猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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K君・香港奇行録 (1) ガラス張りのバスルーム
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    香港・ランガムプレイス・オフィスタワー
    汚い下町に忽然と現われる、近代的ビル
    香港のホテルはどこにしようか迷った。すごく迷った。
    私一人なら安宿でもいいが、初香港のK君やD君に、いきなりディープな「深夜特急」のような安宿はキツイ。
    でも旅の過酷さを知ってもらうためには、ディープな宿を経験してもらうのもいいかなと思った。

    最初、香港での宿は「重慶大厦」にする予定だった。「重慶大厦」は「チョンキンマンション」と読む。

    "mansion"とは英語で「大邸宅」の意味で、日本では集団住宅のことだが、果たしてこの「重慶大厦」(チョンキンマンション)は、英語の本来の意味の「大邸宅のような豪華ホテル」なのか、それとも日本のアパートみたいな「普通のビジネスホテル」なのか。

    実は重慶大厦は「大邸宅のような豪華ホテル」でも「普通のビジネスホテル」なく、魔都・香港っぽい「怪しい安宿の巣屈」であり、18階建ての薄汚い雑居ビルに何百の安宿がひしめき、バックパッカーには人気がある。

    重慶大厦の前では、バックパッカーたちがエレベーターの前で宿を求めて行列している。
    1階ではインド人がカレー屋のチラシを配り、また両替商が軒を並べている。この重慶大厦の両替商はレートがよく、われわれはここで日本円を香港ドルに替えた。

    私も一度、怖いもの見たさに重慶大厦に泊まったことがあるが、料金は3000円ぐらいで格安だったのはいいものの、部屋は妙な中国風の香料の匂いがして、寝たら身体がダニで痒くなり、しかも高層ビルなのに窓がない部屋で、火事が起こったら蒸し焼きになってしまうのは確実で、安全性はない。

    重慶大厦では、殺人事件や強盗事件が過去に何度も起こったという。いまは監視カメラや警備員が置かれ、犯罪件数は減ったが、泊まったら旅のネタにはなるが、教え子に危険な目にあわせたくないので、重慶大厦に泊まるのは断念した。

    そこで180度方針転換、香港では、綺麗でモダンなホテルに泊まることにした。
    条件は、高層階で新築の、ジムやプールが充実したホテルである。
    もちろん、コストパフォーマンスは良い方がいい。ペニンシュラは1泊10万、インターコンチネンタルのハーバービューの部屋は1泊7万するので、そんな桁外れの超豪華ホテルは論外である。

    綺麗な高層ビルでプールが魅力的、しかもリーズナブル。そんな点をすべて満たしていたのが「ランガムプレイスホテル」である。ホテルマンのサービスも良いらしく(実際良かった)ネットでの評判も高い。

    香港は高層ビルが飽和状態で、都心部に新しいビルはなかなか建てられない。だから新築の綺麗なホテルは少なく、有名ホテルも古いビルを改装しながら、なんとか使っているのが現状だ。

    ところがこの「ランガムプレイスホテル」は、香港では珍しい新築のホテルだ。
    ただ、どうしてビルが建ち並び、もはや立錐の余地がない香港で「ランガムプレイスホテル」のような高層ホテルの建築が可能だったのか。

    香港の中心街は、香港島と九龍半島の2つに分かれている。香港島と九龍半島がフェリーや地下鉄や海底道路トンネルで結ばれている。高層ビルが立ち並ぶのは香港島のほうで、九龍半島には高層ビルがない。

    なぜ九龍半島に高層ビルが存在しないかといえば、10年前まで九龍半島には、香港の玄関口・啓徳空港があったからで、飛行機の離着陸の邪魔になるから、建築規制で九龍半島に高層ビルが建てられなかったのである。

    しかし、香港の空港は10年前、郊外のランタオ島に移転し、啓徳空港は廃止され、九龍半島にも高層ビルを建てていいことになった。

    そこで九龍半島の、東京で言えば池袋のような、庶民の繁華街・旺角のゴミゴミした遊郭や風俗街を取り壊して、治安向上と街の活性化を目的にして、オフィス・ショッピングセンター・ホテルの3つの高層ビルを建てた。
    これが「ランガムプレイス」で、薄汚い街の中に、この3つのビルだけが、シャープで近代的な威容を見せているのだ。

    だからホテルは新しいが、周辺は「黒社会」という言葉を連想したくなるほど、雰囲気が怪しい。
    私たちは、ホテル最寄の九龍駅からタクシーを使って「ランガムプレイスホテル」に来たのだが、ホテルに着くまでの町並みは、かなり怪しい街並みだったので、K君もD君も「どんな恐ろしく、薄汚いホテルに連れ去られるのだろうか」と心配しただろうが、ゴミの街並みに立つ、ガラスが目映いモダンなホテルを見て、安心したと思う。

    K君がタクシーから撮った香港の下町
    遠くにガラスが美しい「ランガムプレイス」が、かすかに見える

    ホテルに隣接するショッピングセンター「ランガムプレイス」は、東京の六本木ヒルズや大阪のなんばパークス、福岡のキャナルシティを設計した人が設計を担当し、4階から10階までが吹き抜けになって、長大なエスカレーターが設置されている。


    ちょっと画像をいじってみたが、なんだかジャッキーチェンが、映画で飛び降りそうな吹き抜けである。



    さて、私が日本でも海外でも、ホテルを選ぶ上で気をつけている点は、ホテルを出るとすぐに繁華街があり、コンビニや小腹を満たすラーメン屋などが近いことである。

    だから東京で言えば、ニューオータニや高輪プリンスや赤坂プリンスのように、旧皇族の屋敷をホテルにしたような場所は困る。夜、外に出たら鬱蒼とした庭が広がり、客が車かタクシーでホテルを訪れることを前提にしているような、10分以上歩かなければ繁華街に出られない立地は嫌だ。

    その点「ランガムプレイスホテル」は、外に出たらすぐ新宿・池袋・渋谷のような、深夜まで賑やかな繁華街があり、それが私の好みである。

    とにかく「ランガムプレイスホテル」は、新築の高層ビルで、部屋が清潔で、プールやジムが充実し、繁華街が近くて夜は気軽に散歩でき、またiPodのスピーカーまであり、諸条件が整ったホテルだ。

    (ここで閑話休題。私が旅のホテルごときで、これだけ深く頭を悩ませるのだから、塾生の指導、特に受験生の対応について、どれだけ毎日頭を回転させてるか想像して欲しい)



    話をホテルに戻す。
    しかし「ランガムプレイスホテル」には致命的な欠陥があった。この欠陥こそが「ランガムプレイスホテル」を選ぶか選ぶまいか、最後まで躊躇した点である。

    この「ランガムプレイスホテル」、なんとデザインが斬新すぎて、バスルームがガラス張りなのだ。これじゃあラブホテルじゃないか。男3人でガラス張りのバスルームは困る。

    バスルームをガラス張りにすれば、バスルームからテレビが見えるし、窓の外の光景も眺められる利点がある。優雅なバスタイムを送れる。テレビも壁掛けの液晶テレビである。1人で泊まるか、男女のイチャイチャカップルには最適だろう。

    しかし当然、裸が部屋から丸見えなのだ。
    日本的感覚からすれば明らかにラブホテルであり、日本のシティホテルでは絶対にあり得ない設計である。

    このいかにもアメリカ人が好きそうなガラス張りのバスルームは、私の趣味嗜好には合わない。西洋人がガラス張りのバスルームで、どんな行為をしてるか考えたくもない。
    一時は別のホテルも考えたが、諸条件が揃った「ランガムプレイスホテル」の良さには勝てなかった。

    そして嬉しいことに、各階に1部屋だけ、バスルームがガラス張りではない部屋がある。私はその部屋をネットできちんと予約しておいた。メールでフロントの係員にも念を押しておいた。これで大丈夫。

    ところが宿泊当日、フロントでチェックインした時、どういうわけだか部屋がアップグレードされてしまった。嫌な予感がした。もしかしてガラス張りバスルームの部屋か?
    ポーターに連れられ部屋に行くと、案の定、悪夢のガラス張りバスルームの部屋に案内された。

    部屋に入った瞬間、K君とD君は「こりゃないわあ」と叫んだ。

     
    K君もD君も19歳で羞恥心の強い年頃である。いまでは都会に住んでいるが、根は素朴な田舎の子である。彼らが経験する最初の海外旅行のホテルの部屋がガラス張りだなんて、心の繊細な部分を傷つけてしまったらどうしよう。また私が変態趣向の持ち主だと疑われたら困る。

    もちろん、ガラス張りのバスルームにはブラインドがあり、中が見えないようになっている。ところが悪いことは重なるもので、ブラインドをチェックすると、壊れていて閉まらない。
    このままでは困る。さっそくハウスキーパーを呼んで、ブラインドを直してもらった。

    ガラス張りバスルーム問題は、ブラインドが直ったことによって一件落着した。これで、男同士裸を見せ合う地獄絵図を経験しないですむ。
    これでやっと、安心して風呂に入ることができる。



    さて、食事をすまして、深夜0時半ごろホテルに戻った。
    風呂の時間である。

    この「ランガムプレイスホテル」は一流ホテルだから、アメニティグッズもたくさんあって、シャンプーやトリートメントの他に、風呂を泡立たせるバスジェルもあった。
    バスジェルを浴槽に流し込み攪拌すると、白い泡だらけの風呂ができる。泡風呂につかると、由美かおるになった気分だ。

    K君がまず風呂に入った。
    私は次の日のコースを練るために、ベッドでのんびり「地球の歩き方」を読んでいた。

    するとバスルームの方向から、ガラスをカンカン叩く音がする。
    バスルームの方向に顔を向けると、ブラインドが全開になり、ガラス越しに風呂が明るく丸見えになっていて、なんとそこには素っ裸で、股間だけ白い泡で隠したK君が、満面飛び切りの笑顔で立っていた。
    阪大に合格した時と同じくらいの、嬉しそうな子供みたいな顔だった。童顔が笑顔でクシャクシャになっていた。

    驚いた。すごく驚いた。

    しかもK君はバスルームの中からD君に「お前もやらんと駄目でしょ、やれよ」と誘いかけてきた。
    当然ながら、D君は真面目な顔で「バカかお前は」と怒っていた。

    私はK君のあまりのアホっぷりに、身をよじりながら笑い転げた。

    おまけにK君は、バスルームの中から「先生、写真撮ってくださいよ」と催促する。私はさすがに躊躇したが、K君のペースにまんまと乗せられ、K君のカメラを手に取ると、3〜4枚撮らされてしまった。

    白い泡で大事な部分を隠しているとはいえ、素っ裸の人間を撮影するのは人生初体験である。篠山紀信なら美女激写でいいが、私が撮ってるのはニキビ面のアンパンマンだ。

    決してK君は酔っぱらって、こんな突飛な行為をやったわけではない。酒は確かに飲んだが、3人で青島ビール中瓶2本。素面と言っていい。

    もう時効だから言うが、K君は高校の修学旅行でもクラスメイトを誘って、素っ裸になり股間に泡を塗って先生の目を盗み、廊下を闊歩したという。K君の高校は超真面目学校で、周りからは「プリズン」と呼ばれているぐらい厳しい。見つかったら厳罰に処せられただろうに。

    とにかく、K君は戦前の旧制高校にいそうなバンカラな男で(バンカラを略してバカとも言う)、脳の構造がどこかぶっ飛んでいる。
    私も塾の教え子を香港に連れてったり、かなり行動が飛んでる男だと思うが、「行くか?」「行きます!」とついてくるK君は、もっとぶっ飛んでいる。気持ちがいい男だ。

    K君といると、勘違いなのはわかっているけれど、吉田松陰が高杉晋作を連れて旅に出るような、気宇壮大なロマンを感じる。
    いや、ただのバスルームでの乱痴気騒ぎなんだけども(笑)

    でもこういうことなら、ガラス張りのバスルームのことで、あれこれ頭を悩ますことはなかった。羞恥心うんぬんに気を使うことなんか、全くなかった。

    さすがにK君は「先生もやりましょうよ」と聞いてはこなかった。よかった。
    だが、フロントに厳命して、次の日からバスルームがガラス張りじゃない部屋に変えてもらったことは言うまでもない。

    K君は彼女募集中。
    結婚した女性は、飛び切り楽しい人生が送れそうです。
    「ランガムプレイスホテル」のバスルーム
    写っている(写している)のはK君


     
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