猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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シンタ君の高校受験
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    合格体験記は、どん底から這い上がって、難関校に奇跡的に合格したというストーリーが、読者に支持されやすい。

    出版業界でも、本になるのは奇跡の大逆転ものばかりで、勉強ができる子が当然のように難関校に合格した話は「面白くない」と企画段階でボツにされる。

    だが今日私は、力のある中学生が、ぶっちぎりの強さで公立高校に推薦で合格した話を書く。

    これから書く話は、波乱万丈のストーリー性に欠けているかもしれない。だが試験直前に爆発力を発揮する子よりも、誰からも合格確実と言われ、当たり前のように合格を勝ち取る子の方が、人生における努力の総量が多いのは事実だ。

    だから、書く。

     

    中3のシンタ君は、自転車で塾にやって来る。

    尾道は山が海まで迫り、ウナギの寝床のような平地に、長い長いアーケード商店街がある。

    シンタ君は商店街の西の端から、東の端のアーケードが切れ、さらに少し離れた場所にある私の塾へ、自転車で往復する。

    塾が始まるのは19時15分。彼は必ず19時12分から13分、ピタリとギリギリに塾に到着する。時間管理が正確な男だ。

    雨の日はレインコートを羽織る。大雨の日も台風の日も、送り迎えなしで自力で自転車を走らせる。お母さんはシンタ君に雨に濡れても大丈夫なようにレインコートだけ与え、あとは一人で通いなさいと突き放す。

     

    シンタ君は小6の11月に入塾した。

    中学受験はしない、いわゆる中学準備講座に来た。彼は学習塾に通う経験がなかった。

    お母さんと面接に来た時、私はシンタ君を一発で気に入ってしまった。色白で眼光に知性がある。見るからに賢そうな男の子で、緊張して顔が少し赤くなっているのにも好感を持った。

    彼は見た目通り、学力が高かった。彼は尾道の土堂小学校、陰山英男氏が校長を務めた教育水準が高い小学校の生徒だ。彼は土堂の中でもおそらくトップクラス、中学受験をしないのが不思議なくらいだった。

     

    シンタ君は、手つかずの才能だった。12年間の人生で、変にいじられていない。

    彼の頭脳は、作物がまだ植えられていない肥沃な土地だった。小学校の先生とお父さんお母さんが、丹念に開墾した土地だ。そして種を蒔くのは私の仕事。種子を一粒落とすやいなや、ジャックと豆の木のように茎がぐんぐん伸びていきそうだった。

    また、小さい頃からピアノを習い、地域の大会で金賞を取るくらいの腕前で、バッハやショパンを弾く。面影が『ピアノの森』の雨宮にどこか似ている。

     

    私は彼のお父さんお母さんが、個人塾に、そしてこの私に、シンタ君を預けて下った意味を考えた。

    うちの塾は、厳しくて塾長に一癖も二癖もあると毀誉褒貶はげしい塾だ。だが、向学心ある真面目な子には誠心誠意尽くす。シンタ君のお父さんお母さんも、私のそういう点を見込んで入塾させて下さったのではないか。クセは強く劇薬だが、真面目なシンタ君と私なら、相性がいいのではないかと。

    また、シンタ君に大手塾で画一的な教育はさせたくない。大勢の中の一人ではなく、小規模で厳しい個人塾で丹精込めて育てられることを望まれたのではないか。

    彼は首都圏の難関中学にいても遜色ない力を持つ男の子だ。どんな無能な教師でも伸ばすことができる。だが、せっかく個人塾でお預かりした以上、誰にもできぬ成果を出さねばならない。プレッシャーはあったが、それより喜びと希望の方がはるかに大きかった。

     

    私は、シンタ君の力を最大限に発揮させる長期的作戦を練った。

    彼は算数ができた。理系の頭脳だ。小さい頃からパズルを解くのが好きだという。だが、中学受験の複雑な算数を解いた経験がない。

    シンタ君は明らかに将来難関大学を狙える。難関大学理系数学では、中学受験で難しい算数を経験した子が有利だ。中学入学までの4か月、やるなら中学受験算数だ。

    私は普通のカリキュラムを無視して、図形・割合・速度・数の性質など、シンタ君が将来中学受験経験者に負けないように、中学受験算数をやらせた。いわば「擬似中学受験」だ。算数以外は一切やらせなかった。私たちがやってることは、中学準備講座どころか、難関大学受験講座だった。

     

    中学入学まであと4か月の時期、ふつうなら英語の勉強を先取りし中学に備えるのが普通だ。しかもシンタ君は英語未経験者だ。だがシンタ君の頭脳なら、中学入学1か月前から、他の生徒と同じスタートを切っても英語は心配ないと考えた。英語の先取りはあえてやらなかった。中学受験算数に専念させた。

     

    中学生になったシンタ君、勉強は順調だった。

    定期試験では、5教科450〜480点ぐらいをコンスタントに取った。学校のテストだけでなく模試でも高い偏差値を出していた。

     

    彼は自分の成績だけでなく、間接的に、他の塾生たちの成績も上げた。

    塾では定期試験前、勉強会と称して7〜8時間塾にカンヅメにする。シンタ君は塾で拘束しなくても、家で自主的にできる男だ。だが私は他の子と同じように塾で勉強させた。

    その理由は、彼が勉強すると、まわりに凛とした空気を醸し出すからだ。彼の集中力が教室に波及した。シンタ君という生きた手本がいたから模倣ができた。私は自習室の厳粛な空気づくりに、シンタ君を利用した。

     

    彼には集中力がある。シンタ君は数学の問題に熱中すると、シャープペンシルを回す癖があった。勉強に集中し没我の心境にあると、シャープペンシルを盛大に回し始める。

    残念なことに、三者懇談で私がそのクセを指摘しまった。指摘した途端、シャープペン回しはピタリとやめてしまった。彼の集中度を測るバロメーターだったのに、惜しいことをした。

    彼は小学校1年生の時も、集中すると筆箱を噛むクセがあったという。

     

    また彼は、いい意味での臆病さを持っている。勉強ができる子、いわゆる秀才は、シンタ君に限らず臆病さがある。官僚がその典型で、怖い政治家の心理を忖度できる、感度が高いアンテナを持っている。秀才は先生の意図を忖度できるから、学力が高まるのだ。

    私は怒りをストレートに表現する怖い先生だと思う。ある大手塾のマニュアルには、生徒を絶対に怒ってはならないと書いてあるという。もし私がその大手塾の講師になったら、感情表現が「喜怒哀楽」どころか「喜怒怒怒怒怒哀楽」な私はたった10分でクビだ。

     

    シンタ君は3年半塾に通い、そんな一度も私に怒られたことがない。彼は私が怒るツボを知り尽くし、忖度し、避けるのがうまい、他の子を叱っていても自分が叱られたものだと解釈する。「いい子」であり続けることで、自分を磨き上げているのだ。

    また私が彼を叱れないのは、シンタ君は、どこか高貴なバリアがあるからだ。シンタ君はアジアの英明な君主、たとえば昭和天皇やタイのプミポン国王の幼少時のような、勤勉さがもたらす侵しがたい威がある。

     

    それに加え、彼は負けず嫌いだ。

    たとえばある時、私が「定期試験、中学校で1番取れた?」と聞くと、「今回は2番でした」とこたえた。「今回は」の「は」に、彼の負けん気が現れていた。色白の端正な顔立ちなのに、オスの闘争本能を持ち合わせていた。

    負けず嫌いの子は、勉強方法を間違えない。勉強は高い得点を取るためという目標が明確なのだ。だから点数に直結しない無駄で非効率な勉強をしない。

    目標がぼやけている子は、答を写したり、教科書を丸写ししたり、得点に結びつかない勉強を平気でする。時間をつぶすだけの勉強法をとる子は、高得点を取ろうとする野心が欠如している。

     

    だが負けず嫌いな子は、勝つための勉強をする。勝つための勉強とは、ミスを嫌い、ミスを追い詰める勉強である。試験勉強の時に自分がどれだけ理解し、どれだけ暗記しているかを臆病なほど慎重に確かめ、弱いと思った箇所を瞬殺する。

    シンタ君は暗記の時も、時には紙に書き、時には紙をにらめつけ、フレキシブルな勉強法を取る。最善の勉強法は何か絶えず模索する。

    勉強が苦手な子は、「目標があやふやで、勉強法は一定」、勉強が得意な子は「目標が一定、勉強法は変幻自在」なのだ。頂上が見えているから、アプローチを試行錯誤できる。

    正しい勉強法を取る子は、小手先のテクニシャンではない。負けず嫌いの執着心が正しい勉強法を生む。勉強法は人格的迫力と密接に関係がある。

     

    シンタ君の勉強法に無駄がないのは、彼がピアニストであることが大きいと分析する。

    ピアノのミスは、残酷にも即座に音でわかる。ピアニストは「1日怠ければ自分にわかる、2日怠ければ批評家にわかる、3日怠ければ聴衆にわかる」という厳しい世界に生きている。

    ピアノの先生から新しい曲の課題を出される、難曲にチャレンジし、ミスしないために練習をし、微調整をし、納得する音が出るまで練習を繰り返す。ピアノの練習はtrial & errorの反復だ。

    ピアノ上達のノウハウが、勉強で生きた。ピアノのミスを即座に直す習性が、勉強でミスを瞬殺することに結びついたのだ。

     

    これは冗談だが、シンタ君は私のミスも許さない。

    私が授業で間違い計算ミスをしようものなら、それまで静かに授業を聞いていたのに、顔が豹変する。私の間違いを指摘しようと身体が前のめりになり、細い目が見開き、私のミスに対し鋭く突っ込んでくる。その圧力はまるで「モーニングショー」の玉川徹みたいだ。

    彼は自分自身のミスに対しても、内面で鋭く突っ込んでいるのだろうと、おかしくも頼もしかった。

     

    さて、彼の志望校は、尾道北高だ。

    ここで広島県の公立高校入試状況を説明すると、広島県の公立高校は他都道府県に比べ合格しやすい。県が重点的に力を入れている県立広島高校という特殊な高校を除き、尾道北や福山誠之館のような最難関高校でも偏差値50台後半で合格できる。偏差値が70前後なければ最難関校に入れない他都道府県と状況が違う。

    正直、広島県の公立高校受験は牧歌的なのだ。

    広島県東部は際立った私立高校もなく、偏差値75の超難関校である広島大学附属福山高校はあるが、超狭き門だ。附属福山高校から公立最難関高の尾道北まで、偏差値にして20近く差がある。

    ということは、広島県東部の勉強が得意な中学生は、附属福山高校を目標にしなければ、偏差値55の尾道北や福山誠之館を目標にするしかない。中学校のクラスの上位1〜3番の生徒にとって、公立高校受験は刺激がないのである。

     

    シンタ君は成績的にも素質的にも、附属福山高校に合格する力は持っている。だが尾道から福山は遠く、尾道北高は家の近所なので、通学時間を考慮して尾道北高を選んだ。私も賛成だった。

    また附属福山高校は自由な校風で生徒を縛り付けず、逆に尾道北高は課題が多く厳しい。入学してからの安定性では尾道北高に軍配が上がる。シンタ君の生真面目な性格は、尾道北高に合っていると判断した。

     

    尾道北高はシンタ君にとって、絶対合格できるラインにある。彼の偏差値は70前後、偏差値55の尾道北は絶対安全圏だ。

    シンタ君の公立高校受験を衆議院総選挙にたとえれば、自民党の大物政治家、たとえば安倍晋三や麻生太郎や石破茂が、小選挙区で絶対的に強いのと同じことだった。

    高校受験が無風状態だと、潜在能力が生かしきれない。一流アスリートの卵に対して、学校の体育の授業で我慢しろと言っているようなものだ。私はかつて大手塾に勤めている時、先輩の講師から「できる子には120%の課題を与え、退屈させてはいけない」と教えられた。

    才能には負荷をかけないと「もったいない」と思った。

     

    そこで私は、中3夏休みから、シンタ君に高校英語を先取りさせた。

    彼の高校受験が無風状態なのを利用して、中3終了時にセンター試験で6割取れるくらいのラインまで、文法・単語・読解の三位一体で力を伸ばそうと考えた。

    広島県の公立高校入試が緩いのを逆手にとり、高校英語を先取りし、フライングする作戦だった。

    読解は『速読英単語・入門編』『速読英単語・必修編』、単語は『システム英単語』を使用した。彼は数学ができるので、文章構造の把握は抜群だった。主語と動詞が離れていても、複雑な挿入や倒置があっても見抜けた。

    だが英単語は苦しんだ。「解釈は成り易く、単語は成り難し」だった。膨大で難解な高校英単語に、さすがのシンタ君も四苦八苦していた。

     

    私がシンタ君に中3夏休みで英語を先取りさせたのは、半年後の高校受験でなく、3年半後の大学受験が心配だったからだ。私は大学受験に関して、病的な心配性なのだ。

    シンタ君は理解力が抜群に秀でていたが、弱点があるとすれば暗記力だった。もし彼が万が一難関大学に不合格になる事態になったら、原因は英単語のストック不足になるだろうと予測した。数学は天才型だが、英単語暗記は泥臭い努力型に徹しなければならない。

    私は英単語を語源・語呂を駆使して説明した。執拗に反復もした。シンタ君は英単語のストックを確実に増やし、『システム英単語』の1章・2章・5章までほぼ完璧に暗記することができた。彼の努力で、私の大学受験への心配も薄らいだ。

     

    シンタ君は予想通り、尾道北高に合格した。推薦だった。

    合格した勢いで、体験記を書いてもらった。

     

    ■シンタ君の合格体験記

    僕は、小学6年生の時にUS塾に入塾しました。

    中学校に上がる前には「apple」すら書けず、僕の書ける英単語は「UFO」だけでした。

    bとdを何度も間違え、「自分には英語の才能がないんだろうか」と、これからの中学校生活に対して大きな不安を感じていました。

    ですが、笠見先生の指導のもと、「いくつかの単語を数十分で覚えて、その後テストをする」というサイクルを何度も何度も繰り返し、単語を大量にインプットしていくうちに、スペルミスなども少なくなり、英語の定期テストでも1年生の1学期から良い点数をとり続けることができました。

      そして3年生の春、英検準2級を受けたいと先生に伝えた時には、試験日まで残り一か月しかなく、なんの準備もできていなかった僕に先生は高校内容を短期間で熱心に指導してくださり、自分でも驚くことに、自己ベストのスコアで合格することができました。

    その後は高校内容をどんどん進めていくようになりました。

    高校の英語はとても複雑で、知らない単語や文法も多く、なぜその答えになるのか分からなくて、嫌になりかけたこともありました。

    辞書で以前に何度も調べている単語が覚えられなかったり、知らない単語がたくさん入った文章だと辞書を使っても意味がよく分からなかったりして、苦戦していました。

    ですが、パソコンで並べ替え問題を解いて文法を定着させる方法や、「速読英単語」の英文を先生と一緒にひたすら読み、訳していく方法、「システム英単語」で短文ごと単語を覚えるなどの方法で少しずつ単語が身についていき、長文を読むこともだんだんと楽しくなっていきました。

      先生は、個人塾の利点を最大限生かして、一人ひとりに適切な指導をして下さいます。

    また、塾内は空気がとても張りつめており、私語などは一切ありません。ぼくは、他の塾は知りませんが、ここまで静謐な環境の塾はそう無いと思います。この環境も、学力を伸ばせる要因の一つだと考えます。

    定期試験前もこの緊張感がある状態で長時間自習をしたことが、選抜気任旅膤覆砲弔覆ったと思っています。

    勉強に対する姿勢にはとても厳しい先生ですが、生徒に実力をつけさせるためです。

    本当に頑張った時には「よくやった!」と本気で褒めてくれます。

    もしUS塾に行っていなければ、僕はもっと勉強をなめていたと思います。そして、適当なところで満足してしまったと思います。今の僕は絶対になかったと断言できます。

      僕は、US塾で勉強をがんばってきて本当に良かったと思っています。

    向学心があれば、この塾が必ず学力と人間性を大きく成長させてくれます。

    僕には将来、建築設計士になりたいという夢があります。 僕の尊敬する坂茂さんという建築家は、大型の高級な建築物に限らず、例えば被災地などに、コストが少なく、安全性も高い紙でできた素材の避難所や仮設住宅を考案、設計しています。人に愛される建造物とは規模やかけたコストとは別のことであるという話を以前に読み、感銘を受けました。

    人の暮らしを少しでも豊かにしたい、という思いをもって仕事をする人は尊い生き方をしていると思います。

    僕は将来、自分の利益だけを追求するのではなく、人や社会のためを考え、仕事をする人になりたいです。

     

    シンタ君は誰よりも早く、2月初旬に高校受験から解放された。だが、シンタ君は勉強の手を緩めなかった。

    私は彼に、中学卒業までの1か月弱で、『DUO』の560の例文を丸暗記することを指示した。無茶振りである。

    だが、3年後、シンタ君の大学受験、英語で合否を決めるのは英作文だ。文章のストックを積み上げておけば楽になる。

     

    普通の中学生は、高校受験合格から入学までは、受験で燃え尽き遊ぶ時期である。この時期に勉強したら差をつけられるのはわかっているが、過酷な高校受験の後で、さらに勉強を続けることは、現実的には難しい。

    先生の側としても勉強してほしいのは山々だが、強制的具体的指示までには至らない。「かわいそう」と甘くなってしまう。

     

    しかし、私はシンタ君に関しては容赦なかった。

    高校受験が終わるやいなや『DUO』例文丸暗記という過酷な課題を指示した。『DUO』はTOEICやTOEFLにも使える、大学受験の範疇を超えた難しい例文集である。挫折率は極めて高い。

    だが、シンタ君は稀有の才能がある。勉強すればするほど彼が幸福な人生を送る100%の確信がある。

    極端な話、高校時代勉強漬けで、暗黒の青春時代を送ってもいいと思う。高校3年間勉強すれば続けるだけ、将来の見返りは大きい。私はシンタ君に『DUO』を丸暗記させることに、何の躊躇もなかった。

     

    シンタ君は私と過ごした3年間、どんなに難しく膨大な課題を出しても、嫌な顔一つしなかった。顔色一つ変えず素直に受け入れた。だから私も出し甲斐があった。

    彼は自分の目標が高校受験ではなく、大学受験であることを熟知していた。『DUO』例文暗記も、当然のように受け入れた。土日は1日6時間塾で拘束し、家でも暗記するようシンタ君に命じた。

    3月16日、ラフではあるが『DUO』例文暗記、『速読英単語・必修編』を完走した。挫折率が高いこの2冊をやり遂げ、しかも中学生のうちに終わらせたことは、大きな自信につながるだろう。

     

    シンタ君は将来、ひとかどの人物になる。

    そういえば、こんなことがあった。

    彼が小6の時、授業前に私は三原のイオンに買い物に行き、トイレで意識を失った。1時間くらい気を失っていた。気づいたら授業時間は過ぎていた。シンタ君たち中1の生徒が教室で私を待っている。

    シンタ君は私の不在にトラブルのにおいを感じ、私の家の電話番号を電話帳で調べ、私の母親に連絡した。

    そして同級生に先生が来るまで待とうと指示してくれ、私が急いで教室に駆け込んだ時、彼らは静かに自習をしていた。小6のシンタ君の冷静な判断がなければ、教室は混乱していただろう。危機の際、臨機応変に機転がきき、実行力がある男である。

    私は彼がただの勉強秀才でないことを悟った。

     

    シンタ君はまだ東京へ行ったことがない。尾道の商店街を自転車で往復する狭い世界しか知らない中学生だ。彼はまだ自分が都会で通用することを知らない。だが、19過ぎたら都会へ海外へと羽ばたく。

    あとはせっかく暗記した『DUO』や『速読英単語』を反復することだ。暗記したのにドライアイスのように消えたらもったいない。英語力は同じ文章に何度も触れることで上がる。

    シンタ君が『DUO』や『速読英単語』を血肉化したら、彼の一生は変わる。同時に、彼が建築家になれば、彼が設計した安価で住み心地いい住居が、被災者や発展途上国の貧困層の人生や生活を変える。

    将来に確信をもって「暗黒の高校時代」を送ってほしい。

     

    シンタ君は体験記で「僕は将来、自分の利益だけを追求するのではなく、人や社会のためを考え、仕事をする人になりたいです」と書いている。この子には、その能力も資格もある。

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