猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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中学受験で不合格になったら
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    どんなに本人が中学受験に対してあまり熱心じゃなくて、親主導で受験した子でも、さすがに掲示板に自分の番号がなかったら辛い。

    不合格になるということは、中学校という1つの組織から、能力不足のために自分の存在が否定されることである。12歳までに世間からそんな酷い目にあった子は少ないし、「君なんか必要ないぞ」と言われてショックを受けない子供はいない。

    ただ、本人が受験に熱心じゃなかった子にとっては、不合格のショックよりも、中学受験が終わって親の束縛から解放され、やれやれという気持ちのほうが強い。受験という拘束帯を外され、五体に自由の気が漲り、せいせいするだろう。

    しかし中学受験にまじめに取り組んできた子は違う。
    テレビもゲームも漫画も友達との付き合いも、受験のために犠牲にしてきた子が落ちたときのショックは計り知れない。

    合格発表の次の日は、同級生に会うのが恥ずかしいため学校を休む子もいる。家出する子もいる。押入れに隠れて出てこない子もいる。三日三晩何も食べられない子もいる。
    自分はお父さんお母さんの期待に応えられなかったダメ人間だ。お父さんお母さんが今までどおり自分を愛してくれるだろうか、そんな余計な心配をする子もいる。

    ましてや中学受験の試験前に学校を休んで勉強した子には「学校を休んでまで勉強したのに合格しなかった」と、担任の教師や同級生の冷たい視線が気になる。

    不合格のショックは、受験勉強の努力の大きさに比例する。
    時速10kmの自転車が壁にぶつかっても怪我は軽いが、時速1000kmの飛行機が地面にぶつかったら機体も乗客も粉砕される。人の100倍努力した子は、ショックも100倍大きい。

    大地震でポッキリと折れ、ゆっくりと地面に向かって静かに倒れてゆく鉄塔のように、自信とプライドが崩れ落ちる。中学受験不合格が、生涯を左右する大トラウマになる可能性だってあるのだ。

    しかし私の塾講師の経験上、中学受験にまじめに取り組んできた子ほど、不合格になっても前向きに勉強に取り組み、3年後に中学受験で不合格になったのと同じ高校に合格し、リベンジを果たす子が多い。高校に不合格になっても大学で見事に結果を出す子が多い。

    子供の自癒能力は凄いと思う。心の深い傷を、成長への肥やしにする。
    中学入試を経験することで、自己を過大評価しない、また過小評価もしない、自分の能力を客観的に見る視点が子供にできる。顔から童臭が消え、同級生よりも早く大人の顔つきになる。
    デビュー当時のイチローと、現在のイチローぐらい、顔の相貌が変わる。

    おまけに、試験の結果には運が付きまとう。
    中学受験の合格者のうち4分の3ぐらいは、10回試験をやっても、すべての試験で合格点をたたき出す子だと思う。
    しかし残りの4分の1ぐらいの子は、合格不合格が入れ替わっていても全然おかしくはない。問題運やその日のコンディションで合不合が決定される。たった1回の試験の恐ろしさである。

    そういうわけだから、ギリギリのラインで運良く合格して中学で遊び呆ける子と、あともう一歩で合格したのに悔しい思いをして、屈辱をバネに勉強を頑張る子では、15歳までの3年間で学力は完全に逆転する。

    ところで高校から中高一貫校に入学した子は、在校生から「新高(しんこう)」と呼ばれる。そして「新高」は、高1最初の模擬試験で上位を占める。「新高」の子の8割は学内平均より上、中位以上の成績を取る。

    「新高」は入学時、中学校で3年間のんびりでやってきた子に対して、強烈な刺激を与える。学内で「敗者」とか「劣る」とか見なされることは全く無い。むしろ「新高」の高い学力を見せ付けられ、敬意を抱くことの方が多い。
    中学受験で合格した子にとって、「新高」は下剋上でのし上がってきた、自分の地位を脅かす存在なのだ。

    確かに、模擬試験のベスト10のうち7人くらいは、中学受験で合格した「天然モノ」の天才たちが占める。これは厳然たる事実だ。
    しかし中学受験時に破れなかった上位4分の3の壁は、屈辱がモチベーションになった3年前の厳しい高校受験勉強によって、あっさりと破られてしまう。

    ただ高3になると、中学受験組が眠りからさめ、潜在的な才能が発揮されぐんぐん成績が伸び、「新高」の子は圧倒的優位を保てなくなるが、成績的にはそんなに大崩れはしない。中学受験・高校受験と2度にわたって重ねてきた鍛錬が、成績の安定感をもたらす。

    私は中学受験を否定的には捉えない。
    不合格になったら確かに子供は傷つく。やる気のある子ほど傷つく。
    ただその傷は、子供が残り70年の人生を生きる上でのパワーになる。間違いない。
    | 中学受験 | 22:29 | - | - | ↑PAGE TOP