猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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村上春樹から受験生へ励ましの言葉
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    村上春樹の新刊「走ることについて語るときに僕の語ること」は、マラソンに関するエッセイである。
    孤独な自分との戦いという面で、マラソンは受験とよく似ている。
    ページをめくり、マラソンの話を受験におきかえて読めば、受験生へのメッセージがあふれている。

    今の時期、疲れている受験生は多い。水分の補給が足りない植物のように、打ちひしがれ倦怠的な気分が漂う時期でもある。そんな弱気になりかけた受験生に、強い励ましの言葉は逆効果だ。
    村上春樹の本は、萎れかけた植物にそっとジョウロで水をかけ、葉脈の一本一本にじんわり水を浸透させ、緑の生気を蘇らせるような、気遣いのある言葉に満ちている。

    たとえばこの一節・・・

     
    たとえ絶対的な練習量を落としても、休みは二日続けないというのが、走り込み期間における基本的ルールだ。筋肉は覚えの良い使役動物に似ている。注意深く段階的に負荷をかけていけば、筋肉はそれに耐えられるように自然に適応していく。「これだけの仕事をやってもらわなくては困るんだよ」と実例を示しながら繰り返して説得すれば、相手も「ようがす」とその要求に合わせて徐々に力をつけていく。もちろん時間はかかる。無理にこき使えば故障してしまう。しかし時間さえかけてやれば、そして段階的にものごとを進めていけば、文句も言わず(ときどき難しい顔はするが)、我慢強く、それなりに従順に強度を強めていく。「これだけの作業をこなさなくちゃいけないんだ」という記憶が、反復によって筋肉にインプットされていくわけだ。我々の筋肉はずいぶん律儀なパーソナリティーの持ち主なのだ。こちらが正しい手順さえ踏めば、文句は言わない。
     しかし負荷が何日か続けてかからないでいると、「あれ、もうあそこまでがんばる必要はなくなったんだな。あーよかった」と自動的に筋肉は判断して、限界値を落としていく。筋肉だって生身の動物と同じで、できれば楽をして暮らしたいと思っているから、負荷が与えられなくなれば、安心して記憶を解除していく。そしていったん解除された記憶をインプットしなおすには、もう一度同じ行程を頭から繰り返さなくてはならない。もちろん息抜きは必要だ。しかしレースを目前に控えたこの重要な時期には、筋肉に対してしっかりと引導を渡しておく必要がある。「これは生半可なことじゃないんだからな」という曇りのないメッセージを相手に伝えておかなくてはならない。パンクしない程度に、しかし容赦のない緊張関係を維持しておかなくてはならない。このへんの駆け引きは、経験を積んだランナーならみんな自然に心得ている。


    筋肉を脳、レースを入試に置きかえて読めば、受験生へのメッセージにそのまま使える文章である。
    要するに「勉強は休まずに毎日やりましょう」ということなのだけど。

    あとこの本の前書きに、これまた素晴らしい英語のフレーズを見つけた。
    村上春樹がたまたま読んだ雑誌に、マラソンランナーの特集記事が載っていて、そこで何人ものマラソンランナーにインタビューして、レースの途中で自らを叱咤激励するためどんな言葉を頭の中で唱えているかという企画があったらしい。

    その中であるランナーが走る時に頭の中で反芻している、村上春樹お気に入りの文句は
    Pain is inevitable. Suffering is optional.
    だったそうだ。

    この英文がどういう意味なのか、また村上春樹がどういう解釈をしているのか、本の前書き3〜4ページに載っているので、興味がある方は読んでいただきたい。







    ★開成塾
    尾道市向島・「志」のある若者が集う、「凛」とした学び場








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