天才「どうして君が英単語暗記できないか教えてやろうか?」
凡才「うん」
天才「君に感性と記憶力がないからだ」
凡才「えっ?」
天才「はっきり言って、バカだから」
凡才「お前、かわいい顔して、ひどいこと言うなあ」
天才「事実じゃないか」
凡才「もっとオブラートに包めよ」
天才「僕は英単語暗記に苦労したことはない。でも君は暗記できない。これを才能の差といわずして何という? 僕は君の悪口を言ってるわけではない。客観的事実を述べてるだけだ」
凡才「じゃあ、お前は書いて覚えないのかよ」
天才「僕は英単語を書いて記憶した記憶がない」
凡才「じゃあ、どうやって暗記してんだ?」
天才「英単語が自然に頭に飛び込んでくるんだ」
凡才「ふん。俺はどうせバカだから、書かなきゃ覚えられないんだよ」
天才「違う。君はバカだから書いて覚えようとする。記憶力もバカだし、勉強法もバカだ。君の単語暗記法見てると、簡単な単語も難解な単語も同じ数だけ書いている」
凡才「なんだと」
天才「極端な話、君は、’go’も’contemporary’も同じ数だけ書いている。小学校の漢字練習みたいじゃないか。『スクールウォーズ』の「花」か。花花花花花。書いている間、思考停止してないか? そんなのは頭脳労働じゃなくて、ただの手作業だな」
凡才「でも学校の先生も塾の先生も、書いて暗記しろと言ってるぞ」
天才「あのね、先生の側から見れば、書いてる生徒は真面目そうに見えるんだよ。生徒が一心不乱に英単語書いてる姿って健気じゃないか。逆に単語眺めてるだけじゃあ、手を抜いてサボってるように見えないか? だから教室の秩序を保つために、もっとはっきり言うなら生徒を真面目っぽく調教したいがために、書いて覚えることを奨励してるんだよ」
凡才「でも俺は見て暗記できないな。書いて暗記しないと不安だ。単語集覚える時も書いて覚えるね」
天才「その単語集で暗記する方法が、そもそも間違ってる」
凡才「ターゲットやシス単使っちゃ、いけないのか?」
天才「いけないとは言わない。まあ君くらいのレベルなら仕方ないけどな」
凡才「さっきからお前、俺をバカにしてるな。少々勉強できるからって、威張るんじゃないぞ。おまえは石田三成みたいな性格だな。まわりから嫌われて破滅するぞ」
天才「あのねえ」
凡才「なんだよ」
天才「単語というものは、単体で覚えてはならない。文の流れの中で覚えるんだ」
凡才「それはわかってる。だけど理想論だろうが」
天才「まあ聞きなさい。君は英語はダメだけど、日本語は日常会話程度は扱えるよね」
凡才「日常会話程度って、言うことがイチイチむかつくな」
天才「さっき、君は『おまえは石田三成みたいな性格だな。まわりから嫌われて破滅するぞ』と僕を批判したけど、文章まるごと一気に言っただろ?」
凡才「それがどうかしたか」
天才「君は、『おまえ』『石田三成』『性格』『まわり』『嫌われて』『破滅』といちいち単語を意識したか? してないだろ? 単語を意識しながら話したら「おまえ、石田三成、性格まわり、嫌われ、破滅あるよ」と、日本語習いたての中国人みたいな話し方になるだろ?」
凡才「おまえ俺をからかってるのか?」
天才「君の言葉を冷静に分析しただけだ。君は日本語をフレーズで血肉化している。でも外国語は単語の羅列に頼っている、ということが言いたい」
凡才「じゃあ俺にも言わせろ。日本語だったら文章まるごと自然に暗記できるよ。でも英語は外国語だから、単語帳で暗記するのは効率がいいだろ。単語から積み上げていかないと習得は難しいぞ。中国人だって日本語をマスターするのに、きっと単語暗記からはじめているぞ」
天才「そこなんですよ。要するにだな、僕は天才だから外国語も母国語みたいに学べるわけだ。それが才能の差だって言ってるんだ。僕は英語を呼吸をするように自然に学ぶ、君は努力と根性でしか学べない」
凡才「そんなこと言われたら、お前みたいな語学的才能を持たない受験生は、どうすればいいんだ?」
天才「とにかく、英単語をただ書いて暗記するという、迷信からは抜け出した方がいいな。君の勉強法は、間違ってるね」