要なのだ。力を持たないものは技で勝負するしかない。だから天才型と超努力家の対決方式を考え出して、ストーリー性がある「読み物」としての充実を狙った。この本は52編の短編小説でもある。

     

    一番気を配ったのは、『受かるのはどっち?』では、徹底して「ふつうの受験生」「経済的余裕のない受験生」の目線で書くことだ。

    地方では特に所得格差は激しい。進学したくても塾に通えない、予備校に通えない高校生・浪人生は多い。カネをかければいい教育を受けられる。だがカネがないけど、どうやったら倹約しながら最善の教育が受けられるか。

    私の想定読者は、高校2年生あたりの、家があまり裕福でなく塾や予備校には通えない、高校の勉強は一応こなしているのに偏差値が伸びない、参考書を読んでも読解力がないから石を飲むような感じで理解できない。そんな受験生である。

     

    だから私は『スタディサプリ』(旧受験サプリ)を積極的に薦めた。リクルートが月額980円でパソコンやスマホで講義を見放題にしたのは画期的である。ありがたい。

    もちろんスタディサプリは玄人筋から「安かろう悪かろう」と批判を受けているのは百も承知である。価格破壊が学力破壊につながるという厳しい言葉も受けている。確かに以前あった「代ゼミTVネット」の錚々たる名実兼ね備えた予備校講師の授業に比べたら遜色があることは否定できない。

    だが、経済的余裕がない受験生にとって『スタディサプリ』は最初の壁を破る一撃として役に立ち、広く行き渡っていることは否定できない。救いの神なのである。月額980円で講義を見放題にした、リクルートの戦略は正しい。

     

    あと私のような個人塾塾長はしがらみが少ない。公正な白紙の目線で勉強法をジャッジすることができる。

    たとえば大手塾・予備校と個人塾、どっちがいいかの項で、判決を大手塾・予備校に下した。私は個人塾の経営者だから、個人塾を選んで然るべきである。だがそうしなかった。

    個人塾は選ぶのが難しい。合う合わないが激しいのだ。不特定多数の読者に向かって、個人塾塾長という自分の立場に固執して「個人塾がお勧めです」とは口が裂けても言えない。私は本書を書くにあたり自分の立場を捨てた。身を削らなければ、言葉なんてものは他人のハートに届かないのである。

     

    もちろん公正な目線、白紙の目線という言葉の危うさを、私は知っているつもりだ。しかもそこに熱情が加わると危険な匂いが漂う。正義面した熱情家ほど怖いものはない。「私にはバランス感覚がある」と言う人に限って、主観たっぷりのアンバランスで偏った見方しかできないのは周知の通り。

    だから読者の方には、私の言うことを鵜呑みにせず、本書を参考程度にとどめ、自分の勉強法を確立してほしい。「不当判決だ!」「控訴してやる」と反骨心を持って読んでいただくのが正しいと思う。そこはメディアリテラシーを働かせてほしい。

    本書の帯には「受験生の疑問をすべて解決!」と書いてあるが、皮肉なことに逆に迷いを深める結果になるかおしれないが・・・

     

    とにかく私は本書の執筆に半年をかけ悩み抜いた。有名人が書くルーティンワークのようなぬるい本や、にわか仕込みの教養で引用文だらけの死んだ本には負けないつもりだ。

    今回の記事、私の言葉はとがっているだろう。自己顕示欲丸出しだろう。だが受験生が勝つには自己顕示欲をとがらせなければならない。私が本に込めた執念は、きっと受験生とシンクロする。

     

    以上、暑苦しい檄文のような形になったが、気楽にゲーム感覚で読める本である。是非一読をお勧めしたい。

     

    | 私が出した本 | 16:09 | - | - | ↑PAGE TOP