猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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久保田早紀「異邦人」
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    久保田早紀,山川啓介,萩田光雄,若草恵
    ¥ 900

    数年前、仕事帰りの午後11時半ごろ、私が住んでいる町の、ネオンの明かりより闇の深さのほうが目立つ寂れた暗い繁華街にある「クラウン」というラーメン屋で、ひとり遅い夕食をとっていた。

    「クラウン」の内装は、もともとラーメン屋として作られたものではなく、バー・スタンドをそのまま転用したものだ。昔バーだった名残で棚にはキープされた洋酒が陳列され、白い蛍光灯に照らされたガラスケースにはグラスがびっしり並んでいる。
    内装は古いスタンド、実態は中華料理屋という、一風変わった店なのだ。何らかの理由で業種変更したのだろう。そもそも「クラウン」という店の名前自体、ラーメン屋のものではない。

    ある人から「クラウンの中華はうまいよ」と聞かされて、大学生のときはじめて1人でこの店に入ったのだが、木の長いカウンターに丸椅子で、天井に安っぽいシャンデリアが吊るしてある内装は、どう見てもホステスのいるバーのもので、高いテーブルチャージでも取られるんじゃないかと冷や冷やした。

    しかしカウンターには元中学教師のような、白髪の痩せて神経質そうな主人が目を伏せながら立っていて、奥の厨房では普通の主婦のような奥さんが、前掛けをして甲斐甲斐しく中華鍋を振っていた。

    背脂の入ったラーメン、良い味のついた小さく刻んだ焼き豚がたっぷり入った焼き飯、いまどき珍しくニンニクの効いた餃子なんかがうまい。
    ライスを頼むと、糠漬けの白菜と塩漬けのらっきょうがついてくる。内装のケバケバしさと、出てくる中華の素朴さのアンバランスさがたまらない。
    もちろんテーブルチャージなんか取られなかった。私はそれ以来15年間この店の常連である。

    さて、その日のクラウンには、私を含めて男ばかり4人の客がいた。「クラウン」のカウンターには12〜3脚の丸い椅子があり、私と同年代の4人の男が2脚ぐらいずつ植木算のように間隔を開け、自分の世界に閉じこもりながら黙々とビールを飲みながら中華を食っていた。私は端に座って確か野菜たっぷりのタンメンと餃子を食べていた。店にはテレビがあったが、私を含めた男たちはみんな食事と週刊誌に没頭していて、テレビを見ている者はいなかった。この店に置いてある読み物と言えば、新聞とアサヒ芸能と女性セブンとゴルフ漫画と釣り雑誌しかないので、ゴルフと釣りに全く無関心な私は女性セブンを読んでいた。

    そんな4人の男の陰気な静寂に包まれた、地方の繁華街のラーメン屋の小さなテレビから、いきなり
    久保田早紀の「異邦人」が流れた。

    ♪子供たちが 空に向かい 両手を広げ 鳥や雲や 夢までも つかもうと している

    テレビに映し出されたのは三洋電機のCMである。そういえば25年前も「異邦人」は三洋電機のCMソングだった。久保田早紀の「異邦人」が発売され、100万枚を超える超大ヒットを飛ばしたのは1979年のことである。

    「異邦人」が流れた瞬間、私は食事と雑誌への集中を断ち切られた。久保田早紀が鼻にかかった透明感のあるエキゾチックな声で、♪子供たちが〜と歌った瞬間、それまでテレビに見向きもしていなかった私は思わずテレビのCMの画像を覗き込んだ。

    不思議なことに私以外の3人の男たちも食事の手を止めて、私と同じようにテレビをじっと見つめていた。彼らも私と同じように突然の「異邦人」に驚いたのだろう。
    テレビをいっせいに見つめた4人の男は口を交わさなかった。全員が一斉に「異邦人」に反応して、お互い懐かしさを共有していることがばれてしまった妙な照れくささがあった。「異邦人」がバックに流れているCM映像を見た後、我々はまた何事もなかったように食事と雑誌に戻っていった。

    それにしても「異邦人」いい曲だ。神業のようなメロディーだ。日本の歌謡曲・J-POPが何十万曲あるのか知らないが、「異邦人」は間違いなくその最高傑作の一つだろう。ラーメン屋で4人の男を一斉に振り向かせただけのことはある。
    久保田早紀が♪子供たちが〜と歌い出した瞬間、私の脳裏にはまだ行ったことのないシルクロードの風景が浮かび、同時に「異邦人」が流行った1979年の小学校5年生時分に戻った気持ちにさせられる。小学生の頃から私はこの曲が大好きだったのだ。

    それにしても、こんなに歌い出しが鮮烈な曲は、私の知るところ他には
    中島みゆきの「世情」しかない。「異邦人」が♪子供たちが〜のワンフレーズで聴き手をあっちの世界に連れ去るように、中島みゆきも♪世の中はいつも 変わっているから 頑固者だけが 悲しい思いをする と、どすの利いた不気味な歌い方で私を金縛りにする。

    コンスタントにヒット曲を連発する「歌姫」中島みゆきと違って、久保田早紀のヒット曲は「異邦人」しかない。「25時」とか「オレンジ・エアメール・スペシャル」という曲も出したらしいが、私には全然記憶がなく、久保田早紀はいわゆる一発屋として認識されている。

    でも私は一発屋の残した曲が好きだ。一発屋の曲は何より曲がいい。一発屋は軽薄なタレント人気じゃなくて、純粋な曲の魅力だけでヒットチャートを輝かしたのだ。久保田早紀は「異邦人」という大名曲だけで、私の心を豊かにしてくれた。

    久保田早紀は今、俳優久米明の息子の音楽家と結婚して、教会音楽専門のゴスペル歌手をやっている。「週刊朝日」で20年ぶりぐらいにその姿を見たが、芸能界とは離れた堅気の世界で、美しさを保ちながら幸せそうに暮らしているようだった。

    | 音楽批評の部屋 | 10:19 | - | - | ↑PAGE TOP
    赤ゴジラ嶋みたいに成績が伸びる
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      田舎で塾をやっていると、ときどき赤ゴジラ嶋のように、猛烈な勢いで成績が飛躍的伸びる子に遭遇する。特に中1になって塾に通いはじめた子に多い。

      東京だと幼い頃からお受験が盛んで、中学受験するのは当たり前の環境だから、隠れた才能が誰にも気づかれず放置されたままになるケースは比較的少ない。

      ところが田舎では、中学生になっても隠れた才能が眠っている子が結構いる。小学生時代は自分に勉強の才能があるとは全く意識しないで、中学受験なんて思いもよらずに友達と遊び駆け回っていた子が、中1になって塾に通いだした途端に猛烈に成績が伸び、中学受験を経験した子を学力面で抜き去ってしまうことがある。

      そんなふうに成績が化け物みたいに伸びる子は、女の子より男の子の方が圧倒的に多い。
      女の子にはどちらかといえば不器用な子が多く、勉強時間も丁寧なぶん時間がかかるし、急激に成績が伸びる子はそんなにいない。

      だが不器用でもコツコツ勉強を日課にしていれば、確実に実を結ぶ。
      女の子の成績はまるで時計の短針のように伸びる。時計をじっと眺めていても短針が進んでいるのは確認できないが、しばらく時間が経ってから再び時計を見ると、「ああ、こんなに進んでいたんだ」とわかる。女の子はそんなじっくり型の伸び方である。

      しかし男の子の中には、まるで秒針のように刻一刻と目に見え音まで立てて力が伸びる子がいる。中学生の男の子は背がぐんと伸びるが、それに比例して成績も伸びるのである。
      そんな伸び盛りの子は授業をしていても、磁石のように私と黒板の方向を向いている。ありきたりの表現を使って恐縮だが、目が輝いている!

      とにかく勉強が新鮮なんだろう。斜に構えることなど思いもよらず、ひたすら素直に勉強に打ち込んでいる。私の言葉、黒板の文字が確実に脳みそに吸収されてゆくのがわかる。

      伸びる子のお母さんは成績の急上昇に驚き、「伸びたのは先生のおかげです」と仰ってくれる。とんでもない。一番驚いているのは私なのである。
      私がその子にしたことといえば、普通に授業をし、普通に宿題を出したことだけだ。

      急速に成績が伸びる子のお母さんの共通点を挙げると、ほめ上手、楽天的、子供に勉強を押し付けない、聞き上手、表情豊か、そんな感じだろうか。背後から子供をじっと見守るスタンスで接しているお母さんの子に成功例が多い。

      逆に機関車のように「私についていらっしゃい」と中学受験の世界に子供を無理に引っ張るお母さんの子は、勉強に疲れ果ててしまい中学校に入学したら成績があっと言う間に落ちてしまうケースが多い。いわゆる「燃え尽き症候群」である。

      さて、赤ゴジラ嶋みたいに周りがびっくりするほど急速に伸びる子の数は、1年に2〜3人くらいである。本来なら塾生全員に赤ゴジラになって欲しいのだが、なかなかそうならないのが現実だ。

      しかし私は塾生全員に大輪の花を咲かせたい気持ちは捨ててはいない。塾がジャングルのように大輪の花で埋まることを期待し努力していきたい。
      ただ私が「伸びろ、伸びろ」と力めば力むほど成績は伸びない。もちろん放任しすぎても伸びない。万策尽くして無心に伸びるのを待つ。無心だが無関心に非ず。強制と放任の黄金比の発見はいつのことになるやら。

      ところで、ここ3〜4年の間、うちの塾に通い始めて、学力が急速に伸びる子の数が増えてきている。それはおそらく私の功績ではなくて、「ゆとり教育」のせいだと思う。
      小学校で履修する分野が減り、本来なら難問をスラスラ解ける子が簡単な問題ばかり解かされ、力を生かしきれずに、才能が野放しにされているのだ。だから塾で歯ごたえのある問題を解くことで、眠っていた才能が爆発する。

      また「学級崩壊」で授業が騒がしいクラスで学んでいた子の中に、塾で成績が急速に伸びる子が多い。騒々しい教室で才能が放置され、本来脳味噌に知識を溜め込み思考力を養う学びの場であるべきはずの学校の教室が、全く機能を果たしていなかったのだ。

      また小学校の学力評価がどんどん曖昧になっているから、自分の子は勉強ができるのかできないのか、イマイチわからない保護者の方が多い。塾ではシビアに偏差値が出るから、客観的な学力がたちどころにわかる。そんな評価のわかりやすさがやる気につながる。

      塾の宣伝をするわけではないが、もし塾の存在がなかったら、凄い才能が市井に埋もれてしまう可能性がある。そう思うとぞっとする。
      ゆとり教育が、
      全国津々浦々に大量の「埋もれた才能」を作り出している
      。本来なら花開くべき勉強の才能が、不発弾のまま地中に埋もれてしまうのは悲しいことだ。

      中学生になって赤ゴジラ嶋みたいに爆発的に成績が伸びる子がたくさん現れることは、決して良い傾向ではない。

      | 軟派な教育論 | 02:28 | - | - | ↑PAGE TOP
      昭和40年代の芸能界はお化け屋敷 
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        私は昭和43年生まれ。
        3歳ぐらいの頃から歌番組が大好きだった。今でも鮮明に当時の歌番組の映像を覚えている。

        3歳の時に見たテレビの内容を覚えているのは私の記憶力がいいからではなく、当時テレビで歌っていたのは化け物みたいな強烈な個性を持つ歌手ばかりだったからだ。忘れようと思っても忘れられない。

        アイシャドーが濃すぎて「あの鐘を鳴らすのはあなた」を歌う時真っ黒な涙を流す
        和田アキ子

        「ドゥルビドゥビドゥビドゥビドゥバー、ア〜ン、ア〜ン」の
        青江三奈
         
        ホクロが妖艶でものすごい存在感の
        ちあきなおみ

        歌詞も声も雰囲気も目つきも全部暗い
        藤圭子

        整形で顔が七色変化する
        弘田三枝子



        今見ると「何でこの人が主役のドラマが視聴率40%なの?」と訝しく思ってしまう
        水前寺清子

        ユニセックス的な風貌が独特で不気味な佐良直美
         

        やたら気合が入っているが、借金を抱えるたびテレビで泣いている
        畠山みどり
         

        陰気な顔と声で「さそり座の女」を歌う闇の帝王
        美川憲一

        アソコがついているのかないのかわからない、お父さんが人間国宝で、ラサール出身の
        ピーター

        ゲテモノで奇抜で色気プンプンでワイルドな
        山本リンダ

        「夜のヒットスタジオ」でなぜか大泣きしていた、目の陥没した
        いしだあゆみ

        ずん胴でタヌキみたいなメイクの坂本スミ子

        そんな白粉の匂いが漂う、湿度の異常に高い歌手たちの姿は、網膜に画面焼けしたみたいに強く残っている

        しかし、よくもまあ変な人ばかり揃ったものだ。
        今のタレントはそこら辺にいるお兄ちゃんお姉ちゃんだが、昭和40年代のスターは素性が怪しく人生裏街道まっしぐらという感じで、「芸能界」とか「流行歌」とか「キャバレー」といった言葉がよく似合っていた。

        今は子供が芸能界に入りたいといっても反対する親はかなり減ってきているが、昭和50年代以前には子供が芸能界に入りたいというと、「勘当」とか言って強く反対する親が多かった。

        そりゃあ「15,16,17と、私の人生暗かった」と不気味に歌う藤圭子の姿を見て、娘を同じ世界に入れたいと思う親はどうかしている。

        そんな異常で異様な歌手たちが集う「夜のヒットスタジオ」や「ロッテ歌のアルバム」はまるで見世物小屋だった。彼女たちこそまさに河原芸人の正統的な後継者だ。

        化け物歌手たちの中で、芸能界にどこか染まってなさそうな素人クサイ純情さを残していたのは小柳ルミ子天地真だった。この2人はジャングルに咲く可憐な2輪の花といった感じで、化け物小屋の芸能界には似つかわしくなかった。

        しかし今では2人とも、芸能界の怪しく退廃な部分が一番染み付いてしまった。小柳ルミ子はジャングルの中でたくましく成長し、若い男を食う妖怪熱帯植物に変身した。天地真理に至っては言葉も出ない。

        逆に20代で死んでもおかしくないような、暗澹たるムードを醸し出していた藤圭子が、娘の成功で蘇ったのは皮肉なことだ。
        宇多田ヒカルと藤圭子はポジとネガのような関係で、宇多田ヒカルを見ると、「あの暗い藤圭子の娘がこんなに性格が明るく、成功したなんて」と妙に安心してしまうのである。

        | 映画テレビ | 01:33 | - | - | ↑PAGE TOP