猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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アメフト野郎!by航太郎(4)
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    岡山大学アメフト部 BADGERS#7 矢野航太郎

     

    前回までのあらすじ

    アメフト野郎(1)

    アメフト野郎(2)

    アメフト野郎(3)

     

    ■和歌山大学戦 つづき

    岡山21-28和歌山 BADGERSの7点ビハインド。

    残り時間5分強。

    4thダウン、ギャンブルを選択しランプレーで攻撃権更新。

    またしても4thダウン、パスでフレッシュ獲得。

    攻撃権を更新できなければ負けがほぼ決まる状況で、つまり2部昇格への道が絶たれる状況で、二度も立て続けにギャンブルを成功させた。執念といか言い様がない。

    いつ途切れても不思議ではない幸運の連続だった。

     

    ここまで前進できたのはQB沖西の活躍が大きかった。

    ランニングバック陣が脳震盪や骨折で試合に出場できない中、ランでボールを前に運べるのはQBしかいなかった。

    勝負どころで人一倍の負けん気が存分に発揮された。タックルに来た相手ディフェンスをグラウンドに叩きつけ、グイグイ前進してく。

     

    沖西は1部でもやっていけるポテンシャルを持っている、と、あるコーチは言う。誰もが認めるスーパーアスリートだ。頭でイメージしたことをいとも簡単にやってのけ、周りを驚嘆させる。負けず嫌いでメンタルも強い。この瞬間、2年生ながら間違いなくチームを鼓舞し、奮い立たせていた。

     

    しかし、沖西が一人でチームを動かしていたのでは決してない。けが人も、試合に出られない選手も、サイドラインから声を張り上げてフィールド上のプレーヤーの背中を押していた。

     

    例えば、昨シーズン2年生の石川晋伍、

    ごちん。広島出身、沖西と同じ国泰寺高校野球部。カープの大ファンで練習後、一目散にカープの試合結果を確認する。肩の脱臼に苦しみ、長くリハビリ生活を続けてきた。面白いとは言いがたい一発ギャグのレパートリーが豊富でチームのムードメーカーだ。ウォーミングアップの時の声出しは毎日ごちんから始まる。この日も緊迫した雰囲気に委縮することなく声を出し続けていた。

     

    次に当時1年生の玉井慎吾、玉ちゃん。

    体のパーツすべてが丸い。千と千尋の神隠しに登場する緑のだるまの様な体型をしている。沖西にしばしば乳首を摘まれて悶絶しているのが微笑ましく、誰からも愛されるキャラだ。1年生でフィールドに立つ事は出来ないが、よく通る声を目いっぱい張り上げていた。

     

    逆転勝利、入れ替え戦決定戦、入れ替え戦、来年の二部での勝利と続いていく道を信じて、コーチ、マネージャー、選手含めてBADEGSR相手と全身でぶつかっていた。

     

    「自分らで考えて、追い込んで、ついにここまで来た。俺らのほうが努力量は勝っとる。俺らが負けるはずがない。」キャプテンの試合前のモチベーショントークが蘇ってきた。

    沖西が繋いできた攻撃権を途絶えさせる訳にはいかない。逆転以外ない。

     

    この攻撃シリーズで逆転するには8点が必要だ。

    タッチダウンの6点とキックの1点では同点止まりで、タッチダウン後にゴール前3ヤードから攻撃で2ポイントコンバージョンを成功させて合計8点取るしかない。

     

    冷静に考えて、逆転するのは非常に難しい。

    NFLでは統計上、100本タッチダウンを取ったとしたら、トライフォーポイントの内85〜90がキックで、残りの10〜15が2ポイントが行われるとされている。さらに2ポイントコンバージョンが成功する確率は50%弱。

     

    ゴール前3ヤードからのオフェンス、1stダウン。

    だがランプレーで3本止められた。

    ゴール前1ヤードから、この攻撃シリーズ3度目の4thダウンギャンブル。

    ここで点が取れなければ、残り時間を考えても岡大に攻撃権が返ってくるかわからない。返ってきたとしてもけが人も多く、満身創痍の状態で得点できるかは不確実。

     

    仕留めるのは今だ。

    ゴール前1ヤードはエンドゾーンがすぐそこに見えているのにディフェンスが中央を固めるため、見た目の距離感以上に壁をこじ開けるのは難しい。

    ここで岡大タイムアウト。

    サイドラインと、どのプレーでタッチダウンを取るか最後の決断を下した。

    選手もコーチも頭にあるのは一つ。

    シーズン中、いつか窮地に追い込まれた時のために温存してきたプレー。

    このプレーが成功すれば6点追加で1点差まで追い上げれる。

     

    ボールを受けた。

    前に体を伸ばすだけ。

    だが、ディフェンスのスタートもよく、上も前も塞がった。

     

    体が咄嗟に回転した。

    倒れこんだ先はエンドゾーンの中。

    何がどうなったのかはわからないが、とにかく自分はエンドゾーンの中にいる。

    タッチダウンだ。

    やった、タッチダウンだ。

    可能性が見えてきた。

    岡大27−28和歌山 BADGERS1点ビハインド。

     

    あと1点。

    PAT(Point After Touchdown)で狙うはもちろん、2ポイントコンバージョン。

    同点にしても次の攻撃シリーズで得点できる力は残っていない。

    逆転するには勢いがある今しかない。

     

    コールされたのはシーズンで初めて使うプレー。

    パスプレーだが、投げられる状況に無ければ、自らエンドゾーンまで走ることもできる。

    単純なプレーだが使う局面は必ずシビアだから、飽きるほど、何度も反復してきた。

     

    Ready set hut!!

    ボールがスナップされた。

    右にロール。

    けが人の影響でランニングバックの位置には初めてこのプレーを合わせる選手が入っていて、上手く合わない。レシーバーはカバーされていて投げられない。

    ランだ。

    僕はボールを持ち替えた。

    ボールは僕の腕の中にある。観衆の視線もいま、僕が抱えている物体にある。

    僕はボールを、いつもより強く抱きしめた。

    空襲で乳飲み子を抱えて猛火から逃げる母親みたいに、ボールを抱えた。

    このまま走りきれば2点。大逆転だ。

     

    下から手が伸びてきた。

    俺に触るんじゃねぇ。なんとかかわした。

    視線の先に赤いユニフォームが良いブロックで相手を抑えているのが見えた。

    俺が走るコースはあの背中だ。

    間に合ってくれ。とにかく我武者羅に走った。

    そして。

    エンドゾーンまでたどり着いた。

    タッチダァーーンッ!!

     

    漂流中に有人島に上陸できたような、絶望の淵から生を実感したような気分だった。

     

    岡山 29−28 和歌山 BADGERS1点リード 残り時間4分22秒。

     

    俺がやった。

    俺が決めたんだ。

     

    アメフトの神様がいるとすれば来年は絶対に2部で勝負しろよというBADGERSへのメッセージだったかもしれないし、BADGERS39年の歴史に力が宿るとすれば、それの全てがボールを抱えていたに違いない。

     

    だが試合はまだ4分半残っている。

    和歌山としては逆転するのに十分な時間だ。

    タッチダウンの興奮が冷めないうちに、キックオフに向かった。

    少しでも時間を消費し、少しでも敵陣深くボールを止めるために、相手にリターンさせないことが大事なキック。

    ゴロのボールを蹴った。

    リターナーの手元からすり抜け、点々と転がった。

    狙い通り相手にリターンさせなかった。

    やはり今日のBADGERSは勝負強い。

    気は抜けないが勝てる気がした。

     

    サイドラインに帰り、オフェンスコーディネーターと抱き合った。

    普段冷静なコーチのガッツポーズが見えて、タッチダウンと同じぐらい嬉しかった。

    キッキングコーディネーターとも抱き合った。

    二人とも泣きそうだった。

    つられて僕も泣きそうになった。

     

    だが泣くのはまだ早い。

    泣くのは時計が0:00になってからだ。

     

    ディフェンスを信じて、ボールを目でおった。

    ジリジリと前進されたが、ファンブルフォースからのリカバーで攻撃権を取り返した。最後の最後にディフェンスでもビッグプレーが生まれた。

     

    残り時間を消費し、時計が0を示した。

    BADGERSは勝った。

    選手たちは泣いていた。

     

    岡大BADGERS 29−28 和歌山大 BLIND SHARKS

    1点に泣いた天理戦から1点に歓喜した和歌山戦。BADGERSが見せた成長劇だった。

    2部昇格まであと2勝。

     

     

    ■入れ替え戦出場校決定戦、vs大阪芸術大学VIPERS

    和歌山大学戦後、満足感が体を覆い、燃え尽き症候群のような感覚に襲われた。

    激闘の末手にした勝利。これ以上何もいらない気分だった。

    これまでずっと彼女のいなかった男子が大学生になって人生で初めて彼女ができた時のような気分だ。

    だが、まだ戦いは終わっていない。

    2部昇格まで2勝。

     

    エキスポフラッシュフィールドで試合がある時は、朝7時過ぎに岡山駅を出発する。姫路で乗り換え、新快速で大阪まで行って、普通に乗り換え茨木まで。茨木駅からはタクシーでフィールドまで移動する。

    朝はおにぎりとパンで糖を補給し、活動するエネルギーを摂取する。電車の中では100%のグレーピプフルーツジュースを飲む。試合会場に到着後、第1試合を見ながらコンビニで買ったみたらし団子を3本食べる。

    これが僕の試合の日のルーティンだ。

     

    1クオーター残り7分、4thダウンでフレッシュまで3ヤードほど残った。

    26ヤード地点。

    43ヤードのFGトライ。

    僕のキックの出番だ。

     

    タッチダウンは取れなくても緊迫した試合では先制点が大事。

    敵の戦意を多少なりともそぎ落とせる。

    失うものがないチーム、しかも関西人が多く、乗らせると怖い。

     

    初戦の大阪工業大学戦では48ヤードのFGがショートして失敗していたが、5ヤード前のこの地点なら自信があった。練習でも成功する確率が高い距離だ。

    キックで先制して、楽にゲームを進めたい。

    タン、タッ、踏み込んで、振りぬく。

    いつものリズムでボールを蹴った。

    弾道が少し低かったが、ボールはポールの間を突き破った。

    BADGERS 3−0 VIPERS

    知り合いの方が、敵スタンドで観戦した試合は負けないというジンクスを守り、大芸側のスタンドにいたらしいが、それまでの関西ノリの明るさが、このFGを機に消えたそうだ。

     

    4年生は負ければ最後の試合。大阪芸術大学には試合中笑顔も見え楽しそうにアメフトをしている印象を受けた。そんなチームから戦意を少しでも削ることができたなら、キックの効果は3点以上に大きい。

    モチベーションをいかに維持するかが難しい試合だったが、BADGERSはその後も得点を重ね、結局29−7で勝利した。

     

    岡大BADGERS 29−7 大阪芸術大学VIPERS

    入れ替え戦出場権を勝ち取った。

    2部昇格まであと1勝。

     

    ■入れ替え戦 vs大阪学院大学PHOENIX

    この試合に勝てば2年ぶりの2部昇格。

     

    バジャーズはこれまで大阪学院大学に勝ったことがなかった。

    大阪学院は、2部で優勝し1部との入れ替え戦に出場したこともある強豪。3部に降格したことはなく、入れ替え戦にかけるモチベーションも高いはずだ。2015シーズンこそ2部で最下位に沈んだが、シーズンが深まるに連れて確実にチームを完成させてくる。

     

    12月12日11:00キックオフ。晴れ。

    始まってみると人数の差は明らかに得点に現れた。大阪学院はオフェンス、ディフェンス、キッキング全て全力でできないので、どこかで手を抜く瞬間が来る。実際に相手は疲弊していた。試合前にはもう、シーズン中に負った怪我で主力選手が出場できない状態になっていた。

     

    第4クオーター残り10秒、BADGERSサイドのスタンドからカウントダウンの

    声が聞こえてきた。5,4,3,2,1,0。

    フィールドでは大きなビクトリーフラワーが咲いた。

     

    終わってみるとBADGERSの圧勝だった。

    岡大BADGERS 42−13 大阪学院PHOENIX

     

    2部昇格。

     

    和歌山大学戦後は泣いていたが、この時は泣いている人が少なかった。

    やりきった清々しさと、2部で勝ってこそこのチームの目標が果たされる自覚、責任、やっちゃらーという来季への意気込みが表情から見て取れた。引き締まったかっこいい表情だった。

     

     

    ■アメリカアナグマ、ハンディを乗り越え、その先へ

    BADGERSは2004年以来2部で勝利していない。2部には昇格できるものの、リーグ戦で全敗し、3部との入れ替え戦に回り3部に降格するというシナリオが常であった。その間、新入生の勧誘に苦労し、部員数が少ない時期もあった。

    そこで、3年前から特に新入生の勧誘とサイズアップの2点において取り組み方法を見直し、ここ3年はプレーヤー20人以上の入部を達成し、サイズにおいても2部の平均に達した。

    今年は戦力的にも充実、オフェンスのエースと呼ばれるQBには沖西、WRに高森、RBに中、土井田と活きのいい3年生が揃い、それを生かすOLにも経験のあるプレーヤーがいる。

    ディフェンスにはDL窪田、LB山本、SF松川と要所に強力な選手がいる。

    今シーズン2部での勝利を達成し2部に残留すれば、2部上位定着、1部昇格というBADGERSの長期目標も現実的になってくる。

     

    しかしBADGERSの下馬評は低い。

    関西連盟の多くの人が岡大は3部との入れ替え戦に回ると予想しているそうで、また2chの関西学生アメフトのスレでも岡山大学は最下位と予想差されている。

    BADGERSは今年創部40周年を記念してユニフォームを一新した。赤から青へと大幅な変更だ。新ユニフォームに身を包み、関西の連中を驚愕させる所存である。

     

    全てはBADGERSのスローガンであるこの一言に集約される。

    何があっても這い上がる。挑戦を続ける。

    Challenge on!!

     

     

     

     

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