2005.11.30 Wednesday
矢沢永吉のファン層
ふだんはキャパの大きいホールでコンサートをやる永ちゃんだが、今回は収容人数の少ないライブハウスツアーで、1000人そこそこしか客が入らないクラブクワトロは熱気ムンムンだった。
永ちゃんの歌を至近距離で聴けるレアな体験ができた。永ちゃんが近い。マイクスタンドが飛んできそうな恐怖を感じながら、まるでカラオケボックスで永ちゃんの歌を聴いているようでハッピーだった。
永ちゃんは広島生まれ。成り上がりの原爆孤児。日本で一番成功したミュージシャンの1人だ。
永ちゃんは最後まで息が上がらず機械のように歌が乱れない。ふだんからトレーニングを欠かしていないんだろう。
永ちゃんの歌唱法はワイルドだが、実際にはとても丁寧に歌う人なので驚いた。歌を絶対に崩さず、CDそのままの歌い方を維持するスタンスは、あの美空ひばりに似ていた。美空ひばりもライブではレコーディングの時と同じように、細部までキッチリ歌う人だった。
永ちゃんは50代の高校古文教師が、一言一句疎かにせず古文を訓読するような律儀さで、一曲一曲をカッチリ完璧に、しかし熱を込めて歌いこなしていった。
ところでライブの客層だが、さすが永ちゃん、元ヤンキーの30代前半〜40代後半がメインだった。男の客は髪型にどこかリーゼントの痕跡を残し、服装も白や赤系統が多かった。
女性客も工藤静香みたいな元ヤンキー系おばさんが多かった。もちろん工藤静香みたいに美人ではなく顔がむくんでいて、髪は茶色で化粧は濃い目で服装も派手で香水がキツイのに生活臭がして、目が怖くて言葉づかいも少々下品で、工藤静香というより畠山鈴香みたいな感じだった。
そんな20年前には広島の街で荒れ狂った元暴走族やヤンキーを子分に従えて、BOSSこと矢沢永吉は気持ちよく歌い上げる。カタギには入り込めない熱狂的な空間だ。
さて、そんな永ちゃんの音楽だが、昔からYAZAWA命の人は永ちゃんの音楽しか聴かないが、最近になってCMで永ちゃんのことを渋くてカッコイイ中年だと好感を持ち始めている人は、実際にはあまり矢沢永吉の音楽を聴いていない。最近の永ちゃんは、ネームバリューの割にCD売り上げが少ない。
では矢沢永吉のどのCDから聴けばいいかというと、永ちゃんはレコード会社移籍を繰り返し、セルフカヴァーも多く、ベスト盤も乱発されている割に完全なものがないので、「とりあえずこれ1枚!」と紹介することは非常に難しい。
私は「ラスト・シーン」「共犯者」「ニューグランドホテル」「TAKE IT TIME」「逃亡者」「止まらないHa〜Ha」のような歌謡ロックが好きだが、好きな曲を網羅したベスト盤がない。
永ちゃんの魅力に迫るためには、いっそのことDVDでコンサートの雰囲気に直に触れるのがよかろうと、上のDVDを選んだ。