猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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山形のおせっかいおばさん
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    私と同じ街に、山形県出身の親戚のおばさんがいる。
    生まれは確か、酒田・鶴岡周辺の農家だったと思う。

    顔は岡田茉莉子を少々太らせた感じで、若い頃はかなりの美人だったと思われ、色白のもち肌で、頬がアンパンマンみたいに、ほんのり赤くなっている。
    そして、バリバリの東北弁をしゃべる。

    この山形のおばさん、お節介やきなところがあって、私の家族の生活にいちいち干渉するのが好きなのだ。
    日常生活に平気な顔で、ズカズカと乗り込んでくる。

    時々我が家に遊びに来ては、東北弁を駆使しながら、
    「仏壇の位置がおかしい。方角を変えなさい」
    「お父さんの三回忌、あの人は絶対呼ばなくちゃあだめ」
    「お墓には、あんな花だめ」
    「あなたの服装、人と会う時には失礼、変えなさい」
    なんて、母や私にちょっかいをだしてきます。
    正直言って、ちょっと鬱陶しいところがある。

    (注釈:山形のおばさんの言葉、標準語で書くと少々冷たい感じがする。実際は東北弁で話す人だから、もっと人情のこもった嫌味のない言い方だ。
     しかし、私は東北弁を文章にする筆力がない。作為的な東北弁は書けない。
    実際、東北弁じゃないと会話のニュアンスが伝わらないが、標準語で書かせてもらう。お読みになる方は東北弁に翻訳していただきたい)

    また山形のおばさんは、非常にゴシップ好きで、うちの母親と長話をしているのを小耳にはさむと、
    「あそこの息子は、○○大落ちた」
    「××家の亭主には、2号さんがいる」
    「□□家の嫁は、ブサイク」
    「△△さんは、肺がんでもう長くない」
    どこから手に入れたのか、近所の情報を東北弁まるだしで、面白おかしく、しかもえげつなく話している。

    そして、このおばさんの話のノリが最高潮に達するのは、自分の嫁の悪口をいう時だ。
    作る飯がまずい、礼儀作法がひどい、旦那(おばさんの息子)を尻に敷いている、服装のセンスが最悪、親のしつけが悪い、性根が腐っている、化粧が濃い、髪形があばずれっぽい、子供の教育がなってない・・・
    まあよくぞこれだけ悪口を並べ立てられるものだと感心するぐらい、嫁の悪口はつきない。

    おばさんの話だけを聞いていると、どんなに極悪非道の嫁かと思うのだが、実際会うと、清楚でかわいらしいお嫁さんなのだ。


    山形のおばさん、確かに過干渉で、人の噂話(というか悪口)が好きだけど、嫌味がない。
    この図々しいおばさんに干渉されても、私はあまり不愉快な感じを受けない。。
    このおばさんは他人の陰口をたたくのは大好きだが、陰口だけじゃなく、本人の目の前でもしっかり悪口を言う人なのだ。

    このおばさん、私が一番嫌いなタイプの人間になり得る危険性をたっぷり秘めている人なのだが、なぜだか不快に感じないのは、東北弁の魔力なのか、それとも裏表が全くない性格が成せる業なのか、理由はよくわからない。

    そして、いざという時に、この人ほど頼れる人はいないのです。

    うちの父親は63歳の時、膵臓がんで死んだ。
    父親が入院している時、このおばさんは毎日のように病院に来てくれた。息子の私より数倍、死にかけの亡き父に尽くしてくれた。

    病気の父や、介護でたいへんな母の話相手をしてくれ、暗くなりがちな家族を明るく元気づけてくれたことは、とても有難いことだった。
    おばさんの図々しさは、家族がピンチの時には、この上なく暖かいものに感じられた。

    また、父の葬式の時には、おばさんの近所の奥さん達を5人引き連れて、てきぱきと葬式の雑事をこなしてくれた。

    私に対しては、
    「香典とか葬式代とか御布施とか、お金のことだけはしっかり勘定しなさい。あとのことは私たちがやるから」
    と、肉親の葬式に不慣れな私たち家族を励まし、私たち家族は大船に乗ったような気持ちで葬式を済ませることができた。

    平時は正直うっとうしく感じるこのおばさんは、非常時には神様のように見えた。

    どうして私の家族に、ここまでよくしてくれるのかわからない。
    私の家族だけではない。山形のおばさんの悪口を言う人は、ほとんどいない。
    当人は他人の悪口が、あんなに好きなのに。

    おばさんは庄内平野の農家出身だ。農繁期にはご近所で助け合わなければならない。また雪国という自然環境の中では、個人主義者を気取っては生きてはゆけない。
    そんな厳しい環境の中で、お互い助け合うことが、幼少の頃から身についているのだろう。
    彼女は日本古来の農耕民族の美徳を体現している。

    山形のおばさんだったら、近所の若い者が職についていないのを見つけたら、放っておかないだろう。
    表に陰に悪口を言って若者にプレッシャーをかけるか、それとも若者のために何か職を探してくるか、とにかく何らかの干渉をすることは間違いない。
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