猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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大学受験学参ソムリエ 7 「解体英熟語」
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    僕がもし早慶や関関同立をめざす受験生で、英熟語集を1冊買うとしたら、「解体英熟語」を選ぶだろう。デザインも原色なのに知的で趣味が良く、本の分厚さに信頼感があり、掲載された熟語は984個と多く網羅性がある。

    Z会の「解体英熟語」、英熟語の成り立ちを緻密に分析し「解体」した本だから「解体英熟語」という名前にしたのかと思いきや、実は本にミシン目がついていて、バラバラのカード式に「解体」できるので、この名がついたのだという。意外なネーミングだ。

    この「解体英熟語」はミシン目を破り解体して使う「カード型」と、分厚いペーパーバックのような「ブック型」の2種類がある。内容はもちろん同じ。好きな方を使えばいい。ただ「カード型」はミシン目を切る解体作業がたいへんなので、覚悟してほしい。




    「解体英熟語」は解説が素晴らしい。
    1つの熟語に対して3〜4行の解説(「コメント」と呼んだほうがいいかもしれない)がついているが、これがためになり、読ませる。

    例を挙げてみよう

    ---------------------------------------------------


    297.wear out 〜を疲れさせる
    put onが着物などを単に着る動作を表すのに対し、wearは「一定期間身につけている」状態を表す。ここから「着古す」→「すり減る;すり減らす」という意味が生じた。

    312.break off (話・約束など)を急にやめる
    break の基本的な意味は「突然の力でばらばらにする」である。この「突然の」というところを覚えておけば、他の重要熟語も覚えやすい。

    435.hold one’s tongue 黙る
    hold の基本的な意味は「〜をある状態に保つ」。ただし、この熟語に見られるように、「制御した状態を保つ」という意味でも使われているので、注意したい。hold one’s mouth ではない点にも注意しよう。

    558.be indifferent to〜 〜に無関心である
    be different from〜(〜と異なる)とこの熟語の間には、実は大いに関係がある。「〜と異なる」のように区別をつけるのは、少なくとも「関心がある」ということなのである。つまり「区別をつけない」から「無関心だ」と考える。

    654.on time 時間通りに
    言い換えると、punctuallyとなる。このonは‘時間的な接触’を表す。たとえば「彼は時間通りに8時に来た」という場合には、時計の針がピタッと8に接触しているはずだ。

    722.at work 働いている、仕事中で
    このat はat table (食事中で)のat と同じで、「〜に従事して」という意味。心を一点に(=at)集中しているのである。

    788.quite a few かなり多くの
    どうしてこれが「多い」という意味になるのかと誰もが一度は不思議に思うだろう。実はこれは反語表現である。


    ---------------------------------------------------------------------------

    ご覧のように解説には単語本来の意味や、前置詞のニュアンスが散りばめられ、読み物として面白い。本をひも解くうちに熟語が頭に自然と定着していく。英語の言語感覚も身につく。熟語でアドバンテージをつけたい受験生にはおすすめ。

    僕は「解体英熟語」の解説をエッセイとして読み流すのが好きで、よくカバンに携帯している。

    ところでZ会に「速読英単語」など、大量の英語参考書を執筆している「風早寛」という人は、プロフィールがどこにも書かれていない、謎の人物である。都立高校の先生だという噂もあるが、全盛期の伊藤和夫をほうふつさせる質の高い参考書の量産ぶりから、複数の人物の合同ペンネームだとも考えられる。

    テレビの「水戸黄門」も、複数の脚本家がシナリオを書いていて、合同のペンネームが「葉村彰子」だったのだが、「風早寛」先生も、Z会の複数の英知の集合体なのだろうか?

     
    | 大学受験学参ソムリエ | 17:50 | - | - | ↑PAGE TOP
    大学受験学参ソムリエ 6 「入門33パターン はじめる!英作文」
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      英作文、最初の一冊はこれ

      いま英語の人気講師といえば、安河内哲也氏である。
      安河内氏の参考書・問題集のタイトルを並べてみると、「超基礎がため わかる!英文法」「安河内の英語をはじめからていねいに」「安河内のはじめてわかる英文法」と、英語の勉強を自分で始めるにあたって、苦手意識があるので基礎から学びたい受験生のために書かれた本が多い。

      安河内氏登場以前の参考書問題集は、良くも悪くも「かかってきなさい」的な難しい本が幅を利かせていた。いきなり受験勉強初心者に、生爪剥がして崖をよじ登ることを要求した本が良書とされていた。
      しかし安河内氏の本は、受験勉強に不安を感じている生徒に対して、崖をよじ登るのではなく、緩やかなスロープを一歩一歩踏みしめれば高みに達することを教えてくれる、良心的なテキストである。

      たとえば英語が苦手な受験生は、「大学受験 英文法レベル別問題集 1.超基礎編」あたりから始めれば、挫折しないのではないか。高校で英語が苦手になった生徒は、中学内容の文法が抜け落ちているケースが多い。
      この「超基礎編」は、中学内容の文法がメインで、思いっきり基礎から文法の土台を固めることができる。3〜4回反復して、次の「2.基礎編」につなげていけば、段階的に英文法の力を伸ばせる。
      なお「大学受験 英文法レベル別問題集」シリーズは、他に「3.標準編」「4.中級編」「5.上級編」「6.難関編」の6段階に分かれているので、ステップアップしていけばよい。

      とにかく安河内氏の参考書・問題集は、基礎から応用まで、緩やかなスロープを無理なく踏みしめながら登り詰めていくポリシーに貫かれている。

      では、そんな安河内氏が「英作文」の参考書を執筆したら、どんな本ができ上がるのだろうか?

      英文読解はできるのに、英作文を苦手とする受験生は多い。
      そもそも英語どころか、日本語でも作文は嫌われる。文章を書くより文章を読む方がずっと楽に決まっている。ましてや英語で作文を書くことが難しいのは当然であり、英作文は受験生の厚い壁になっている。

      安河内氏が書いた英作文の参考書には、英作文の苦手意識を取り払う仕掛けが用意されているのだろうか?

      ちゃんと用意されているのである。

      この「入門33パターン はじめる!英作文」は、「和文和訳」の方法が、すべての例文にわたって示されている。ここが新しい。

      「和文和訳」とは、英作文の問題の日本語を、英語の構文に近い簡単な日本語に直す作業のことを言う。

      たとえば「若気の至りで重大な過ちをおかした」という、もしパソコンの翻訳ソフトで試しに訳してみれば、理解不可能な英文にしか変換できないような日本語を、いったん「若すぎたので大きな間違いをした」と直すのが「和文和訳」である。
      ダイレクトに「日本語→英語」では英作文は難しい。「日本語→和文和訳→英語」とワンクッション置く事で、英作文はかんたんになる。

      もちろん今までも英作文問題を解く時、誰もが無意識に「和文和訳」をしてきたはずである。しかしこの本のように意識して「和文和訳」の例文が、わざわざ書かれた本は珍しいのではないか。

      他にも例をいくつか挙げると

      「総理大臣は劣等性だったらしいよ
      →その総理大臣はできのわるい学生だったと言われている」

      「仕事が終わったあとで私に英語を教えてくれる人を募集中です
      →私は仕事のあとで私に英語を教えてくれる誰かを探している」

      「財布も鍵も家に忘れて来ちゃったの?
      →あなたはあなたの財布とあなたの鍵の両方を家に置き忘れたのですか?」

      といったように、そのままでは英語にするのが困難な、生きたウナギのようにクネクネ動いている日本語を、和文和訳でうまくさばいている。

      英作文対策の最初の一冊として、大いに薦めたい。


       
      | 大学受験学参ソムリエ | 17:40 | - | - | ↑PAGE TOP
      大学受験学参ソムリエ 5 世界史/日本史100題
      0
        難関私立受験者の必携書
        「社会クイズ王決定戦」で勝ちたい受験生へ


        私立文系の世界史・日本史は、いわば「クイズ王決定戦」だ。
        国立の2次試験が論述式なのとは対照的に、私立の早慶やMARCHや関関同立の問題の大部分はクイズ形式の一問一答で、細かい用語知識が問われる。
        ここ数年は問題が簡単になったとはいえ、難関私立大学では社会科の問題を逸脱した、雑学と呼んで差し支えないほどの難問が出る。

        私立の世界史日本史の入試が「クイズ王決定戦」とするなら、大会を想定した予想問題集がほしい。そこで予想問題集にうってつけなのが、Z会の「実力をつける 世界史/日本史100題」である。

        「世界史/日本史100題」の構成は、各国史・時代史・通史・テーマ史ごとに100の大問に分かれ、たとえば世界史のタイトルをみると「10.東南アジアの古代文明」「18.唐〜元の社会と江南開発」「40.オランダの独立と繁栄」「65・洋務運動の挫折と中国分割」「78.インド国民会議派」「97.ポーランド史」といったぐあいに、他の参考書ではあまり陽の当たらない(しかし入試には頻出する)テーマをしっかりおさえた、心憎い配列になっている。

        「世界史/日本史100題」は問題が難しい。知識を1からインプットする問題集ではない。社会が得意な受験生が難問に体当たりしてアウトプットし、「クイズ」を楽しみながら最強の力をつける問題集である。
        解説もくわしい。難関私立大学には、解説の記述からもよく出題される。




        ただ、難関私立大学の受験生以外にはおすすめしない。間違ってもセンター試験対策に使ってはならない。社会嫌いの子にとって、この問題集は苦痛以外の何者でもない。消化不良で吐き出してしまうだろう。

        僕の仕事は塾の講師で、政治や歴史に関する雑談を授業や日常会話でよくするのだが、政治や歴史に関する話題に積極的に興味を示してくれる生徒にしか、この本は薦めていない。
        社会科に対して強い好奇心を持つ受験生には最適な本だ。
        社会が好きな受験生は難しい問題集にチャレンジしたがるし、わからない用語が散りばめられていると逆に燃える。彼らは「こんなの知らないぞ」と口では文句を言いながら、しっかりその場で頭に刻み込んでいるのだ。
        世界史・日本史が好きな受験生を、この本は知的にエキサイティングさせる。

        とにかく、世界史・日本史が勝負科目で、ひと通りの基礎事項は身についていて、さらに難しい用語暗記を「楽しみたい」受験生にお勧めする。この本をこなせば、難関私立の問題は8割取れると思う。

         
        | 大学受験学参ソムリエ | 17:30 | - | - | ↑PAGE TOP
        大学受験学参ソムリエ 4 「基礎英文問題精講」
        0
          オーソドックスで真面目な英文解釈参考書

          僕は20年以上前、開成高校の生徒だったが、僕より1学年上の英語は中原道喜先生という方で、参考書や問題集を数多く執筆されている方だった。
          中原先生は学究肌の静かな物腰で、生徒を怒鳴る光景が全く想像できないような先生で、いつもモノラルのテープレコーダーを携帯されていた。僕もチラッと授業を拝見したことがあるが、淡々とした授業風景なのに、生徒達は中原先生の「凛」としたオーラを嗅がされ、誰もが真面目にノートを取っていた。
          「基礎英文問題精講」は中原先生が執筆された、英文解釈のロングセラーである。本屋の英文解釈のコーナーには、中原先生が引退された現在も、この本が必ず平台に置かれている。

          「基礎英文問題精講」は有名な本であるがゆえに、批判の対象にされやすい。
          まず解説が短い、丁寧でない、いまどき赤本の解説でもずっと詳しいじゃないかと受け取られても仕方ない面もあるし、また予備校講師が書いた新しい本のように、解説の文体がフレンドリーではなく、突き放した印象を受ける人がいるのも理解できる。
          それに「基礎英文問題精講」を昭和の匂いがする、古色蒼然とした参考書とみなす人がいるのも、仕方がないかもしれない。同じく昭和の匂いがする伊藤和夫師の著作は、ケレン味に満ちた日本語の解説が延々と続く派手なタイプの本だが、「基礎英文問題精講」は伊藤師に比べて地味である。
          英語が苦手な受験生が「基礎」の名前にだまされて手に取ったら、問題の難しさと、とっつきにくさで、跳ね返される可能性は秘めている。

          しかし「基礎英文問題精講」は問題量が多く、英語の構文把握力がある程度ついた受験生が、英文和訳の問題をひたすらこなし、ガンガン猛稽古するには最適だ。
          解説は短いがツボを押さえていて簡潔で、解説過剰で、軽躁な感じがしがちな最近の参考書を嫌う受験生には、この無愛想すれすれの簡潔さがしびれる。

          講師にたとえてみれば、最近の参考書(特に予備校系)は、生徒が問題を解いたあとで10分も20分も長話の解説が続く、武田鉄矢タイプだろう。
          逆に「基礎英文問題精講」は訥弁だが、「ここは、こうしたらいい」とワンフレーズでサラリと短く盲点を突く、高倉健タイプの説明だ。
          中原先生のポイントだけを押さえた暑苦しくない説明が、もしかしたら今の受験生の気質に合っているのかもしれない。

          「基礎英文問題精講」の構成は、第1章が「構文編」で英文和訳問題、第2章が「文脈編」で指示語・代名詞の問題。第3章が「応用問題編」である。
          第1章「構文編」の英文和訳問題をガシガシ解くのが「基礎英文問題精講」のメインだが、第2章の「文脈編」も、長文読解に出てくる「thisが示す内容を具体的に日本語で記せ」「itが示すものを具体的に書け」といった、指示語・代名詞の問題がまとめて取り扱われているため、重宝したい。

          「基礎英文問題精講」は初版発行が1982年で、30代40代の塾講師や高校教師はこの本で英文解釈を学んだ人が多いため、教え子に「英文解釈でいい本はありますか」と尋ねられたら、これを薦める人が多い。
          師匠から弟子へ受け継がれる重厚な名著である。




           
          | 大学受験学参ソムリエ | 17:26 | - | - | ↑PAGE TOP
          大学受験学参ソムリエ 3 「英語整序問題の必勝テクニック」
          0
            短期間で英語整序問題対策、内容・分量ともにおススメ

            英語の整序問題(整序英作文)を出題する大学が増えてきた。 センターでも、関関同立(同志社は除いて)でもよく出題される。

            整序問題とは、たとえばこんな問題のことである。

            語句を並べ替え、3番目と5番目に当たる記号をマークせよ。

            I think that(?an earthquake / ?every time / ?more people / ?there is / ?will come to)realize how powerful nature is.

            整序問題は言葉の断片を並べ替える、いわば「英語のジグソーパズル」である。
            整序問題が入試で出題されるのは、受験生が英単語を文章に組み上げる構文力を持っているかどうか、試しやすいからだろう。
            また試験の採点事務上の問題になるが、採点が煩雑な英作文と違って整序問題はマーク式なので、迅速な採点が可能だという事情もある。
            おまけに整序問題は、たいて3番目と5番目といったように2箇所をマークし、両方とも正しくマークしないと正解にならない、競馬でいう「複式」なので、適当にマークしたら正解だったという偶然性はあまり期待できない。だから比較的正しい学力判定が可能なのだ。

            整序問題が嫌いな受験生は多い。
            受験生が整序問題を避ける理由は3つある。

            第1は整序問題の配点が低いこと。
            整序問題の配点比率はたった1割前後、多くても2割弱しかない。
            もし整序問題の配点が4割〜5割と高ければ、整序問題に時間を注ぐ意欲もわいてくる。しかし受験生は多忙である。他にやることは山ほどある。配点の低い整序問題だけに精力を集中できない。

            第2は整序問題の、キャラの立った有名な参考書・問題集がないことだ。
            英文和訳や英作文が苦手なら対策本はいくらでもあるが、整序問題の点数がイマイチ取れない時、どんな対策をしたらよいのか、どんな問題集を買えばいいのかが、よくわからない受験生は多いだろう。

            じっくり探せば整序問題には非常に良い問題集がある。「英語整序問題精選600」(河合塾)や「頻出英語整序問題850」(桐原書店)は名著である。
            ただ、いかんせん問題数が多すぎる。整序問題ばかり600問も850問も解く余裕は受験生にない。

            第3は整序問題が、とっつきにくいことである。
            整序問題が嫌いな受験生には、英文はただ英単語がランダムにズラズラ並んだだけの代物に見える。構文の整頓能力がない。だからこそ整序問題が苦手なわけで、苦手意識から対策が後手後手に回ってしまう。
            英語構文の組み勝て方を知らない受験生が整序問題を解く時は、プラモデルを組み立てるのが苦手な不器用な子供が、パーツの山を目にして途方にくれている気分になるにちがいない。

            さて、僕が調べた限り、整序問題で分量・内容ともに最も手に出しやすい本は「英語整序問題の必勝テクニック」(旺文社)である。
            この本では、1.[問題英文の構造を把握]→2.[選択肢を分析して部品作り]→3.[組み合わせ]の3つのステップで解く訓練をする。
            問題数も練られた問題が200問くらいで、しかも解説が丁寧で、途中ギブアップしないで1冊完走しやすい。

            大学受験の整序問題は、いったんコツさえつかんでしまえば、鉄板のような得点源になる。整序問題は、英文和訳や英作文のように、極めようとしてもなかなか奥義がつかめない問題形式ではない。一定の実力さえつけば、「ジグソーパズル」に熟達した人のように、素早く英語を並べ替えることができる。整序問題で1冊なら、ためらわずに「英語整序問題の必勝テクニック」をお勧めする。

            あとつけ加えれば、整序問題の訓練は英語構文をつかむ訓練になる。
            この本の著者の言う通り、整序問題が素早く正確に解け、整序問題の面白さにはまってしまえば、英文法や英作文の得点力にも波及する。

            関連記事
            英語整序問題をパソコンで

             
            | 大学受験学参ソムリエ | 17:22 | - | - | ↑PAGE TOP
            大学受験学参ソムリエ 2 「英文和訳演習」
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              英文和訳を、予備校のシビアな採点基準で自己採点できる本

              私事で恐縮であるが、僕は20年前、宅浪をして早稲田を目ざしていた。塾や予備校には通っていなかった。赤本で過去問をどんどん自力でこなしていった。
              ただ、私立大学の英語の問題は選択肢がほとんどで、自己採点は簡単にできた。私立大学受験は自学自習に向いていて、宅浪がしやすい。

              しかし国立大学を受験する大学生に宅浪は可能なのだろうか?
              国立2次試験の英語は、英文和訳や英作文や要約問題が多く、解答を見ても自分の書いた答案が正しいのか正しくないのか、どれくらいの点数がもらえるのか、もしかしたら採点に値しない間違った方向性の珍解答なのか、大いに悩むだろう。
              英文和訳や英作文は、塾や予備校の先生に添削してもらうのが一番いいのは、わかりきった話だ。国立大学を受験する宅浪生は添削してくれる人がいない。Z会などの通信教育はこんな時に力を発揮する。

              では、塾や予備校に通わず、通信教育も受けていない受験生は、どうすれば独力で英文和訳の力を伸ばせるのか。どんな基準で英文和訳は採点されるのか。独りよがりの答案に陥らないために、採点基準を知りたい気持ちは強い。

              そんな英文和訳を採点するときの「秘儀」を明確にした参考書が、駿台文庫の「英文和訳演習」だ。著者はかつての受験英語の神様で「英文解釈教室」「ビジュアル英文解釈」の著者である伊藤和夫氏である。
              この「英文和訳演習」は、2〜3行ほどの長さの英文を示し、生徒が書きそうな和訳の答案例を挙げて、その答案例なら10点満点で何点もらえるか、採点する過程を明確に示した本である。

              解説を読むと

              「・・・は減点しない」
              「・・・のように訳していても可」
              「・・・も認める」
              「・・・としたものは×」
              「・・・は意味不明」
              「・・・のように先行詞の誤解が明白なものは×」
              「・・・は重大な誤りだから0点」
              「・・・を全く無視したものは×」
              「原文に対して訳語が弱すぎるから×」

              というシビアな基準で、せっかく書いた答案の点数が減らされていく。

              なかには

              「・・・はあまりにも語彙貧困」
              「theseとthereを読みちがえるのは注意力より学力の不足」
              「・・・と訳して、だいたい同じと弁解しても、受験の世界では通用しない」
              「・・・でも内容が変わらぬと弁解する人は、もう少し素直になる必要があるのではないだろうか」
              「文法構造を無視した気分だけの訳で、受験の訳としてはあまりにずさんだから×」

              と、気の弱い受験生なら気絶しそうな説教調の毒舌も、ちらほら見受けられる。駿台の参考書には青本を含めて、キツイ記述がちらほらあるのは伝統だろうか。

              とにかく、伊藤和夫先生とヴァーチャルなキャッチボールをしながら、自分の答案が「客観的」にどれくらいのレベルに達しているのか判断できる良書である。

              なお、「英文和訳演習」は「入門篇」「基礎篇」「中級篇」「上級篇」に分冊されている。
              まず「入門篇」で様子をみて、説明が性に合うと判断したら、どんどん「基礎篇」「中級篇」へとレベルを上げていけばいい。
              地方国立大学なら「基礎篇」で十分だし、難関私立大学や阪大・九大なら「中級篇」でいい。「上級篇」は難しく、英文和訳が日本一難しい京大を受験する人以外には必要ないと思う。


               
              | 大学受験学参ソムリエ | 17:18 | - | - | ↑PAGE TOP
              大学受験学参ソムリエ 1 「古文研究法」
              0
                アカデミックな、古文参考書の最高峰。上級者向け

                最近、団塊の世代の人たちが使っていた、レトロな学習参考書の復刊が相次いでいるが、この「古文研究法」は初版発行が1955年(昭和30年)。半世紀を経て廃刊になったことがない、長い歴史を持つ参考書である。安保闘争に参加した大学生も、高校生時代にこの参考書を使っていたのだろう。

                装丁はクラシカルで古めかしい。活字も古書のように凸凹していて、しかも小さい。決して若い読者にはとっつきがよくない。
                しかし見かけと違って解説が「実況中継」シリーズのような語り口調で、非常に読みやすい。
                著者は筑波大学の副学長で、35歳で学士院会員になり、文化功労者になった国文学者の小西甚一氏で、最先端の学者が、わかりやすさに気を配りながら、次代を背負う学生に向けて熱を込めて書いた、極めて優れた参考書である。

                「古文研究法」から、古文単語の解説を、いくつか引用してみよう。

                -------------------------------------------------


                「かしこし」
                現代語の「賢い」と同じような用法もあるが、そうでない例が多いので、よく注意して見分けなければならない。「かしこまり」と同じ系統のことばだから、恐縮するような感じを基本意味ととらえ、その背後に敬意を生かした訳や、特別だといったような気持ちの加わった訳を工夫すればよい。用法と訳語の例として、
                (1) おそろしい
                (2) おそれ多い
                (3) かたじけない
                (4) りっぱだ
                (5) 良いぐあいだ
                (6) 才能がある
                (7) たいへん(連用修飾)
                などがある。現代語の「かしこい」は、(6)の用法がいくらか狭義になったもの。だから、本来は、たんに知識がすぐれているだけでなく、畏敬するに値するほど有能だという意だったろう。


                「あはれ」
                ものごとに感動して思わず出すことばで、いまなら、「ああ」とか「あっ」とか「あら」とか言うところ。品詞でいえば、感動詞である。したがって、その内容はいろいろであって、特定の色彩に限定されない。それを形容動詞として「あはれなり」と言うときも同様で、喜怒哀楽そのほか何でも、心につよく感じたのが「あはれなり」である。いまの「哀れなり」よりも、ずっと広い。もっとも、いまの「哀れなり」と同じ用法も、無いわけではない。

                「あやし」
                この語は、大別して、(a)「怪し」と(b)「賤し」との両系統になる。それぞれのなかで、また細かい用法の差があるけれど、細かい差は、うまく訳せなくても、ひどい被害はない。しかし(a)の系統に訳すべきものを(b)の系統に訳したら、一発即死ということになるから、よく注意してほしい。

                「むつかし」
                現代語の「むずかしい」はdifficultの意だが、中古語では、その意味の用例がほとんどない。基本的に「感じがわるい」(unpleasant)ということで、その程度が強くなると、いくらか恐ろしさの感じも加わって、気味が悪い(evil)の意味にもなる。


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                「一発即死」という大胆な比喩とか、英単語を使って古文単語のニュアンスを表現するあたり、小西先生の文章の力は比類がない。
                装丁と活字のアカデミックな無愛想さとは裏腹に、、本の世界にもぐりこんでみると賢い人のわかりやすい話を聞いているように心地がいい。

                ただ、古文が苦手な受験生が手を出すには、難所がかなり控えている。ただ東大・京大・早稲田など難関大学を目指す受験生で、古文を得点源にしたい方には強くおすすめする。

                最後に小西先生がお書きになった「古文研究法」の「はしがき」「はじめに」「おわりに」の文章は、学習参考書の白眉である。清廉で血の通った文章。僕は大学受験時代繰り返し読み、落ち込みがちな気分を高揚させてくれた。
















                 
                | 大学受験学参ソムリエ | 16:59 | - | - | ↑PAGE TOP