猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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SMAP解散と「教育者」飯島マネージャー
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    子猫は可愛い。誰からも愛される。

    だが親猫になると、子猫のように万人が可愛いと感じるわけではない。猫は年齢を重ねるとともに、ルックスは悪くなっていく。哺乳類の赤ちゃん特有の、キュッと抱きしめてやりたくなるような可愛らしさは消える。

    子猫は確かに愛らしい。だが、私も猫を飼っているからわかるのだが、不細工になっても、変わらずそれ以上に愛しいものだ。家族のように心が通ってくるのだ。

     

    アイドルもそうだ。

    十代の男性アイドルはフェロモンを発していて、同世代の女の子を虜にする。だが歳を取るにつれオッサン臭くなり、ファンが離れるのが男性アイドルの宿命だ。

    ジャニーズ事務所の総帥・ジャニー喜多川は人気が落ちた所属アイドルに「お前は女を知ったから売れなくなった。女に飢えたハングリーな目をしてなければだめだ」と言ったという。

    アイドルは性的魅力を発していなければ、子猫のように捨てられる運命にある。

     

    だがSMAPは違う。鮮度が命のアイドルなのに25年間も人気を保ち続けた。私から見れば40を超えて、雄のフェロモンを放ってるのはSMAPのメンバーではキムタクしかいない。だが他のメンバーも、ふつうの若者・中年のルックスになっても人気を保った。SMAPは自分の家族のように愛されてきた。

    SMAPは、25年にわたりグループを存続させ、しかも第一線の人気を保った。これは奇跡に近い。

    たとえば田原俊彦や近藤真彦の「たのきんトリオ」の人気が25年間も続き、藤井フミヤのチェッカーズが解散もせず25年間第一線で活躍できただろうか? 彼らの鮮度は5年前後だったではないか。

     

    SMAPの人気を支えたのは、マスコミの報道から類推するに、飯島マネージャーの存在が大きいと思う。

    部外者が芸能界のことを記事にするのは難しい。歴史家がどれだけ過去の史料を読み解いても正確な事実にはたどり着けないように。SMAPに関する報道から内部事情を類推するのは難しい。

    そうとは知りつつ、飯島マネージャーの大手事務所社員の一線を完全に超えた母親のような愛情がSMAPを人気グループにしたことは想像できる。

     

    飯島マネージャーはSMAPの「教育者」である。SMAP個人個人の個性を伸ばす教師。週刊誌で不鮮明な飯島氏を撮った写真を見たことがあるが、まるで小学校の先生のようだった。芸能界の辣腕マネージャーには見えなかった。

    私は個人塾を営んでいるが、勉強を伸ばすのも大事だが、生徒の個性を生かし長所を伸ばし、唯一無二の存在として社会に出てほしいと願っている。大学合格と同じ比重で、就活の結果が気になる。生徒がタレントならマネージャー、ミュージシャンならプロデューサー的な立場になりたいと考えている。

    だが生徒の個性を伸ばすと言葉にするのは簡単だが、実行するのは難しい。それどころか、生徒の良さを打ち殺し、欠けたものを埋める方向に走りがちだ。生徒本来の長所を忘れ、正反対のものを求めてしまう。徳川家康のように物静かで篤実な子に、豊臣秀吉のように華々しくアピールするよう要求し、またその逆のケースもあったりして、試行錯誤を重ねてきた。

     

    逆に飯島氏はメンバーの個性に合わせた仕事を模索し成功した。

    木村拓哉が『あすなろ白書』の助演・取手君役で「さりげない演技」が評価されてから、ドラマの仕事を意図的に増やし、『ロングバケーション』で「キムタク」として国民スターとなった。

    木村拓哉の囁くような演技は、他の若い俳優のオーバーアクションの演技に辟易していた視聴者に、等身大の共感をもたらした。目が大きく潤み鼻筋が通った超人的なルックスを持つキムタクに自己投影する矛盾を忘れ、キムタクの演技に自己移入した。

    日本でこんな「さりげない演技」を確信犯的に強調した俳優は、キムタク以前には松田優作しかいない。

     

    中居正広はバラエティーに活路を見出し、SMAP2大巨頭になった。

    中居は本質的に、どこか神経質で気難しい人だと思う。ファンやマスコミに対して表面上は冷たい印象を受ける。

    だが、バラエティーではゲストに気をつかい、きわめて社交的な面を見せる。天性が社交的な明石家さんまと比べて、中居は繊細で内向的な人が無理して頑張っているように感じる。そんな中居の精いっぱいの努力が視聴者の好感につながっている。中居君がんばってるねと。

    飯島マネージャーは、木村がドラマで成功したからといって、中居に同じ路線を走らせなかった。実は中居は演技が上手いのだが、木村の道徳的圧力すら感じさせる存在感にはかなわない。中居がテレビカメラの前で社交的になる特性を伸ばし、バラエティーの司会でトップをめざした。

     

    香取慎吾はSMAP誕生のころ、私の周囲の中学生には一番人気だった。25年前の中学生の女の子に好きなアイドルはと聞くと「かとりしんご」という名がよく返ってきた。

    SMAPの初期の写真を見ると、他のメンバーは典型的なアイドル顔で見分けがつかなかったが、香取慎吾だけは目鼻が大きく際立った存在に見えた。SMAPで最年少の香取慎吾はアイドルでなく子役スターのようだった。

    キムタクや中居はそれぞれドラマ、バラエティーに順調に居場所を堂々と確保したが、だが、子役から大人へ変わる香取慎吾の仕事には試行錯誤した。既成のアイドルがやったことのない「汚れ仕事」もやった。郷ひろみや田原俊彦が女装して「おっはー」という姿が想像できるだろうか。

    新選組の近藤勇、忍者ハットリくん、『ドク』でのベトナム人、こち亀の両さん、成功したものから失敗したものまで、硬軟取り混ぜ手あたり次第に仕事を選ばなかった。飯島マネージャーも香取慎吾の処遇には頭を悩めたと思う。

     

    草剛は歳を重ねるにつれ、アイドルとは言えない顔立ちになっていった。だがその唯一無二のルックスと雰囲気が、性格俳優の味を出した。

    私が草薙の演技で感動したのは、三谷幸喜の映画『ステキな金縛り』である。主人公深津絵里の若くして死んだ父親の幽霊役として登場したが、立ってるだけで父性愛が滲み、存在感だけで涙が潤んでくる演技だった。

     

    稲垣吾郎は二枚目を中途半端に保ったことが、影の薄さにつながったが、ビートルズで言えばジョージ・ハリスン、仮面ライダーならライダーマンのような存在である。SMAPのメンバーでは癒し系で、一番手が届きそうな存在として愛された。SMAPはスーパーグループだが、スーパーになり過ぎない緩衝材として、稲垣吾郎の存在は貴重だった。

    かといいながら稲垣はとんでもないところで目立つ。『人志松本のすべらない話』で、同棲相手の男性がいることを話し、これにはものすごく驚いた。アンニュイで退廃的な雰囲気も魅力である。

     

    飯島マネージャーは5人の個性を際立たせた。それに加え彼女の凄いところは、ドラマやバラエティーはマンネリと言われるくらい王道を突き進んだのに比べ、音楽では前衛的に冒険を続けたことである。

    飯島マネージャーは音楽に関しては、つねに新鮮な人材を補給し続けた。『らいおんハート』では野島伸司、『BANG!BANG!バカンス!』では宮藤官九郎と、著名な脚本家に歌詞を依頼し、スガシカオや山崎まさよしやMIYABIなどブレイク中の新鮮なミュージシャンに楽曲を依頼した。

     

    また、SMAP出演のドラマは同じようなものが多く、ワンパターンと揶揄されたのと好対照に、楽曲は二番煎じを慎重に避けた。

    『世界に一つだけの花』があれだけ成功すれば、もう一曲ぐらいは槇原敬之にシングルを依頼し、二匹目のドジョウを狙うのがマネージメントの王道である。だがそれをしなかった。

    SMAPのシングルを系統的に聴いていると、素人でもわかる曲と、玄人好みの難解な曲が交互に現れる。売れ線の曲だけでは飽きられることを熟知していた。

    ドラマとバラエティーはソロで王道、音楽はグループで前衛と方針を使い分け、古い血と新しい血のミックスを絶えず意識することが、SMAPを新鮮かつ懐かしい存在にした。

     

    ところでSMAP解散は、海外ではビートルズの解散にたとえられている。

    ビートルズも人間関係が破綻して解散した。木村と中居は、ジョンとポールの関係に似ている。

    ビートルズのベストアルバムに赤盤・青盤というのがある。赤盤は初期の、青盤は後期のナンバーを集めたものだが、赤盤のメンバーの写真は若く同じマッシュルームカットで、無個性で見分けがつきにくいが、青盤は解散前の写真で4人は思い思いの服装髪型をしている。

    SMAPもデビュー当時の無個性なアイドルから変貌し、現在は個性が際立っている。誰も現在はキムタクと草君を間違えたりはしない。

     

    ビートルズもSMAPもこれだけ容姿がバラバラだと衝突を起こすのか、個性の拡張の行きつく先は解散しかないのかと、納得させる写真である。オンリーワンが5人揃えば破綻するものなのか。

    メンバーの個性の伸長、王道と前衛の調和は、まさにビートルズがたとった道であった。飯島マネージャーはビートルズのバンドとしての生き様が、どこか頭にあったのではないか。皮肉なことにビートルズとSMAPが同じ道をたどってしまったのは、さぞ、つらかっただろう。

     

    ビートルズは解散前に『アビー・ロード』という大傑作アルバムを残した。人間関係は破綻しても音楽は破綻するどころか病的な調和をみせた。彼らは音楽の前では嘘をつけなかった。

    SMAP解散まで4か月、5人がビートルズのように最後の奇跡的な調和を見せてほしいのは、ファンならずとも願うことであるが、今のままでは無理なのだろうか。

     

    SMAPはファンから見れば、テレビを通じた家族だった。飯島マネージャーはSMAPを自分の家族にし、日本人の家族にした。SMAPの解散はファンにとって「家庭崩壊」なのである。

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