猫ギターの教育論

尾道市向島の塾「US塾」塾長のブログ 早稲田大学・開成高校出身 本音が飛び交う、少し「上から目線」の教育論
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カンガルー子育て
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    最近の子供は弱くなったという言葉は、人類が誕生してから存在する。
    しかしいま、本当に子供は弱くなっている。教育に携わる人間なら、おそらく、多くの人がそう嘆くだろう。子供を見れば日本の未来が予測できる。教育者は子供を観察できる立場にいるので、未来の情報を豊富に持っている。教育者の中には、こう叫びたくなる人もいるに違いない。「日本は滅ぶ」と。

    子供が弱くなっている理由は、大人が子供に気を使いすぎるからだ。家庭も学校も塾もそろって、子供に立ち向かう難関を除こうとする。学校が「ゆとり教育」でカリキュラムを減らして学力が落ちたのは承知の事実だし、塾も子供を「生徒さん」と呼び消費者扱いで、塾をやめ儲けが減らないよう、機嫌を損なわないようにする。このままの勢いだと、冗談ではなく子供を「生徒さま」と呼ぶ塾が現れるかもしれない。
    また、少子化で生徒が集まらない私立大学や私立高校も、経営上の理由でAO入試や推薦入試を実施して、直前に猛勉強しなくても楽に合格できるシステムで子供を誘う。
    家庭も、親は子供に嫌われるのが怖いし、子供の将来を考えてうるさいことを言うより、お友達としてつき合う方が気分が良い。だから親子が友達のようになり、カンガルーみたいに子供を腹の中に入れた過保護な親が多くなる。

    私はひそかに、いい年をして親離れ子離れできない親子を「カンガルー親子」と呼んでいる。
    子供は思春期になると母親の袋から飛び出し、お母さんカンガルーから独立して、健全な反抗期を迎え親離れするのが普通だが、最近では中学・高校・大学に至るまで、カンガルーのように温かい母親のおなかの袋への出入りを繰り返す乳離れしない子供が多い。しかも母親どころか、父親まで袋を持っていて、子供を腹の中に入れて囲っている家庭もある。気持ち悪い。
    子供は学校や塾や部活で厳しい環境におかれると、母親カンガルー、父親カンガルーのお腹の袋に逃げ込む。家庭内は治外法権だから、教師は親に何も言えない。

    それから、子供の育て方とペットの育て方の境界線がわからない親がいる。ペットは飼い主だけに愛されればいいが、子供は親だけでなく、教師や友人や異性にも好かれねばならない。ペットは原則として一生飼い主の庇護の下で育つが、子供はいつか親離れをしなければならない日が来るのである。親だけにしか可愛がられない子供にする子育てはまずい。

    さらに大問題なのは、教育書も子供に「やさしい」ものが多いことだ。子供の心理を尊重し、繊細に子供の思いを掬い取ろうとしている教育書がほとんどである。子供に「やさしい」教育評論家は、現在の子供のことばかり目が行き届きすぎて、子供が大人になった時のことを考えていない。いつまでも子供がカンガルーの赤ちゃんのままだと思っている。
    おまけに教育書の中には、日本は高度経済成長が終わり、安定成長も終わり低成長期に入っているから、夢もつつましく欲も少なくしようなどという論調が見られる。デフレの弊害であろうか。デフレの時は金を節約するのは当然だが、子供の夢や将来の希望まで節約しようとしている。
    もし私が松岡修造なら、「小さくまとまるなよ。行動せずに、夢といえるのか? 少しでも行動して計画ぐらい立てるんだ。何もせずに夢を語る資格はない。叶えろとは言わん、夢ぐらい見ろ」と言いたい。


    日本の子供とは対照的に、中国・韓国などアジアの国々は夢がある。夢があるから競争が激しい。エグイほどの自己顕示欲がある。中国や韓国へ行けば、街は若者のパワーであふれていて、勉強すれば偉くなれるという価値観を信じて、子供は深夜まで猛勉強している。猛追どころか追い越している。
    中国人は猛勉強で日本人はゆとり。中国の子供は千尋の谷に突き落とされる獅子で、日本の子供はカンガルー。これでは20年後・30年後の両国の差はかんたんに予想できる。

    もし日本の社会が、日本の家庭が、江戸時代の大奥のようなぬるい閉鎖的な環境で、将軍のような弱いパーソナリティーしか持てない大人しか育てられないほど腐敗しているなら、子供は大人になってから苦労する。子供の時は将軍扱いで、大人になったら一般庶民。子供時代と大人時代の待遇の差の激しさに子供は傷つく。

    カンガルー子育ては、袋の中から出た子供に、世間の地獄を味わせる。

    | 硬派な教育論 | 16:39 | - | - | ↑PAGE TOP
    個別指導は師匠と弟子の一騎打ち
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      子供時代に勉強が苦手だった親は、子供を個別指導塾に入れたがる。自分の生徒時代の経験から、集団授業がつまらなく騒がしく、勉強がわからないことを肌で知っているからである。

      しかし、勉強が苦手な子にとって、必ずしも個別塾や家庭教師がいいとは限らない。

      勉強についていけなくなると「自分のペースで勉強したい」と思いたくなるのは当然だが、勉強は速いペースについていくことが大事である。個別指導や家庭教師で子供の成績が伸びないケースの多くは、子供の緩慢なペースに講師が合わせるからである。将来大人になった時、職場で「自分のペースで仕事がしたい」というわがままは通じない。

      試験は時間内に問題を解く作業である。個別指導の先生は、最初は生徒のペースに合わせてもいいが、だんだん意識して授業のスピードを上げていかなければならない。釜で米を炊く時の、はじめチョロチョロ、中パッパ、みたいに。

      また、勉強が苦手な子が通う補習塾や、学校の補習がメインの個別指導で、まず補わなければならないのは学力ではなく、向学心や上昇志向、精神力や持続力といったメンタルな部分である。メンタルに手をつけなければ、砂漠に種を撒く無駄な作業が延々と続くだけである。

      偏差値40の子を友達感覚で預かる個別塾は多い。しかし偏差値を10上げるためには、勉強だけでなく「性格改造」まで手を突っ込まなければならない。心の問題にまで踏み込まないと成績は伸びない。そんな意識と実行力がある塾や家庭教師は少ない。

      どうしても成績が上がらなかったら、最後の砦として、「家族ゲーム」の松田優作や長渕剛みたいな、豪腕家庭講師を雇うしかない。子供だけ教育しても仕方ないので、家に乗り込んで家庭を荒らしまくり、父親母親家族を根こそぎガツンと教育しなければならない。

      とにかく、勉強が苦手な子を引き上げるには、膨大な手間と覚悟と時間が要る。素朴な疑問だが、個別指導や家庭教師で、たった「週12時間」で時間が足りるのだろうか。本気で学力の壁を破るなら、もっとたくさんの時間が必要だと思うのだが。

      勉強が苦手な子に本気でかかっていくには、ヘレン・ケラーとサリバン先生くらいの密着度が必要なのだ。

       

      さて、個別指導や家庭教師は、勉強ができる子にも効果的だ。

      個別指導・家庭教師は、勉強が苦手な子の補習的な意味合いが強いが、指導力が強い講師と、勉強が得意な子が1対1で向き合えば、難しいことがどんどんできる。学年の枠を超えた先取り学習が可能だ。問題のハードさと進路のスピードが心地良い。1対1の指導は、才能を持つ子のリミッターを破壊する「英才教育」にも適する。

      個別指導は、やさしい先生が子供に手取り足取りイメージがあるが、私の場合は集団授業より厳しい個別指導をする。伝統芸能で師匠と弟子が、一対一でやりあう修業のような個別。弟子が師匠の問いに答えられないと、場が凍る緊張感。個別は甘いものではない。子供に逃げ場がないキツイものだ。

      個別だったら、生徒のミスを瞬殺できる。数学でも英文解釈でも、問題を解く時に足を引っ張るのは「思い込み」である。間違った思い込みが障害物になり、ミスと時間切れのダブルパンチを引き起こす。個別指導の良いところは、生徒の「思い込む」箇所を直ちに見抜き、脱出方法を共に探れることだ。

      また、現代文こそ個別指導が効果的な教科である。英語数学のミスなら、講師が一方通行的に正しい解き方を押しつければ、生徒は納得せざるを得ないが、現代文は正解を示されても、なぜ間違いなのか納得できぬ点が残る。そこで生徒が講師に疑問をぶつける。議論が始まる。そんな一対一のやり取りで国語力は伸びる。

      現代文は、いったんフォームを崩すと点数が取れなくなる。バッティングと同じで精密機械のような性質を持つ。フォーム矯正には第三者の目が必要で、どこが崩れているか個別指導してもらうのが手っ取り早い解決策である。

      個別指導は師匠と弟子の真剣勝負なのだ。甘さはない。剣術のように師匠の声は硬くなるし、弟子をギロリと睨みつける。竹刀の音が高く響く。でも本気で打ち合って防具を外した後は、師匠と弟子がお互いに笑顔。そんなメリハリがいい。

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