猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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速読って必要なの?
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    私は本を読むのが遅い。コミック本でも1冊40分ぐらい、西村京太郎の十津川警部モノのような、軽く読める本でも2時間はかかってしまう。

    75歳で作家デビューした注目の歴史作家、加藤廣「秀吉の伽」を読んだ。「本能寺の変の主犯は秀吉」というストーリーの、ハードカバー2冊の重厚な歴史ミステリーだが、読了するのに丸4日かかった。

    それにしても本屋に行けば、膨大な数の本があって圧倒される。時々「これを全部読まなければ」と、いらぬ強迫観念に襲われる。
    だから、もっと速く本を読めたらいいのに、と思う。今のスピードの3倍で読めれば、3倍の量の本が読めることになる。

    司馬遼太郎は新しい作品に取り掛かるとき、神田神保町の馴染みの古本屋に史料になる本の収集を頼み、それを何百万単位で購入し、物凄いスピードで読破し頭に叩き込んだという。そんな話を聞くと、速読に憧れる。

    しかし、世に出ている速読術には「文庫本を5分で読める」などとオカルト的な怪しいものが多いので、絶対に影響を受けないことにしている。

    ところで、本の種類によって読む速度が変わるのは当然だろう。平易な文章で書かれた本は速読が可能だとしても、難解な本は速読が難しい。
    ラーメンなら1杯5分で食える。しかし丼いっぱいのイカの塩辛を5分で食べれるだろうか?

    たとえば、

    神は実在統一の根本という如き冷静なる哲学上の存在であって、我々の暖き情意の活動となんら関係もないように感ぜられるるかも知らぬが、その実は決してそうではない。さきにいったように、我々の欲望は大いなる統一を求むより起こるので、この統一が達せられた時が喜悦である。いわゆる個人の自愛というのも畢竟此の如き統一的要求にすぎないのである。しかるに元来無限なる我々の精神は決して個人的自己の統一を以て満足するののではない。更に進んで一層大いなる統一を求めねばならぬ。我々の大いなる自己は他人と自己とを包含したものであるから、他人に同情を表わし他人と自己との一致統一を求むようになる。我々の他愛とはかくの如くして起こってくる超個人的の要求である。故に我々は他愛において、自愛におけるよりも一層大なる平安と喜悦とを感ずるのである。而して宇宙の統一なる神は実にかかる統一的活動の根本である。我々の愛の根本、喜びの根本である。神は無限の愛、無限の喜悦、平安である

    という、西田幾多郎渾身の作の、難解な哲学書を速読できるだろうか?

    ある種の教養人には可能だろうが、私には無理だ。というかこの手の文に速読の必要性を私は感じない。難解な本は、極端に言えば筆者が書くスピードと同じ速さで読まなければならない場合だってある。外国語の文章を読むときに至っては、ネイティブの筆者が書く速さより、読む速さのほうが遅いことおもあり得るのだ。
    新聞やビジネス書のような、情報を取り入れる文章は速く読めるに越したことはないが、小説や思想系の文章に対して、ことさらに速読を強調するのは、文書に対する冒涜のような気がする。
    本にはそれぞれ、読むスピードの適正速度がある。

    あと、オリジナリティに溢れた名著は、読み流しを絶対に許さない。
    ときおり文面を追いながら、著述に圧倒され、しばし感心し読むのを中断してしまうことがある。

    本の中に素晴らしいフレーズがあった時は、本を開いたまま机に置き、文章の鮮やかな切り口と心地よい毒の刺激が、読者である私の体を循環するまでしばし待つ。
    作者の意見が憑依して自分の意見になるまで、脳の中を整理する時間を名著は与えてくれる。

    とにかく、私は気の合う作者の本を、少量じっくり読めればいいと思っている。世の中に人間は数多くいるけれど、真の友人になれる人間は少ない。
    熟読に値する「好きな作家」が30人ぐらいいればいい。あとは適当に「速読」でお付き合いする。そんなスタンスで私は読書している。
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