2009.10.27 Tuesday
大学受験学参ソムリエ 7 「解体英熟語」
僕がもし早慶や関関同立をめざす受験生で、英熟語集を1冊買うとしたら、「解体英熟語」を選ぶだろう。デザインも原色なのに知的で趣味が良く、本の分厚さに信頼感があり、掲載された熟語は984個と多く網羅性がある。
Z会の「解体英熟語」、英熟語の成り立ちを緻密に分析し「解体」した本だから「解体英熟語」という名前にしたのかと思いきや、実は本にミシン目がついていて、バラバラのカード式に「解体」できるので、この名がついたのだという。意外なネーミングだ。
この「解体英熟語」はミシン目を破り解体して使う「カード型」と、分厚いペーパーバックのような「ブック型」の2種類がある。内容はもちろん同じ。好きな方を使えばいい。ただ「カード型」はミシン目を切る解体作業がたいへんなので、覚悟してほしい。
「解体英熟語」は解説が素晴らしい。
1つの熟語に対して3〜4行の解説(「コメント」と呼んだほうがいいかもしれない)がついているが、これがためになり、読ませる。
例を挙げてみよう
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297.wear out 〜を疲れさせる
put onが着物などを単に着る動作を表すのに対し、wearは「一定期間身につけている」状態を表す。ここから「着古す」→「すり減る;すり減らす」という意味が生じた。
312.break off (話・約束など)を急にやめる
break の基本的な意味は「突然の力でばらばらにする」である。この「突然の」というところを覚えておけば、他の重要熟語も覚えやすい。
435.hold one’s tongue 黙る
hold の基本的な意味は「〜をある状態に保つ」。ただし、この熟語に見られるように、「制御した状態を保つ」という意味でも使われているので、注意したい。hold one’s mouth ではない点にも注意しよう。
558.be indifferent to〜 〜に無関心である
be different from〜(〜と異なる)とこの熟語の間には、実は大いに関係がある。「〜と異なる」のように区別をつけるのは、少なくとも「関心がある」ということなのである。つまり「区別をつけない」から「無関心だ」と考える。
654.on time 時間通りに
言い換えると、punctuallyとなる。このonは‘時間的な接触’を表す。たとえば「彼は時間通りに8時に来た」という場合には、時計の針がピタッと8に接触しているはずだ。
722.at work 働いている、仕事中で
このat はat table (食事中で)のat と同じで、「〜に従事して」という意味。心を一点に(=at)集中しているのである。
788.quite a few かなり多くの
どうしてこれが「多い」という意味になるのかと誰もが一度は不思議に思うだろう。実はこれは反語表現である。
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ご覧のように解説には単語本来の意味や、前置詞のニュアンスが散りばめられ、読み物として面白い。本をひも解くうちに熟語が頭に自然と定着していく。英語の言語感覚も身につく。熟語でアドバンテージをつけたい受験生にはおすすめ。
僕は「解体英熟語」の解説をエッセイとして読み流すのが好きで、よくカバンに携帯している。
ところでZ会に「速読英単語」など、大量の英語参考書を執筆している「風早寛」という人は、プロフィールがどこにも書かれていない、謎の人物である。都立高校の先生だという噂もあるが、全盛期の伊藤和夫をほうふつさせる質の高い参考書の量産ぶりから、複数の人物の合同ペンネームだとも考えられる。
テレビの「水戸黄門」も、複数の脚本家がシナリオを書いていて、合同のペンネームが「葉村彰子」だったのだが、「風早寛」先生も、Z会の複数の英知の集合体なのだろうか?