猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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村上春樹は青少年には危険思想
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    うちの塾には、約1万冊の本が置いてある。1万冊もあると、私の家から間違って持ってきた、子供には読ませられない怪しい本も何冊かまぎれ込んでいる。

    しかし、塾の本棚の中で一番子供に読ませたくない本は、村上春樹の本である。
    村上春樹の小説は、読者の人生を変える魔力を持っている。
    少なくとも村上春樹の小説は、私のライフスタイルを決定的に変えた。

    よく私は「どうして東京に住んでいないのか?」「なぜ組織に属し、ビジネスマンにならなかったのか?」と聞かれるが、私が田舎で隠遁生活をし、猫と一緒に暮らし、旅が好きな個人主義者で、1人で小さな塾を開き、ピュアな子供と接しながら生活しているのは、村上春樹の影響が大きい。
    私が大学時代に、村上春樹に出会ってなかったら、十中八九、東京でビジネスマンをやっていたと思う。

    村上春樹が日本だけにとどまらず、世界各地で多くの読者を獲得しているのは、おそらく彼の、もしくは彼の小説の主人公の、世間から隔離したような、内にこもったライフスタイルが魅力的な点も大きいだろう。

    村上春樹は猫とパスタをこよなく愛し、完結した狭い空間で小さくて確実な幸せだけを追い、小宇宙で小確幸を求め、異物を自分の生活に入り込ませない。
    世間に対する一種のアレルギー体質といってよい、内向的な人にとって居心地の良さそうなライフスタイルが、多くの読者の共感をよんだ。

    ただ、村上春樹の大部分の読者にとって、彼や彼の小説の主人公のライフスタイルは憧れにすぎない。やってみたいけど、実際には実現不可能なライフスタイルだ。

    しかし私は村上春樹的生活の70%ぐらいを、意図的に実現してしまった。
    誰にも頭を下げず、誰ともつるまず、自分の意思やアイディアを誰にも遠慮せずピュアな形で世に問える立場を、獲得することができたのだ。

    ある種の人にとっては、零細な個人塾やっている男なんて、無視や軽蔑の対象にしかならないだろう。しかし誰が何と言おうと、私が自分の仕事とライフスタイルに確固たる自信を持っている。そんないびつな自信の裏には、村上春樹の「お墨付き」の存在も大きい。

    村上春樹の文章は、偏屈な個人塾塾長製造機械なのかもしれない。

    ただ、私自身は自分のライフスタイルを変えるつもりは絶対ないが、私の教え子には「村上春樹的ライフスタイル」にかぶれて欲しくない。矛盾しているかもしれないが、教え子には私とは正反対の道を選んでもらいたい。「カタギの生き方」をしてほしい。

    だから私は教え子に対して、声高に自分の「生き方」を説いたりしない。私が自分の生き方を正直に子供に伝えれば、変に感化されて兼好法師みたいな世捨て人になってしまう子が出たら困る。

    私の影響を与えていい部分と、悪い部分を厳しく選別して子供に接しなければ、せっかくの才能を潰してしまう。

    あくまで講師はネガで、生徒はポジである。私は教え子を「井の中の蛙」ではなく、「大海で悠々と泳ぐ真鯛」に育てたい強い欲がある。

    とにかく、村上春樹は危険思想だ。

    「子供の不良」はハシカみたいなもので、20歳超えればたいていまともになる。しかし村上春樹の文章は一生更生できない「大人の不良」を作り上げる魔力を持ち、文学特有の毒を放っている。

    私は日本の小説家で村上春樹が一番好きだが、その強い影響力を熟知しているからこそ、中学生・高校生・大学生には村上春樹をあまり勧めたくはない。
    大海を泳ぐべき真鯛には、金魚鉢や井戸の居心地の良さを秘しておきたい。

    村上春樹の著作こそ、青少年の敵、白ポスト入りすべき本なのかもね。
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