猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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歴史は教科書か実況中継か? 判決
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    教科書の名文は蒸留水

    「教科書は面白くない」と感じている人は多い。教科書が「名文」で書かれているからだろう。
    「名文」とは簡潔で無駄のない文章のことで、教科書の文章は主観と感情を抑え、また抑えたふりをした、比喩や形容詞を省いた無味乾燥スレスレの、蒸留水みたいな文章である。
     
    教科書の文章は、情報や事柄が過不足なく書かれている。しかし教科書の蒸留水のような文章から、リアルに起こった事件や歴史上の人物のナマの姿をつかむには、類稀なる想像力が必要である。
     
    エッセイストの林望が、日本語の名文の典型として森鴎外の「渋江抽斎」を挙げていた。実際、岩波文庫版の「渋江抽斎」を読んでみたら、確かにシンプルで淡々とした、地方の医学者の伝記を感情を交えずして描いた、蒸留水のような名文だった。
    ただ正直言えば、贅肉がなく、筋肉すらない、骨格だけの文章は立派だが、小説として流して読むには少し苦しかった。

    同じような例として、マンガの「美味しんぼ」で、ある時割烹で神品のような吸い物が出される。
    材料はウズラで、肉は丁寧に削って骨だけにして、骨から出汁を取り、具は一切ないという一品なのだが、吸い物を飲む者達は骨髄から出る、味があるかないかギリギリの線の旨味に驚嘆していた。
    しかし骨の出汁のシンプルな旨味なんて、美食を極めた食道楽にしか滋味は理解できないものである。子供には骨で出汁をとった吸い物より、肉も頭もガンガン入れて煮込んだ豚骨ラーメンの方が、圧倒的に受けがいい。

    それと同じように、教科書のシンプルな文章は、書斎に本が数万冊あるような読書道楽にしか、良し悪しがわからない種類のものなのではないか。
    『実況中継』は、そんな要望から生まれた傑作である。
     
    教科書が主人・実況中継は家来

    だが、歴史の教科書は、いずれはやらねばならないものだ。教科書抜きの歴史学習は考えられない。
    博士の主張通り、大学入試は教科書から出題される。科挙なら四書五経で、実況中継はわかりやすいが情報に抜けがあり、四書五経の解釈書にすぎない。
    これまで、私はブログや著作を通して、歴史の勉強方法を語ってきた。暗記物が得意なら一問一答から始めろとか、実況中継を読めとか、読むことが苦痛ならオーディオブックを聴けとか、聴くのが物足りないならスタディサプリを使えとか、さまざまな方法を伝えてきた。

    しかし絶対忘れてはならないのが、教科書が主人で、他の教材が家来だということだ。家来は主人を盛り立てる役割であり、下剋上で主人にとってかわってはならない。 
    『実況中継』は、教科書で理解しづらかったところを、よりくだけた口調で説明してほしい時に、チラリと参照する使い方が望ましい。実況中継のありがたみは、教科書で苦しんだ人間だけがわかる。

    だが学問をする上で大事なのは、歴史教科書のような、知的で簡潔な文章に触れ、馴れておくことだ。教科書の文体が理解でき、教科書的文体から知識を吸収する訓練をしておけな、知的グレードが一段階上がる。
    教科書は記述が簡素すぎてわかりずらいという段階から抜け出せば、現代文の力も上がり、平明な文章を書く礎にもなり、大学で文献を読む助けになる。大げさな言い方をすれば、教科書の文体に親しめれば「大人の階段を上る」ことになる。

    歴史の正統的な勉強法はこうだ。まず教科書を読む。用語がわからなければ山川の用語集、ビジュアルが欲しければ図表、ストーリーをまるごと把握するには実況中継やスタディサプリ、他の教材は教科書の理解を深めるため、教科書の知識や流れを未来永劫頭に刻み込むために存在する。
    教科書が主食、他の教材はおかずである。
    判決。教科書VS実況中継対決は、博士の勝ち。
     
    とっつきにくい教科書に親しむ二つの方法

    ただ、難渋でとっつきにくい教科書という御主人様を攻略するには、初期段階でちょっとしたテクニックが必要だ。真正面から教科書を通読黙読するだけでは、絶対に頭に入らない。女王の言う「失敗体験」が繰り返されるだけである。素直に教科書にぶつかり、何人の受験生が挫折してきたか。
     
    教科書から知識のエキスを忠実に受け取る方法が2つある。
     
    1つは山川出版社の『書き込み教科書』の利用だ。
    この本は外務省のラスプーチン・佐藤優氏が『読書の技法』で推薦している。佐藤氏は「これは山川出版社の教科書本文の重要事項を空欄にし、解答が欄外に書かれている教科書だ。この欄外の解答を本文に書き入れていく作業を行う。単純な“力仕事”だが、これで知識が身体をとおして身につく」と書いている。
    一問一答の本は暗記しやすいが、知識がブツ切れで流れがつかめない。センター試験は人名用語のブツ切れ知識だけでは高得点が取れない。
    『書き込み教科書』は重要事項を暗記できるのに加えて、教科書の文章を同時並行で読むことで、流れも同時につかめる。
    理解と暗記のダブルパンチだ。書き込む作業により、教科書の流し読みで頭にグリップしない状態になるのを防ぐ。
    読むだけの勉強と、書く作業を加えた勉強と、どちらが頭に入るかは明らかだろう。
     
    2つ目は教科書の音読。
    英文は音読すれば英語力がつく。国語も小学生のころから音読を続けてきたから力がついた。なら歴史にも音読という成功体験を生かしてやろうではないか。
    江戸時代、儒学の勉強も素読がメインだった。一つの知識体系を頭に埋め込むのは、素読が一番だ。あま
    音読でぜひ利用してほしいのが『アナウンサーが読む山川詳説日本史・世界史』である。“聞く教科書”というコピーがついているが、この本はNHKのアナウンサーが教科書本文を朗読したものが、CDに収録されている。日本史は男性アナウンサー、世界史は女性アナウンサーが担当している。
    NHKアナウンサーのCD音声に合わせて音読すれば、思いのほか頭に入る。嘘だと思うならやってほしい。一人黙々と黙読するより、浸透が速いのがわかるはずである。

    ■映像授業の普及で、脚光を浴びる教科書学習
     
    以上、教科書を頭にしみこませるために、『書き込み教科書』と音読を勧めたわけだが、コツコツと地道過ぎて当たり前という感想を持たれた方もいるだろう。
    またかよ、と。
    だが、日本史・世界史は努力を裏切らない。勉強法を間違えなければ、伸びないことはない。
    数学や物理なら頑張っても成績が伸びないことがある。だが歴史はコツコツ型の受験生に成功を与え、勉強量が偏差値に比例する。

    『書き込み教科書』も音読も、社会は苦手で興味が持てないけれど、気力だけは充実している、根性系・努力系の受験生に積極的に薦められる方法だ。「好きこそものの上手なれ」と言うが、嫌いでも少し我慢すれば上手になれる方法が『書き込み教科書』と音読である。

    さて、映像授業が普及した今、テクノロジーの発達に比例して、これまで以上にコツコツとした地道な努力がクローズアップされるだろう。

    勉強には「わかる」段階と「できる」段階が必要だ。今後はスタディサプリなど映像授業の普及で、授業格差は大幅に改善される。予備校という特別室の中でしか見られなかった授業が、ネットで安価に配信され、「わかる」授業が平等に近いレベルまで供給される。
    とくに、歴史においては、NHKが本腰を入れ映像授業に参入し、ドラマやドキュメンタリーで作った膨大なコンテンツを大学受験用に編集すれば、グレードが極めて高い映像授業が可能になる。それは授業という一人語りを越え、歴史マンガを映像化したような、きわめてわかりやすい映像教材になるに違いない。
    誰もが「わかる」授業を見られる時代がくる。

    だが、「わかる」ことは映像授業があれば受け身でも可能だ。だが「できる」段階に進み得点力を上げるには、自分で能動的に努力しなければならない。反復とか音読とかいう泥亀のような、理解と知識を身体化する作業は、受験生個人にゆだねられる。
    教科書を地道にこなすことが歴史学習の近道だ。「大学受験は教科書から出る」という事実が、受験生にどれだけ教科書に対する信頼を喚起させるか。教科書こそが無人島に持っていく唯一の歴史教材だ。
    ただ教科書を愚直に読むだけだと空回りする。『書き込み教科書』や音読で手と口を使い愚直にアウトプットすることで、映像授業を見ただけで「できる」つもりになっている勘違い野郎を、撃ち抜くことができるのだ。



    判決 博士

    教科書が主食で、実況中継は「おかず」

    教科書の理解を深めるため

    『書き込み教科書』と音読を



     

    IMG_0329.JPG

    教科書と、その家来たち 


     
     
     
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