猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
kasami88★gmail.com
CALENDAR
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< November 2008 >>
RECOMMEND
RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
twitter
猫ギター
MOBILE
qrcode
LINKS
PROFILE
OTHERS
無料ブログ作成サービス JUGEM
茂木健一郎の聞き上手と髪型
0
    茂木健一郎は尾崎豊のファンで、尾崎豊の歌詞をどんな文学よりも凄いとほめちぎり、「15の夜」を自分の年齢に合わせて、たとえば45歳になったら ♪45の夜〜 と大声で歌うらしい。
    茂木健一郎が73歳になり、♪73の夜〜盗んだバイクで走り出す〜なんて歌ったら、ただの暴走老人である。

    ところでNHK「プロフェッショナル〜プロの流儀」での茂木健一郎の聞き上手ぶりには驚く。ゲストに語るだけ語らせて、自分は表面には出ない。

    茂木健一郎は脳科学者で、著書はベストセラーを連発し、大学入試の国語でも頻繁に引用されている。当然あれだけの文章を書く人だから、茂木健一郎は自己主張の強い人だ。対談本でも自分の研究や思想について饒舌に語っている。

    しかし「プロフェッショナル」では、そんな素振りさえ見せない。自分のことはあまり語らない。間違っても「クオリア!」などと叫んだりはしない。
    視聴者は茂木健一郎の存在を意識しないで、ゲストの話だけが浮き立つようになっている。

    私は茂木健一郎の聞き上手ぶりを研究するために、一度「プロフェッショナル」を茂木健一郎にだけ注目して、茂木健一郎のリアクションだけを意識しながら番組を見たことがあったが、10分もたたないうちに挫折し、ゲストに意識が移り、茂木健一郎の存在を忘れてしまった。
    「プロフェッショナル」での茂木健一郎は、完全に保護色に染まっている。

    本とテレビの茂木健一郎は、能動態と受動態ぐらい違う。

    ゲストはみな、柔和な笑顔の茂木健一郎の前で口が滑らかになっている。あのイチローだって気持ちよく茂木健一郎の前でしゃべっていた。。
    茂木健一郎は小学生の時から勉強ができたという。そういえばあの聞き方は、優秀で真面目な生徒が授業を受ける時の聞き方に他ならない。

    茂木健一郎の本だけを読んでいる人は、テレビでの自分を殺した姿は意外だろうし、テレビだけ見ている人は、茂木があんな論理的でユニークな自己主張に満ちた文章を書く人だと想像できないだろう。優しそうなモジャモジャ頭のオジサンにしか見えないかもしれない。

    そういえば村上龍も聞き上手だった。20年ぐらい前「Ryu's Bar 気ままにいい夜」という対談番組があったが、村上龍は寡黙で、ゲストの話を受け止める間に沈黙がある。時には沈黙が10数秒にわたったが、村上龍は沈黙のうちに言葉を探るタイプで、反射的に言葉を返さない人だった。

    いや、あれは聞き上手とは呼ばないのかもしれない。あの眉間にシワをよせた村上龍の沈黙は相手と話が合わなかったからなのかもしれないし、何しろ不自然な沈黙のせいで、村上龍の存在が雪原にたたずむカラスのように思いっきり目立った。茂木健一郎とは正反対である。
    とにかく「Ryu's Bar」は不思議な対談番組だった。

    ところで最近、私は髪を伸ばしたくなった。ハゲでデブの私が髪を伸ばしたら、体型はデーブ大久保、髪型は渡辺久信というとんでもない容姿になるので実行に移せないのだが、もし髪があったら茂木健一郎みたいなチリチリパーマの髪型にしたい。歳を取って白髪が増えたら立花隆になるし。知的な髪型ではある。
    | 映画テレビ | 20:22 | - | - | ↑PAGE TOP
    映画「ダイ・ハード」
    0
      「ダイ・ハード」は言わずと知れた、アクション映画の最高峰だ。少なくとも俺は、これ以上のアクション映画は見たことがない。
      (あったら誰か教えてくれ)

      「ダイ・ハード」は俺が大学1年生の時に劇場で見て、あまりに面白くてぶっ飛んで「こんな映画撮りてえ」と興奮状態になり、俺のサークル「早稲田大学映画研究会」で熱く語りまくったら、先輩や同級生から冷めた目で見られた。

      大学の映画サークルって、今はどうか知らないが当時は「芸術系」の映画が崇拝され、ゴダールやタルコフスキーや小津を語る者が上等とされ、俺のように「ダイ・ハード」がスゲエなんて言ったら、ちょっと小馬鹿にされるような風潮があった。

      「ダイ・ハード」のあらすじを言うと、ハイテク高層ビルがテロリスト集団に乗っ取られ、たまたまビルに居合わせた警察官がたった1人で、頭を駆使しながらテロリストと戦うという話である。

      冷静沈着な悪役と、運の悪いふつうの警察官が、お互い頭脳をフルに働かせ、高層ビルで鬼ごっこかくれんぼをするのだ。

      警察官を演じるのは、まだ無名で、この映画でスターの座を得たブルース・ウィルス。映画の題の'DIE HARD'とは「死ぬのがハードな奴」すなわち「なかなか死なない奴」という意味である。

      ブルース・ウィルスは四面楚歌の中、「どうしてオレがこんな目に合わなければならないのか」とボヤキまくる、等身大のヒーローとして描かれている。等身大だから観客が感情移入しやすい。
      同じアクション物でも、観客は「ターミネーター」の超人シュワちゃんに感情移入したりはしない。

      また「ダイ・ハード」は効果音がいい。高層ビルの50階・60階にいると、不気味な静寂を感じる。高層ビルの静寂感は、人類が高層ビルを建てる技術を持つようになってから生まれたものだが、そんな現代的な静寂さを、効果音で表現する技術は秀逸だ。
      効果音の素晴らしさは映画の緊迫感を高め、つねに観客に「主人公やテロリストは、危険な高いところにいますよ」と意識させる。

      そして何よりも、「ダイ・ハード」は脚本が素晴らしい。映画の80%は脚本で決まるというが、この脚本は特に凄い。
      主人公にとんでもないピンチを与え、そのピンチを「こんな方法があったのか!」と爽快極まりない解決法で脱出させる。頭の良すぎる脚本である。

      例をあげると、高層ビルの上の階では、テロリストとブルースウィルスの壮絶な流血の戦いが起こり、死体が転がっている。
      ブルースウィルスはロス市警に救助を求めた。しかし、警察官がビルの下まで来ているのに、ハイテクビルの外からは中の惨状はテロリストの策により全然わからず、間抜けな警察官は引き返そうとする。ビルの上でイライラするブルース・ウィルス。

      そこでブルース・ウィルスは、ビルの高層階で修羅場が起きていることを知らせる、絶好のアイディアを思いつく。誰もがビルで流血の惨事が起きていることに一発で気づくアイディア。どんなアイディアかは、映画を見てほしい。

      とにかく「ダイ・ハード」は面白い。見ていない方は絶対に見てほしい。
      俺も1年に1回は必ず見ている。レンタル屋に並ぶ新作にあまり感動できず、「最近映画が面白くない。話に集中できない。歳を取ったんだなあ」と映画熱が冷めかけそうになった時「ダイ・ハード」を見返すと、「ああ、これこれ、これなんだよ!」と、もう10回以上は見て、ストーリーどころか細部も暗唱しているのに興奮する。

      まだ「ダイ・ハード」を見ていない人は幸せである。
      | 映画テレビ | 13:48 | - | - | ↑PAGE TOP
      140万円の授業料の塾
      0
        僕の塾で、小4から高3まで通ってくれた生徒は、総計でどれくらいの費用を僕に払うのか、ちょっと計算してみた。

        総額でだいたい、130万から140万ぐらいだろうか。
        中学1年から高3までだったら100万前後、中学3年間だけなら60万ぐらいか。

        うちの塾は兄弟塾生は授業料半額だし、講習会の費用も取ってないから、他塾と比べて安い方だとは思うが、それでも結構な金額になる。140万とはすごい金額だ。

        塾とは親から「命より大事な子供と、命の次に大事なお金」を預かっている職業である。
        小4からなら9年、中1からなら6年。これだけ長期間にわたって信用されて、私の塾に通ってくれていることに、深く感謝しなければならない。

        僕は素直な心が好きだ。純粋な上昇志向が好きだ。勝ちたいと素朴に思える子が好きだ。ありがたいことに、そんな素晴らしい子ほど、僕を慕ってくれる。誰かが僕の塾にやってきて、生徒の顔を見ただけで、僕の塾が健全な良い子が揃った塾だとわかってくれるはずだ。

        小学生から高校生まで教え、生徒とつき合いが長くなると、「どうしてこの子からお金を取らなければならないのか?」と疑問が湧いてくる。師弟関係が長く深くなると、金銭的な関係ではなくなってくる。

        でもお金をもらっているからこそ、責任感が生まれる。刺激がある。もし無料でで教えたなら、どうしても僕の心の中に甘えが生まれてしまう。「どうせタダなんだし」と一瞬でも思ったら負けだ。

        だから浪人生だけは、不合格になったのは僕の責任なので、テキスト代も一切受け取らず無料でやっているが、高3まではキチンと授業料をいただくことにしている。

        さて、日曜日にうちの塾の広告が出る。また新しい出会いがある。

        入塾面接の時、自分から「お願いします」と元気に挨拶して、ちゃんと「はい」と返事できる笑顔のいい子だったら、「こんないい子が俺の教え子になるのか」と狂喜し武者震いする。なんだかお見合いで、意中の人と出会ったようなウキウキした気分になる。

        また、元気ハキハキ系でなくても、シャイで自分を表現するのが下手だが、チラリと覗かせる内面が面白そうで、笑顔にニュアンスがある子も素晴らしい。
        きちんと子供を立派に育て上げた親から、僕が認められたような誇らしい気分になる。

        新入塾生と、受験までどんなドラマが待っているか、ワクワクする。
        | 硬派な教育論 | 21:33 | - | - | ↑PAGE TOP
        尾崎豊の抜群な歌唱力
        0
          以前、尾崎豊とミスチルを比較した記事を書いた。
          今日は尾崎豊の宣伝をします。

          もし10代後半から20代前半ぐらいの若い方で、尾崎豊を聴いたことがない人がいたら、だまされたと思って聴いてほしい。

          尾崎豊はJPOPなのに、歌詞が全然ポップではないし、とてもヘビーだ。対照的に尾崎豊のメロディーはわかりやすく、いわゆる売れ線の曲なのだが、シンプルなメロディーに重い歌詞が乗っている。聴きやすいけど、深みにはまると怖い。

          また、今となっては尾崎豊の覚醒剤での変死の事実が重過ぎて、死の匂いを感じることなしに尾崎豊の曲は聴けないけど、一度は尾崎豊の世界に浸かってみてほしい。

          尾崎豊は歌が絶対的に上手い。自己主張は強いが、誠実で哀しいカリスマ性に満ちあふれている。尾崎豊の曲を聴いている瞬間の私の映像を写真に撮れば、きっと口が間抜けな半開きになっているはずだ。

          もし私がレコード会社の社員で、ライブハウスで尾崎豊が弾き語りしているのを聴いたら、すぐに携帯電話で上司に「すごく歌のうまい若者をみつけました!」と興奮状態で報告し、楽屋に行って尾崎豊に「あなたと契約したい。お願いします」と、われを忘れて頼み込むだろう。

          生涯でたった1度のテレビ出演となった「夜のヒットスタジオ」での「太陽の破片」の映像を貼っておく。私の言うことが誇張ではないことがわかるはずだ。



          またCDで尾崎豊の凄まじい絶唱を味わいたければ、「Forget-me-not」を聴いてほしい。高2でこの曲を初めて聴いた時、全身に鳥肌が立ってニワトリになってしまいそうな気分だった。なぜだか「超絶」という熟語が、頭に浮かんできた。

          「Forget-me-not」をカラオケで歌うのは勇気がいる。尾崎豊本人以外は歌ってはいけない曲だと思う。尾崎豊のトリビュートアルバムで槇原敬之が「Forget-me-not」を歌っていたが、やめてくれと言いたくなった。
          (マッキーは好きだけど。逆に尾崎豊が「どんなときも」や「世界で一つだけの花」を歌ってはならない)

          尾崎豊の好きな曲、ベスト10を挙げる。

          1.シェリー (やっぱりね)
          2.Forget-me-not
          3.OH MY LITTLE GIRL
          4.街路樹
          5.I LOVE YOU
          6.太陽の破片
          7.闇の告白
          8.卒業 (♪夜の校舎窓ガラスこわして回った)
          9.路上のルール
          10.15の夜 (♪盗んだバイクで走り出す)

          最後に、この歌詞を味わってもらいたい。

          「僕が僕であるために」

          心すれちがう悲しい生き様に
          ため息もらしていた
          だけど この目に映る この街で僕はずっと
          生きてゆかなければ
          人を傷つける事に 目を伏せるけど
          優しさを口にすれば 人は皆傷ついてゆく

          僕が僕であるために 勝ち続けなきゃならない
          正しいものは何なのか それがこの胸に解るまで
          僕は街にのまれて 少し心許しながら
          この冷たい街の風に歌い続けてる
          | 音楽批評の部屋 | 23:18 | - | - | ↑PAGE TOP
          阪神ファンはチキン
          0
            阪神優勝時に、道頓堀に飛び込む阪神ファンはつくづくアホだと思う。

            あのドブ川に飛び込んだ阪神ファンは、職場で学校でネットで「オレは道頓堀に飛び込んだぜ、エッヘン!」と自慢してるのだろうが、もはやあれだけ大勢の人間が飛び込むと、独創性もユーモアもなく、群集心理丸出しで、なんともイタイ。

            確かに最初に飛び込んだ人は勇敢だった。カーネルサンダースを投げ込んだ人はブッ飛んでいた。ユーモア満点だった。でもあとは、単なる真似しいに過ぎない。

            「大阪城を建てた人は大工さん」と最初に発想した子は偉い。
            でも真似して勝ち誇ったように、「大阪城建てた人知ってる?秀吉じゃないよ。大工さん!」と大人をからかうガキが愚かなのと同じことだ。

            飛び込む奴等が多いから橋のフェンスが高くなった。彼らの行為は公共事業を無駄に増やしただけじゃないか。

            警察も甘い。
            中国の天安門事件の時、学生を銃で掃射したのは北京の師団ではなく、辺境警備に携わる少数民族の師団だったらしい。
            都市の軍人は学生に対して同情的になりがちだからという、李鵬ら幹部の「配慮」が残虐な結果を生んだ。

            大阪府警は阪神ファンが多いから、道頓堀川のバカ群集に甘いのだろう。
            だったら広島県警に警備を任せてしまえばいい。
            弱小球団に甘んじているカープファンの恨みと、金本と新井を取られた怨念で、厳しい警備が可能だろう。広島県民の警察官のピストルから銃弾が飛び、道頓堀川はカープ色に染まる。

            阪神ファンも、あんなドブ川にこだわってないで、関西には明石海峡大橋という真新しい立派な橋があるのだから、あそこから飛び込めばいい。
            道頓堀川より明石海峡の方が水はキレイでしょうに。明石海峡にはタイさんもタコさんも元気に泳いでるしね。
            | 野球スポーツ | 00:14 | - | - | ↑PAGE TOP
            塾閥
            0
              中学受験で成功を収めるにはどうするか?
              「超できる子」が難関校をめざすなら、東京や関西の場合だったら、絶対に大手塾を選ぶことである。私が親なら、自分の子供が御三家か筑駒あたりを目指せる能力があると判断すれば、大手にしか子供を入塾させない。

              それは決して中小規模の塾の講師の力量が劣っているからではない。「知る人ぞ知る」小さな塾がある。こういう塾の講師は自分の名前を背負って立っている訳だから、教える能力はずば抜けたものがある。こうした有能な零細塾の先生が、自分の全知全能を賭けて、執念込めて少人数の子供を引き上げる。こういうケースが実は一番合格可能性が高い。

              難関中学に合格するだけだったら、必ずしも大手の方が、合格可能性が高いとは限らない。

              じゃあなぜ、御三家や灘や甲陽をめざす子は大手塾がいいのか?
              それは多くの友人・ライバルに出会えるからだ。友人やライバルの存在が、子供に強い刺激を与えるのである。

              難関中学を狙う子は、小学校ではたいてい1番である。しかし塾に通うと自分より凄い奴がいる。自分の力は塾の成績表が残酷に教えてくれる。塾に通う前に無意識のうちにムクムクと育っていた天狗の鼻など、冷酷な数字の羅列によって、ねじり折られてしまう。
              たとえ偏差値70でも、順位が147番だったら、上にまだ146人も自分より凄い奴がいるんだと、子供は悔しい思いをする。

              塾に通いはじめは、子供は偏差値などという得体の知れない数字よりも、順位の方が気になる。そして、自分より上にいる同級生の顔、特に成績表の1番上にドドンと鎮座している奴の顔を見たいと思う。

              大手進学塾で一番の凄い奴とは、絶対に「生」で会わなければならない。目でそいつの姿をしかと見届けなければならない。そして同じ部屋で、同じ授業を受け、同じ空気を吸わなければならない。



              たとえば、子供が小学校5年からはじめて大手塾に通い始める。
              授業が始まる。子供の視線は一斉に講師の方へ。

              テストの順位表が配られる。順位表を見る。
              1位に滝重暢之という名前がある。
              苗字はタキシゲと読むのだろう。暢之はいったいどう読むのか?

              凄い名前だ。賢そうな名前だ。自分はまず名前で負けている。
              どうやらそいつは、同じ校舎にいるらしい。

              休憩中に、1番レベルの高いクラスを通り過ぎる。
              お調子者の誰かが「あれが滝重だ」と指さす。

              顔を見る。
              白皙痩身で猫背の少年だったら、裕仁天皇のような神々しさ
              髪ボサボサの奇怪な目をした落ち着かない少年だったら、アインシュタインの独創性
              小柄でちょこまかした笑顔の良い少年だったら、太閤秀吉の機知と棟梁運
              頭のでかい巨漢だったら、西郷隆盛の貫禄
              額の広い奇相の少年だったら、大村益次郎の明晰さ

              どんな容貌であれ、容貌に意味を探る。容姿や体格や髪型や語り口調と彼の頭脳の関連性を探る。

              しかし、こちらが勝手に神格化偶像化しているのとは裏腹に、塾で1番の滝重くんは普通の子供みたいに誰かとしゃべっている。
              あいつ、しゃべるんだ。笑うんだ。
              彼の子供らしさに拍子抜けし、安心する。



              さて、中学受験塾で難関中学を目指す小学生が最も意識するのは、実は成績が1番の奴ではない。
              意識するのは最初だけである。
              勉強が死ぬほどできる人間に対しては、自分との差を痛切に感じてしまう。だから神棚に飾ってあるご本尊のように、そのうち、まるっきり意識しなくなる。あまりにも自分と能力が違いすぎると、存在を笑ってしまうしかない。
              成績が1番の奴は、塾内でスターにはなるが、自分が「取って代わる」対象には、絶対なり得ない。

              受験時代一番強く意識するのは、成績が同じぐらいの身近なライバルである。こいつにだけは負けたくないという、同級生が現れる。
              当然気楽に口のきける仲のいい友達もできるが、心の中で1番強く意識している奴とは、気軽におしゃべりなんかできない。
              基本的にお互い仲良く話したりはしないし、もし口をきかなければならない状況になっても、会話には気まずくぎこちない雰囲気が漂う。
              気楽に話せる友人は呼び捨てなのに、ライバルに対しては「××君」と、クン付けで呼んでしまうのだ。

              そんな奴と切磋琢磨しながら競争する。あたかも、キャプテン翼の勉強版のような感じで。子供の競争はフェアで健全である。

              そして自分もライバルもめでたく志望校に合格する。
              小学生時代にお互いの能力を認め合っているのだが、強く意識し合い過ぎてろくに話しかけたりしないライバルと、同じ中学校に通う。

              そして、受験が終わり緊張が解け、思い切ってどちらかが話しかける。
              「合格したの?」「そうだよ」「よかったな」「そっちこそ」
              そしてお互い、受験時代の苦労話や、親のこと、兄弟のこと、趣味のことなど、堰を切ったように語り合う。

              そして2人は親友になる。
              現役ボクサー時代には意識過剰のあまり親密に話すことなんか考えられなかったジョーと力石が、天国で深い付き合える無二の親友になるようなものだ。

              中学受験で子供にかかる負荷は、周囲の大人の予想以上に大きい。子供は平然と勉強しているようでも、内心は異常な不安に満ちている。

              志望校に不合格だったら親が自分を見捨てるのではないか。塾の先生が急に冷たくなるのではないか。学校のクラスメイトが「あいつ中学受験落ちたんだよ、ばーか」とはやしたてるのではないか、そして何よりも、不合格になったら、自分を自分で汚らわしい卑小な存在だと思ってしまうのではないか、落ちた自分を許せなくなるのではないか、そんな心配をしている。

              そんな同じ苦労を背負いながら、ライバルとして頑張ってきた。
              誰よりも自分の苦労をわかってくれ、誰よりも自分を認め挑戦してくれた中学受験塾でのライバル。戦いすんで、仲良くなるのは当然だ。

              こんな風に小学生の時はライバル意識を燃やして、ろくに口もきかなかった塾のクラスメイト同士が、同じ中学校に合格したら進学先の中学校で無二の親友になるというケースは非常によくある。

              そしてその友達は、中学・高校・大学と進んでも、友人であり続ける。
              大人になっても、友人がそれぞれ財務省・三井物産・東京三菱UFJ銀行・NHK・弁護士・東大病院と、小学生のうちから、エリート人脈を築き上げることができるのだ。

              まだ年端の行かない小学生時代に、苦労を共にした戦友。
              学閥ならぬ、塾閥である。これこそ大手塾の強みである。
              | 中学受験 | 20:41 | - | - | ↑PAGE TOP
              自習室とメイドカフェ
              0
                自習室に生徒が集まる塾の、十中八九はいい塾だ。
                うちの塾がいい塾かどうかはともかく、結構自習室に子供はやって来る。

                うちの塾では、現在深夜1時ごろまで自習室が開いている。

                子供も友人達と切磋琢磨しながら勉強するとやる気が出るし、塾講師も子供に囲まれていると結構楽しいものなのだ。

                自習室の常連の子の挨拶が面白い。
                彼らは塾から家に帰るとき、「さよなら」ではなく「行って来ます」と挨拶して帰るのだ。塾を自分の家だと思っているらしい。まさに「塾の子」である。
                私もいい気になって「行ってらっしゃい」と挨拶を返す。

                逆に彼らが塾に現れたとき、私はふざけて「おかえり」と言う。彼らも「ただいま」と当然のように返事をする。
                塾講師と塾生が親密になると、こんな挨拶が普通になってくる。

                でも、来た時に「おかえり」、帰る時に「行ってらっしゃい」と客に向かって挨拶する業種は、塾とホテルとメイドカフェぐらいじゃないだろうか?

                「お帰りなさいませ、ご主人様ピンクハート
                「行ってらっしゃいませ、お嬢様星
                | 塾の様子ガラス張り | 16:45 | - | - | ↑PAGE TOP
                尾道は大学生アルバイト講師不毛地帯
                0
                  尾道・向島は、大学生塾講師アルバイト不毛地帯だ。
                  優秀な人材は東京横浜や京阪神の大学に取られてしまって、広大や岡大も遠い。講師募集が異常に難しい地域だ。京都のように大学生があふれている地区とは正反対の状況である。

                  優秀な大学生なら、教員免状を取った生半可な「プロ」の教師を凌駕する力を持っている。

                  たとえば九大のS君。
                  彼は頭の回転が速く、敏腕のタイピストがキーを打つ早さに匹敵するスピードでしゃべる。とにかく物凄いおしゃべりなのだが、声にエッジが立っていて、また妙な関西訛りがあり、落語家みたいで聞きやすい。

                  彼が落語家デビューしたら、小朝のように猛スピードで真打ちに昇進し、大物落語家の令嬢と結婚し、落語界の出世街道をひた走るだろう。

                  冗談はともかく、S君はいま小学校か中学校で、理科授業の助手のアルバイトをやっているそうだが、彼は教壇に立ってしゃべらずに、黙々と実験の手伝いでもしているのだろうか。

                  もしそうなら、S君みたいなマシンガントークが炸裂し、落語家の素養がある男の口を封じるのはもったいない。
                  S君が助手を務めている学校の先生の授業が面白ければいいのだが、もし話下手でお経のような授業をする先生だったら、S君と選手交代した方が生徒のためだ。

                  S君を学校現場で黙らせておくことは、若き日の談志や志ん朝を高座に上げずに、眠らせておくのと同じくらいの才能封印である。



                  また、阪大のK君が私の塾で働いた時、彼は高校化学を教えたのだが、これが素晴らしかった。
                  K君は小学生の時から興奮すると少し早口になり、顔が紅潮し目が据わり、どういうわけか鼻の穴がぷっくり膨らむ面白いクセがあり、果たして授業で落ち着いてしゃべれるのか少しだけ危惧したのだが、実際にやってみると、生徒の頭に沁みやすいように言葉を選びながら、丁寧にテキパキ話し、堂々と授業をこなしていた。

                  おまけに彼の授業は、教えるツボをしっかり押さえているし、同時に化学の楽しい雑談を織り交ぜた、本論と雑談を行ったりきたりの、メリハリのあるハイレベルな授業だった。

                  それを見て私が感動してほめたら、K君はこう言った。

                  「僕は授業というものを複線でとらえてます。1本の線路は化学の教科書的内容で、もう1本の線路は化学の小ネタ、雑学です。まじめな内容だけだと面白くなく頭に入りにくいし、雑学だけだと面白いだけの授業になってしまいます。だから僕は2本の線路を意識し、行ったり来たりしながら教えています」

                  これが教師初体験の大学1年生の言葉だろうか。どう考えても、ベテラン講師の珠玉の金言にしか聞こえなかった。頼もしすぎるぞ。



                  「どこでもドア」があれば、S君とK君に福岡と大阪から週2回ぐらい授業に通ってもらい、私は楽隠居できるのに。
                  | uniqueな塾生の話 | 22:01 | - | - | ↑PAGE TOP
                  十五の夫
                  0
                    うちの塾の中3に、3年前堀部君という天然ボケの面白い子がいた。
                    通称は「ほりべえ」

                    授業中は「ぼーっ」と虚ろな目をして、私の話を聞いている。
                    口は半開きで、よだれが垂れてきそうだ。

                    彼は顔が面白い。
                    イースター島のモアイ像にも似ているし、道端でたたずむ赤いよだれ掛けを首に巻いた地蔵にもそっくり。

                    そんな顔なのにもかかわらず、彼のハンゲームのアバターを見せてもらったら、これが凄い。実物は地蔵なのに、アバターは山下智久みたいなのだ。
                    私は現物とアバターのあまりの格差に、腹の筋肉がよじれるくらい笑った。

                    アバターのおかげで、堀部君は日本全国に女の子のメル友が何人かいるという。
                    もちろんメル友の女の子は、堀部君のルックスをアバター通りのイケメンと勘違いしている。堀部君の顔の現物は見たことがない。

                    また、彼は「吉本に行け」と言われる典型的なタイプの子だが、漫才をして話術で笑わせる方では決してなく、吉本新喜劇で舞台に立つだけで笑いを取るタイプだ。「笑わせる」のではなく「笑われる」タイプの芸人である。

                    彼が芸人になったら、瞬間風速的に有名芸人になるチャンスはある。
                    4年前のテツ&トモ、3年前のギター侍波田陽区、2年前のレイザーラモンHG、そして去年の小島よしおと、毎年一発屋芸人が出ているが、堀部君もそんな系譜に連なる素質を持っている。

                    ただ堀部君は話術がなくキャラ勝負なので、3ヶ月以上は絶対に人気は長続きしない。

                    だから私は安全策として、「笑点」の大喜利レギュラーの後釜に彼を据えたらいいと考えている。芸名は「笑福亭ほりべえ」にして、現在のレギュラーメンバーの後継者の座布団にすわるのだ。
                    いったん「笑点」のメンバーになってしまえば、死ぬまでその座を確保されたも同然だ。「笑点」のメンバーは終身雇用制の典型だ。



                    さて入試2ヶ月前、社会の入試問題の授業で、遺産相続の分野の復習をしていた。配偶者は遺産をどれくらいの割合でもらえるか、という箇所。

                    堀部君は社会が苦手。堀部君は授業中、口を半開きにして、私の話に関心なさそうに「ぼーっ」としていた。

                    私は彼に「配偶者とは何だ? 説明してみろ」と質問しようとした。たぶん彼は配偶者の意味を知らないだろう。

                    しかし、こんなありきたりの発問では面白くない。私はイタズラ心をおこして、こう堀部君に聞いた。

                    「堀部、お前、配偶者いるか?」

                    彼は私の想像通り「配偶者」の言葉の意味をすっかり忘れたらしく、答えず黙ってニコニコしている。他の生徒達も、堀部君の珍答を期待してクスクス笑っている。

                    あとは予想通りの展開。

                    「堀部、イエスかノーぐらいは言えるだろ?」

                    堀部君は、爺臭い顔でしばらく考えたあと、私の期待通り「イエス」と答えた。


                    | uniqueな塾生の話 | 19:02 | - | - | ↑PAGE TOP
                    教え子じまん
                    0
                      塾ブログは数多いが、私の場合他塾の先生と相性の良し悪しが激しく、私の方から一方的に絶交したり、仲が良かったのに疎遠になったり、「この人とは合わない」と決めつけて最初から口をきかなかったり、勝手に生理的嫌悪感を抱いていたり、とにかく私は小沢一郎みたいな性格の男なので、人間関係のトラブルが起こりやすい。

                      私は他塾のブログを批判的に見るクセがあり、読むと頭の中が毒舌の嵐になる。他者批判がモラルに反するのは痛いほどわかっているのだが、頭の中に自然と湧き出してしまう悪口だけはいかんともしがたく、処理に困ってしまう。

                      ときどき、ゴジラのように毒を盛大に吐き出してみたいという衝動に駆られる。しかも私が他者攻撃をすると「ユーモアにあふれ、毒がほとばしって面白い、もっと書け」という催促が結構あったりする。だけども、あまり調子に乗って他者攻撃をすると、最終的には自分に降りかかってくるので、我慢に我慢を重ねて自重している。

                      ただ、私の脳内から悪口が奔流のように噴き出す大嫌いなブログでも、生徒の話になると話は別だ。
                      個人塾でも大手塾でも、どんなに私が軽蔑し嫌い「この人はちょっと変なのではないか」と敬遠する塾長でも、その先生が自分の教え子の話をしていると、目を細めてしまう。

                      塾長に問題があっても、その塾で学んでいる子供はかわいいものだ。私がその塾長を嫌いだとしても子供には罪がない。
                      生徒のことが頻繁に書かれ、生徒の言動が生き生きと描かれたブログを見れば、その塾は「生きている塾」だと思う。

                      やっぱり、子供は素晴らしいものだ。どんなに塾長がグロテスクでも、そこで頑張って学ぶ子供はかわいい。
                      哺乳類の赤ん坊は、食べてやりたいほどかわいい。カバでもブタでもマントヒヒでも、成長したらブサイクだが、生まれたての赤ちゃんは愛らしい。

                      とにかく私は、塾の先生が生徒の話をする記事が大好きだ。塾長が手塩にかけて育てた生徒を、誇らしげに自慢するのを聞いていると、その先生に対する嫌悪感がいつしか消え、頭の中に詰まっていた悪口毒舌は一歩後退する。

                      ただ他塾の先生が、あまりに生徒の自慢話をしていると、こっちも絶対に負けられない。ライバル心がメラメラと燃える。負けずに自慢話をしたい。
                      私は自分が認めている教え子の自慢なら、10時間でも20時間でもできる。「その子のいいところを原稿用紙500枚で埋めなさい」と言われたら、10日で悠々と書けるだろう。

                      もし私が自分の塾の生徒の自慢話をして、他塾の先生が「いやいや、うちの塾生の方が凄いよ」と返したら、私はエキサイティングして「いや、俺の教え子の方が大物だ、モノが違う」と全知全能を賭け、表現技法を尽くして反論するだろう。そして、もっともっとたっぷり塾生の自慢ができるように、その生徒を鍛え直すだろう。

                      こんな、ブログを通じてお互いの生徒を高めあう、個人塾どうしの健全なライバル関係は素晴らしいと思う。


                      | uniqueな塾生の話 | 20:28 | - | - | ↑PAGE TOP